こちらシャーレの窓辺より。   作:Gissele

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前話を見ていただきありがとうございます。


銀行強盗?本当に?

あはは。

 

「撃て撃て撃て!何発当てれば止まるんだよあいつは!」

 

「そもそも当たらないんだけど!後頭部に目でもついてるのかよあのやろ……グエッ」

 

あはははは。

 

「あの野郎素手で何人倒してんだよ!というか銃使えよバカが怖ぇだろうが!あっちょっと待っオェ」

 

「お前その銃どこからアババババババ」

 

「普通に銃も撃つのかよ!?というか何サラッと他人の銃使ってんだあの野郎!」

 

あはははははは。

 

「マジでなんだよあいつもう帰っていいかな帰る!」

 

「おいてめえふざけやがっペボ」

 

「うわーっ!助けてぇぇぇ!!」

 

あはははははははは。

 

「笑うな!いや目が笑ってねえどうなってんだお前ぇ!」

 

手当たり次第殴り、銃を奪って弾をばら撒き、撃ち尽くすしたら銃で殴る。それを繰り返しているだけで敵が倒れていくのだからこれほど楽な仕事もない。判子が少しはみ出ただけでやり直しを食らう書類仕事よりずっといい。

 

「…………」

 

対策委員会、便利屋、そして先生もこちらを見ていた。それも恐怖が混ざった視線で。いやさっさと便利屋を叩けや。いや私のためにとっておいてくれてるとでも解釈しておこうか。

 

というわけでお待たせしました。

 

「ヒッ!」

 

傭兵たちを6割ほど削り戦意を喪失させ、便利屋68の方を向く。

 

「これは……マズいかもね?」

 

「かも、じゃないよ。どうする社長、このままじゃ襲いかかってくるよ」

 

「分かってるわよ、でも……」

 

あははははははははははははは。

 

「■■■がもうすごいことになってるじゃない!声も顔も笑ってないし!」

 

「■■■ちゃんが味方でよかったよ~……いや本当に」

 

もうそろそろだろうか。

 

「あ、定時だ!」

 

「急げお前らさっさと帰るぞ!こんな化け物の相手なんてやってられるか!」

 

「は、はあ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!」

 

「アンタらは奴の相手してないしあとは何とかして!それに日当分の仕事はしてるから文句言うなよ!」

 

「サーセンッシター!」

 

時間もそれなりに経っていたようで傭兵たちは撤退を開始した。最初の無駄口もどうやら無駄にはならなかつまたらしい。でも消化不良であることは否めないため、残った奴らで発散させてもらおう。

 

「社長、これ以上は……」

 

「わかってるわ、退却するわよ!」

 

そう思った矢先に便利屋がこちらに背を向け走り出した。少し暴れすぎたからか、退却までの判断が幾らか早いような気がする。時間を稼いだ上で包囲した方がよかった気がするが後悔は先に立たない。

 

「あっ、逃げるな!」

 

追います。皆さんは先生をお願いします。

 

「ん、任された」

 

体勢を低くしてスタートを切る。互いの運動能力を考えれば追い付くことは可能、誰かしらは捕縛できるだろう。

 

「ただで終わると思った?そんなわけないじゃん!」

 

ムツキがくるっとこちらを向き、手に持っていたバッグをこちらに投げつけた。彼女は日頃から爆発物を携帯している、つまりこれも爆弾。逃走までの時間稼ぎでしかない。

 

腕を顔の前で交差し、そのまま突っ込む。見立て通り鞄は灼熱と衝撃をばら撒きながら爆発、私を飲み込んだ。

 

「■■■!」

 

背後から先生の声が聞こえるが心配無用。爆発でダメージは負ったものの追跡に支障が出るレベルではない。熱風と煙をかき分けながら突き進むと視界が次第に開けてきた。

 

「──捉えた」

 

既にアルが照準を合わせていた。放たれた銃弾は正確に私の眉間を撃ち抜く。予想外の一撃に回避は間に合わず、通常の狙撃と比べて強い衝撃が脳を揺らし足を止めさせられた。

 

