ワイ『ダンボールは万の事に使いけり』 ミヤコ『流石です師匠』 作:\コメット/
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
皆さん、マスクをしましょう。初期症状を自覚したら直ぐに休んで解熱剤の準備をしましょう。
お恥ずかしい話ですが、インフルエンザで大変辛い思いをしました。三日間39℃の熱に侵され、職業上病院に行って処方箋を貰うこともできず、冷えピタが無い代わりにペーパータイプのGATSBYで代用し、気合いで一週間かけてどうにか治しました。年始の出来事です。
私が言えたことではありませんが、皆さん身体にお気をつけください...。
「スパチャ感謝する。『付き合ってる人はいますか?』...恋人はいるのか、という質問だろうか。それなら答えはNOだ。俺の歳は16だが、生まれてこの方その類の関係を築いたことはない」
高城セン、Vtuber名『R2(ラビラビ)』の生配信は、朝と夜の二回に分けて行われる。
朝の六時、陰鬱な気分で仕事や学園生活へ出向く社会人や生徒を少しでも励まそうという『行ってこい社畜共配信』。
夜の十時、企画や雑談などを行う『今日もご苦労だった社畜共配信』。
現在は後者で、朝に消化しきれなかったスーパーチャットへの返答、随時来るコメント返しがメインだ。
同接は3000人、チャンネル登録者も徐々に増え、今や業界においてのダークホースになりつつある。
『なんか恋バナしてよ』
『初恋ってあったん?』
「初恋話か...それらしいのはあったが、その人に対しては憧れで終わったな。二年前疎遠になってしまって、結局ソレがどういう感情だったのかも今となっては分からん」
『チキン』
『初々しいな』
『人はそれを、恋って言うんだぜ』
「いや恋じゃない。そういうのはもっと、動悸が激しくなったり感覚的に体温が上がったりするものだろう。俺の場合は...いやあったな昔。俺がまだ働いてた時、先輩の一人が経営に差し支えかねないやらかしをして周りがパニックに陥った時、その人はスッと現れ一瞬で問題を解決し定時で帰宅した。あれで憧れない方がおかしい」
『イケメン過ぎる』
『イケメン』
『結婚させろその人と』
当人の名誉のために名前は伏せるが、彼女はこの私にかかればお茶の子さいさい!と息巻いた結果どう考えても一人では捌ききれない量を単独で抱え込み、自壊した。
ちなみに、現在の防衛室長のことではない。彼女より無能は連邦生徒会にもそこそこいるし、なんなら彼女は急ぎ過ぎるだけで比較的優秀な方である。
その、自壊した彼女が受け持った資料の中には当日中に提出しなければならないものもあり、仕方なく周りが手を貸していると、続いて資材申請をした弾薬ではなくモヤシが届くという珍事も発生。
学園都市キヴォトスはコンビニはもちろん、スーパーマーケットにも弾薬は置いてあるので、間違って食材をカートに入れて誤発注してしまった、と考えれば納得はでき...ない。出来るわけがない。ジャンルは違う、一文字も掠ってない、そもそも発注先を間違えている、ヒューマンエラーのデパートだ。テンションは上がらない。
そんな中、一人の超人が現れ事態を即終息させた。
それが連邦生徒会長の初見であり、のちにある一件を経てセンは彼女に勝負を挑み、連敗の末に勝利を掴み、満足気に会長の左に収まった。
「ロールケーキさん、スパチャ感謝する。なになに...『初スパチャ失礼します。よろしければ悩みを聞いてください。最近、親しい間柄だった方と上手くいかず、悩んでいます。原因は私にあり、とある件で一方的にお相手が悪いのではと疑ってかかってしまいました。結局その方に非はなく、そのことを直接謝り、以降も向こうは変わらず接しようとしてくれるのですが、私は罪悪感もあり以前のように彼女の顔を真っ直ぐに見れません。徐々に二人でいる時の雰囲気が悪くなってきているようにも感じます。なにか関係を改善する方法はありませんか?このままというのも良くないと思い、書かせていただきました』...ふむ」
