ワイ『ダンボールは万の事に使いけり』 ミヤコ『流石です師匠』   作:\コメット/

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よう、ネ申 だぜ。




19 幻想(ユメ)じゃない、ワタシ達の黄金時代(オウゴン)。

 

 

電子戦でのイレギュラーがあったとはいえ、戦いはセンの率いる連邦生徒会+αの勝利に終わった。

その余韻に浸ることなく、彼は指示を飛ばす。

 

「よし、これよりサンクトゥムタワーを離れる。カイザーの兵士どもはドローンで外に放っておけ」

 

「了解です」

 

「ここを放棄するのか?せっかく防衛できたのに」

 

「直上に高エネルギー反応が存在している。長居は危険だろう。籠城したのはこいつらを迎え撃つのにちょうどよかったからだ。アオイ、七神先輩達は?」

 

「既にシャーレへの移動を完了しているわ」

 

「わかった。俺たちもヘリに乗り、シャーレに向かおう」

 

戦闘不能のカイザー兵を外に出してやるのは、センの温情だ。事態が収束した後にたっぷりと賠償金を搾り取る都合上、捕虜の扱いに苦言を呈されては減額の口実になりかねない。

尤も、それなりもそれなりの扱いはするが。

 

「気分はどうだ?俗物」

 

ミヤコによって縛り上げられ、敗北という事実に押し潰されるジェネラルに近づく。

相手が反抗できないのをいいことに、ズイッと限界まで顔を近づけ、嘲笑を手向けた。

 

「...ッ」

 

「日が差すおかげで、貴様の痴態がよく見えるな。───ふむ、こんな顔だったのか、愚かにも戦いを挑み、散々な指揮で大敗を喫した指揮官のご尊顔は」

 

「この、ガキィ...!」

 

「学園都市の調律を保つ役割を担う連邦生徒会に楯突く。罪状はなんだろうな、国家転覆罪か?成功すれば無罪になるからお得だろうが、こうして失敗して仕舞えば元も子もない...いやこれは失敬。国家転覆などという大それたことはできていないな。よくて建造物侵入罪だろう。笑ってやる」

 

「今に...」

 

「今に見ていろ?ハッ、貴様に次は無い。これだけの失態を演じて次回があると考えるとは、どうやら脳内が花畑で出来ていると見える。階級も下げず地位も変えられぬまま将軍を続投させられるなら、貴様と同じく命じる上司も無能らしい。規模だけはでかいグループの中から斡旋する方がまだ有意義だろうに。おっと、質を問わずに雇うおかげでそれなりの人材しかおらず、その天井が貴様なら目も当てられないな。カイザーコーポレーションの明日が不安でならないよ」

 

1、いや1も言わせてもらえない。0.1言えば120の煽りで返ってくるので、ジェネラルはワナワナと怒りに震えることしかできなかった。

 

「プレジデントに伝えろ、賠償金を用意しておけと。そして、今後不審なそぶりの一つでも見せれば即粛清してやるともな」

 

珍しく怒気を孕んだ脅しを見せるセンに、直接それを浴びたジェネラルと側から眺めるミヤコ達は息を呑む。

センが多額の賠償金と接触禁止で済ませようとするのには理由があった。

それは、カイザーという会社が市民に与えている恩恵が無視できないということ。センの力を持ってすれば大手中の大手企業であるカイザーを潰すことすら容易いが、彼らが消失すればキヴォトス市民の生活基盤が成り立たなくなる。

よって、センはリミットとラインを設けた。次は無い、もし下手に出たならば完膚なきまでに叩きのめす。相手がキヴォトスを支える大企業であれ、自らの私欲のために国家を牛耳ろうとするなど言語道断。

 

(今回も、こいつらの介入さえ無ければ色彩に対してもっと早期に、入念な対応ができていた。制空権を取られ、二手も三手も遅れを取っているこの状況...これが致命的なミスに繋がらなければいいが)

 

無事に事が済んだなら、そのことも踏まえて上乗せで請求するとしよう。

そして、こいつらを潰したら新しい企業でも設立しよう。

連邦生徒会時代に稼ぎに稼いで溜まりに溜まっていた自身の貯蓄額、どうせマイホームはもう御免だし、新規ビジネスでも始めようとセンは思案した。

 

 

 

********************

 

 

 

「センくん」

 

