ワイ『ダンボールは万の事に使いけり』 ミヤコ『流石です師匠』   作:\コメット/

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最終編-あまねく奇跡の始発点-
開始です。





第二章 超人が目覚める日
14 孤高へと、歩む。


 

 

喧騒を切り裂いて、その少年は現れた。

 

おろしたてらしい革靴が床を踏み鳴らす音と、壁にある時計の秒針の音が重なり、室内にいる者全ての視線を、ヘイローを持たない単なる人間の少年は我が物とする。

 

彼の姿を見たある者は誰だと首を傾げ、ある者は既視感を覚え、ある者は声を失い、ある者は笑みを消し、ある者は瞳を潤ませる。

 

純黒の髪、宝剣の切れ味を彷彿とさせる整った容姿、足はスラリと長く、瞳はアメジストを思わせる輝き。

白を基調とした連邦生徒会の制服を着こなして颯爽と歩を進める少年。

その歩みを止める者は、誰一人としていない。

 

そうさせるだけの、遮るなという圧力、有無を言わせない覇気が、得体の知れない彼から発せられていた。

 

彼は、当初の予定であればシャーレの先生が腰掛けるべきだった席に尊大な態度で着席し、告げる。

 

「私が、独立連邦捜査部S.C.H.A.L.E代表代行、高城センです」

 

これは始まりだ。

 

少年が帰還することでリスタートする物語の始まり。

 

そして、それが意味すること。

 

 

 

即ち、超人の目覚めである。

 

 

 

ブルーアーカイブ-最終編-

 

〜超人が目覚める日〜

 

 

 

********************

 

 

 

違法リベートの摘発から暫く経ち、RABBIT小隊は日々の鍛錬をこなしがてら、D.Uを中心に人々の悩みを解決するルーティーンに落ち着いていた。

時には犯罪組織を縛り上げ、時には蜂の巣を駆除し、時にはお年寄りの横断歩道の補助まで。

大小様々な事案をこなすことにより、民衆にとってミヤコ達の存在は子ウサギタウンを飛び越え、広く受け入れられつつある。

 

「そういえば今日は、カイザーの兵士達をよく見かけたな」

 

日課のパトロールを終えたサキは、町内の平和の報告に加えて自身が気になったことをセンへと伝える。

配信者としての収入が入り、最近ミヤコにプレゼントした兎《ぴょんこ》を膝上で撫でながら、一つ頷くセン。

 

「またよからぬことを考えているな。懲りない奴らだ」

 

「どうする?カイザーコーポレーションに潜入してみるか?」

 

「まだ憶測の域を出ない。無理に動くのはやめておこう」

 

「わかった」

 

「とはいえ、何か起こってからでは遅い。風倉に調べさせておくか...空井、ご苦労だった」

 

「労われるほど大したことはしてない。ま、悪い気はしないけど」

 

満更でも無く、サキはむふんと胸を張る。

 

「今日はもう休むといい。他の三人はもう各々休息に入っている。風倉は自作爆弾の調合、月雪とミユ嬢は二人で出かけていった」

 

「了解。...なら、センの作業を見てていいか?」

 

「構わんが、面白いものでもないぞ」

 

「我らがリーダーが普段どんなことをしているか把握しておくのも、隊員の勤めだと思ったんだ。勉強させてくれ」

 

「そういうことなら止めん」

 

右手でノーパソのタイピング、左手でぴょんこを愛でる彼の隣に収まると、サキはチラリと少年の横顔を見た。

 

(...ダンボールが関わった時の狂気で忘れるけど、センって相当顔整ってるよな)

 

切長でまつ毛の長い眼、細い輪郭に高い鼻。これらの顔面偏差値をふんだんに使って街中でナンパでもすれば、年頃の女子など簡単に引っ掛かることだろう。

それぐらい、センはイケメンだ。

気づいたのはつい最近のことであり、且つ好意を持った理由はまともな内面に惹かれたからなので、サキは面食いではない。

 