しばし思考を巡らせ、センは回答を手向ける。
「先ず、大前提として一度壊れた関係が元に戻ることはない。そのまま崩れるか、より強固になるかのどちらかだ。きっとロールケーキさんは後者になりたいだろうから、これから俺はその方法を話す。幸い、相手の方はあまり気にしていないみたいだな。自身が悪いことをロールケーキさん本人が自覚しているのも大きい。故に、答えは簡単だ。機会を設け、そこでもう一度謝罪すればいい」
『そう簡単にいくか?』
『言うだけなら易いからなぁ』
「別に気にしてない、と言われても謝り続けろ。必要なのは謝罪に対しての赦しだ。それが貰えるまでは、頭を下げて自分の思ってることを全部吐き出せ。一言が余計になるよりも、一言が足らない方が人間関係は壊れやすい。そういう経験、皆は無いか?」
『ある』
『心当たりあるかも』
『言ってくれればよかったのにってやつか』
『でもそれだと自己満足で終わるくね?』
「確かにな。だが、必要なことだ。恐らく、とっくに向こうはロールケーキさんのことを赦している。それでもここまで拗れてしまっているのはその赦しを言葉にしていないからだ」
気にしないで、とあなたを赦します、では意味合いが違うのである。
「推測だがロールケーキさんより相手は年下で、謙遜が先行するせいで強く言えず、自分の発言が烏滸がましいと感じてしまうのだろう。その隠された本音を引き出すには、ゴリ押しに限る」
『脳筋戦法...ってコト!?』
『シンプルイズベストが最強なんやなって』
「雨乞いを100%成功させるにはどうすればいいか───単純に、雨が降るまで踊り続ければいい。今回のことに言い換えれば、赦しを貰えるまで謝り倒せ。時間が経つ頃には、それも笑い話になるだろう」
センが連邦生徒会長に対して行ったゾンビ戦法と同じである。
彼は緻密な戦術を練るのも好きだが、考え無しに相手へぶつかっていくのも嫌いではない。基本スペックで圧倒しているなら、それを活かすための押し付けも有りと考えているからだ。
「確証は無いので、過信はし過ぎないことだ。ロールケーキさんの関係がより良くなることを願っている」
『ありがとうございます、参考にしてみます』
本人からの返答をもらえたので、この質問についてはクリアでいいだろうと頷く。
「さて、これで今日来た分は終わったな。まだ終わるには早いから、折角だ。俺の特技について話そう」
『kwsk頼む』
『気になるのぉ』
「これでも多芸でな。配信では披露できないが、速読には自信がある。中古本屋で重宝するぞ」
『草』
『営業妨害じゃねえか!!!』
『立ち読みせず買ってもらって、どうぞ』
「買うだけの金が無いから仕方ないだろう。俺がこの活動を始めたのも、貧困生活から抜け出すためだからな」
『あれ設定じゃなかったの...?』
R2のプロフィールには、日々の生活に困窮する16歳のホームレス高校生が貧乏な毎日に嫌気がさし、バーチャルな世界に入り込んだというのが一応の設定として書かれているが、ほぼノンフィクションである。
少し違うのは、自らがホームレスだということを誇りに思っており、持ち前の知識もあり無一文でも問題はないことか。
『短期間で人気が跳ねたから良かったものを...』
『生き様がギャンブル過ぎる』
「それについては自信があった。考えてもみろ。女性配信者が多いこの業界で、俺のようなイロモノがポッと出てきたら嫌でも注目するだろ」
『確かに』
『確かに』
『たしかに』
配信を視聴する全員が赤べこになるくらいには、納得のいく回答だった。
『料理とかできますか?いつか料理配信も見てみたいです』
「レパートリーはいくつかあるぞ。なら、年内で検討しておくか。苦学生が喜ぶメニューを提供してやる」
特に誤発注により大量に仕入れたもやしと向き合って培ったもやし料理。
連邦生徒会長が書類整理の片手間にホイホイとフライパンをひっくり返しながら昼飯と夕飯を作っていくのを見て勉強したスキルは、伊達ではない。
