LYRICAL BLADE StrikerS ~BLADE FOREVER~ 作:黒乃ツバサ
ガジェットによる事件で遭遇した二人の少女、スバルとなのはとの四年ぶりの再会となった剣崎は愛機とともにヘリに乗せられ、彼女たちが配属している駐屯地へと向かっていた。
「(……とてつもなく、気まずい)」
ローターの音が機内に響く中で剣崎はヘリを操縦している自身と同じ青年のヴァイスを除き、左右と向かいに座っている四人の少女の視線に刺され居心地悪い状態にさらされていた。
スバルとティアナ、なのはの他にもガジェットの事件で駆けつけていた少女もいて、しかもなのは達より少しだけ背の低い赤毛の少女を見て剣崎は驚き、そこで本人に言ってはいけない地雷を踏んでしまった。
『なんでここに、子どもが……?』
『誰が子どもだッ!』
赤毛の少女、ヴィータが取り出したハンマー型のデバイスによって剣崎は殴られかけ、寸での所でなのはが介入して制した事で難を逃れた……わけではなかった。
その後ヘリで運ばれている間、剣崎の左隣りに座ったスバルは尊敬の眼差しで見続け、右隣りからはなのはが笑顔を向けていた。……で、そんな二人とは逆に、正面左側に座っているティアナは今も剣崎へと疑いの目を向け続け、その右隣りで先程の発言にブチギレたヴィータが敵意丸出しで睨んでいた。
「(これはこれで面白い光景だが、余計な事を言わない方が身のためだな……)」
操縦しながら時折様子を見てたヴァイスは興味深げだったが、自身の安全のために触れず視線の先に見えた光景を確認してアナウンスで知らせを出した。
『もうすぐ到着しますよ』
アナウンスを聴いて剣崎はヘリの窓から見えた建物を確認し、ヘリはそのまま目的地へと降下して行った。
駐屯地のヘリポートへと到着し、スバルに引っ張られて降りた剣崎は立ち止まってその全貌を眺めていた。
「ここが私たちが過ごしている隊舎です」
「へーそうなんだ」
「ほら、立ち話は後!」
ヘリの整備のために残るというヴァイスを後に、一見と周囲を眺め終えた剣崎はなのは達の後を追いながら建物の中へと入っていった。
廊下を通っていき進んだ先にあるエレベーターに乗ってはそのまま下の階へと降り、そこから廊下を少し歩いた先にある一室の扉の前へと着いた。
「ここは?」
「この機動六課をまとめている司令官、八神司令の執務室です」
スバルに簡潔に教えてもらい辿り着いた部屋へとそのまま入っていき、部屋の奥にて椅子に座る一人の少女を見つけ、少女は入ってきた剣崎を確認して声をかけた。
「あんたがあの仮面ライダーさん? 背はそれなりにあるけど、思ったより優男やなぁ」
スバルが言った司令官、八神はやては剣崎を見て関西弁で話すが、その隣で宙に浮く小さな少女を見て剣崎は驚いた。
「リインの想像よりもいい人そうです!」
「……え、妖精⁉」
昔に読んだ絵本での小人のような、しかも羽が生えてないけど宙に浮いて飛ぶ小さな少女に剣崎は妖精かと思ったが、彼の発言に訂正するようにはやてが答えた。
「ああ、ちゃうちゃう。確かに妖精に見えるけど、リインは立派な人間で私の家族や」
「そ、そうなんだ……すまない」
剣崎はすぐさま小さな少女、リインへと頭を下げて謝罪した。
彼女も自身と同じ人間ではないだろうけれども、異なる存在であってもなのは達にとって彼女は人間であると認められ、受け入れていることに対して剣崎は否定するわけでなくむしろいい印象を持ったのだった。だからこそ自身の発言した事への間違いを受け止めリインへの誠意を持って謝った。
その後、なのはがはやての前に立ち、剣崎について話し始めた。
「ところではやてちゃん、この人の事なんだけど……」
「うん、ええよ。あの仮面ライダーさんが協力してくれるんやったら私たちも心強いし」
はやての即答になのはは喜び、ちょっとだけ聞こえたスバルも内心喜んだのだが、自身を置いていかれた剣崎は勝手に話を進めていく二人へと声を掛けた。
「二人とも、一体何を言って……」
「いやーそういう事でよろしくなぁ、仮面ライダーさん……って、どうしたん? 変な顔して?」
「いや、だから……」
「よろしくね、仮面ライダーさん」
「「よろしくお願いします!」」
なのはに続き、スバルとリインも被せるように言い、四人の反応を見てティアナとヴィータもやれやれと言いながら被せてきた。
「まぁ、はやてが言うんだからしょうがないか」
「部隊長が言うんだからしょうがないね」
「……だから! さっきから何言ってんだ! 勝手に話を進めるな!」
