プーサーなオリ主とコナン君   作:ラムセス_

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水平線上の陰謀②

 

 私は原作───「水平線上の陰謀」に思い至ったと同時に、船内を風で満たした。

 対象は主に今回の犯人である日下さんと秋吉さんである。

 

 今回の事件は、確か十何年か前の貨物船沈没事故が発端となっているはずだ。

 この事故で死んだ船長と船員の娘息子がそれぞれ犯人となっている。

 

 動機は復讐。

 十数年前、八代会長とその一派は保険金目的で船をわざと沈めさせた。

 その時何も知らずに犠牲になった船長と船員のため、その娘息子は復讐に走ったのだ。

 

 嫌なんだよなぁ、こういう悲劇の犯人は捕まえ辛くて。

 なぜなら霊基のプーサーが「何故に止めなきゃならないの???」とばかりにハテナを乱舞させるからだ。

 まあ、原始社会の価値観で仇討ちなんて正当オブ正当な行動だもんな。

 キリスト教的価値観だと復讐は神に委ねろとはいうものの、実際社会の法がしっかりしておらず、自力救済として認められていた例も多い。

 

 ともかく。私は相変わらず微妙な感情を漂わせる霊基を置いて風の眼を広げてゆく。

 

 まず、日下さんはすぐに見つかった。

 

 どうも自室にいるようで、打ち合わせのために秋吉さんと通話中だ。

 と、その時席を立った。風でよく見てみれば、受話器のそばにはボイスレコーダーが置かれている。

 今まさに犯行が始められようとしており、アリバイ工作が行われているのだ。

 

 船内をくまなく調べれば、すでに爆弾も設置済みらしく、夥しい数の爆弾が機関室を中心に設置されていた。

 

 もーーー終わりだよこの船。

 私は吐きそうな気持ちになった。

 

 まず狙われたのは部屋でくつろいでいた八代社長だ。

 この対策は単純。部屋の扉を風王結界でコーティングして開けられなくしてしまえばいい。

 合鍵で開かない異変に気付いた犯人達は、ドアノブをガチャガチャしたり扉を破ろうとしたりと四苦八苦した末に諦めて出ていった。

 防音も兼ねているため、八代社長は何も知らないままだ。

 

 次に狙われたのは運悪く犯行現場付近に近づいてしまった園子さんだ。

 背後から犯人に警棒でめった打ちにされそうだったので、風の層を作ってガード。

 その間に全力疾走で私自身もマリーナへ向かう。

 

 唐突に走り出した私にSPが泡を食ったので、風で「マリーナへ向かう、君たちも来るんだ!」と伝えるに留めた。

 場所を伝えておかないと私の全力疾走に一般人がついてこられるはずがないからな。

 

 不思議な力で警棒を弾かれたとしか思えないらしい日下は、ただ混乱して幾度も打ち据え、それが全て無効化されていることに混乱したようだった。

 

 時刻は11時15分。

 呼び出されてマリーナに現れた八代会長が、揉み合う二人を見て慄いて「きっ、君たち!何をしているんだ!!」と叫んだ。

 それに舌打ちしたのは日下だ。

 もはや計画は完全に破綻した。

 

 そのまま怯えて蹲る園子さんに背を向け、「一体なんなんだ!!」と破れかぶれに八代会長へと警棒を振るう。

 それもまた風の壁に阻まれ、混乱のまま日下は出入り口に向かって駆け出そうとして。

 

 しかし残念、もう既にそこには私がいるのだ。

 私はゆっくりと靴音を鳴らしてマリーナ出入り口から現れ、日下と、物陰に隠れて一部始終を見ていた秋吉ににっこりと微笑んでみせた。

 

「こんにちは。こんな美しい船の上で、なんとも酷いことをしているようじゃないか」

「……お前の仕業かァ!!」

 

 鬼の形相、と言ってもいい鬼気迫る顔をした日下に問われたので、私も快くそれに返答した。

 