『今披露できる特技ってある?』
「配信上でか...なら、声真似はどうだ?結構自信あるぞ」
『お、聞いてみたい』
『誰の声真似るん?』
「ならその前に、真似る本人様に配慮して一応画面に切り抜き禁止と悪用禁止の注意書きを貼っておこう。皆、それでいいな?」
『おけ』
『おk』
『自信満々やんけ。了解』
『おかのした』
「折角だ、バイノーラルマイクでやろう。一瞬ミュート失礼─────────よし、これで準備はできた。どうせなら有名人がいいな。一般人でも知っているような...んんっ、んんっ、あー、あー、あー」
『発声練習助かる』
『待ってめっちゃ高ない?』
最後の『あー』は、普段の彼の声とはあまりにもかけ離れた代物であった。
「あー、あー...どう?ちゃんとそれっぽくなってるかしら」
『!?』
『ファッ!?』
『ちょっと待ってくださいね』
『ひえっ』
それは、少女の声だった。
幼さが残ったまま社会を知ってしまったような、子供味の中に闇が垣間見える、そんな声。
学園都市キヴォトスでは有名人も有名人。暴徒鎮圧で度々インタビューもされている、センが模した少女の名は、
「ゲヘナ学園風紀委員会、風紀委員長の空崎ヒナ...さんの声真似でした。自分では似てると思うのだけれど」
『似てるどころか口調までほぼ本人やんけ』
『モノマネのクオリティじゃない』
『耳が心地良え』
『トラウマ再燃中』
『いやっ!いやっ!』
視聴者の半分は絶賛、もう半分は彼女にお世話になったことがあるのか狂乱状態に陥っている。
身長サイズの機関銃と白いモフモフ髪を思い出してしまったのだろう。
「ふー、ふー...吐息ってこんな感じでいいのかしら」
『脳がバグる』
『癒される』
『声がかわええ』
『パンツ脱いだ』
『だが男だ』
『言うんじゃねえ』
「割と好評ね...ん?賭ける負け犬さん、スパチャありがとう。結構な高額ね、大丈夫?えーっと『その声で是非ともいい子いい子お願いします』...どうしよう、あまり本人の風評を貶すようなことはしたくないのだけれど...再度言うけど、切り抜き等は一切しないこと。アーカイブも残さないからそのつもりで」
『勿体無いけどりょ』
『おk』
「うん、じゃあ始めていくわ」
この時、ヒナ本人への配慮と声真似に集中するせいでセンは気づかなかった。配信URLがSNSで拡散され、瞬く間にトレンド一位を掻っ攫い、同接数は数万人を超えていることに。
そんな事実はいざ知らず、彼はASMR用のヘッドマイクへ囁きを届ける。
「今日も一日、お疲れ様...だいぶ疲れが溜まってるみたいね。鏡見た?目の下の隈、すごいわ。膝を貸すから少し横になって。あなたの頑張りにはいつも助けられているから、これはそのお礼。いい子、いい子...」
『ぽわぽわしてきた』
『いいんちょってこんな可愛い声してるんだ...』
『普段怖い顔してるから気づかんかった』
『ありがとうございます』
「ふー...ふー...こんなものかしら。くれぐれも、切り抜いたりしないように。画面収録は流石にどうにもできないけど、それを広めたりはしないこと。ヒナさんに迷惑がかかるから」
『徹底してるなぁ』
『この業界、何が地雷になるかわからんものな』
『ありがとうございました』
数名、もっと言えばゲヘナ学園風紀委員会関係者の一部は、今し方の数十秒を画面収録することに成功。これから毎夜楽しむらしい。
「はい、終わりだ」
『うわぁ急に戻るな!』
『パンツ履いた』
『えらい』
「あと一人やって、今日は終わりにするか。誰かリクエストはあるか?できれば皆が知ってる有名な人で頼む」
『有名どころっていうと連邦生徒会長代理?』
『もうちょい攻めたところいこう。チェリノ書記長でどうよ』
『百合園セイア』
『その人の声聞いたことないんだが』
『ツルギ委員長とか』
『山海経の門主様』
様々な要望が飛び交う。
どれもセンにとっては再現可能だが、はてさて誰を真似ようかとコメントを見ていると、