(やっぱり、凄いやつだ)

 

初期の学園廃校反対運動から始まり、センの手腕には舌を巻かされる。

指揮の練度もさることながら、状況判断に長け、ミスというミスを出さない。

常に一手二手先を読む思考能力は、さすが元戦術予報士ということなのだろう。

実績も元連邦生徒会、ヴァルキューレ主席と申し分ない。

何故こんな公園で落ちぶれているのか、不思議なくらいだ。

 

(盛大なやらかしで席を追われたって前は言っていたが...これほど有能な人材を切り捨てるだけのメリットが、連邦生徒会にあったとは思えない)

 

余程のミスをして処分を喰らったのか、若しくは自身で職を辞したのか。

サキの考えでは、後者だ。

センほどの人物であれば、処罰を下すのは連邦生徒会長クラスになると彼女は考える。

SRT特殊学園は会長管轄の組織、故に数回顔を合わせた過去がある。

柔和で、穏やかな、それでいて獅子のような覇気を持つ少女、というのがサキが連邦生徒会長に抱くイメージだ。

超人と囁かれるだけあって時には冷徹な判断は出していただろうが、冷酷ではなかった。

 

(不当な処分ならコイツは真っ先に周りを巻き込んで反乱の一つや二つ起こしてそうだけど、過去にそういった騒ぎがあったデータは無い。仮にあったならSRTの先輩達が招集を受けているだろうし、そもそもセンは会長を慕っているようだし...やっぱり自分で責任を感じて生徒会を脱退した、というのが1番有力な説か)

 

土砂降りの日に聞いた話によれば、センは会長に執着している風に見えた。

尊敬や羨望、親愛。そんな感情が、彼女を語る少年からは見え隠れしていたにも関わらず自ら進んで生徒会を去ったとなると、そこに多大なる覚悟や挫折があったに違いない。

 

モキュモキュ

 

「ふっ、愛い奴め」

 

口をもっもっと動かしてお菓子を催促するぴょんこに心を和ませながら、センは自家栽培した人参で作った兎用クッキーを与えてやる。

ポロポロとこぼしながらも食す様を見て更に気をよくした少年の横顔は、作戦中の凛々しい表情とは程遠い。

 

(コイツもコイツで苦労してるんだろうな)

 

今更ではあるが、そう思う。

それから暫く、ぴょんこの咀嚼音とキーボードの音、時節吹くそよ風が織りなす環境音にサキは身を任せた。

気温は特別暑くも寒くもない。平均的で、雲は多少見られるが陽気の方が強い。

SRT在籍時に訓練後の日差しが差す窓側の席に似た心地良さだ。

 

(あぁ...やばい、ねむ...)

 

コテリ

 

右側に感じる温もりが眠気を促進させ、サキは微睡む。

 

 

 

********************

 

 

 

ワナワナ

 

ワナワナしていた。

 

絶賛、月雪ミヤコはワナワナしていた。

 

「な、な...っ」

 

久方ぶりに購入した流行りの服が入った紙袋を地面に落とし、今自身の目の前で起こっている事象に驚愕することしかできない。

隣にいたミユのアシストにより服をぶちまけることはなかったが、別のモノがぶちまけられそうなくらいにはミヤコに対する精神的ダメージは大きい。

 

「すー...すー...」

 

「───」カタカタカタ

 

ノートパソコンで作業するセンに寄りかかり、サキが寝息を立てている。

この事実を、小隊長は受け入れられずにいた。

抜け駆け、こちらがいない隙に、泥棒兎、卑しか兎、かーっみんねミユ、という嫉妬の感情が目の前をplasmaのようにぶち抜いていく。

 

「...ん?ああ、帰ったか二人とも」

 

「は、はい。月雪ミヤコ、霞沢ミユ両名、ただいま帰投しました」

 

気配に気づいて顔を上げるセンに、声を上擦らせながら拠点の番をしてくれていた彼に礼を言う。

そして、サキの背中にかけられたセンの上着を見て再び嫉妬の炎が湧き上がる。

これがダンボールであれば、狂信中のミヤコはいつものように『やはり、ダンボールは万能具...』とセンをワッショイしていたが、上着となれば話は別だ。

 

(むむむむむ...っ!)

