LYRICAL BLADE StrikerS ~BLADE FOREVER~ 作:黒乃ツバサ
プロローグ
日本のとある森林が覆われた場所で二人の戦士がいた。
その場所は、二人がお互いに人間の姿で出会いそこから始まったとも言える思い出の地でもあった。
「俺の身体は、もう俺の意志ではどうにもならない。攻撃を受けるほど俺は一匹の獣に戻り、戦いの事しか考えられなくなる。そんな俺を倒せるのは、お前だけだ」
世界を滅ぼす力を持った最強のアンデッド、ジョーカーである相川始からの切なる願いに剣崎一真は自身の秘めた想いを胸に彼にこの言葉を言った。
「……アンデッドはすべて封印した。お前が最後だ、ジョーカー!」
「俺とお前は、戦うことでしか分かり合えない!」
始の姿がジョーカーの姿へと変わり、その背後にジョーカーの影から生まれる怪生物、ダークローチも現れた。
「変身!」
剣崎も応戦するようにブレイドへと変身してダークローチを斬り倒し、二人の武器がぶつかり合って火花を散らした。
互いに引かず斬り合い続け、剣崎は自分のすべてを出し切るために最強の形態、キングフォームへとさらに変身した。
「いくぞ、ジョーカー!」
<ロイヤルストレートフラッシュ>
ブレイドのキングフォームだからこそ可能なノーラウズによる必殺技が発動し、ラウズしたカードのイメージが目の前に一列となって出現した。そして剣崎はそのままくぐり抜けながら駆けていき、始に向けてキングラウザーを振り下ろした。
始もまた自身の持つ武器に力を溜め、そのまま駆けてくる剣崎へと振るい、互いの武器がぶつかり合った。それによって互いの武器のエネルギーが衝撃波を発生させて大爆発し、二人をさらに森の奥へと吹き飛ばした。
飛ばされた二人は立ち上がり、ふらつきながらも互いにゆっくりと近づいていき、その後は拳だけのぶつかり合いをし続け、そして……
「今だ、剣崎……俺を封印しろ」
体中からアンデッドだけの血とも言える緑色の体液が流れ、始は剣崎に自らを封印するように言ったが、剣崎はそれをしようともせず自身の変身を解いた。
……その直後であった。
「剣崎……⁉」
剣崎の右腕から緑色の体液が流れ、それを見た始は驚いた。
変身で使われたベルトが投げ捨てられ、剣崎の腰には始と同じジョーカーのラウザーが身に付いていて、それにも驚いた始は『スピリット』を使って人間の姿へと戻り、自身の右腕に流れ出る血を見て剣崎に問いた。
「剣崎……お前、お前は……
始からの問いに剣崎は答えようとしなかった。しかし、それによって始は剣崎が世界だけでなく自身も救うがために自らがアンデットとなって戦いを止めようとした事を理解した。
しかし、それを望まぬ存在が二人を観ていた。
――統制者
バトルファイトを統制するマスターと呼ばれ、黒い石版『モノリス』を通じてアンデッドに戦いを促し、敗北したアンデッドをラウズカードに封印、解放することができる人ならざる存在。
その統制者がモノリスを二人の下へと送り、そしてこう告げた。
「統制者が言っている。アンデッドを二体確認。バトルファイトを、再開しろと」
「最後の一体になるまで、か……」
人間とジョーカーによる最後の戦いを見届け、想定外の出来事に統制者は内心で満足げに、しかし
「俺とお前は、アンデッドだ。俺達のどちらかを封印しない限り、バトルファイトは決着せず、滅びの日は来ない。だから、俺達は戦ってはいけない。近くに居ては、いけない……」
「いくら離れたところで、統制者は俺達に戦いを求める。本能に従い戦う。それが、アンデッドの運命だ」
統制者によって生み出され、それぞれの種の繁栄をかけて行われた戦いは逃げることも止めることもできない。
そのため自らも戦い続けてきた始はアンデッドの運命には逆らうことはできないと悲しく告げるが……
「俺は運命と戦う。そして、勝ってみせる!」
「それが、お前の答えか」
剣崎の答えに始は不可能だと思っていた。
しかし、今まで可能性を見出し乗り越えて来た剣崎のまっすぐな目にどこか信じていた自分もいたため言えなかった。そして、剣崎は始に笑顔を向けてこう言った。
「お前は、人間たちの中で生き続けろ……」
その笑顔は儚く、ゆっくりと後ろへと下がっていく剣崎は始との別れを告げるべく言った。
「俺達は二度と会うこともない。触れ合うこともない。それでいいんだ……」
「剣崎……!」
背を向けてどこかへと歩きだした剣崎に始は追いかけた。けれど、ダメージを受けた影響によって走ることもできず途中で剣崎の姿を見失ってしまった。
その後、辿り着いた崖の上で立ち止まり、同じく駆け付けたギャレンとレンゲル、橘と睦月も既に手遅れだったことを知り、その場に立ち尽くすしかなかった。
こうして、もう一人のジョーカーとなった剣崎一真は、彼らの前から姿を消したのだった……。