「む」
ある人物の名前に目が止まる。
同じ男性、他にも挙げられた名前は女性ばかり。演じ易さと、何より知名度などを考慮すれば、その人の声真似は十分人気を博することだろう。
『できるの?』
視聴者の疑問に、
「ああ、できるぞ」
センは肯定してみせた。
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「はぁ...あぁ...」
「まーだため息してるよサキのやつ」
「それも羞恥を思い出して自傷したくなっているかのようなため息ですね」
「た、例えが具体的だね...」
昼時、RABBIT小隊の四人はそれぞれ向き合い円を形成し、自身の装備の整備に励んでいた。
口を動かしつつも、手を動かすのも忘れない。
染みついた動作で一つ一つの部品を磨き上げ、それらを装着。
先日の高城センVtuber業発覚により意気消沈しているサキも、道具を扱う速度は他三人と変わらない。
「...無性に自分の頬を引っ叩きたい気持ちになる。あと、黙ってると思い出してしまう」
「恥ずいことあった後ってそうなるよねえ。寝る前とか地獄でしょ。お風呂の時とか、目を瞑って頭洗ってる時も」
「サキは師匠の配信を見て寝落ちするのが夜の日課ですよ」
「サキはマゾなの?」
「だ、誰がマゾだ誰が!あいつが何かやらかさないか見張ってるだけだ!」
「そんなこと言って、どうせニヤニヤしながら見てたにきまってるじゃん。ねえミユ」
「こ、これ一昨日の写真...」
「だから勝手に撮るなァ!」
またもや幸せそうにだらしない笑みを浮かべる寝姿をミユに撮られていたサキ。
すぐさまスマホを取り上げて消去するが、悲しきかなすでにデータはモエのUSBにバックアップ済みである。
「単純にヘッドの配信面白いから、つい見ちゃうのもわかるけどね」
「昨日は何をやっていたのでしょうか」
「サキ、どうだったん?」
「真っ先に私に聞くな!...訓練の疲れで見る前に寝たから、知らない」
「私も見てないな...」
ここにいる四人は昨日、センの組んだ超絶キツイトレーニングメニュー───本人も参加し即ギブアップ───をこなし、温泉に浸かった後は流れるように床についた。
よって、普段時間きっかりに行われているR2の『今日もご苦労だった社畜共配信』を見れていない。
なんでセンは問題なく稼働できてるの?という質問については、どんなことがあろうと期限には間に合わせる時間に厳しい性分なためだ。
それは、今も昔も変わらない。
『七神先輩、頼まれていた資料ができました。確認お願いします』
『ええ、ありがとう』
『それと、こちらはD.U大通りの車の行き来をまとめたものです。工業区近くが割と交通量が多いので、信号機の設置を提案します』
『そうね、次回の会議で検討しましょう』
『不知火先輩の考案したものにも目を通しました。実用可能なものには丸をつけているので、そちらも確認願います。と言っても二つ程ですが』
『...センくん』
『はい』
『これら全て、つい30分前にあなたに渡した資料なのだけれど』
『それがどうかしましたか?』
『...いいえ、いつもあなたの仕事の速さと正確さには助かっているわ』
『お褒めいただき光栄です。では、俺はアオイにヴァルキューレ警察学校の予算案を提出しに行ってきます』
『...?たしか、それは今日の12時まででは?あと数分しか無いわよ?』
『だからです。ギリギリに提出して、とやかく言わせず案を通すんですよ』
遠き日の彼の思い出。
その後カヤの案は一つしか通らず、アオイは敢え無くヴァルキューレ警察学校の予算向上に承認印を押した。
時間は守る。面倒な仕事は早めに片付け、余った時間を悪用して心理戦に持ち込む。
まったく、絶対に相手にしたくない後輩だ。去り行く少年の背中を目で追いながら、当時のリンはカヤとアオイを哀れみ合掌した。
「お、噂をすれば来たっぽい」
6時から7時までの朝配信を終えたのか、何やら疲れた顔でダンボールハウスから出てきたセン。