それぞれが最後まで言わせないように被せてきて、剣崎は怒りを交えて言いたいことを言い切ったが、返ってきた言葉は予想だにしない突然のものだった。
「今日から私らと一緒に戦ってもらうんやけど……あれ? アカンかった?」
「そんなことないよ。……いいよね?」
「は、はい……」
いろいろと言おうとした剣崎だったが、なのはから出てくる圧を前にして逆らえず彼女たちの提案に乗らざるを得なかった。こうしてあまりにも突然な剣崎の機動六課への入隊が決定され、本人の意思などまったく加味されずに決定された剣崎は落ち込んだ。
だが、勝手に決めたとはいえはやては先程までの楽しい表情から仕事モードへと切り替え、剣崎にこんなことを言った。
「でもなぁ、やっぱり素性の分からんような人を入れるほど私は甘ないよ?」
その言葉を聞いて剣崎の表情も変わった。あっけらかんとしていた空気が変わり、はやてが聞いてきそうな事を予想していたためどう言い逃れしようかと思案し始めたが……
「とりあえず、あなたの本当の名前を教えてもらえます……?」
隣で不安げな表情を浮かべて名前を聞いてきたスバルを見て剣崎の心は折れてしまった。そして、この状況からは逃れられない事を受け入れ、彼女の質問に答えるようにした。
「……剣崎、一真だ」
「剣崎さん……なら、一真さんでええか」
「あ、あぁ……」
不意に下の名前で呼ばれた事に剣崎は驚いたが、はやてはまっすぐな目で剣崎を見つめ彼に聞きたかった本題に入った。
「ほんなら聞かせてもらおか?
そう言って剣崎の目の前にモニターが現れ、数枚の画像が映し出された。
そこには、剣崎がこれまで四年間戦い続けて封印してきたアンデッドと、自身が変身したジョーカーの姿が映されていて、誰にも見られていないと判断していた様子まで撮られていたためその光景に剣崎は驚愕していた。
「気付いてたのか……」
「あれだけ事件を起こされちゃ、流石にこっちも気付くよ。だから教えてほしいの、いろいろと」
なのはは剣崎に説明してもらうように促すが、剣崎本人はあまり乗り気にはなれなかった。
けれど、自分が話すことでアンデッドによる被害が少しでも減らせるかもしれない。そう決意した剣崎は慎重に言葉を選んで語り始めた。
「俺たちは……アンデッド。不死身の生命体だ」
機動六課隊舎の一階入り口前――
一台の車が隊舎の入り口前に着いて一人の少女が降りて来た。身丈はなのはとはやての二人と同じくらいで長く下ろされた金髪が特徴的だった。
「あ、ハラオウン執務か……」
「ごめん! ちょっと急いでるから!」
通りかかった男性局員の声を後にして少女は急いで隊舎の中へと入っていった。
そのまま受付の前を通り過ぎて廊下を走っていき、途中ですれ違っていた女性局員たちは何事かと思い驚いていた。
「今の、ハラオウン執務官だよね……?」
「ええ。大急ぎの様子でしたけど……」
何かの事件があったのか、それとも本局からの知らせでもあったのかとそれぞれが思案して話すが、どれも少女の答えには当てはまらなかった。
何故なら彼女が急いでいた理由はただ一つ……機動六課に
「……以上が、俺が話したすべてだ」
意を決意した剣崎はこれまでの事をはやてたちに語った。無論すべてを話すわけではない。
ジョーカーである自分を含めたアンデッドを始め、自身の世界でも起こったバトルファイトの事やアンデッドの封印に欠かせないラウズカードの事も知る限りで話した。自分がこの世界に来た理由については事情が事情のため嘘を混ぜ、これまでの戦いも踏まえて残りのアンデッドの事も伝えたが、魔法や魔法生物、その他のさまざまな事柄があるこの世界で生きる彼女たちからしてもかなり驚かされる内容ではあったため、剣崎はなるべく混乱を招かないようにしながら話を終え、その場に静寂が包まれた。
数秒後、剣崎の話を聞いたはやては思考を終えて閉じていた目蓋を開け、彼を見て笑顔で答えた。
「……うん、わかった! なら一真さんには私たちの手伝いと、アンデッドたちの封印を頼むわ!」
あっさりとした回答に剣崎は内心ぽかんとなった。
真面目な話に対しての返事が軽かったその上、今まで苗字でしか呼ばれたことがなかった剣崎にとって下の名前で呼ばれるのにはなんだか新鮮な気持ちだった。
「よろしくね、一真くん」
「よろしくです~、一真さん!」
なのはとリインも剣崎に笑顔を向けながら頭を下げたが、二人も同様に下の名前で呼び、なのはに至っては『くん』付けであった。
