ワイ『ダンボールは万の事に使いけり』 ミヤコ『流石です師匠』 作:\コメット/
設定盛り盛り。
「かれこれ二年ぶりでしょうか。あなたとこうして顔を合わせるのは」
ヴァルキューレ警察学校の取調室。
犯罪者を尋問し、聴取を得るための部屋にて、その取調べは行われていた。
「───」
容疑者、高城セン。
元SRT特殊学園所属のRABBIT小隊と結託し、連邦生徒会やヴァルキューレの地位を脅かそうとした疑いをかけられている少年だ。
それに対する尋問官は、連邦生徒会の行政委員会、防衛室の室長を担当する不知火カヤ。
薄味の桃色の髪と、柔らかな表情、キッチリと着こなした制服がトレードマークの彼女が、態々、センへの取調べを希望したという。
「学園に退学願書を出したと聞いた時は、一体どうしたのかと心配したのですよ。あなたほどの方が、何故に職を辞したのかと。ヴァルキューレから特別留学という形で連邦生徒会に顔を出していたあなたを、当時在籍していたメンバーで知らない人はいません」
私も含めて。
薄らと瞼を開き、センの表情を吟味するように見つめるカヤ。
「現在の連邦生徒会長代理とは、よく衝突していましたね。保守的な考えの彼女、革新的な考えのあなた。まさに一触即発...言い争う二人を会長が困ったように笑いながら眺める、顔を合わせるたびに、それは起こっていました」
高等部一年生ながら生徒会長の肩書きを持つ少女。
その右腕として、統括室で次期主席行政官とまで言われていた七神リン。
そして、中等部三年生で戦術や法案に関して口を出していた高城セン。
三人の繰り広げる会話はハイレベルであり、話に入れる者はたとえ当時の各室長でも一部に限られた。
「超人の生徒会長、理知的な統括室主席行政官、型破りな発想を持つヴァルキューレ警察学校創設以来の天才。あなた方がいればここ数年のキヴォトスは安泰、誰もがそう思い、同時に恐れ、妬み、僻んだ。私は違いますがね。リン行政官は言うに及ばず...あなたに関しては、実際に引導を突きつけましたから」
クツクツと、八方美人の口からは含み笑いが漏れる。
「こんな場所でそんな話を?とお思いでしょうか。安心してください。私の意向で監視カメラの映像は差し替えてあります。過去にあなたを貶めた真相を知るのは、今後もあなたと私の二人だけです」
本性の片鱗を現すカヤだが、センはその様を見ていない。
彼女がこの取調室を訪れて以降、彼はカヤの姿を透過してその先の扉を見つめている。
声も、存在も、彼は認識していないのだ。
そして、カヤはそれを知る由もない。
「まぁ、いきなり行方を眩ませたのには驚きましたが。まさかあんな人気もないみずぼらしい公園で発見されるだなんて。しかも、SRTの生徒と一緒に。一体何を考えていたのでしょうか。未熟な彼女らを唆しての革命...真相がそうなのであれば、あなたを悠長に野へ放る訳にもいきません」
「...」
「不当な扱いだ、自分はそんなことを考えてはいない?例えそうだとしても、今のあなたは単なる蟻。事実の改竄なんていくらでも容易なんですよ。この私にかかれば」
防衛室長用の制服、それを強調させるよう誇らしげに胸を張る彼女の自信は、揺るぎない。
悲しきかな、見下している行政官にはある豊満な揺れるものは無いが。
「どちらがいいですか?何も成せぬまま公園で野垂れ死ぬのと、矯正局の不味いご飯を食べて惰眠を貪るのと。私は不安要素を残すほど甘くはないので、無論後者をお勧めしたいところですが...実のところ、私はあなたを非常に評価しているのですよ」
今回、カヤはなにもセンを煽りに来たわけではない。
いや、ついでにそうできたらいいとは思っていただろうが、本来の目的は別にある。
「今日は高城さん、あなたをスカウトしにここへ来ました」
悪い話ではないでしょう?
