家に帰るといつも本当の親子のように振る舞う光景を見る。
姉妹格差ではなく従姉妹格差

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従姉妹に乗っ取られる家

私には幼馴染──否、腐れ縁が居る。

具体的には従姉妹だ。

従姉妹は女の子なのだが、おれって言うし、兄達に習って柔道や野球をしている。

別に今の時代、女だからと言って変なんていうのは時代錯誤な事だと断言している。

問題はそんなことではないのだ。

おれが口癖の従姉妹は兄達と遊んでも遊ばなくても私のうちに来ては上がり込んだり、こちらを連れ出したり、やりたい放題だった。

何故それが出来たのかというと、母だ。

従姉妹の母は妹で私の母は姉だ。

同じ年に生まれたが、生まれた月は従姉妹の方が早かったので自称姉を名乗り、私を良く妹という。

母はどうやら小さな頃から姉に迷惑をかけていたのと話していて、それに追随する形で姉妹ごっこを押し付けてきた。

 

本物の姉妹でもないのに、妹なのだから、お姉ちゃんと遊んで来なさいと言い、嫌がる私の意見など聞いてくれなかった。

姉なら妹の意見を反映しろと自称姉、従兄弟に言ったが「おれと遊ぶぞ」と右から左へなんのその。

ぶっ飛ばしたいこと、この上なし。

 

そもそも、母は姉孝行をしたいのなら姉にすればいい。

何故母の過去に関係ない私が母のままごとに付き合わなきゃならないの。

そんな男まさりの姉よりも話を理解してくれたのは兄達の方。

流石に年上だからか、従姉妹を嗜めてくれたが効果なんて全くなかった。

むしろ、母にちくって、それが私に当たる。

 

「お母さんはいつも足を引っ張ってたから、もっと遠慮すれば良かったと後悔しているの」

 

(……で?)

 

といった感じでムーブされる。

良い加減母もいとこも無視して父のところへ逃げ込む。

私にだってやりたいことがあるんだからほっといて欲しい。

年頃になると男まさりが女を出してきてイラっとしたこともある。

 

「可愛いなその服」

 

母の前で私のきている服を褒めたら、ちらちらと見てきてウザイったらない。

母が私のことを通さずに「従姉妹ちゃんも女の子なんだから似合うわよ」と言う。

 

「でも、おれ、男っぽいって言われるし」

 

そりゃ、髪の毛を自分の意思で短くして、男の子の格好しておれって言われたら申告しない限り大体そう思われる。

男の子の集まるところばかりに居たら、誰も女の子が混ざっているなんて知らないし。

シチュエーション的に当然の結果なのだが?

 

「あら、そんなことないわ。そうだ!その服、貸してあげなさい」

 

「は!?」

 

この服、わたしの小遣いで買ったんだけど。

そんなに可愛いの欲しいなら今すぐ服屋に行け。

10分で行けるから試着でもしろ。

 

「いやだ」

 

「意地悪言わないの」

 

「意地悪じゃない。他にも服があるからそっち渡せば良い」

 

どこが意地悪なのだと呆れる。

当たり前の主張だ。

母は相手を優先して私を蔑ろにする。

タチが悪い。

 

「私が小さな頃はいつも姉のお下がりだったのよ。新しい服を着れたのだから、貸してあげなさいな」

 

「母さんが良くても私は嫌なの」

 

「なんて子なの。来月のお小遣いはなしよ」

 

「分かった。お父さんにも理由を言って母さんがなしにしたって言うから。好きにすればいい」

 

だれが聞いても正しいのは私の言い分だ。

無理を通して、通らなければ脅す。

恐喝だ。

その日はひたすら拒否して自分の部屋へ逃げた。

その夜、父に母は子供部屋を使わないように訴えたが、そんなことで使えないようにする母を叱った。

当たり前だろと幼いながらに母の頭の悪さに辟易。

 

「はぁ。どうして母さんは私を馬鹿にするの?私は奴隷じゃないよ」

 

「な、なにを」

 

母が私のエグいセリフにどぎまぎする。

父は母の酷さを知ったから言葉を挟まない。

 

「私はね、一人の人間なの。母さんが拾ったり捨てたりできるお人形じゃない」

 

「捨ててなんかないわ」

 

「そうかな?私が買った服なのに、まるで私のものじゃないみたいに勝手に進めてたよね。いやだって言ったらこづかないなしって、会話が可笑しいんじゃないの?急になんでお小遣いなしになるの?私はなにか意思表示したらいきなり罰をつけなきゃならないこと言ったの?じゃあ、貸してあげてって意見を言った母さんもなにかを失わないと釣り合わない」

 

「口答えするなんて」

 

「都合が悪くなると出てくる言葉が出ちゃった」

 