その後、スバルが剣崎の前に来て手を握りながら目を輝かせていた。
「一緒にがんばりましょう、一真さん!」
「ま、よろしくな! 一真!」
先程まで殺気を立てまくっていたヴィータさえもいつの間にか態度ごと変わっていて下の名前で呼んでいた。……が、一人だけはそうではなかった。
「……よろしく、一真さん」
ティアナだけはスタンスを変えずに言ったが、それに対して剣崎は気にしなかった。むしろ他の面々の反応こそおかしいのであって第一印象としては『お人好しが多い』と彼に思わせているからだった。だからこそティアナの反応が正しいけれども、自身の正体を知ってもなお彼女ですら名前を呼んでくれていた。
そんな彼女たちの優しい心が剣崎にとって嬉しかった。
「……ああ。こちらこそ、よろしく!」
こうして剣崎は正真正銘の機動六課の仲間入りとなり、はやては笑顔でこう言った。
「そうと決まればさっそく一真さんに部屋を当てたらアカンな」
「ん? 部屋? ……あ、そうだった!」
はやての一言で剣崎はある事を思い出した。自身が手にしたアパートでの生活もあったため先月だけ滞納した家賃の事を思い出し、それを聞いたはやては剣崎の部屋だけでなく未払いだった家賃の分も用意すると言った。
無論それは剣崎の機動六課での働く分の給与から引かれるため彼の初任給は無しとなってしまうが、代わりに衣食住ができるのを考慮してもらえるため剣崎ははやての助けに甘んじて受け取るようにした。
「ほな、いろいろとやらなアカンから……」
「仮面ライダーが来てるって本当⁉」
はやてが何か言おうとした途中、突然の乱入者が入ってきて話が遮られた。それはかつてなのはと同じ四年前に現れ、先ほどまで隊舎の入り口から急いで走ってきた金髪の少女、フェイト・T・ハラオウンだった。
「あ、君は……」
「おー、ちょうどええ所にきたな~。フェイトちゃん、一真さんの荷物運ぶの手伝ってな」
「え? えと……よく分からないけど任せて!」
「いやいいのかそれで⁉」
はやてからの突然の頼みにフェイトはすぐさま返事をして、その後はあれやこれやと流れゆくままに剣崎はフェイトの車に乗せてもらいそのまま二人でアパートへと向かうこととなった。
アパートでの大家への支払いや荷物運びをして数分後――
「ここが今日から一真さんが住む部屋や!」
はやてに直々に案内された剣崎は部屋の中を見てビックリしていた。
広々とした部屋に、自身がいた世界以来の大きなベッドと、別々になっているシャワーとトイレ、洗面所等を確認してとにかく驚きと興奮が入り混じっていた。
「こんな綺麗で大きい部屋、ホントに使っていいのか⁉」
「ええんやって。一真さんはいわばウチらのお客さんなわけやし。遠慮せんと、な?」
そう言われていろいろと悩んだ剣崎だったが、はやてからのご厚意を無下にしないようにして感謝を伝えた。
「わかった、ありがたく使わせてもらうよ」
「ほな、仕事に戻るからこの辺で失礼するわ」
剣崎からの感謝を聞いて笑顔で返したはやては部屋を出てそのまま去っていった。
それから剣崎は少量しかなかった荷物を出して整理した後、置かれていた椅子に座って溜息を吐いた。
「……とは言ったものの、落ち着かないな。広い部屋って四年ぶりだし」
剣崎はふとかつての仲間である虎太郎たちと過ごしていた屋敷を思い出した。
こことは趣は違うけれど、元の場所が農場だったため自然に囲まれていてのんびりしやすく広いことには変わりはなかった。けれど仲間と別れて異世界へと来て以降、バイトをしながらアンデッドを探して野宿したり安いホテルに泊まったりなどの生活を送り、昨日まではようやっとの感じで手に入れたアパートでの生活を送っていた。
そこから一気に自身の生活が四年ぶりに大幅拡大され、人間としての性もあって気持ちはソワソワしていた。
「少し中を見ておくのもいいかもな。なんにせよ、しばらくは暮らすわけだし」
若干の引っ掛かりがありつつも剣崎はこれからの生活の慣れと隊舎の構造を理解しておくため部屋を後にして探検し始めた。
建物としては剣崎が勤めていた頃のBOARDと比べるほど大きく、地球には無い最先端の物に対しては四年経った今でも興味を持ったりしてとにかく見て回るだけでも楽しんでいた。道中で機動六課の職員たちとのすれ違いもして何人かは笑顔を向けていて、他何人かはティアナと同じように顔をしかめていた。
四年前とはまるで逆の状況に剣崎は少しと疑問を浮かべたが、元が単純な性格であったため喜びの方が前に出ていて疑問はすぐさま吹っ飛びそのまま探検を続けた。