 

口をばつ印、ミッフィーのように窄めてプンプン妬み、センがサキに対して行ったサービスを羨ましがる。

その怒気を別方向で解釈し、少年は寝かせてやれと手で制した。

 

「パトロールで歩き回っての疲労、加えてこの陽気だ。小隊のリーダーとしては見過ごせないだろうが、俺の顔に免じて許してやってくれ」

 

「...ハッ、コホン。いえ、私としても隊員の体力が無限でないことは重々承知しています。幼稚なところをお見せしました、師匠」

 

「気にするな。誰しもそういった経験はある」

 

「すぴー...」

 

「むむ...っ!」

 

一層顔を埋めるサキを見て、再度怒りの燃料は炊かれた。

 

「それで、流行りのモノは買えたか?」

 

「はい...センさん、改めてお小遣い、ありがとうございました」

 

「礼には及ばない。年頃の女子なら身の回りに気を使うのは当然だ。今後も欲しい物があるなら、気兼ねなく言ってくれ」

 

「そこまで迷惑をかけるわけには...」

 

「最近太客ができて、資金は予定より潤沢なんだよ。直近の動画で恐怖を覚えるほどに支援コメが投下されてな...」

 

「配信でも数分に一回のペースで赤スパを投げている方のことですか」

 

「ああ。物好きがいたものだ」

 

「《アバンギャリオ》さん...とても前衛的な名前ですね」

 

革新派閥で赤スパと同じく左翼思想っぽいのと、全て無言スパチャなのでセンですら若干引いている。

全肯定慰めASMRに高評価とスーパーチャットをする傾向があり、もしかすると日々の生活に疲れてストゼロをストローで飲むような病んでるOLなのかもしれない。

 

「あぶく銭と思って、早めに消費するとしよう。曰く付きの金の匂いがしてならない」

 

「どこかの学園の上層部の人間...これだけのお金を注ぎ込めるならそれこそ、トップ中のトップの人でしょう。横領でもしているのかもしれません」

 

「こ、これ本当に使っちゃダメなお金だった場合、センさんのチャンネルはどうなるのでしょうか...?」

 

「いずれも俺と月雪の憶測だ。そう重く考える必要は無いさ。それに、バレて処罰されるのはどうせ投げている本人だろう」

 

せいぜい下の者に説教されるがいいさ。

お題に答えて投稿した『学園のために行動した私を誰もが否定してくる中、あなただけが苦労や心情を分かってくれるので全力で慰めてもらう』動画に10万円支援が無言で貼られたのを見届けて、センはソッとデバイスの電源を落とした。

 

「んん...んぁ...?」

 

少しセンの肩が動いたことに反応したのか、RABBIT2がお目覚めだ。

 

「起きたか、空井」

 

「うぅん...?」

 

超至近距離で繰り出される、顔面偏差値爆高のグッドモーニング。時間帯的にはグッドアフタヌーンだろうか。

ぽえーっと、眠気と眼に良い顔面を同時接種したことにより夢心地は継続するが、そこはいかなる状況でも早起きと即切り替えを義務付けられたSRT特殊学園の生徒。

僅か数秒で状況を理解し、顔が面白いように真っ赤に茹で上がる。

 

「...な、なな...っ!」

 

「勉強させてくれと言いつつ居眠りとは、感心しないなまったく」

 

「こ、これはその...!な、なん、で...いやっ、ちょ、えっと...!」

 

寝起きで脳の処理が追いつかないながらも、

 

「うぅ...ごめん...。気持ちよくて、つい寝てしまった...」

 

どうにかこうにか、謝罪にいきつく。

 

「冗談だよ。おまえの働きは把握している。必要なら肩ぐらい貸すさ」

 

「あ、ああ...」

 

「(むすーっ)」

 

(うぅ...ミヤコちゃんからの圧が強くなってる...)