「先生、ご無事で何よりです」

 

モエの操縦するヘリでセンを出迎えたのは、カイザーに拉致されていた先生だった。

センが会議へ出席し、タワーを乗っ取ろうと企むジェネラル達との交戦中、RABBIT小隊を遊ばせていたわけでは無い。

ハレと連携しながら、先生の捜索に当たっていたのだ。

救出は成功し、最後の詰めとしてここまで駆けつけてくれたのである。

 

「一時は肝を冷やしました。お怪我などは?」

 

「この通り、五体満足だよ。心配してくれてありがとう」

 

「いえ、礼なら救出した月雪達に。風倉、出してくれ。ミユ嬢を回収してシャーレに向かう」

 

「はいはーい」

 

セン、RABBIT小隊、先生、アオイを乗せたSRTのヘリコプターが、タワーを離れる。

 

「まさか、SRTの生徒を従えているだなんて...あなたこそ、国家転覆を考えていると他の室長に疑われてもおかしくないわよ?」

 

「言わせておけばいい。どうせ言うだけ言って、保身を鑑みて何もしない奴らだ。室長といえば、不知火先輩は?」

 

今の今まで本当に忘れていた。

会議中、防衛室長の椅子が空席だった時も花でも摘みに行ってるのだろうと思考から外すくらいには、カヤのことをセンは頭から放っていたのである。

 

「先生がいなくなった時と同時刻ぐらいから連絡が取れなくなって...キヴォトスが一大事だっていうのに、どこで油を売ってるのかしら」

 

「自分で得意だと錯覚している暗躍に失敗して、独房へぶち込まれてるんじゃないか?」

 

「真面目に考えてちょうだい」

 

「これでも真面目なんだがな」

 

「...あの、お二人はどういった仲なのですか?」

 

カヤの安否はさておき、軽口を叩き合う二人を見てミヤコが問いを投げた。

 

「アオイは俺の同期だ。連邦生徒会在籍時に苦楽を共にした、親友と言っても過言ではない間柄だよ」

 

「そ、そうね」

 

親友、という評価。

これに対してアオイの心中の大半を喜びが占めたが、いや親友ですかそうですかと納得のいかない感情も同時に湧く。

 

(確かに、彼からのそういったアプローチは皆無だったけれど...)

 

『この仕事は俺がやる、アオイはこっちを。データ整理は得意だろう?』

 

『今日は定時で帰れそうだな。アユムも誘って飯でもどうだ?』

 

『今朝から顔色が悪いぞ。少し寝てこい、場は俺が受け持つ』

 

『先輩から嫌味?キミがその人よりも優秀な証拠だ。妬ましいんだよ、きっと。言わせておけばいい。酷ければまた俺に言ってくれ』

 

『やはり、アオイは頼りになるな』

 

思い出を振り返れば、こちらを気遣い些細なことでも気づいて発言してくる思わせぶりな態度ばかり。

当時どれだけ悶々とした日々を送っていたことか。

 

「歯切れが悪いな。親友と思っていたのは俺だけか?」

 

「そ、そういう意味じゃ...単にあなたの中で私への評価が高かったことに驚いただけよ」

 

「ここぞという時に頼りになるのはキミだと、いつも言っていただろう。俺の同期はアオイとアユムをはじめ、優秀な人材が多かったがキミはその中でも最たる例だ」

 

「それ、主席のあなたが言うの?」

 

「当てつけに聞こえたか?」

 

「いいえ。センくんは意外と素直だから、そんなつもりがないことは重々承知の上です」

 

「それにしては何か含みがありそうだ」

 

「別に?」

 

(うむむっ)

 

目の前で繰り出されるイチャつきにも似た会話。

センに好意を寄せるミヤコだから気づき得たことだが、アオイからは極大の矢印がセンへと向けられているように感じる。

 

「(気づいたか、ミヤコ)」

 

サキも同様に、二人の仲を訝しんでいるようだ。

 

「(ハレさんに続いて、思わぬライバル登場です。まさか中等部一年から繋がりのある方が師匠を好いているとは)」

 

「(こいつのルックスと人間性を、私たちは甘く見ていたな。もしかすると、各学園に一人以上は好意を抱いてる人がいるんじゃないか?)」

 

「(あり得ますね。以前仰っていましたが、トリニティとは関わりがないという話でしたので、それ以外の主要校には確実にいると仮定して詰めていきましょう)」

 