すかさず横槍を入れると言葉を詰まらせる。

論じても受け入れる気がない会話ほど、無意味なものはない。

 

翌日、私は友人のところに避難した。

従姉妹が来てトラブルになるたびにお世話になっているので割とスムーズに行なわれる。

 

「聞いてー」

 

「言われなくても察した」

 

キリッとした顔で答える男の子に頬を膨らませる。

 

「理解してても聞いてよ」

 

「中身変わんねェよ」

 

「変わらないけどちょこちょこ変わるから」

 

と、話していると彼の妹がカルピスを出してくれた。

 

「ナツヤの妹のカナコー、ナツヤが話を跳ね返してくる」

 

「まあ、変わり映えしないから」

 

「手を変え品を変えだからね」

 

二人に怒気を向けないように気をつけむつつ、愚痴る。

今の私はモヤモヤしているから。

 

「早く大人になりたい」

 

「まだまだ先だ」

 

ナツヤは嫌でも現実を突きつけてくる。

そんなの私だってわかってるよー。

父に母を抑えるように言おう。

最終的には貯めに貯めた証拠の動画を親戚達にばら撒く腹積りをしている。

父にも相談してあるが、弱い。

そんな事では抑えられまい。

ずっと父が家にいるわけではないから。

 

「はぁ、私の家なのに私の家じゃないよあんなの。お母さんの娘なんて好きでなりたかったわけじゃないのに」

 

母は私を自分の娘と思っているから好きにしても良いと思い込んでるな。

 

「元気出して」

 

ナツヤの妹のカナコが慰めてくれる。

従姉妹は無意識にうちの母が誰よりも自分を優先してくれると知っているから、うちに良く来るのだろう。

 

おれ、おれ、言っているのに女扱いされない自分に酔っている。

私は個人的に一人称をおれというあの子に近付きたくない。

もう直ぐ中学生になるのに、今のままでは高校もおれというつもりなのか。

友達でもない相手と話したくない。

 

「母親を奪ったのに次は服。この流れは多分……気をつけないと」

 

防犯対策に自分の部屋に鍵をつけていて、小物入れなどにも鍵をかけてある。

そういうのはYaTubeで見たりしているからね。

 

防犯意識は持ち過ぎていても足りない。

特に、人のものをアホの如くあげようとする親が居るからねえ。

 

ナツヤ達と別れて家に帰ると楽しそうな声がリビングから聞こえて、苦い薬草を食べた顔をする。

 

なんせ、本当に楽しそうだからだ。

だってさあ、普通、いとこの服を譲らせた事に対する罪悪感を普通は持つでしょ。

 

でも、あの子はそんなこともなく、家に来ている。

 

(気持ち悪い)

 

本物の母親が居るのに、他人の母親にチヤホヤされる環境。

 

(早く大きくなりたい)

 

この環境からいち早く抜け出したい。

 

数日後、部屋に向かうと従姉妹が部屋の前にいた。

何で居るのかと聞くのもアホらしくて無視する。

でも、扉の前に居たら邪魔なのに。

 

「部屋に入りたいんだけど」

 

「なんで?入らないで」

 

「え」

 

ダメって言われると思わなかったのかな。

バカが。

 

「でも、おばちゃんは入って良いって」

 

「いやいや、わたしの部屋なのに私以外が決めちゃダメでしょ。プライバシーもクソもないでしょ」

 

入って良いって言ったから部屋の前に居たのか。

鍵をかけてなかったら入られてたの?

ゾッとする。

 

「頭おかしいよね、貴方って」

 

「!?」

 

びっくりしていたけど、こっちのセリフ。

 

「この間の服でも勝手に泥棒しようとしてたの?本当、神経死んでるねー。人の部屋に入ろうとして、鍵がかかっているのに、入りたいんだけどってなに?どうぞって言うと思ってたの?」

 

一息吸う。

 

「人を舐めるのも大概にしろ。害虫」

 

「っ」

 

酷い言葉だったかもしれないけど、空気を読めてないこの子の方がわたしの心をこれでもかと滅多刺していた。

 

親の仇のような目を見た子は、じりっと後ずさる。

 

親の仇どころか親とグルになっている仇だ。

ほんと、私の立場ってすごく不安定。

今と現在、親のお金がないと生きていけないのを自覚しているからこそ、いつその母親が牙を剥くかとか。

そういうのを気にして暮らすのって精神的にやられるんだ。

 

「ちくりたければちくればいいよ。今回のこと。私も貴方のお母さんに言うし」

 

おかしいのは自分の母親であってこいつの親は平凡な価値観と感性なので、人の部屋に入った事は怒られる。

 

「か、帰る」

 

「2度と来るな」

 

自分の家があるのに、うちに入り浸り過ぎじゃないの、こいつ。

 