 

「あまり引き摺るなよ。メンタルが影響して作戦で失敗を犯す、というのはありがちなヒューマンエラーだ」

 

「そう、だな...うん、き、気をつける」

 

「(むーっ!)」

 

「ふえぇ...」

 

ぽんぽんと背中を優しく叩かれる様も、今のミヤコにとっては劇薬に等しい。

普段は穏やかで冷静な心を持つ彼女だが、そろそろ激しい怒りに目覚めて髪が金色に輝いて逆立っても不思議では無い。

そっちも散々頭撫でられてるし、それに対してサキも羨ましがっていたからお互い様だろうに、などとは気弱なミユには到底言えはしなかった。

 

「おーいヘッドー!...なにこれどういう状況?」

 

「見たまんま...かな...」

 

「はいはい修羅場ね。二人ここまで拗れてるんだ。泥沼なドラマでしか見たことないから新鮮だわ」

 

「流石に大人の本気の泥沼には敵わないだろうけどね...」

 

ミヤコとサキのやり取りはまだ可愛い方である。

そう解釈すると、なんだかこの状況もミユにとっては微笑ましいものにも思えてきた。

 

「どうした、風倉」

 

「これ、ヘッドのアカウントにメッセージ来てた。確認しようとしたら本人の生体認証無いと開かないみたいで」

 

「勝手に開こうとした行為については一先ず置いておこう。こっちの端末に送ってくれ」

 

「ほいきた」

 

更に追加で支援報酬があった通知を見なかったことにしつつ、未だに餌を催促するぴょんこをケージに戻してから、センはモエが送信したメッセージに目を通す。

 

「差出人は...」

 

顔認証と指紋認証、その他パスワードの壁を越えた先にあったメールの送信先を確認し、

 

「...な」

 

絶句した。

 

 

 

 

《◯◯◯◯です。センくん、元気にしているでしょうか?》

 

 

 

 

「師匠?」

 

「セン、どうした?」

 

普段は凪いだ水面の如き表情が崩れる様子を察知し、ミヤコとサキが気にかける。

二人の声は届かず、彼はメッセージを読み進める。

◯◯◯◯───この名前、忘れるはずもない。

 

(会長...!?)

 

センが敬愛する人物、連邦生徒会長の名だ。

 

《勝手にいなくなって、私を含めた連邦生徒会メンバーは心配しています。ですが、私もこのままいなくなる予定ですのでお相子ということになるのでしょうか》

 

《これは、今の私の状況が状況なため緊急で書いているものです。メッセージを受信する条件は『私』にナニカがあった時、自動的にセンくんの生徒アカウントに転送されるようになっています》

 

《どうか、このメッセージを災いの前触れ、前兆と受け取ってください》

 

《私達が今まで解決してきた事件とは比べ物にならない未曾有の危機が、キヴォトスに迫っています》

 

《本来、あなたを頼るようなことはしたくなかった。そうしたことでセンくんを傷つけてしまい、出ていく要因を作ってしまった。勝手にいなくなって、なんて、見当違いな言い方をしてごめんなさい。あなたが責任を感じる必要は、無いんです。無かったんです》

 

《でも、だけど、どうかもう一度、あなたを頼らせてください。私は諸事情によりこの件に関わることはできません。身勝手で、狡くて、情けないお願いだとは理解しています。けれど、お願いします》

 

《孤高と孤独の違いについて、話したことがありましたね》

 

《あの時のあなたは謙遜するばかりでしたが、今こそ胸を張るべきです》

 

《孤高の在り方、それにより生じる選択と責任、決断の数々を、あなたなら乗り越えられるはずです》

 

《ですから、センくん》

 

《私が心から信頼できる、あなたになら》

 

《この捻じれて歪んだ終着点とは、また別の結果を、そこに繋がる選択肢を、きっと見つけられるはずです》

 

《だから、どうか》

 

