あまりにもハルカが挙動不審でお金にも困っているようだから、こっそり社長として手助けしようとして、悪いとは思いつつも入金するために口座を見てしまったの。
何も無かったの。本当に、何も入っていなかったのよ。
ハルカはきっとヤバいことに巻き込まれているんだわ。
わ、私はどうすればいいのかしら。そ、そうだわ、先生に、先生を頼りましょう。
待っていてね、ハルカ。私が、私達が必ず助けるから。
「先生!!」
声と共にシャーレ執務室のドアがひしゃげる音がする。
「ま、ままま、まずのよーー」
書類で埋もれた机から顔を上げると、陸八魔アルが立っていた。
「ハルカが、ハルカが、ヤバいのよぉぉ」
いつにも増して語彙力が無い。
今月でドアが壊れるのは二回目だ。
リンにはもう「次は無い」と言われている。
これはきっと、自腹だろうな。
「ハルカが事件に巻き込まれてるのぉぉぉ」
アルの絶叫は止まらない。
どうやら生徒の一大事らしかった。
「急ぐのかい?」
「わ、わ、分からないわ」
分からない。
分からないのならば、仕方が無い。
アルは素直な子だ。
アルが分からないと言うならば、本当に判断が付かないのだろう。
ならば私は、聞くしかない。
私まで慌てたところで事態は好転しないのだから。
今すぐに駆けだしたくとも、私は、聞くしかないのだ。
「聞かせてくれるかい。状況を」
少しして落ち着いたアルは語りだす。
ある頃からハルカかがおかしくなってしまったらしい。
外に出ていくことが増え、趣味の雑草栽培も疎かなり、連絡の取れない時が多くなった。
最近では、早朝から深夜まで出歩いていると。
おかしいとは思いながらも、ハルカにそのことを聞いてもはぐらかすばかり。
そして、アルは見てしまった。
ハルカの預金残高を。
いくら便利屋とは言えども、事務所を引き払って住処が無くなることはあるとは言えども、それでも収入はあり、報酬は均等に分配している。
それは経営顧問の私も知っている。
だからアルはハルカも自分と同じぐらいの貯金がある、と思っていたらしい。
無かったのだ。
ハルカの口座には何も。
……なにも!!!な"かった……!!!!
ドン!!
……どこかで銃声が鳴った。
生徒が暴れているらしい。
だが今は、それどころではない。
…話を戻そう。
無かったのだ。
ハルカの口座には何も無かった。
0円。
そう記載されていたらしい。
私にも覚えがあるから分かる。
きっとそれは金に困ってのことだ。
0円の口座を作ることは難しい。
ATMでは硬貨を引き出すことができないのだから。
ならば、どうする?。
振り込むのだ。
複数の口座にある細かい金を一つの口座へ。
そしてその分だけ手数料を払う。
それでも…、一つの口座にまとめたならば、引き出せるだけマシだからやる。
………困窮したことのある人間しか知らない話だ。
アルが目にしたのはその最中に使われた口座だろう。
現実は想像の上を行く。
そうまでするなんて、並大抵のことではない。
事態はより深刻な様だった。
「巻き込まれてるね。何かに」
「そ、そそ、そうよね」
もはや手段を選んでいる暇は無い。
「少しだけ、席を外すよ。すぐ戻る」
アルにそう告げて、執務室を速足に出る。
本当なら、ハルカのスマホにでもアクセスして貰って、通信記録を探るのが一番だろう。
でも、それは…、ハルカのプライバシーに触れすぎる。
何より、もし取り返しのつかない状況なら、そんな証拠があってしまっては、ヴァルキューレが出張ってくるかもしれない。
私の手で終わらせるには、これを取り返しのつくことにするためには。
必要な情報の最低限は…ハルカの位置情報だ。
これまでの位置情報記録じゃない。危険な場所への移動している記録があれば、それもまた証拠になってしまう。
今、ハルカがどこで何をしているか、その情報だけでいい。