「ナイスアルちゃん!これは倒せたんじゃない?」

 

「分からないけど確実に隙ができた。逃げよう」

 

「ちょっとやりすぎたかしら……?悪いけど今は退かせてもらうわ!」

 

「まだこちらを見ています!早く行きましょう!」

 

爆発による衝撃と煙幕による撹乱、そこを強硬突破すると読んでの狙撃。即席にしてはいい連携、重い一撃だった。これは一杯食わされた。

 

「■■■ちゃん大丈夫!?」

 

戦いとしては撤退できた彼女らの勝利となるだろう。だがこの敗北には勝ち以上の価値がある。便利屋68がビジネスパートナーとして信頼できることの裏付けになるし、何よりこの世界における仮説の立証へ一つ近づくことができた。そういう意味では紛れもなく私の勝利でもあるのだ。

 

「なんか一人で笑ってるんだけど……大丈夫なの?」

 

「目立った外傷は無いようにみえますが……」

 

「んー、えいっ☆」

 

思考の海に溺れていたところにノノミが抱きついてくる。警戒が疎かになっていたようで、両腕を首にまわされるまで気がつかなかった。

 

「■■■ちゃん、怪我はありませんか?」

 

大丈夫です。ご心配をおかけしました。

 

「ならよかったです!集中するのもほどほどにお願いしますね?」

 

それは申し訳ありません。ちょっとテンションが上がってしまいまして。

 

「まあ無事ならよかったよ。色々聞きたいことはあるけど、遅い時間だし明日にしよ~」

 

「確かにそうだね、皆戦闘で疲れただろうしゆっくり休んでね」

 

「ほとんど■■■がやってた。私はそんなに疲れてない」

 

「それシロコ先輩だからじゃない?」

 

「これから大変なことになりそうですし、気が重くなりそうです……」

 

この戦いでの疲れを癒すべく、また新たな戦いに備えるべく皆で帰路に着いた。何故か帰り際に私の戦い方について質問責めにあった。他人の銃を使う理由?弾の代金がもったいないでしょうが。

 

 

 

というわけで焼肉です。

 

「いやどういうこと!?」

 

七輪の上でジュウジュウと音を立てるホルモンを口に運ぶ。焦げた味噌ダレの香ばしさと落とされて磨かれた油の旨味が口内で弾ける。やはり焼肉の真髄はホルモンだったか。

 

「じゃあこっちのカルビもーらい!」

 

「待ってムツキ、それは私が育てた肉じゃない!」

 

「こ、こここ、こんなにいいお肉を私がいただいてもいいんでしょうか……?」

 

食べないならこのハラミは私が貰いますね。

 

「え!?あ、やっぱりいただきます!……美味しい」

 

「ねえソウ」

 

■■■で構いませんよ。

 

「……■■■、こうして奢ってもらってる立場でいうべきじゃないんだろうけど、さっきまで戦ってた相手を食事に誘うって正気?」

 

はい。互いに仕事だったから戦ったまで、でしょう?

 

「まあ、そうだけど」

 

なので今はこれまで通りのビジネスパートナーというわけです。であれば一緒に焼肉を食べることぐらいありますよね。

 

「まあ■■■がいいならそれでいいよ。……ここのお肉美味しいね」

 

日が落ち、夜が更けてきた頃。先生と別れた私はアビドス近郊にあるブラックマーケットの焼肉屋に向かった。そこで呼び出していた便利屋68と合流、同じ火を囲み食事を共にしている。味はよかったらしく、少しばかり安心した。

 

「でもいいの?この店みた感じ高級そうだけど」

 

誘ったのは私ですし代金の心配は要りません。安心して食べてください。

 

「いつものことながら太っ腹~!でも驚いたよね、お得意様が連邦生徒会の生徒で、しかも依頼で戦うことになるなんてさ」

 

「えっと、思い切り頭に撃っちゃったけど大丈夫だった?ケガとかしてない?」

 

大丈夫ですよ、こちらも雇った傭兵をタコ殴りにしましたしおあいこです。

 