文章は、そこで途切れていた。

しばしの呆然。悪戯かとも思ったが、言い回し...この場合だと書き回しなどは、会長のと酷似している。

ならば、これは本当に...、

 

ピロン♪

 

《P.S 私のお下がりを改良した物ですけど、遠慮せず使ってくださいね!きっと役に立つでしょうから!》

 

追加で送られてきた画像を見た。

 

「...ククッ」

 

ああ、そうだ。

 

(やはり、これは会長だ)

 

朗らかで、天然で、柔和で、可憐な、あの人からの願い事だ。

 

「センさん...泣いてるんですか?」

 

「え?」

 

ミユに言われて、センは気づく。

確かに、何年かぶりに溢れる双眸からの違和感が感じ取れた。

それでも、増すのは笑みだ。

深く、鋭利に、少年は口角を三日月に型取る。

 

「師匠、ハンカチを...」

 

「気遣い感謝する、RABBIT1」

 

「───っ!」

 

彼がミヤコをコールサインで呼んだ。

それはつまり、

 

「聞け、RABBIT小隊。これより作戦行動に移る!総員装備を整えてヘリの前に集合しろ!」

 

「「「「りょ、了解!」」」」

 

バタバタと準備に取り掛かる四人。

それとは別に、センは一本電話をかける。

コール先は、ミレニアムサイエンススクールのホワイトハッカー集団ヴェリタス所属、小鈎ハレ。

 

『もしもし?』

 

「ハレ、俺だ。事態は一刻を争う』

 

『センくん!?、ど、どうしたの...?』

 

裏でエナドリの入った缶がすっ飛んだ音が聞こえたが、気にせずセンは続ける。

 

「頼む、ハレ。おまえ(の力)が欲しい」

 

『えぇ!?』

 

ピクリ

 

「どしたんミヤコ、サキ」

 

「いえ、急に戦慄が...」

 

「例えるなら、順序を踏まずにゴールに直撃したかのような衝撃が...」

 

「なんじゃそら」

 

ジェラシー兎二人は訝しむ。

 

『そ、そんな、いきなり言われても...!』

 

ワタワタとあたふたするヴェリタスの天才ハッカー。

詳細が抜けているが故に起こっている勘違いが、ハレの焦りを加速させる。

 

「こんなこと、ハレにしか頼れない(あの自称天才病弱清楚系(笑)美少女(笑)ハッカーに頭を下げるなど死んでも御免)おまえ(の能力)が今必要なんだ」

 

『あぅ...しゅ、しゅごい...ストレートに...言うんだね...』

 

「言っただろう、一刻を争うと。どうだ?受け入れてくれるか?」

 

『や、やっぱりこういうのは、その...段階というかプロセスを踏んでからじゃないと...お互いのことを十分知ってからでも、遅くはないと、思う...よ?』

 

「俺とおまえの間に、そんな面倒な垣根なんて無いも等しいさ」

 

『はう!?』

 

「頼む、ハレ。キミしかいないんだ。今はキミ以外見えない」

 

数秒の沈黙。

ゴクリ、と息を呑み、すぅー...はぁー...と大きな深呼吸ののち、その返事は届いた。

 

『...う、うん』

 

「いいのか!?」

 

『ふ、不束者ですが...よろしく、お願いします』

 

「よし、これで条件はクリアされた!早速で悪いが、連邦生徒会のサーバーに侵入して欲しいんだ。できるか?」

 

『そ、それぐらいお安い御用!』

 

話が変わりすぎて一瞬聞き返そうと思ったが、他でもないセンからの頼み。

些細なことだと切り捨てて、言われるがままにハレは連邦生徒会メインサーバーをジャックする。

 

「キヴォトス全域の異常観測を行うレーダーがある。それのデータと、連邦生徒会の動きを追ってくれ」

 

『わかった.........これかな、数時間前に検出された結果がある。六つの超高濃度のエネルギー体、場所はアビドス砂漠にD.U近郊の廃墟になった遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の...あぁ、あそこか。それと、サンクトゥムタワーの真上』