そうして食堂や訓練場、あらゆる部屋を巡っていき、粗方の確認をし終えた頃には一階の出入り口付近に着いていた。
「そういえば広場があって海が見えてたんだよな。そっちも行ってみるか」
ヘリで運ばれて来た時の記憶を頼りにしながら剣崎は外へと出た。
階段がある所を降りていけばその先に広がって見える海がある、ただそれだけを思い浮かべながら進んでいたが彼の予想は大きく外れることとなった。
なぜなら彼が通った道はまったくの正反対で、そこには廃墟に近しい場所が広がっていたのだった。
「あ、あれ⁉ どこだよこれ⁉」
一瞬と記憶を疑った剣崎だったが、少し前にはやてから廃墟の街について簡単に聞かされており、そこに機動六課の隊舎が建てられ残されている廃墟は訓練のために使われていることとなっていた。
「そ、そっか。前は廃墟の街……なんだよな」
廃墟となっていた場所を前に剣崎は自分の記憶と認識を修正しながら気持ちを切り替えるようにした。
すると、なにかが聞こえて剣崎は耳を澄ませた。発生した音は廃墟のどこからか聞こえ、その音は集中して聞くうちに爆発の音として響き、それが次第に大きくなっていき尋常ではないことに気づいた剣崎は思わず駆け出した。
走り続けて近づく度に爆発の音が激しく増していき剣崎の耳を激しく打ち続けていた。そして、剣崎の視線の先に見える目の前のビルから一人の少年が突き破ってきて、そのまま剣崎の所へと流れるように落ちてきた。
「え? ちょっ⁉」
突然の出来事に剣崎は慌てつつも落ちてきた少年をうまくキャッチして衝撃を逃した。
落ちてきた少年はおよそ十歳くらいの赤髪で、所々に服の破れと傷が多く一言で言えばひどい有様であった。
「お、おい! 大丈夫か⁉」
砂埃まみれで気絶している少年に剣崎は声をかけた。外見ではボロボロだが杖らしきデバイスを持っていたため少年も魔導師であり、魔導師が身に着けるバリアジャケットの機能によって出血はそれほど無かった。
けれど……
「誰が……誰がこんなことを……!」
少年の状態を見て剣崎が怒らないわけがなかった。
ボロボロになっている少年を痛めつけた相手への怒りがふつふつと沸き上がり、その相手との対面はすぐに訪れた。
「これでおしまいか、エリオ? やはり騎士としてはまだまだのようだな。これぐらいで音を上げるとは……少々やり過ぎたかもしれんが」
崩れたビルの方角から女性の声が聞こえて剣崎は視線を向けた。巻き上がった煙によって姿は見えていなかったが、凛とした声から聞こえた呆れと、どこか少しの反省が混じってるような話によって剣崎の怒りが一気に振り切られ、歩み寄ってくる人影に向かって怒声を投げつけた。
「おい! こんな子どもに、こんなことをして……! 誰だか分からないけど、俺はアンタを許せない!」
剣崎の怒声が響いて人影は歩みを止めた。
人影があった場所から砂煙が徐々に去っていき、そこに騎士を表す鎧を身にまとい長いピンク色の髪が特徴の強い目を持った女性が現れた。
「む……? 何者だ、貴様は」
剣崎は少年をゆっくりと降ろして現れた女性へと睨み、上着のポケットから一枚のカードを取り出した。
そして腰元にジョーカーラウザーを出現させ、右手にカテゴリーエースのラウズカードを持ち、右手の甲を相手に向けながら腹の前からゆっくりと斜め上へと上げた。
「俺は、剣崎一真……仮面ライダーだ!」
右手が顔の前に来た瞬間、素早く手首を返して彼は宣言した。
「変身!」
右と左の手の位置を入れ替えるように素早く動かし、右手に持つラウズカードをジョーカーラウザーへと通した。
<チェンジ>
電子音が鳴り、剣崎は異形の姿へと変わった。
黒と青を主体としたジョーカーのボディに、歪な銀色の鎧が肩と腕、胸と脚に身に纏われ、バックル中央部はスペードのマークが模られたラウザーに変化し、顔の上部にスペードを描く溝が彫られた異形の戦士、ブレイドジョーカーへと変身した。
「ほう……貴様が噂に聞く仮面ライダーか」
ブレイドジョーカーに変身した剣崎を見て女性は軽く息を吐き、そして……楽しげに笑った。
剣崎は右手にかつての『仮面ライダー』だった時に使っていたブレイラウザーと酷似した剣を召喚し、それを見た女性は自身の右手に持ってある剣型のアームドデバイスを両手で持つようにして構えた。
「烈火の将、シグナム……参る!」
ここに、異形の正義であるブレイドジョーカーと『烈火の将』と呼ばれる剣の騎士、シグナムとの対決が始まり二人の剣がぶつかり合って火花を散らした。