「二度と敵に回したくないわね……」

 

「でも■■■はアビドスについてるんでしょ?また戦うことにならない?」

 

「先方に連絡を入れてからになるね。失敗したって言うのも気が重いけど」

 

網の上で焼けていく肉を返し、食べ、新たな肉を網にのせる。幸せながらも慌ただしいサイクルの合間に言葉を交わしていく。その中心にあるのは当然今日の戦闘と、これからのことについてだ。

 

「もしかして、■■■がここに呼び出したのって襲撃をやめさせるためとか?」

 

違いますよ。それについては戦闘の前の問答でケリがついたじゃないですか。

 

「えー?じゃあどうして?」

 

別にお願いしたいことがありましてね。

 

「お願いしたいこと……?」

 

網の上の肉を片付けて、タブレットを4人の前に出す。そこに今後の計画と依頼をまとめて表示させた。

 

「今後も関係は継続するってことでいいんだね」

 

ええ。これからも良きパートナーでいられるよう願ってますよ。

 

「ただ意味の分からないものも多い。特定の状況で『電子機器を持ち歩かない』とか『爆発物を持ち歩かない』とか。どういうこと?」

 

今は言えませんが、まあちょっとした検証だと思ってください。

 

「ちなみに、今日の戦闘は知ってたんですか?驚いてなさそうでしたけど……」

 

はい、知ってましたよ。

 

「それも■■■の意図ってことでいいのかしら」

 

ええ、それも一つの検証ですよ。なのであの銃弾については心配無用です。

 

「前から思ってたけどさ、■■■ってだいぶ変わってるよね。報酬がおいしいからあまり気にしてなかったけど、何か目的でもあるの?」

 

その言葉に頷こうとした瞬間、便利屋の面々が私の背後を見て驚愕を表情に浮かべていた。まるで信じられないものでも見たように、肉食獣に怯える草食動物のように。

 

「随分と煙たい場所に呼びつけたものですね。あの日の事といい、そんなに好きなら自分を燃やしたらいかがです?」

 

んなことするわけねーだろ。お前が起こす爆発で間に合ってるよ。

 

「まあいいでしょう、席はここに……ああ、こちらの方々が?」

 

ええ、便利屋68。私のビジネスパートナーとして計画に関わってもらってます。

 

「ちょっと待って■■■、この人って……!」

 

はい、ごく普通のワカモです。

 

「七囚人をごく普通とは言わないわよっ!!」

 

「■■■も変わってるとは思ったけど、まさか狐坂ワカモと繋がってるとは思わなかったな~……」

 

「は、初めまして!こちらのお肉焼けてますっ!」

 

「あら親切に……■■■が選んだにしては美味しいですね」

 

「このためにこの店を選んだんだね」

 

ええ、七囚人と学園非公認の便利屋、一堂に会するには選択肢が少なくて。この店なら情報も漏れにくいですし、周辺の監視網はこちらで把握してますから心配は不要です。

 

「……さて、では本題に入りましょうか」

 

ワカモの言葉で皆の視線が一斉に私へと向けられる。腹の底から沸き上がってくる緊張や不安を烏龍茶と共に飲み干し、口を開く。

 

キヴォトスに起こるであろう異変の数々と、そこへの対策について。是非皆さんの力をお貸しいただければと思いまして、構いませんね?

 

 

 

 

 

それから会議を終え、焼肉を満腹になるまでたいらげた時には日を跨いでいた。ラストオーダーを告げられてからは皿に盛られた肉をひたすら食らい続けていた気がする。アル達はこれでもかと食べていたな、余程腹が減っていたらしい。

 

ディーヴを飛ばしてシャーレに戻り、シャワーと着替え、書類仕事を済ませ眠りについた。流石に焼肉の芳しい匂いを漂わせたまま業務にあたるわけにはいかないし、アビドスにいる間にも仕事は溜まっていく。先生にはこれから働いてもらうのだから、私がやるしかなかった。

 