さっきそのトリニティから一人増えたよ。

初手で計画にほつれが生じているとは、流石の二人も気づかなかった。

 

「(再会まで日が空いたとはいえ、過ごした年数は向こうが上。師匠はアオイさんのことを親友と言っておりその気はなさそうですが、どこかのタイミングで恋心に転じてもおかしくありません)」

 

「(なら、様子見は危険だ。けど下手に動くこともできないし...)」

 

ここは一つ、牽制を入れておこう。

4回表2アウト、ランナー二塁の場面。しっとりラビットバッテリーのキャッチャーサキは、エースミヤコに牽制のサインを出した。

二人の話が一区切り済んだら、自己紹介を入れて釘を刺すという作戦だ。

 

「何にせよ、キミは腹を割って話せる数少ない友人の一人というわけだ」

 

「そういうことにしておいてあげる」

 

「あの...」

 

「ん?ああ、そういえばアオイにおまえ達を紹介するのを忘れていたな。アオイ、こいつらはSRTのRABBIT小隊、まだ一年生ながら実力は申し分ない」

 

「一年であれだけのパフォーマンスを発揮できるのね。流石に会長お抱えの学園だっただけのことはあるわ」

 

「小隊長の月雪ミヤコ、ポイントマンの空井サキ、操縦してるのがオペの風倉モエ、そして...」

 

ヘリが減速し、サイドの扉が開かれ、縄梯子が下される。

 

「よいしょ...RABBIT4、帰投しました...」

 

梯子を登って一息、小隊の中でも随一の腕を誇る少女が帰還した。

 

「ご苦労、ミユ嬢。アオイ、こちらが狙撃手の霞沢ミユだ」

 

「...もしかして、ジェネラルの腕を撃ち落としたのって」

 

「彼女の狙撃だ」

 

「ここからサンクトゥムタワーまで2kmは離れてるのだけれど...すごいわね、霞沢さん」

 

「あ、ありがとうございます...センさん、この方は?」

 

「財務室長の扇喜アオイ、俺の元同僚だ」

 

「はじめまして」

 

「は、はじめまして...」

 

職人技に敬意を評して、アオイは手袋を外して握手を求め、対するミユもそれに応じた。

その裏で、計画外のことが起こり焦るしっとりバッテリー。

 

「(おい、全部センに軽く済まされたし注目もミユに取られたんだが)」

 

「(間が悪いですね...)」

 

牽制が悪送球になってそのまま本塁生還を許してしまった気分だ。

仮想実況があーあー言っていて五月蝿い。

 

「ミユ嬢はな、ミユ嬢でな、ミユ嬢なんだ」

 

「はいはい」

 

「「(というかミユのこと気に入り過ぎでは...?)」」

 

隣に座らせ労いに彼女の頭を撫でるセンの口は饒舌で、目はカブトムシを見つけた少年の如く輝いている。

特別扱いとはいかずとも贔屓目でミユを育成しているのは分かっていたが、まさかここまで入れ込んでいるとは。

ミユもミユで戸惑いつつも、満更でない様子で頭頂部を差し出している。技量は十分なので、自己肯定感を高めるべく褒めまくるというのが教育方針らしい。

 

「ヘッド、そろそろシャーレに着くよ」

 

「わかった。先生、急ですが提案を」

 

「なにかな」

 

「現在キヴォトス上空に高濃度のエネルギー体が存在しているのはご存知かと思います。その対処のため、改めて対策会議を開きたいのです。シャーレの会議室を使わせてはいただけませんか?」

 

「うん、構わないよ。各校から生徒を招集して状況と情報を共有した方がいいと思ったから、こっちで選出してシャーレで待機してもらってる」

 

「話が早くて助かります。それ以外で、俺の補佐を頼みたい人材が三人ほどいるので、勝手ですが招集させていただきます」

 

「わかった」

 

「先生はエネルギー体の正体に心当たりなどはありますか?」

 

「うーん、残念だけど無いかな。ただ、あれは純粋な力の塊だと思うんだ。無機質で、器に注がれる前の水のような。形を与えられて姿を変えるもの、と私は思ってる」

 