 

「エネルギー体...目視では確認できないな。サンクトゥムタワーはいつもと変わらん。ミレニアムの方はどうだ?」

 

『こっちも今レーダーを回したけど、確かにエネルギーは探知してる。でも、肝心の正体は全然見えない』

 

「これについて、連邦生徒会はどう動こうとしている?」

 

『各学園の代表や生徒会を招集して、意見交換と対策会議を開くみたい。うちにもそれは届いてるはずだけど...調べてみる.........あ、これっ。リオ会長のサーバーに通知が来てた!セミナーに知らせないと!』

 

「連邦生徒会長代行の特権を使ったか、七神先輩。動きとしては正しいし迅速だが、応じない学園が大半だろう...トリニティとゲヘナは流石に招集に応じるか。あれでも三大マンモス校の二校だ。そっちのセミナーはどうだ?」

 

『今ユウカに伝えて、直ぐにタワーに向かうみたい。他にもレッドウィンター学園とアビドス高等学校が招集に応じてるよ。シャーレの先生も同席するって情報もある』

 

「先生が、そうか。山海経は?」

 

『招集はしてるようだけど...返事は来てないかな』

 

「了解した。なら、ハレは他のヴェリタスのメンバーとエンジニア部、可能ならC&Cに厳戒態勢で待機を命じてくれ」

 

『わかった。C&Cはセミナーと一緒に連邦生徒会に向かうみたいだから、それ以外に通達しておく。センくんはこれからどうするの?』

 

「まだやることがある。ハレの手を借りたい時は連絡するよ」

 

『うん、いつでも頼って欲しい...(なんたって、私達...)』

 

「では、またかける。事態が落ち着いたら埋め合わせもするからな」

 

『りょ、了解!』

 

ブツッ

 

「師匠?」

 

「セン?」

 

「うわなんだお前たち」

 

通信を切ってすぐ、ハイライトを無くしかけている兎二人がズームアップ。

 

「以前も名前が出ていましたが、ハレという方とは」

 

「どういう関係なんだ?」

 

ズイッズイッと迫るミヤコとサキ。

どうしてここまで怒っているのかわからないセンは、頭上に疑問符を浮かべながらも冷静に対処する。

 

「俺が連邦生徒会にいた頃、サイバー関連の事件で力を貸してくれていた子だよ。本作戦に必要なピースだ」

 

「一体何をしようっての?」

 

「あぅ...準備に集中してて忘れてたけど...作戦の詳細を聞いてませんでした...」

 

「言ってなかったか?」

 

「急に装備を整えさせられたんだが?」

 

「そうか、悪かった。時間が惜しくてな」

 

「...一先ず、ハレさんのことは」

 

「置いとくのか?放置しちゃいけないと思うのは私だけか...?」

 

「今は作戦の遂行が最優先事項です。ヘッドRABBIT、詳しい説明を」

 

「この学園都市を救うぞ、おまえ達」

 

「承りました」

 

「判断が早い」

 

恋愛感はどうあれ、ミヤコは全幅の信頼をセンに預けている。

そこに疑う余地も理由もない。

 

「現在、キヴォトス各自治区の計六箇所に高エネルギー体反応が観測された。その謎に対処すべく、俺たちは動く。先ずは近場の廃止された遊園地に向かうぞ」

 

「ルート算出っと。ここからならヘリで10分もかからないよ」

 

「装備も一式揃えた。こっちはいつでも出れる」

 

「結構」

 

それぞれが自身の獲物を持ち、カルバノグの兎達は今か今かとリーダーの号令を待つ。

 

「ではこれより、オペレーション《コンセントレーション》を開始する。各位、気張れよ」

 

「「「「了解!!」」」」

 

気合の入った一声が子ウサギ公園に響き、五人を乗せたSRT学園所有のヘリコプターが空へと飛び立つ。

 

「向かうのは遊園地でいいんだよね?」

 

「ああ、それで問題な」

 