「僕の操る風は堅かっただろう?警棒程度で突破は難しいんじゃないかな」

「何のつもりだ、何故俺の復讐の邪魔をする!!」

「別に僕は復讐についてどうとも思わないが……せっかくの船旅を邪魔されたくなかったからね。子供達も悲しむ。安心してあとは警察に任せてほしい」

「巫山戯るな!俺は、俺は親父の仇を取るためにここまで来たんだ!!」

 

 日下は爆弾のスイッチと思しきそれを上着のポケットから出し、「動くな!!!」と叫んだ。

 

「この船に爆弾を仕掛けた!近付けば船を爆破する!」

「知っているよ。爆弾の位置も数も。風の手を伸ばして既に把握済みだ」

「!!!」

 

 落ち着いてニコリと微笑めば、日下は狼狽えたようだった。

 私が爆弾を風で隔離してウィンブルドンを救った件は大ニュースになっていたから、それも日下は知っているかもしれない。

 

「僕に爆弾解体はできないけれど、爆弾を風で隔離するくらい楽にできるんだ」

「……ックソ!!!」

 

 次の瞬間、容赦なく日下は爆弾のスイッチを連打。

 信号を受信した爆弾達が一斉に起爆する。

 同時に合わせたように影に隠れる秋吉が自らの設置した分の爆弾もスイッチで爆発させた。

 

 二人分の爆弾が船内のあちこちで爆破して──しかし、私の風王結界に爆発のエネルギーを内側へと押さえ込まれて不発となる。

 その総数は18個。リソースは既に限界である。

 

 蹲ったまま涙目で震えていた園子さんが「アーサーさん…!」とか細い声で助けを求めている。

 あちらも早めに助けてあげたいところだ。

 

 私は不意を打って素早く犯人たる日下に近付き、クリドゥノ・アイディンの絞首縄を首へとかけた。

 爆発音すらしない様子に呆然としていたらしい日下はそれをつけられ、自重に引かれるようにがくりと膝をついた。

 

 クリドゥノ・アイディンの絞首縄。

 ブリテン島十三の宝の中でも随一の悪辣な宝具で、その効果は「縄をつけられた人物を二足歩行できなくして、命令を聞かせる」効力。

 本来は刑のために使われるべきものだが、これが一番私でも体を傷つけずに犯人を拘束できるからな。

 

 そのまま私の初期入力「動くな」によって身動きの取れなくなった日下は、膝をついたままで絶望に涙を流していた。

 

「た、助かりました……アーサー王陛下!殺されるかと思いましたわい…」

 

 へな、と尻餅をついた八代会長が私に震える声で感謝を述べた。

 今回殺されかけた人々は皆、金のために多くの人の命を危険に晒し、殺害すらしてみせた悪党である。

 だから「僕は感謝されるようなことはしていないさ」と私は軽く言った。

 

 その通り。私は感謝されることをしていない。

 何故なら───

 

「あ、あの。これは一体……?」

 

 怯えたように柱の影から出てきたのは、犯人の一人である秋吉さんだ。

 彼女は実際、ここまでこっそり日下さんの後をついてきただけだ。

 決定的な証拠である爆弾の起爆装置さえ見つからなければ、秋吉さんを罪に問うことはできないだろう。

 

 そして、私は彼女に爆弾について問い詰めることをしない。

  

「私、日下さんの姿を廊下で見て、びっくりしてついてきてしまったんですけれど…その、一体何が…」

「ひとまず警察を呼ぼうか。爆弾は僕が封じているから大丈夫だろうけれど、不発があるといけないから爆弾処理班に早く渡したい」

「な、なら私呼んで来ますので。アーサーさんは少しお待ちくださいね」

 

 秋吉が出ていく。

 これで秋吉の爆弾の証拠は失われ、日下は警察に逮捕されることだろう。

 そして秋吉は計画を練り直し、いつかの日に再び復讐を遂げんと牙を研ぐのだ。

 

 私は感謝されることをしていない。

 

 なにせ、この事件が早期解決し、コナン君達が気楽に船旅を続けられるようにと動いただけなのだから。

 後日殺される人間が出てきたとしても、私の管轄外である。

 

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