むしろ、それ以上は不要だ。
……頼るべきはヴェリタスか。
現部長を除き、ヴェリタスには、あまり言いたくないが問題行動を起こす子が多い。
脛に傷を抱えている彼女達なら、余計な事は言わないはずだ。
ただ、問題がある。
ヴェリタスは別件に取り掛かっている。部員をフル稼働させて。
それを差し置いて、私の頼みを聞いてもらうには…。
腹はとうに決まっている。
迷っている時間すら勿体ない。
だから私は席を外したのだ。
これは、アルには聞かせられない話だから。
「しかし先生は凄いのね。ハルカの居場所をこんなに早く特定するなんて」
貰ったハルカの位置情報を元に、私達はハルカの後をつけていた。
……屈託の無いアルの笑顔が痛い。
全てを心に留めて置くのは無理だった。
「ヴェリタスに頼んだんだ」
嘘では無い。
嘘では、断じて、ない。
「それでも凄いわ。確かヴェリタスは今忙しかったはずよ。なのに頼みを聞いてくれるなんて先生の人徳でできることだわ。やっぱり先生は一流ね」
アルはどうやらヴェリタスの現状を知っていたらしい。
さすがは、便利屋の社長だ。
……違う。
そうじゃない。
そうじゃないんだ、アル。
ヴェリタスが忙しい事は知っていた。
だから、私は、対価を支払ったんだ。
私はDLsiteへの、ハッキングを……許可した。
漫画、シチュエーションボイス、ASMR。
R-指定の付いているものまで。
全て、アクセスを許可した。
技術的には可能でも、人理的にできない領分がある。
彼女達もそこは自重していた。
私はそれを解き放ったのだ。
「先生、怖い顔をしてるわ。大丈夫、ハルカはきっと無事よ」
生徒に慰められるなんて、私は先生失格だな。
アルには……知られたくないな。
私がカブトムシに性的興奮を覚えるなんてことは。
「そうだね。例え大丈夫じゃなかったとしても、私が大丈夫にするよ」
この言葉に偽りは無い。
もっと、ハルカの挙動に集中しなくては。
一挙手一投足を見逃すことは許されない。
「アル、多分ハルカは右に曲がる。先回りしておこう」
「凄すぎるわ先生、先生は尾行術も修めてるのね!!」
そんなものではない。
尾行され過ぎて、手口に詳しくなってしまっただけだ。
四六時中誰かに監視される日々。
その中で開花した、開花してしまった技術。
その証拠に今も私はつけられている。
多分、動きの癖からしてワカモだろうか。
「あ、まって、ハルカが怪しい建物に入るわ!!!」
怪しい建物。
ネオンで彩られた目を引く鮮やかな看板。
立ち込める煙草の匂い。
その横に広がる汚い駐車場。
ハルカが入ったのはパチンコ店だった。
「……とりあえず、建物を見張ろうか」
「それなら、あのビルの屋上にしましょう。高さ自体はそこまで無いけど意識を向けにくい場所にあるし、建物の出入り口が全部見えるわ」
本職の狙撃兵は頼りになった。
ただ、分からない。
もしかして尾行に気づかれたか?
いや、それはない。
私の尾行は完璧だったはず。
なら、中で何か取引を?
しかし、それもないはずだ。
あのパチンコ店は優良店だ。この平日の昼間でも一般の客は多くいるはず。
そんな中で悪事を働くリスクは大きい。
………
まとまらない考えを振り切って、私はアルと屋上に向かった。
「ぜんぜん動きが無いじゃない」
「そうだね」
そうとしか言えなかった。
もう一時間は待っている。
出口からハルカが出てくることはない。
見落としは…無いはずだ。
「しかしどうしてパチンコ店には窓がないのかしら。全然中の様子が分からないわ」
「それはお店の配慮だよ、アル。誰だって自分が賭博に興じているところを見られたくはないものさ」
パチンコ。
…パチンコ。
ハルカはただパチンコを?
いや、それならば、しかし、ないとも言い切れない…か?