そうして朝になり、諸々の支度を整え先生と合流する。途中で早くに出ていたアヤネと合流し校舎に向かって歩いていく。早い時間に登校するのも理由があり、借金の支払いの準備をするためだという。労いの言葉をかけると少しばかり疲れた笑顔をみせてくれた。可愛い。

 

穏やかな時間はムツキの奇襲により終わりを告げた。先生の後ろから抱きつき顔を近づける。その様子にアヤネが慌てて引き剥がそうとし、ムツキもメガネっ娘ちゃんと返した。そういえばそういうフェチをもってたっけか。

 

ムツキとしてはアビドス襲撃は仕事のため、それ以外で仲良くするのは問題ないとのこと。更に先生及びシャーレはアビドスのためだけのものではないとも言われ、私も首を縦に降るしかなかった。先生は「ケンカしないで仲良くしてくれると嬉しいな」と釘を刺していたが。

 

プリプリと怒るアヤネを見てムツキは笑い、一瞬視線をこちらに向けてくる。多分「こういうの好きでしょ?」と言ってそうだ。わかってんじゃねえか、と親指を立てることで伝えた。アヤネに見られて若干詰められたが、まあその姿もなかなかに可愛かった。

 

ムツキと別れ、ぷりぷりと怒るアヤネを宥めていると校舎にたどり着く。利子の支払いを終え、対策委員会の皆が集まったところでここ数日に起こった事件の報告と次の一手について話し合った。

 

とはいえ便利屋68についてはある程度話していたし結局は猟犬、狩人は別にいる。そして仔細は伏せつつ裏で取引をしたと伝えると皆からは感謝の言葉が贈られた。正直アビドスに与するようなものではなかったが、知らぬが仏とも言うし問題ないだろう。

 

問題はセリカを拉致した連中が用いた戦略兵器だ。破片を解析した結果、現在は生産されていないものだということが判明した。そしてそういったものが流通する場所といえばブラックマーケット以外に考えられない。

 

ブラックマーケット。あらゆる理由で学校を辞めた生徒が多数存在し、非認可の部活や表で流通しないブツといった危険で溢れている……そんな場所。便利屋68が出入りしていた事実もあり、方針は固まった。

 

次の目的地はブラックマーケット。混沌の坩堝にある手がかりを探しに、私たちは向かうことになった。

 

 

 

 

そこは混沌としているようで、ある種の規律が支配する場所だった。

 

汚れた建造物とゴミに囲まれた空間で駄弁っている生徒もいれば、小綺麗な建造物とその近辺を徘徊する警備もいる。皆が無秩序に自由を謳歌するのではなく、不文律に従いながら自身の欲を発散させる。その様子がどこか窮屈にも思えて、それでも誰かの受け皿になってしまっている。連邦生徒会の一員として、改めて現状を直視した。

 

皆はというと、非日常にあてられて戸惑う様子が見受けられた。これまでアビドスばかり見ていたから、余計に世界を知って、その事実に呑まれている。ただホシノが水族館の話題を出し、それに皆が乗って、そういう会話をしていくと次第に普段通りの雰囲気に戻っていった。

 

そうして歩を進めていると、前方から悲鳴と喧騒がこちらに迫ってきた。小綺麗な制服を着た生徒を不良生徒が追いかけていたが、怒気は感じないため怨恨ではなく誘拐だったりそういったものにだろうと感じた。

 

だから全員シバいた。

 

「あ、ありがとうございます……助かりました……」

 

「ヘルメットって、素手であんなに変形するものなんだね……?」

 

私はまだまだですよ、トリニティには素手で壁を破壊するゴリラがいますから。

 

「嘘でしょ!?」

 

「いませんからね!?」

 

不良生徒が逃げ去ると、追われていた生徒は息を整えながら感謝を述べた。多少乱れながらも整った格好をしている彼女の制服にはところどころ校章が散りばめられている。そのため輩に狙われたのだろう。

 

トリニティ総合学園。キヴォトスにおいて三大学園とまで呼ばれる規模のマンモス校で、複数の分派によって形成される巨大な学校となる。その出自に皆の視線が集まる彼女の顔と名前には見覚えがあった。

