甲龍歴413年



ロアの街に住むエリス・ボレアス・グレイラットはもうすぐ9歳になる



変わらずに毎日を自由奔放に過ごす彼女だった



そんなある日、ふと思い出す



「そうだわ、もうすぐこの家にルーデウスが来るのよね!?」






これは、二週目の、


         愚かで幸せな、エリス・グレイラットの物語――









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web原作のその後的な話です

エリスしか勝たん!

原作未読の方は回れ右で読破にGO!!




「Dearest ~最愛のあなたへ~」  無職転生XッターSS二次創作小説

 

 

 

 

 

 

 

 

Dearest

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、愛おしき既視感――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリスは今年、9歳になる

 

 

 

朧げな面影を胸に、8歳までを無為に過ごしていた

 

 

 

そうして唐突に思い出す

 

 

 

 

「そうだわ、もうすぐルーデウスがこの家に来るのよね!?」

 

 

 

 

彼が来た時に、たくさん驚かせてやろう

 

 

 

そう思い、剣だけでなく算術と舞踏を必死に修練した

 

 

 

だが、ルーデウスは来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

納得がいかず、父フィリップに問いただした

 

 

 

 

 

「パウロ、の息子は……」

 

 

 

 

 

父の濁した言葉にすべてを悟る

 

 

 

そんな子供は、最初からいなかったのだと

 

 

 

そして迎えた10歳の誕生会

 

 

 

自分の傍に、彼はいなかった

 

 

 

失敗らしい失敗はしなかったが、無味乾燥なものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12歳――

 

 

 

 

 

 

 

 

何も起きなかった。起きる筈も無かった

 

 

 

ギレーヌから剣神流上級を認可されるも、特に嬉しくもなかった

 

 

 

そこからはよく覚えていない

 

 

 

 

 

 

気が付けば15歳――

 

 

 

 

 

父と祖父から社交界に連れ出される

 

 

 

ノトス・グレイラットを名乗る、ニヤついた少年に引き合わされたが――

 

 

 

エリスにしてみれば、ルーデウス以外のグレイラットは全て偽物だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20歳になった時、エリスは結婚をしないと宣言した

 

 

 

 

 

 

 

執念深く言い寄ってくるノトス家の青年にもそう告げた

 

 

 

それから、エリスは実家を後援として、とある事業を興した

 

 

 

有能な冒険者や有為な若者を雇い、世界各地の情報を集めたり

 

 

 

街の治安維持等を業務とした派遣組織

 

 

 

 

 

 

――組織名を、ルード傭兵団と名付けた

 

 

 

 

 

 

傭兵団の規模は年々大きくなった

 

 

 

ある時、とある腕利き女冒険者二人組の噂を聞き、自ら赴いた

 

 

 

懐かしい顔を見て、エリスは思わず二人を抱きしめてしまう

 

 

 

数々の迷宮を踏破する歴戦の腕利き冒険者

 

 

 

ロキシーとシルフィエットの二人組であった

 

 

 

迷わず二人を自分専属として雇い入れた

 

 

 

 

 

 

 

青と緑の髪を持つ冒険者二人組を世界中に派遣した

 

 

 

 

目的は幾つかあった

 

 

 

一つ目、これは「ヒトガミ」という単語をバラ撒く事

 

 

 

これはあの"龍神を"釣る為の撒き餌

 

 

 

そしてもうひとつ――

 

 

 

 

 

 

”ルーデウス”という名を持つ少年の捜索だった

 

 

 

 

 

 

龍神は想定よりも早く接触してきた

 

 

 

身の毛もよだつ気配は変わらない

 

 

 

だが即座に攻撃されない事は知っていた

 

 

 

視線だけで人を殺しそうな鉄面皮に向け、エリスは話を切り出す

 

 

 

ルーデウスという存在を探している事

 

 

 

もし出会っても彼に手を出さないで欲しい事

 

 

 

見返りに”ヒトガミ”という語彙を含め、自分の知る情報を全て渡す事

 

 

 

 

 

 

龍神は無言のまま去っていった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年月は瞬く間に過ぎていった

 

 

 

 

 

 

 