「待って先生、音がするわ」
微かに聞こえる風切り音。
それは頭上からする。
「警戒用のドローン?!撃ち落とすわ!先生、隠れ…」
アルが撃つより早く、私が隠れよるより早く、ドローンは小包を落として消えた。
包みにはヴェリタスと書かれている。
「先生、これ……」
ヴェリタス。
ヴェリタスが協力を?
ただでさえ忙しいはずなのに?
…寒気がする。
私は、払い過ぎてしまったのか?
対価を…。
「多分、おつりだよ。危険なものじゃない」
「おつり?よく分からないけど、先生がそういうなら大丈夫なのよね、開けるわよ」
中には、中にはサーモグラフィゴーグルと。
小型の虫、ゴキブリが入っていた。
虫は動く気配が無い。
意を決して手に取ると、それは精巧な作り物だった。
スマホの通知音が鳴る。
通知はアプリケーションのダウンロードを告げるもので、酷く動悸がする。
あいつら、まさか…。
いや考えない様にしよう。
ダウンロードされているアプリの名称は「Gコントローラー」
分かりやすい、名前だった。
「サーモゴーグルがあるじゃない。これなら建物の中の様子を見れるわ」
「いや、多分役には立たないよ。パチンコ店は熱気がこもってる。それよりも飲食物の持ち込みができてそこから発生しやすいGの方がいいはずだ」
ダウンロードされたコントローラーを立ち上げる。
あまり機械に強くない、私にも操作しやすいものだ。
その心遣いに震えた。
私はどれだけ、多くを支払ってしまったのだろうか。
「Fly」と書かれたボタンを押すと、Gは飛翔した。
スマホの画面にはGの視界が映っている。
私は、私は…。
どこかで私を見ている気配が増えた。
アルの他にこの屋上には二人いる。
それに気が付いていながらも、そんなことに意識を割く余裕は無い。
「いたわ、ハルカよ」
アルと画面を覗き込む。
ハルカはエヴァを打っていた。
スマホをいじりながら。
その姿は堂に入っている。
「ま、まさかパチンコを打っているの?」
その、まさかだろう。
演出が入った。
ハルカのスマホをいじる手が止まる。
これは…期待値が高い。
………
……
…
外れた。ハルカのハンドルを回す手が若干、荒ぶる。
「せ、せせせ、先生、ハルカがあまりにも堂々とパチンコ店に入るから忘れてたけど、よく考えたら私達未成年が打つのは違法よね?!」
「いや、合法だよ。娯楽性の高いパチンコはね。ギャンブル性の高いスロットはまだ駄目だけどね」
私が赴任してからしばらくして、キヴォトスでは謎の法改正が行われた。
成人年齢が20から18に引き下げられ、それに伴って結婚可能年齢も16歳に下げられた。
何の狙いがあったのか、誰の仕業かは分からない。
その余波でパチンコも16から、スロットは18歳から遊戯が可能になって……。
いや、待て、確かハルカは15歳だったはず。
やっぱり、これは違法だ。
けれども。
だけれども。
あの優良店が営業停止に追い込まれるのは忍びなかった。
見なかったことに…しよう。
「アルは合法だよ。今すぐにでも打ちに行ける」
嘘は言っていない。
アルは確か16歳だったはずだから。
「そ、そうなのね。ハルカが道を踏み外してしまったかと心配したわ」
またハルカの台で演出が入った。
この演出の期待値は、低い。
今度はスマホをいじるハルカの手が止まらなかった。
ハルカはスマホを触り続ける。
ハルカは、伊草ハルカは分かっている。
パチンコを理解っている。
この打ちこなしは、一朝一夕で身に着くものではない。
彼女の口座の理由がやっと分かった。
「先生、これはどういうことなの?」
「今、ハルカの持球は少ない。だが、今打つのをやめれば小景品と交換できる。つまりは2000円勝ちだ」
「よく分からないけどハルカはパチンコで勝っているのね」
「いや、多分違う。ハルカはノンストップで打ち続けている。これは憶測と感だが、あの台は回らない台だ。時間的にあの持ち球数ならもう二万は使ってる」
「全然勝ってないじゃない??!!!」
「いや、勝ちだよ。だって現金を持って帰れるんだから」
「どういうことなの…」
あと三十発は打てる。その後の行動でハルカの真意が分かるはずだ。
「3、2、1、0。ここで終われば2000円だ」
「とりあえず現金が残りそうでよかったわ……」
ハルカのハンドルを握る手は緩まなかった。
「打ち続ける、だと?」
もしや交換レートを別の店舗と勘違いしているのか?