「...なるほど。仮にそれが的を射ているなら、なぜ色彩はエネルギーを学園都市にぶつける、などといった手法を取らないのか。火力として転用不可能な力の奔流、先生が言うように、何かに注ぎ込むことで初めて真価を発揮する代物なのかもしれません」

 

「態々上空に滞留させているのは、まだ器の準備ができていないからなのかも。事前にエネルギー体を霧散させることは...」

 

「こちらでSRTのミサイルを虚空に向けて放ちましたが、通過するのみで成果は得られませんでした。力業でどうにかできる代物では無いようです」

 

「となると、やっぱりナニカが顕現してからの総力戦になるか」

 

「その可能性が高いかと」

 

「それまでにできる限りの準備をしておこう。私も出来る限りを尽くすよ」

 

「心強いです」

 

思考パターンが似通っているのか、トントン拍子で話が煮詰められていく。

これがキヴォトスで1、2を争う指揮官同士の会話か、とヘリに乗り合わせている面々は生唾を飲み込んだその時、

 

大気を震わす衝撃が、ヘリを襲った。

 

「わわっ!?」

 

「敵襲か!?」

 

「うんにゃ、強風っぽい!でもビル風じゃなさそう、あくまで人為的なものだこれ!」

 

「降りれるか?」

 

「無問題!───なんだけどさ、ヘッド。なんか空おかしくない?」

 

「ん?」

 

モエに言われ、天を見上げるセン。

他のメンバーも同様に、窓に顔を近づけ空を見た。

快晴だった青空は、みるみるうちに不気味な血の色へと変貌を遂げている。

 

「...おでましというわけか」

 

自分たちが先ほどまでいたサンクトゥムタワーのその直上、緋色に染まる虚空から降り立つ、歪な形をした巨大な塔。

二つが衝突し合った結果、勝ったのは後者。元々地に足を付けていたサンクトゥムタワーの全体に亀裂が走り、見るも無惨に崩壊した。

まさに、世界の終末と呼ぶに足る異常事態だ。

 

「ハレ、こちらセン。サンクトゥムタワーの倒壊を確認。代わって新しい黒い塔が降ってきた。ヴェリタスとエンジニア部で解析を頼む」

 

『了解。ミレニアムや他の地域でも黒い塔の出現を確認、数はそちらのと合わせて6つ。これから解析に入るよ』

 

「わかった。他に何か変わったことはあるか?」

 

『...ちょうど今、黒い塔から敵性個体の出現を確認。数は数百、数千』

 

「数千───ならば許容範囲内だ」

 

思考を回すまでもない。

そこは既に、予測と想定でカバーしてある。

 

「月雪、皆に繋げろ」

 

「わかりました」

 

「アオイ、連邦生徒会とシャーレからの声明をクロノスへ。自分の命を第一に考え、安全な場所へ避難しろと。敵の鎮圧はこちらに任せろともな」

 

「わかったわ」

 

「先生、暫し俺が指揮を取ります。よろしいですか?」

 

「うん、任せるよ。私としても、センくんの手腕を間近で見て勉強させて欲しいな」

 

「フッ...嬉しいことを言ってくださる」

 

「師匠、準備整いました」

 

「結構───さて、先ずは前哨戦。先手を取られはしたが、流れはどちらのものでも無い」

 

故に、展開は掴ませてもらう。

 

学園都市キヴォトス全域に居るその者達へ指令を届けるべく、センは声を張り上げた。

 

 

 

********************

 

 

 

あの頃はよかった。

 

年甲斐もなく、そう思ってしまう。

 

「あァ?」

 

「ですから、備品を勝手に持ち出すのはやめてくださいと言ってるんです。経費で私物を買うのも控えていただけると助かります」

 

「くっだらねェ。ここの責任者は私なんだから、どうしようと私の自由だろうが」

 

「ぶ、部長すみません!こいつこれで四回目の出向で焦ってるんですよ!今回は大目に見てもらえると...ほら、オマエも謝れって!」

 

「...すみませんでした」

 

「...チッ、エリート気取りが」

 

舌を打ち、部長と呼ばれる生徒は電子タバコを口にする。

 

(ああ、腐ってるなぁ)

 

ここはゲヘナにあるヴァルキューレの派出所。

D.Uの本部でさえ腐敗が進んでいる今、元々治安の悪いゲヘナ自治区の現況はお察しである。

経費は使い込む、仕事はサボる、喫煙飲酒は日常茶飯事と、普通のヴァルキューレ生なら逃避もやむなしだ。

 