「服だって親に買ってもらえよ寄生虫」

 

お前の母親だって、五体満足で存命しているだろう。

見送った2日後、何故か実の親に怒られていた。

 

「もういいよ。親子ごっこするのに付き合わせないで」

 

従姉妹に暴言を吐いたことにお怒りらしい。

 

「縁を切るにはまだまだ先になるけど、切れる年齢になったらすぐに切るんだから、母さんのおままごとに付き合うギリもない」

 

縁を切るというインパクトに絶句する親を置いて従姉妹のところに電話をしてその母親に顛末を告げる。

メアドも知っているので証拠も添付しておいた。

謝っていたけど、今後許す事はない。

ついでにナツヤのところに行った。

 

 

 

母親は話しかけてくるが無視していた。

今更なんとかしようとしても無駄。

父は離婚を計画しているらしい。

別居を言い渡したが凄く嫌がるとか。

 

「ナツヤ、今暇?」

 

今日は中学の中間テスト終わり。

 

彼はこちらを見て暇じゃないがと言う。

 

「暇でなくてもお願いしたい事があるんだあ」

 

「だから暇じゃねえよ」

 

ナツヤはパタンと本を閉じた。

それを見てなんだかんだ、話を聞いてくれるんだって頬が緩む。

 

「近々、うちって離婚するんだ」

 

「まぁ、破綻してるもんな色々」

 

「そそ、母さんの依存が酷くて大変。叔母さんの方に行かなかったのは単に叔母さんが働いてて会えなかっただけだし」

 

「悲しくなるくらいなら、話すな」

 

ポロポロ泣きながら話してしまって、つい、彼に気をつかせてしまう。

ごしごしと腕を振る。

 

「ごめんごめん」

 

「私は最初からいらない子だったなって思ったら」

 

私は自分の子供だからどうでも良くて、姉の子供という姉の血を受け継ぐ子が欲しかっただけ。

別に血を見るならば姉の子供は他に居る。

でも、女系の子供が一番理想的で。

同じく母の姉の血を持つはずの私が適当に扱われたという意味は、私にとって忌むべきもの。

そんなにその子が良かったのなら、私を産まずに姉の子をもらえば良かったのだ。

 

「私はあの子を恨み続ける」

 

「恨めばいい」

 

「子供だったからなんて言い訳されても、許す日は来ない」

 

従姉妹は同じく家族が居る。

家族を離散させることに加担した罪は重い。

 

父と母の離婚が決まった頃に聞いたことだが、従姉妹は己の本当の母親にめちゃくちゃ怒られたらしい。

私の母に甘やかされて、性格まで甘ったれて人に迷惑をかけた事に泣いたのだと。

 

従姉妹はそれを悪いことと思わなかったけど、数年後従姉妹と久しぶりに会う時には小学校の記憶があまりなく、過去の罪などなかったかのように話しかけてきた。

 

「話しかけてくるなんて、なにを考えてるの?」

 

高校生になっても甘ったれた性根は治らなかったらしい。

私は憎いという気持ちを隠さずに彼女へ呪詛を吐く。

 

「私は貴方のせいで大変だった時間を忘れたことなんてないんだから」

 

「は?そんな昔のこと言わないでよ」

 

「昔だろうと時効ないよ。許されてない」

 

「貴方のお母さんが変な人だっただけじゃん」

 

「一緒になってやらかした貴方も同罪です」

 

従姉妹がお母さんッと叫び、母親が居る場所へ向かう。

彼女には助けてもらえる母親が居るなんて羨ましいと止めを刺しにいった。

叔母さんは娘がやったことがことなので、気まずそうに黙っていた。

 

 

 

 

「あー!スッキリした」

 

高校の制服に身を包むナツヤが剣道の剣を拭いていた。

 

「オツカレさん」

 

「ん!」

 

父は母と離婚し再婚した。

今度の母親は実の母親なんて吹き飛ばすくらい仲が良い。

今は私も母とは離れて父と暮らしている。

義理となった母は私を邪険にせずに、実の母よりも母親らしく可愛がってくれる。

運が良い。

幸運だ。

 

アホの従姉妹も実の母にこっぴどく怒られている。

別れた妻が今まで通り従姉妹を可愛がるのだと思っていたけど、そうでもなかった。

別れたのは貴方のせいよ!なんて子供に責任転嫁するクズ行動に流石の従姉妹もびっくりしていた。

私もびっくりである。

実の娘を犠牲にしてまで可愛がった癖に。

 

「帰りさ、ファミレス行こうよ」

 

「季節限定のケーキでも出たか?」

 

「違う。季節限定のジュース」

 

「対して差なんてないだろ」

 

ツッコミを受けて笑う。

二人してファミレスに向けて歩き出す。


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