傭兵団支部は世界各地に広がっている

 

 

 

スペルド族の村も見つけた

 

 

 

村は謎の奇病に冒されていた

 

 

 

傭兵団に所属している旅慣れた吟遊詩人の少女をその村に派遣

 

 

 

とある魔王から仕入れた特効薬にて治癒させた

 

 

 

詩人はそのまま村で暮らすと言い、冒険者を引退したという

 

 

 

 

 

 

 

その村に、ルーデウスの噂は微塵も無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傭兵団の存在は、アスラ王国でもかなりの影響力を持つようになっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある上級大臣から執拗に妨害が入った

 

 

 

 

 

 

 

 

が、いつの間にかそれも消えていた

 

 

 

風の噂によると、胸を貫かれて殺害されたという

 

 

 

また、近々王位交代するとも耳にした

 

 

 

次代は女王になるらしい

 

 

 

だが、そんな些事はエリスにとってどうでもいい話だった

 

 

 

 

 

 

 

傭兵団と王国との折衝役は、グレイラットの名を持つ、気だるげな女騎士だった

 

 

 

エリスは彼女を強引に引き抜き、傭兵団の中枢に置いた

 

 

 

水を得た魚のように働く彼女を見て、エリスは少しだけ肩の荷が降りた気がした

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ルーデウスの行方は、杳として知れなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ手を広げても、あの男の影は微塵も見えなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

年月は過ぎ、小国の首取り王子と面識を持った

 

 

 

 

更には天空城の主の知遇をも得た

 

 

 

しかし誰もルーデウスを知らなかった

 

 

 

エリスはふと不安を覚えた

 

 

 

この世界は以前とほぼ変わらない

 

 

 

なのに、彼の存在だけが抜け落ちている

 

 

 

 

 

まるで、指の間から砂が零れ落ちる様に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供達の声で微睡から醒めた

 

 

 

 

 

机の上の書類から目を離し、窓の外を眺めやる

 

 

 

 

広い芝生の庭で、幾人もの幼子が戯れていた

 

 

 

そこは、ルード養護児童院

 

 

 

戦災孤児や奴隷として売られていた子供達を保護している施設

 

 

 

老境に差し掛かったエリスの肝煎りで作られ、子の無いエリスは全員を養子としていた

 

 

 

老いに霞む目で、子供らの中に愛おしい面影を探す

 

 

 

しかし、最近はその面影も朧気になっていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリス・ボレアス・グレイラットが死去したのは、彼女が70歳になった頃だった

 

 

 

 

 

昼頃、少し休むと言って自室の寝台で横になり、女中長が様子を見に行った時には息を引き取っていたあとだった

 

 

 

 

長らく傍で働いた女中長は涙ながらに語る

 

 

 

「安らかなその御顔は、薄っすらと微笑んですらいました」と――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王国に多大な功績を残した偉人として、いとも盛大なる国葬が執り行われた

 

 

 

5千人を超す人々が弔問に訪れた

 

 

 

また、参列した貴人のその中には、龍神や甲龍王らの姿もあったという――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――きっと、夢を観ていたんだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愚かで、幸せな夢を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方しかいなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他には何もいらなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから生き急いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生命と引き換えでも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただもう一度逢いたかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣き叫ぶほどに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が狂いそうなほどに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつか、貴方は言っていたわね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生まれ変わりはある、って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっと、私は生まれ変われないのでしょうね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって、この世の何処にも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方がいないのだから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリスは微睡んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し生きるのに疲れてもいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと懐かしい匂いがした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頬に柔らかい温もりを感じる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し、重たい瞼を開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼんやりとした瞳に、微笑む愛しき少年の顔が映った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……随分と、待たせたわね、ルーデウス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう呟くと、エリスは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の吐息を漏らした――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                ー完ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 












はい、エリスがもしルーデウスのいない原作世界に転生したら……?

というイメージで書きました


毎回エリス成分多めで二次書いてますが、集大成みたいな感じです


燃料としては、火の鳥鳳凰編や某邦画から、ですね。
死んだ後にも愛しい人に逢いたい
それが自分の創作モチベーションです
読んで頂きありがとうございます

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