(こんな筈じゃなかったんだけどな)

 

あの頃はよかった。

正義に燃え、正義を追求し、人々の役に立つのは楽しかったし、誇りになった。

全ては彼───高城センのおかげだ。

当時の自分達をまとめ上げ、実績を叩き出し、黄金世代と呼ばれるまで押し上げた。

誰もが彼の背中を追っていたし、誰もが彼の行動を信じて疑わなかった。

 

だから、彼が連邦生徒会を瓦解させるべく動いていたという噂が流れた時は絶対に否だと断言できた。

 

現在高等部二年生のヴァルキューレと連邦生徒会の生徒は、彼の冤罪を証明するべく力を結集するも新しく防衛室長となった不知火カヤの手により捜査は困窮。証拠という証拠を揉み消され、遂には全員の地方や近郊の小さい部署への出向が言い渡された。

それからは凄惨だ。

正しいことをすれば嗤われ、改善を進めようとすれば力づくで止められる。出る杭となり、打たれる日々が続いた。

幾度となく立ち上がるも、向こうの都合が悪くなれば出向、出向、出向。

キャンプファイヤーの如く燃え滾っていた炎は、今や蝋燭の小さな火に過ぎず、それでも消えないのは、心のどこかで高城センの帰還を望んでいるから。

けれど、それももう限界。

 

(いい加減、現実を見ろってことなのか)

 

高城センは、多分死んだ。

黄金時代を築き上げた自分達の頭目は、いなくなった。

あの頃の青春は、戻ってこない。

そう思っていた。

 

昼休憩時、その電話がかかってくるまでは。

 

「お昼時になんだよ...非通知だし。はい、もしもし?」

 

 

 

『俺だ。高城センだ』

 

 

 

椅子から転げ落ちた。

この声、通話越しからでも分かるこの覇気、間違いない。

疑うべくも、違わぬこともない。

消えかけていた火が、天を突く勢いで再点火を果たした。

 

「せ、センさん...!私です、桂木です!待っていた...貴方をずっと待っていました!」

 

『すまなかった。時間が無いから手短に話すぞ』

 

「はい、はい...!」

 

「んだ桂木テメェ、メシと電話する暇あったら私の仕事でも片付けとけ!それとも、また出向でもすぎょばが!?」

 

有難(アザ)っス...ワタシ、出向でもクビでも構いませんので、今日は早上がりします」

 

数年前に培った体術でクソ上司をノし、彼女───桂木は昼飯をかき込み外へ出た。

ゲヘナ自治区は生憎の曇天、しかし隙間から辛うじて、少女を照らす光が差し込んだ。

 

始動(はじま)る...ワタシ達の青春が、再始動(またはじま)るんだ...!!」

 

 

 

その“伝説(レジェンド)のひと声”は瞬く間に、

 

真実(マジ)かよ桂木!?」

 

退学を選んだ者、

 

「高城さんが...!」

 

違う道を歩き出した者、

 

「高城さんが!!」

 

桂木と同じく帰還を信じていた者、

 

「“幻想(ユメ)”じゃねえよな...!?」

 

防衛室長に刃向かい地方へ飛ばされた者、

 

「還って来る...オレ達の“黄金時代(オウゴン)”が還って来る!!」

 

アオハルを忘れられなかった者、

 

「すぐ“帰郷”する...!!」

 

キヴォトスに散った同級生の”正義“に火を付けた!!!

 

 

 

それが、先生が行方不明になって直ぐの話。

あらゆる対策を講じるべく、センは同級生を頼り独自に防衛網を構築した。

そして、自身がサンクトゥムの防衛にあたっている最中、

 

『皆さん、お初にお目にかかります。私は月雪ミヤコ、高城センの一番弟子です』

 

先生を救出したミヤコは、センの同級生達とテレビ電話越しにコンタクトを計っていた。

 

「高城さんの、弟子...!」

 

「あの顔はたしか、先日D.Uの公園で大立ち回りを演じてみせたSRTの一年生か!?」

 

「まさかセンさん、SRTを傘下に加えているのか...!?」

 

「サスガダァ...!」

 

「あの目つきを見てみろ、昔の高城さんにそっくりだ。一番弟子ってのも満更嘘では無い」

 

「風向き、変わりそうね」

 