「師匠、おはようございます」
「ああ...おはよう」
彼にしては覇気の無い声。肩を落とし、どこか疲れ切っている。
「なんだ、また寝違えたのか?」
「だからダンボールで寝るのはやめときなって言ったのに」
「肩...揉みましょうか?」
「気遣い感謝する、ミユ嬢。だが別に寝違えたわけでは無いから気にしないでくれ」
「なら昨日のトレーニングが原因の筋肉痛か」
「ヘッドって言うほど動いてたっけ」
「失礼な。師匠は1500mを走り切りました。8分かかっていましたが」
「うーんこの運動音痴」
この男、足も遅ければ動きも遅い。体も固ければフォームも汚い。
練習さえすればものになるだろうが、こなすための体力も無い。
運痴、ここに極まれり。
「ええいっ、筋肉痛でもないわっ。...昨日の夜の配信が何やらバズってな。その対応に追われていた」
「どれどれ...げっ、マジ!?一晩で何があったのさ!?」
数千人だったセンのチャンネル登録者数は、なんと夢の10万人に足を踏み入れていた。
「収入もえらい量来てる...昨日の夜は何をしたんだ?」
「声真似をしただけだ。まぁそれが原因なのだろうが」
「お、これじゃない?」
モエがデバイスで表示したのは、センの配信の切り抜き動画。
あれだけ注意喚起してもやる奴はいるのかと呆れる彼とは別に、他の四人はその内容に驚愕していた。
『あなたの頑張りにはいつも助けられているから、これはそのお礼。いい子、いい子...』
「こ、これが師匠の口から...?」
「最早別人でしょ...」
「何をどうしたらこんなに喉を弄れるんだ...?」
「あ...もう一つあるよ...多分、最たる原因はこれなのかも...」
『今日もお疲れ様。仕事、手伝ってくれてありがとう。いつも助かってるよ...こっちおいで。膝枕でもしようか』
「この声は...」
センと同じ男性の声。
おっとりしているように見えて、芯の通った大人のもの。
この声音を、RABBIT小隊一同は何度か聞いたことがあった。
「...先生の声か?」
独立連邦捜査部シャーレ、その代表である先生と全く違わない代物。
「視聴者に頼まれてやったら反響があったんだ。想像以上に、先生はキヴォトスの人気者らしい」
「伊達に生徒のお願い事聞いてないし、ちょっとお時間頂かれてないってことかぁ」
連邦生徒会から始まり、アビドス、ゲヘナ、ミレニアム、トリニティと、他にも多くの学園の生徒が先生の世話になっている。
悩みを解決してもらった生徒の中にはそんな優しく頼れる先生に恋心を抱く者も少なくない。
今回の配信はそういう生徒達の目に触れたのだろう。
画面収録をして夜寝る前に聴く者、自分好みのシチュエーションに環境をセッティングして声に没入する者と用途は様々だ。
「こんだけ色んな人に需要があるって分かったんだから、シチュボ量産して売り捌くってのはどうよ!?」
「SRTがそれやっちゃ駄目だろ...」
「先生にも迷惑がかかるからな。それに、金はスーパーチャットで稼げている。問題ない」
「あ、集まったお金は...何に使うんですか...?」
「最低限身の回りを充実させつつ、あとは貯金に回す。少しはSRT復興手立ての足しにはなるだろう」
「師匠が調達なされたお金です。知識や智慧は有り難く学ばせていただきますが、予算の工面には些か抵抗が...」
「なら、これは俺からの投資と思え。SRT特殊学園はキヴォトスに無くてはならない存在だ。俺にそう言わせるための技量がおまえ達にはあり...同時に、出資するに見合う価値もある。無論、期待には応えてもらうがな」
「───了解しました。師匠のお気持ち、無駄にはしません。復興への道、切り拓いてみせます」
「わ、私もやるぞ!」
「私も...」
「ま、流れに乗っとこうかな」
SRT特殊学園復興のためにRABBIT小隊は決意を新たにし、必ずやセンに報いようと固く誓った。
ドン!!
ドゥン...!!
ダダダダダダッッ!!!