 

阿慈谷ヒフミ。ある分派の長から異常な偏愛を受ける自称普通の生徒。彼女もまた「モモフレンズ」というコンテンツを偏愛しており、そのグッズの収集のためにブラックマーケットまで来たという。これで普通を名乗ろうというのだから中々に狂っている。

 

ヒフミの目的であるペロロ様というキャラクターの容姿に皆が微妙な反応をみせるなか、ノノミが話題に乗っかるとヒフミのギアが数段上がった。テンションを上げて語り出す様子は愛らしいものの、推してる対象と現在地がとても似つかわしくないと思う。

 

そうして交流を深めていると、ヒフミからブラックマーケットについて情報が共有された。学園と遜色ないブラックマーケットの規模、この中で利権争いをしている企業の存在、治安機関や銀行といったものまで存在することが語られていく。

 

話を聞いた対策委員会はヒフミに同行するよう要求した。まあ案内を頼みたいだけだろうが、先程助けた恩を持ち出すあたりにアビドスを生きる若者の逞しさを見た。ヒフミは戸惑いながらも了承し、パーティーメンバーが一人増えることとなった。

 

ちなみに先日スズミから貰ったイヤホンを見られて滅茶苦茶に食いつかれた。熱狂的なファンって怖いね。

 

 

 

 

 

それから暫く探し回ったものの、それらしい手がかりは見つけられなかった。皆から疲労がうっすらと出てきたところでノノミがたい焼き屋を見つけ、一旦休憩を挟む流れとなった。

 

たい焼きを一口で食べ皆からドン引きされていると、ヒフミは情報が見つからないことに疑問を抱き始めた。曰く、販売ルートや保管記録を何者かが意図的に隠しているようだ、と。

 

このブラックマーケットにおいて、それはあまりに不自然なことだ。ここに存在するのは悪の秩序、であればそれを秘匿する理由もない。皆が同類であり、同罪の共犯者ともいえるのだから。

 

「例えば、あのビル。あれがブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です」

 

ヒフミが指した先にある闇銀行には、ブラックマーケットで行われた犯罪の15%もの盗品が流れ着くという。あらゆる犯罪で稼がれた金が、また新たな犯罪を生み出す。そんな悪い循環を担う場所だと語られた。

 

「そんなの、銀行が犯罪を助長しているようなものじゃないですか」

 

「その通りで、まさに銀行も犯罪組織なのです……」

 

「ひどい!連邦生徒会は一体何やってんの?」

 

すみません。連邦生徒会長の失踪やら犯罪率の急激な上昇やらで対応が追い付いていなくて。それ以前から存在するものではあるので言い訳でしかありませんが。

 

「あっ……えっと、違っ」

 

「まあまあ、どこにも色んな事情があるんだろうしさ~」

 

自分たちの見ていなかった場所で起こっている事実。彼女たちもアビドスの外でこのようなことになっているとは知らなかったようだ。いや、知るだけの余裕がなかったのだ。

 

重苦しい空気をアヤネの声が切り裂く。武装した集団が接近したと聞き、急いで物陰に隠れる。すると毎回アビドスに集金に来ている銀行員が、闇銀行の行員と金のやり取りをしている場面を目撃した。車にもカイザーローンと書かれており、午前中に見たものと特徴が一致している。

 

アビドスが借金をしているカイザーローンはカイザーコーポレーションの系列で、合法と非合法の間を上手く使って利益を出している。生徒への影響を鑑みて、トリニティの生徒会といえる「ティーパーティー」も目を光らせているとのこと。連邦生徒会としても、私としても同じだ。

 

それはともかく、目撃した内容が示す事実は。

 

「私たちが支払った現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた?」

 

「じゃあ、私たちはブラックマーケットに犯罪資金を提供してたってこと!?」

 

「……」

 

自分たちが泥水を啜って稼いだ金が、犯罪に利用されているかもしれない。皆の屈辱は私には推し量れないほどに大きいだろう。

 