「尤も、ワタシらにあの人を疑う気なんて更々無いけどな!」

 

「要件を話してくれ、月雪クン。ワタシたちは何をすればいい?あの人が指示していた民間人の退避、武装の整備は8割方済んでいるが」

 

『既存の銃火器での対処、これでは部が悪いというのが師匠の見解です。なので、皆さんの新しい剣となる武装を支給します』

 

「それは有難い。で、その武装というのは?」

 

『ダンボールです』

 

「What‘s?」

 

『ダンボールです』

 

思わず英語で聞き返してしまった一同。

だが、彼女らは二年前までセンを信じてついて来ていた者達である。

彼の背中、隣に少しでも近づこうと思考予測や勉学を怠らなかった勤勉者の集まりなのだ。

 

「───なるほど、そういうことか」

 

故に、センの意図に気づくのはコンマ数秒で事足りた。

 

「同志達に知らせろ、街中のダンボールをかき集めてこいと!」

 

「「「「了解!!!」」」」

 

「あとはこちらに任せてもらおう。月雪クン、キミは高城さんの助けになってやってくれ」

 

『お心遣い、感謝します』

 

ミヤコは通話を切り、一息。

 

「これが、師匠の同級生の方々...」

 

自分でさえダンボールに理解を示すのに半日を要した。

それを一瞬で、しかも武装に転用するべく動くだなんて、センへの理解度の高さが窺える。

 

「サンクトゥムタワーに向かいましょう。師匠が待っています」

 

そうして、チェックメイトの一手としてRABBIT小隊はセンの元へと馳せ参じたのであった。

 

 

 

********************

 

 

 

『今宵、我々の“正義”をキヴォトスに響かせる』

 

赤黒く染まった空の下、キヴォトス各地に降り立った黒い塔、虚妄のサンクトゥムタワー。

そこから敵性個体がわんさと出現する中、それらを迎え撃つ布陣を執る彼女らの耳に彼の声は届いていた。

 

『相手の詳細は知れず。しかし、敵はたかだか数千の雑兵だ。再び集ったキミ達の熱意、そこに加わる新たな武器が合わされば、勝利は容易い!』

 

その通り。

皆が口を揃えて彼の言葉に賛同する。

 

『証明しろ、正義を。そして轟かせろ。キヴォトスに我ら有り』

 

取り出したるは、茶色の厚紙。

 

『我らに、ダンボール有り!!』

 

「「「「うおおおお!!!」」」」

 

『この戦いは、謂わば余興!色彩という脅威との戦い、その今後を占う前哨戦だ!必ず勝って見せろ、恐れることはない!キヴォトスの正義は、未来は、我らが“神”と共にある!!』

 

「「「「オールハイル・ダンボール!!オールハイル・ダンボール!!」」」」

 

押し寄せる敵の波、殺戮の限りを尽くさんとする暴威の群れ。

それらに臆せず立ち塞がるのは、二年前に連邦生徒会とヴァルキューレの地位を確立させた高城センの”黄金時代(オウゴン)“。

 

『おまえ達、”(ダンボール)“キメろォォ!!』

 

「「「「おらああああ!!!」」」」

 

ここに、異宗教vs異邦人の賽が投げられた。

 

 

 






なんなの、この人たち...(n回目


突然現れた色彩の化け物よりも、ダンボール掲げて敵に向かっていく奴らの方が怖い。市民からしたら本当になんなんだよおまえら、どこから湧いたんだよマジで案件。

センくんの同期は彼の台頭もあり実力と結束力は群を抜いており、当時は犯罪のは文字もない程に治安を維持した日もありました。本作品で登場したヴァルキューレの生徒で彼のことを知らなかったのは、二年生組の殆どが地方や郊外に出向を命じられているからで、そのため後輩に語り継ぐ人もいなかったのです。

彼女達はセンくんの神性(カリスマ)に魅せられており、信仰、信奉、心酔してどっぷり浸かっています。彼の考えることを体ではなく心で察する事ができるので、チーム間での連携力が半端ないです。

口調が荒くなってるのは久しぶりの出発でハイになっているのと、ダンボールをキメているからです。普段は巷で愛される交番のお巡りさんをやっています。

決して薬に手をつけているわけではなく、寧ろ率先してそれらを摘発する側です。誓ってヤクはやってません。マジで。


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