瞼の奥で光る空色の、濁りのある瞳が少年を視る。
「あなたの能力は言うまでもありません。キヴォトスにおいて、比類無き戦術家。あの先生すら凌駕する膨大な戦略論を、これからの連邦生徒会で役立てて欲しいのです。表立っての台頭は当分先になるでしょうが、それまでは相応の報酬を用意することを約束します」
「───」
「あぁ、ですが条件があります。あなたの名前を連邦生徒会メンバーに明かすこと、これは駄目です。それと、過去の件を水に流すこと。反乱を起こさないこと。この三つさえ守っていただければ、あなたの手錠を外し、互いにとって有意義な協力関係にすることを誓いましょう」
足元を見て、自身の方が利益になる契約を。
組織と個人のリスクリターンを考える立場のカヤにとって、交渉等は日常茶飯事だ。
綺麗なものから、汚いものまで。綺麗なものを汚くし、汚いものを綺麗なものに見せかけることすらも、防衛室長の権限を持ってすれば難しいことではない。
「あなたはジョーカーです。それも、トリックを使うことで何度でも出せる文字通りのチートカード。あなた一人いるだけで、各学園の中心人物...あのゲヘナ風紀委員長や正義実現委員会の委員長に匹敵します。後々厄介になるでしょうシャーレへの対抗手段にも...ふふふ、夢が膨らみますね」
長い年月を経て組み上げてきた計画の一部を、急遽改竄する。
一歩間違えれば愚策になってしまう危ない橋だが、加えるカードが状況を一変させるほどの力を持っていれば話は別だ。
SRTの生徒ではあるが、一年生でまだ未熟な四人を従えてヴァルキューレの戦力を全壊、果てにはシャーレをも打ち負かした手腕。計画のアップグレードこそあれど、成功確率が下がることは絶対に無い。
「必要であれば、後日書面を持ってきましょう。契約書は信頼をより強固にし、深めるものと私は思っていますので」
「...」
「それで、どうでしょうか。この機会に私の下につくというのは」
未だ少年の口は開かない。
カヤが部屋に入ってからというもの、センは彼女の後ろにある虚空を見つめるだけだ。
それは、これからも変わらない。
「失礼します。室長、そろそろお時間です」
三度のノックの後、看守と見受けられる少女が扉を開けた。
「あら、もうそんな時間ですか。話をしていると、時が経つのを忘れてしま」
「看守さん、ちょうどよかった。扉はそのまま開けていてくれ」
ここで、初めて、センは人を見て、人を認知し、声を発した。
「でかい羽虫がいる。五月蝿くて敵わん」
「───」
沈黙が、空間を支配した。
看守の驚愕とカヤの絶句がセン一人に対して浴びせられているが、本人はそんなことはお構いなし。
言いたいことを言っただけ、と普段と変わらない表情のまま、虚空を見つめる作業を再開する。
「...そうですか、そうですか」
一人納得したように椅子から立ち上がるカヤ。
「交渉は決裂、ということですね」
キッと睨みを効かせて一瞥。少年の双眼は不変のまま、尚もカヤを見ようとはしない。
取るに足らないと決定づけていた相手からの侮辱に、流石の彼女も憤りを僅かながら噴出させる。
「処遇は追って伝えます。それでは」
勢いよく扉が閉められ、そこにはセンだけが残った。
「あの様子だと、チェスの腕は上達していないな」
キイィィッ!と影でハンカチを噛み悔しがっているであろうカヤの姿を想像して、一笑。
彼女とは暇を持て余した時間を利用して、互いに駒を動かし合った。結果はどれもセンの圧勝ではあったが、諦めずに何度も挑んできた気概にはそれなりの賞賛を贈っている。
「不知火先輩、あなたは他人と歩幅を合わせる努力をした方がいい。俺にも見受けられる欠点だが、あなたはそれが顕著だ。致命的と言える程に」
不知火カヤは、決して無能という訳ではない。
能力はセンも認めるところであり、内に潜める野心や野望にも一定の評価を下していた。
だが、ただ一人突っ走ることは王道ではない。
歩調を調整し、周囲が追走することをヨシとする現状を作り出さなければ、それは単なる孤独だ。