「ぎやあああああ!!??」
そんな彼らの間に割って入る第三者の声、いや悲鳴、断末魔。
「敵襲か!?」
度重なる爆音は仕掛けていた地雷、自動追尾固定砲、防衛用ドローンによるモノだろう。
凄まじい規模の攻撃が侵入者に対して一身に注ぎ込まれる。
「各員、戦闘準備。RABBIT3は敵勢力の解析を」
「りょうか...ん?敵さん一人だね。それももう虫の息」
「なに?」
モエから見せられたパソコンの画面には、彼女の言う通り敵の反応を示すシンボルがポツンと存在していた。
公園入り口や周辺の柵には注意書きを貼っており、無闇に入ってくる愚か者はいない筈だが、と首を傾げるセン。
重量や体温に反応するセンサーを監視カメラに搭載しているため、迷い込んだ動物という線も考えられなかった。
「爆発のあった場所から察するに、正面の入り口からだ。悪戯に入り込んだ生徒か?」
「これまでそういったことはなかったですし、やはり敵勢力なのでは」
「以前あったデモのこと知らない人この辺じゃいないだろうし、そうだろうな」
「か、確認に行きますか...?」
「俺もこの目で見てみたい。RABBIT3はキャンプで待機。他三人は俺と共に来い」
「「「「了解」」」」
罠センサーを無効にするキーを持ち、いざ侵入者のいる場所へ。
「う、ぐぐ...っ」
それはすぐに見つかった。
入り口から広場に入って数メートルの場所に、男がズタボロで倒れている。
「なんか見覚えあるんだが」
「奇遇ですね、私もです」
「た、助けて...ください...」
ヒッピーの格好をしたその人物を見て、小隊長とポイントマンは見るからに嫌そうな顔をした。
「どうする、ヘッドRABBIT。埋めるか?」
「捨ておけ。可哀想なことだが、いや可哀想なことでもないが。野生動物の死体は一般廃棄物に該当する。街指定のゴミ袋に入れて、今日の夕方にでもゴミ捨て場に」
「おいまだ私は生きてるが!?」
黒焦げになった体に鞭打って、勢いよくセンに突っかかる。
「チッ、大人しくくたばっていればいいものを」
「これだけ酷い目に遭わせておいてその言い草はなんだ!?助けてくれって言ってるだろ!以前会ったことも忘れたか!?所確幸のリーダー、デカルトだ!」
「貴様のような日々を惰性で謳歌するホームレスなど知らん。帰れ、消えろ、俺の前から疾く失せろ」
「滅茶苦茶当たり強いな...」
「師匠は嫌いですからこの人。私もですが」
というか、全員にとって彼はもれなく嫌悪の対象である。
「はぁ...それで?何をしにきたドブネズミ。昼飯でも奪うつもりならやらんぞ。今日はエンジェル24の唐揚げ弁当の唐揚げを二度揚げしたボリューム満点定食だ。貴様にやるくらいなら犬の餌にする方がマシだスクラップめ」
「師匠、私は四個所望します」
「わ、私も四個...」
「おい狡いぞ!セン、私も四個だ!」
『ちょっとちょっと、キャンプを差し置いて何勝手に決めてんの!ヘッド、私も四個だからね!』
「ふっ、分かった分かった。卑しん坊どもめ。七味とマヨネーズ、オーロラソースも付けてやる」
「「「『やったー!』」」」
「この私を空気に昼食の相談とは完全に舐めてますね!?」
「貴様のような汚物を舐めるわけがないだろう。そもそもの話、俺の眼中にも無いわ鉄屑が」
「こ、この...いえ、今はそれどころではありません!私の話を聞いてください!これはD.Uで暮らすあなた達にも関係のあることなのですよ!?」
もはや語尾が相手を貶める言葉になっているセンの罵倒をなんとか受け流し、デカルトは自身と所確幸に起こった悲劇を─── 地雷原に突っ込んでボロボロになった方が悲劇だったとは思うが───勝手に話し始めた。
先生を人質に取った末RABBIT小隊にボコボコのボコにされたデカルト達一向。
自業自得な訳だが、組織は瓦解し人員も少なくなってしまったのだと。
