あなたはこのメッセージが解けますか?
それが始まったのは、レーダーステーション53での長い夜だった。
僕はラース・エリギアン博士の隣に座って、毎晩のように虚空を見つめていた。
僕たちの任務は、ただ銀河の果てから送られてくる微弱な信号を記録することだった。
それは単調な仕事で、無限の空白と静寂の中でただ過ぎ去っていく時間に過ぎなかった。
だが、その夜、何かが違った。
「何だ、これ?」
ラースがスクリーンに目を凝らし、眉をひそめた。
僕は彼の横に座って画面を見た。
そこには、見慣れないコードが並んでいた。
まるで無秩序な文字の羅列だったが、何か強烈な意図を持っているように見えた。
『CIEQSFTTLFACQTAAEIWRAFGYTVKIMVDNGNCRLHVC』
それが僕たちの受信した信号だった。
「解析できるか?」
僕が尋ねると、ラースは静かに首を振った。
「ただのノイズじゃない。何か、もっと深い意味がある」
その日から、僕たちはその信号を追いかけ始めた。
それがどこから送られてきたのか、誰が送ったのか、全く分からなかった。
ただひたすら、そのコードを解読するために、あらゆる手段を試みた。
そして、数週間が過ぎた頃、僕たちはようやくその一部を解明した。
それは、メッセージだった。
『私はリュンテア。聞こえていますか?』
僕はそれを見た瞬間、心臓が一瞬止まったかと思った。
リュンテアという名前に、どこか懐かしさを感じたのだ。
だが、それがどこから来たものなのか、僕にはまだわからなかった。
ラースはその日も深夜まで解析を続けた。
そして、僕たちは次第に、そのメッセージがひとつの壮大な愛の物語を紡いでいることに気づき始めた。
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リュンテアは、数光年彼方の惑星で生まれ、同じくレーダーステーションで働いていた科学者だった。
彼女は、僕たちが受信したコードに彼女自身の人生の断片を詰め込んでいた。
彼女の恋人、タールスという名の男性は、宇宙の反対側にいた。
二人は直接会ったことはなかった。
タールスがいたのは、遥か彼方の星、フェリスティアだった。
二人は偶然、互いの信号を拾い合い、そのまま通信で愛を育んでいた。
「彼は私を見たことがない。私は彼に触れたこともない。それでも、彼を愛してる」
とリュンテアはメッセージの中で言った。
僕は、画面越しにそれを読むたびに、何かが胸に引っかかるのを感じた。
彼女が語るその静かで、遠くて、だけど強烈な愛が、僕の中にまで染み渡ってきた。
彼女とタールスの物語は、宇宙の無限の虚空を越えて、お互いを求め合うものだった。
会えない、触れられない。
それでも二人は通信を重ね、互いの存在を感じながら日々を生きていた。
だが、メッセージが進むにつれて、二人の物語には終わりが近づいていた。
リュンテアは、ある日タールスからの通信が途絶えたことを告げた。
彼が乗っていた船が、銀河帝国との戦闘に巻き込まれたらしい。
それ以来、彼女は彼の声を一度も聞いていなかった。
それでも、リュンテアはタールスが生きていると信じ、彼の返事を待ち続けた。
「私は待っています。どれだけ時間がかかっても。私たちの距離がどれだけ広がっても、彼は私の中に生き続けています」
と彼女は言った。
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ある晩、僕はラースにこう言った。
「これがただの古い記録だったら、どうする?」
ラースはしばらく黙っていたが、やがて言った。
「関係ないさ。彼女はまだ待っている。僕たちがその最後のメッセージを受け取るまで、彼女の物語は終わらない」
それからさらに数日が過ぎ、ついに、僕たちは最後のメッセージを受信した。
リュンテアの言葉は変わらなかった。彼女は最後までタールスを待ち続けた。
そして、タールスが戻ってくることを信じて、彼女は眠りについた。
それが、彼女の最後のメッセージだった。
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僕は、その夜レーダーステーションの窓から、広がる星々を見つめていた。
リュンテアとタールスの物語は終わったのかもしれないが、宇宙のどこかで、彼らの魂はまだ星々の間を漂っている気がした。