「ですが、まだハッキリとは……証拠も足りません。あの輸送車の動線を把握するまでは……」

 

アヤネの言葉の通り、それだけでは確たる証拠にはならない。かと言って、先程入っていった現金輸送車の走行ルートはオフラインで管理されており掴めない。アヤネが先程入手できなかったことは皆も聞いていた。

 

「……あっ、さっきサインしてた集金記録の書類……。それが証拠になりませんか?」

 

「おお、ナイスアイデアだね~ヒフミちゃん」

 

「あはは……ですが書類は銀行の中ですし、確かめようがないですね。それにセキュリティも強固で警備も厳重となれば尚更……」

 

ヒフミの言葉を聞いた対策委員会の目の色が変わる。自分たちの求めていたものが目の前にあり、それを得るための手段を要している。そうなるのは必然だった。

 

「ホシノ先輩、ここは例の方法しかない」

 

「なるほど、あれかー。そうなっちゃうかー」

 

「……え?」

 

「そうですね、あの方法なら!」

 

「え?……まさかあの方法じゃないよね?まさか本気で!?」

 

「ええと、話が見えないのですが……あの方法とは?」

 

何かを理解した対策委員会と、何のことか分からず戸惑うヒフミ。

 

「残された方法はひとつだけ」

 

「あの方法」を示したのは。

 

「銀行を襲う」

 

会議の時と同じく、覆面をつけたシロコだった。

 

「え……えっ!?」

 

理解が追い付かないヒフミを追い越して、ホシノとノノミはノリノリで覆面を装着。葛藤していたものの振り切れたセリカも覆面を被り、半分諦めたような声でアヤネも腹を括ったようだ。

 

「ごめん、ヒフミと■■■の分の覆面は準備がない」

 

「うへ、そしたらバレた時は全部トリニティと連邦生徒会だって言うしかないねー」

 

「えっ、そんなどうして……覆面?まさか……」

 

状況として理解はできますけど、トチ狂っとるんかお前ら。

 

「それは可哀想ですので、ヒフミちゃんにはこれを!」

 

そう言ってヒフミに被せたのは、額の部分に「5」と書かれた紙袋。制服の柔和な印象と不気味な頭部のアンバランスさに、ラスボスだとホシノがイジリを入れていた。というか先程のたい焼きのものだろうが、なんか油が染み込んでて嫌だな。

 

「■■■ちゃんの分はありませんが……まあ何とかなるでしょう☆」

 

待てゴラ。

 

「ま、まあ何とかするからそう怒らないでよ~」

 

「というか、私たちも銀行の襲撃に……?」

 

「今日は私たち一緒に行動する。そうだよねヒフミちゃん?」

 

「あうう……これでは生徒会の人たちに合わせる顔が……」

 

ブラックマーケットに来てる時点でないのでは。

 

「問題ないわ、悪いのは私たちじゃなくてあっち!だから襲うの!」

 

「それじゃあ先生、例のセリフを」

 

シロコの言葉に先生が頷く。しょうがなく言ってるようには……見えない。寧ろ表情に笑みが見える。乗り気なのかよコイツ、仮にも教職員だろお前。ここには蛮族しかいないのか?

 

「それじゃあ皆」

 

倫理観を捨てた最善の一手が。

 

「銀行を襲うよ!」

 

先生によって下された。ヒフミも拒否できずにいるし、アヤネまで覆面を被って言い笑顔してる。もう終わりや。それでもこの方法しかないのは私にも理解できる。私も腹を括るとしよう。

 

 

こちらブラックマーケットより。

銀行強盗を開始します。私は行きませんけど。

 

「そこは行く流れじゃないの!?」

 

行くわけないでしょうが覆面もないし。まあせっかくですんで手助けぐらいはしますよ。




次回は書きたかったこと書けると思うので楽しみです。
先生よろしく仕事がアホみたいなことになってるので、時間は相変わらずかかりますが。

章の話も書きたいし、4人の時みたいな個別の話も書きたい。ですがそれもハフバに破壊されることでしょう。楽しみです。
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