孤高と孤独を履き違えたが故に、将来カヤは落魄れるだろう。
「そして、詰めが甘い」
手錠で繋がれた手がポケットから取り出したのは、小型の機械。
『失礼します...お久しぶりですね、高城さん』
「ヘイロー無しだからとボディーチェックを怠ったな。俺が常にコレを持ち歩いていることを失念しているとは」
コンビニのイートインコーナー(出禁5店)にてフル充電を常に保たせているボイスレコーダーからは、取調室にてカヤが発した言葉の全てが録音されている。
「これだけでは証拠として弱いが...知っているか?先輩。カードゲームというのは、様々な手札を駆使して相手を詰みへと持っていくものだと」
先ずは一枚、コンボパーツを獲得。
「チート行為では経験できない本物の勝利の美酒の味わい方を、いずれ俺自ら教授してやろう」
いずれ、いずれな。
そんな機会は二度と訪れないであろうと断じて、センは再び入室してきた看守の後に続き、自身の独房へと向かった。
高城セン
論外
********************
-翌日-
「高城セン、出ろ」
監獄生活一日目。
朝食を摂り終えて暫く経った後、センの檻に来訪者が一人。
「...先輩?」
思わぬ人物に訝しむ少年。それもそのはず、彼の目の前にいるのはかの狂犬、公安局局長の尾刃カンナだった。
「一体何の...」
「釈放だ。手錠を外すから両手を出せ」
「...釈放?」
言われるがままに腕を差し出すと、小型の鍵で錠を外される。
そして、ついてこいと誘導され、彼はカンナの後を追う。
「何の冗談ですか、釈放って」
「シャーレの先生に感謝するんだな。あの人が防衛室長に色々と取り計らってくれた。一先ずは自由の身だよ、おまえは」
「...」
「不服か?まぁ、気持ちは分かる。せっかくの三食飯付きの生活が、まさか一日で終わるなんて思わなかっただろうからな」
「別にそういう訳では」
「違うのか?図々しく2杯目をよそいにいったと見張りからは聞いているが」
「朝食は多めに食べるんですよ、俺は。それに、あれらが残飯になることが耐えられません」
一瞬、キョトンとするカンナ。次いで、普段見せる不機嫌そうな表情を崩し、吹き出した。
「ははっ...そうだな。確かに勿体無いな。公園生活の賜物か?」
「ええ。毎日が死と隣り合わせでした。ただ、慣れてくれば面白いものです」
「侮れないな、慣れとは」
私にも言えたことか。
そう独りごちるカンナの表情に、影が差す。
「懐かしいよ、二年前が。ただがむしゃらに、責任なんてものを気にせず正義のために奔走していた日々が」
「俺もです。けれど、同時に昨日のことのように思い出せる。それだけあの学園生活は充実していました」
「...その、高城」
立ち止まり、面と向かって、カンナはセンを見据える。
急にかしこまった彼女に応えるように、彼もまたカンナの視線を自身のモノと重ねた。
「なんですか、先輩」
「遅くなったが、あの日...おまえを信じてやれなくて、悪かった...本当に、すまなかった」
深々と、その頭が下げられる。
その光景を一瞬でも見たくないがために、センは顔を上げさせた。
「謝らないでください。あなたの立場上、そうせざるを得なかった。理解しています。───こちらこそ、昨日は大人気なかった。あれは単なる八つ当たりだ。上と板挟みにしてしまったこと、昨日のこと、謝罪します」
「高城...」
「尤も、俺よりも泣かせた月雪に謝って欲しいですがね。あなたなりの思いやりと意図があったとはいえ、言い過ぎだ」
「痛いところを...それについては、おまえから言っといてくれ。今更面と向かって謝れば、向こうも気不味いだろう」
「いやいや、気不味いのは先輩だけでしょう。ご自分でどうぞ。そもそも、俺はもう月雪含めてRABBIT小隊と会うことはないので」
先生が何やら話をつけてくれたらしいが、それなら自身の頼みも叶えてくれているはず。
そうであれば、たった数日の付き合いになる彼女らとは会う理由も無くなる。
一抹の寂しさを感じるが、センは内心納得できている。
「あぁ、そうか。おまえは知らないのか」