その混乱に乗じてなのか、はたまた偶然なのか、ヴァルキューレの公安局が彼らホームレスに押し入り掃討を開始。
デカルトは辛くもその襲撃から逃げてきたらしい。
『いやいやいや。公安局があんたらを捕獲しにくるなんて有り得なくない?テロとか難事件の解決に動くのが本来の役目じゃん』
「け、警備局の間違いでは...?」
「いえ、確かに見たのです!この私の目でハッキリと!ヴァルキューレが普通は持ち得ない武器を使い、私たちの聖所で暴れる狂犬の姿を!」
「...なに?」
反応したのは、センだった。
主に後半の方、ヴァルキューレが普段使わない武装、そして狂犬───元バディの異名に。
「どうやら嘘じゃないらしい。セン、こいつの弾痕を見てくれ、これだ」
「...HEIAP、徹甲炸裂焼夷弾か。確かにヴァルキューレでこの弾薬を使っていた覚えは無いな。俺がいない間に装備の更新があったのなら話は別だが、それにしても不可解だ」
「センさん...私たちみたいに撃たれた痕だけを見ても...弾薬の種類を当てることができるんですね...」
「教範は暗記しているからな」
「...この弾は威力が高過ぎて、制圧に不向きです。口径も現在ヴァルキューレが使っているのとは全く違う物です」
「製造元は多分、カイザーインダストリーだ。けどなんだってヴァルキューレがカイザーの装備を使ってるんだ?」
「...」
情報をまとめる時などに自然ととる癖。
顎に手を当てて、センは脳の働きを躍動させる。
(釈放された日に見て回った校内に、カイザーの物と思われる装備一式は無かった。財政状況は潤沢には程遠く、こいつら流浪者に火力で負けるくらいだ。ではどうやってカイザーの装備を...)
如何にして。
それを考える彼の思考は、一秒も掛からず答えに行き着く。
思い出される、二年前の出来事。
あの時自分が見かけたのは───、
「繋がっ」
繋がった。
センはその言葉を最後まで言えなかった。
タァン!
「ぎゃふん!?」
何故ならば、彼方より発射された銃弾がデカルトを撃ち抜いたからだ。
「誰だ!」
倒れるホームレスは捨て置いて、サキが紙装甲のセンの前に立ち、ミヤコとミユ、キャンプのモエも戦闘体勢に入る。
ドタバタと公園へと足を踏み入れてくる見知った集団。
先日自分達がボロ雑巾にしてやった組織、ヴァルキューレの公安局。
その先頭にいるのは、
「...先輩」
「...出所ぶりだな、高城」
狂犬、尾刃カンナだった。
セン:徐々に徐々に運動神経以外ハイスペックなことが明るみになっている。なんなの、この人...。唐揚げは色々な調味料で味変するのが好き。
ミヤコ:今日も今日とてセンに脳を焼かれている。師事や忠誠よりも狂信に近い。なんなの、この子...。唐揚げは味に飽きてきたらマヨネーズをかける。
サキ:上司に上司のASMR視聴がバレ、毎晩ベッドで思い出しては悶絶している。でも配信は見る。このむっつりマゾっ子め。
ミユ:モエからの頼みで、毎晩サキの寝相を撮影している。深夜にセンと会話を重ねてコミュニケーションの向上を測ったり、夜食を貰ったりしている。割と強か。
モエ:サキの弱みを握ることに余念が無い恐ろしい子。深夜になるまで趣味に没頭しているとセンが夜食を届けてくれるので、お詫びにチェスに付き合っている。
改めまして、更新が遅くなり申し訳ない。
見捨てないでくださいお願いしますなんでもしますから(なんでもするとは言っていない
誰だよRABBIT小隊ならネルに勝てるとか言ったやつ。無理だよあんなアクロバティックに動かれたらサァ!(制服実装おめでとう。アスナもおめでとう
リオとセイア、私を含め皆さんが待ち望んでいた二人も実装と、ブルアカの勢いは止まることは知りませんね。願わくば本作に二人を関わらせたい...。
感想、お気に入り、評価、ここすき、誤字報告、ありがとうございます。励みになります。
前話は過去最高に誤字が多かったので助かりましたわ〜!