私もたまにやる。
しかし、ハルカほどの女が…?
あの打ちこなしでそんな凡ミスを?
腑に落ちない。
「先生!全然ハルカはやめないじゃない!」
「……勘違いしているのかもしれない。1玉が幾らになるのかは店によって違う。別の店舗と相場を勘違いしているのかもしれない」
「じゃあ結局お金は残らないじゃない!!」
そうこう言っている間にハルカはハンドルを戻した。
コーヒーを置いたまま、カウンターの前に行き、天井から垂らされた紙を一瞥して席に帰る。
Gはその足取りを無音で追跡していた。
「数字の書かれた紙を見て帰ったわ…やっぱり先生の言った通り相場?を勘違いしていたのね。勘違いで……2000円が…」
それにしては動揺が無かった。
持って帰ると決めた時の2000円は、持って帰らないと決めた同じ2000円でも心に与える桁が違う。
何か、何かを私は見落として…。
……
…。
そうか!
ハルカは"知って"いたんだ。
ハルカは勘違いなどしていない。正しく交換率を認識している。
知っていた上で知らなかったことにしようとしている。
途中で止めるつもりだったけど、勘違いしていたからもう打ち切るしかない。
そんな言い訳を自らにするために。
…ハルカはもう手遅れだ。
ハルカはもう、末期なのだ。
「あ、先生、ハルカの持玉?がもう無くなったわ。これで終わりね。移動の準備をしましょう」
終わらない。
こんなところでは終われない。
私なら、あの台には見切りをつけて別の台に行く。
私ならリゼロ2に座る。スロットで挽回を図る。
だが、あの様子ならハルカにはスロットという選択肢が無い。
きっとハルカはパチンコが好きなのだ。
だったら、もし、仮に、私がハルカなら。
座るのは……ユニコーンだ。
「どうしたのよ、先生。はやく準備しないと……」
ハルカが座った台は奇しくも可能性の獣だった。
「これからハルカが移動する先に元凶があるんだから見失う前に…」
「違うんだ、アル。元凶はこれだ」
アルの顔が見れない。
きっと、私がどこかで見たことのある表情をしているはずだ。
「………へ?ハルカはパチンコで全財産を?まさかそんなこと…」
そのまさかだ。
そのまさかなんだよアル。
もう、私は見ていられない。
「アル、ここでまっていてくれないか。私は、終止符を打ってくる」
アルの返事は聞こえない。
もしかしたらあったのかもしれないが、それはきっと耳をすり抜けている。
私に聞こえるのは、鼓動の音だけだった。
「それで先生、どうだったの?ハルカが一緒にいないってことは、説得は…失敗したの?」
「私にはどうにもならなかった。負けだよ」
「それじゃあ、先生、ハルカは………どうなったの?」
「5万負けだ。私は2万負け」
「なんで先生までパチンコしてるのよぉぉ!!」
「あるんだよ!終止符って名前の台が!!言っただろ打ってくるって!!!!」
「どうしてこうなるのよおおぉぉぉぉ」
ふと、財布の軽さで我に返った。
方法はある。
ハルカを戻す方法はある。
説得とか、カウンセリングとか、泣き落としだとか、金を別の人間が管理するとか、そんなんでは解決しない。
それは身に染みて分かっている。
たった一つだけ。
たった一つの方法が、ある。
だがそれは余りにも。
あまりにも……。
「私が、私がついていながら……。ごめんなさい。ごめんなさいハルカ。ごめんなさい…」
うわごとの様に呟くアルの姿を見て。
ようやく決心はついた。
「アル……。聞いてくれ、アル。パチンコ店をキヴォトスから消す方法があるとしたら。あるとしたならば、どうする」