『センくん、センくん!緊急事態!』

 

予定通りに第一目標へと向かおうとするセン達を止めたのは、ハレからの通信だった。

 

「どうした、ハレ」

 

『サンクトゥムタワーに向かってた先生が、行方不明になったって連邦生徒会内のチャットに書かれてる!』

 

「なに!?」

 

『非常対策委員会は先生無しで執り行われるみたいだけど、各校の代表生徒の殆どは先生を頼ってくるみたいで、このままだと委員会の運営が成り立たないかも...!』

 

「ヴェリタスで捜索は可能か?」

 

『やれるだけやってみる、としか言えないかな...!』

 

「やってくれ、俺は俺でカバーに入る」

 

『わかった!』

 

通信を切り、思考を回す。

実際に現地の観測をしてから先生と合流、その後未知なる脅威に対しての対策を彼と立てようと思っていた行動計画に、初っ端から穴が開けられた。

 

(俺が取るべき行動は...連邦生徒会に向かうか?いや、今の俺にその価値は無い。そうするためには別の要因を俺の方で用意しなければ...計画を修正、無駄を省き、最善を導き出せ...!)

 

会長ならどうするか。

きっと、持ち前の柔軟な思考と視野で、悠然と対処する筈。

 

「やるしかないか...!」

 

センは、今し方ハレとの通信に使ったデバイスを手に取り、

 

「もしもし、俺だ。高城センだ。いきなりで悪いが力を貸してくれ」

 

そういった趣旨の連絡を、片っ端から各方面に入れ始めた。

どれも敬語は無く、通信の向こう側にいるのは彼にとって慣れ親しんだ間柄の人物達なのだろう。

 

「ヘッド、これからどうすんの!?」

 

「...」

 

「ヘッド!」

 

「...山海経、山海経に向かえ!アポは今から取る!」

 

「了解!」

 

ヘリが方向転換し、廃墟の遊園地へのルートとは一転。

センの命令により一同は飲食や観光、商業の盛んな学園、山海経に足を伸ばすこととなった。

 

「頼む、出てくれ...!」

 

『はい、もしもし。山海経高級中学校梅花園所属、一年の春原ココナです』

 

「春原クン、俺だ!高城センだ!覚えているか!?」

 

『ふ、ふぇ!?せ、センさん、いきなりどうしたんですか!?というか、生きてたんですか!?二年も音沙汰無しで、門主様も気にかけていたんですよ!?』

 

「それについての謝罪はまた後でする!これから30分以内にそちらへ向かう!門主様との面会がしたい、時間を取れるようキミの方で取り計らってくれないか!?」

 

『きゅ、急にそんなこと言われても...それに、今は門主様はお休み中で...!』

 

「頼む!春原クンだけが頼りなんだ!」

 

『...なら、一つだけお願いします』

 

「なんだ、手短に...」

 

『春原教官と...そうお呼びください』

 

「───」

 

『あの...センさん?』

 

「春原...教官...」

 

ゆっくりと、その呼び方を復唱し、センは落ち着きを取り戻す。

 

「そうか、そうか。教官か...キミは、夢を叶えたんだな」

 

『まだその途上です!ですが、もう一人前のレディと呼んでも、差し支えないかと!』

 

「ああ、そうだな。...ンンッ、急かして悪かった。春原教官。門主様との面会の件、頼めるか?」

 

『わかりました!そこまでセンさんが言うのなら仕方ありません、ココナにお任せください!』

 

「任せるよ」

 

一歩一歩、着実に条件が揃い、クリアされていく。

全てはこの学園都市を救うために。そしてその果て、会長からの期待に応えるために、

 

『はい!こちら便利屋68、陸八魔です!』

 

「喜べ社長、仕事だ」

 

彼は、持ち得る力を全て使う。

 

 






色々と動き出す模様。
クソボケ?知りませんねそんな人は...()

この時点で、というかセンくんが介入している時点でおかしくなっている最終編ストーリー。
頑張って書いていくので、ご期待ください。

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