アルは泣きながら言った。
「そんなのができるんだったら今すぐにでもして欲しいわ。あんなお店なんて無い方が世のためよ………でも、それができないからハルカは、ハルカは…」
無い方が世のため。
そりゃ、そうだ。
そうだな。
そうならば、仕方無いだろう。
私をどこかで見ている視線がある。
多分、いけるだろう。
息を吸った。声を出すために。きっと今私が言ったことは明日にはキヴォトス全土に知れ渡っている。
キヴォトス全てのパチンコ店に哀悼の意を示す。
勘弁してくれ。
「ああーーー結婚してえええなああああ。今すぐにでも結婚してえなあああ。でも、私はパチンカスだから相手に申し訳なくて出来ないよーーーー。意志も弱いからパチンコも辞められねえええ。キヴォトスからパチンコ店が無くなってくれたら、今すぐにでも結婚できるのになあああああぁぁぁぁぁ」
見られている気配が消えた。
三人分。
気配が無くなって分かったが、どうやらあれから一人増えていたらしい。
もう、どうでもよかった。
狐の面をつけた和服の生徒が目の前のパチンコ店に入っていくのが見える。
……銃のレバーを引いて。
他の二人が誰だったのかは、余裕が無くて分からない。
でも、もしかするならば、上に話でも通してパチンコ排除条約でも作ってくれるのかもしれないな。
「せ、先生、な、何を、言っているの?」
アルに返事はできない。
アルの方に顔を向けることもできなかった。
きっと私は、酷い顔をしているだろうから。
「な、泣いてるの?」
大粒の涙が止まらない。
ありがとう。パチンコ。
さようなら。パチンコ。
「泣いてなんかいないよ、アル。ただ、これは、目にゴミが入っただけさ」
泣いているのかと言われれば、泣いていないと返すのが人間だろう。
それに一人の生徒が救われたのだ。
泣くなんてのは、おかしいじゃないか。
「い、い、意味が分からないわ」
アル、見ていたら分かるんだよ。
もうそろそろパチンコ店から火の手が上がる頃だ。
「アル、見てくれ。あのパチンコ店はじきになくなる」
そう言うやいなや、パチンコ店は爆発した。
「キヴォトスのパチンコ店はもうすぐ無くなる。全部だ。全て亡くなる。これでハルカはパチンコを打てなくなる」
「ま、まさか、もしかして今のは暗号なの??!!パ、パチンコ店を物理的に消すなんて、先生は…アウトローだわ」
アルは泣いているのか笑っているのか分からない表情で言った。
「これで、全部、解決さ。アルの言う通り、私は一流……だからね」
泣き止んだアルとビルの階段を下る。
足取りは、重い。
これで、良かったんだ。
これで、良かったんだよ。
私は。
私は…
「でもこんなに派手にやって問題にならないのかしら。……、あれ、意外とみんな無反応ね」
「キヴォトスで爆破は日常だろう?」
「それもそうね。なんならSNSはカブトムシで賑わってるわ」
冷汗がした。
「それは…………どういう………」
「なんでも、Amazonでカブトムシの着ぐるみが物凄く大量に売れてるらしいわよ」
私はその日、血反吐を吐いた。
私は別の物語を書いていました。しかし、それがあまりにも暗くなり過ぎました。見えているのです。物語も、光景も、文章も、結末も。何もかも。
それでも、暗すぎて途中で書く手が止まってしまいました。少し書いては止まってしまって、休憩をしようとタバコを吸う本数がいつもより増えました。
中和したかったんです。ギャグで。
その時に浮かんだのがアルちゃんでした。救われました。アルに。
今回は私の心の平穏のためにギャグに振り切っています。