「は?」
「ロビーに行けば分かる。私はここまでだ、あとは自分でどうするか決めるといい...が、その前に。高城、ヴァルキューレに戻る気はないか?」
「無いですね、これっぽっちも」
「───そうか。断られると分かっていたが、即答か。まぁ、おまえにとってはそれが正解だろう」
「先輩こそ、いつまで自分に嘘をつき続けるつもりですか」
「生憎と死ぬまでだな。人間誰しも、成長していくにつれて嘘を抱えて生きることになる。大人になるとはそういう意味らしい」
達者でな。
背を向け、小さく手を振って、カンナはセンに別れを告げた。
「お互いなりたくないものですね、そんな大人には」
去り行く後ろ姿を、彼は見えなくなるまで目で追い続ける。
かつて肩を並べ、未来のエースとまで呼ばれた少女の背中を、追い続ける。
********************
「変わらないな、ここも」
ロビーへ行きがてら、在校生の邪魔にならない範囲で校内を散策してみたが、どこもかしこも二年前のままだ。
懐かしさを好ましく思うのと同時に、建て付けの悪い扉、錆が隠せていない備品、空きの目立つ装備の棚などに改善が見えないことから、連邦生徒会からヴァルキューレ警察学校への期待値の度合いが測れる。
「俺がいた時の方が少しはマシだったか...」
学校の在庫不安を改善すべく、連邦生徒会で予算管理をしている財務室へ直接申請書類を持って行き、同学年の扇喜アオイを困らせたのも今となっては良い思い出である。
『この書類を通すまでに一つ二つ別の書類を挟む必要があるのは当然知っているわね?』
『その手間を省いてやるために、態々ここに来たんだ。そう邪険に扱うな。直談判とはそういうものだ』
『あなたとこうしていることが最早手間なのだけれど』
『なら、その手間を解消するために早く室長から判子を受け取ってきてくれ。アオイ一人の仲介で全てが丸く収まり、今後のヴァルキューレ連邦生徒会両校にとってのメリットになる。悪い話じゃないだろう』
『私が割りを食っていることについては?』
『今日の昼をご馳走しよう』
『はぁ...サイドメニューも付けさせてもらうわ』
『ならサラダにしておけ。おまえが椅子に座る際の音、少々大きいだだだだ』
『摘むわ』
『もう摘んでるが?』
頬を摘まれたのも良い思い出である。
彼女は今や室長を受け持っているらしい。二年生にして財務室のトップ、大きく出世したものだと上から目線で褒めるセン。
賛辞を贈る本人のカーストは下から数えた方が早いのにえらい態度だ。おまけにデリカシーも無いときた。
「あいつのことだ。俺のことなど忘れて、のびのびやっているだろう」
今思えば自分のしでかした事はダル絡みの一種と見ていい。きっと迷惑だったに違いない。
顔だけでも見に連邦生徒会を伺おうとも考えたが、手を煩わせるのも申し訳ないのでやめておこう。
(さて、ロビーはこの先だったな)
登校時は幾度も通った道を進み、カンナに言われれたままに目的地へ辿り着く。
そこには、
「おはようございます、師匠」
月雪ミヤコと、
「遅かったな。道にでも迷っていたのか?」
空井サキと、
「にしし、出身校で迷子は流石にやばいっしょ」
風倉モエと、
「ご、ご無事で何よりです...センさん...」
霞沢ミユが、いた。
「───なんだ、おまえたち。ご丁寧に見送りに来てくれたのか」
二度と会う事はないと思っていた四人の姿に少々心にクるものがあったセンだが、それを堪えて平常心で会話に臨む。
「見送り?なんのことですか?」
「もしかしてこいつ、詳しい話を聞いてないんじゃないか?」
「あの面じゃあり得るねぇ」
「私達も、釈放されたんです...」
「ああ、それは分かる。くれぐれも達者でな。空井は不服だろうが、おまえたちなら直ぐに環境に適応して、内部からこの学校を変えていけるさ。陰ながらあの公園で応援している」
「...おい、ミヤコ」
「...はい。完全に知らないようです」
ごにょごにょと耳打ちをし合う兎二人に首を傾げる。
「一体何のことだ。何が言いたい?」
「彼女達が望んだことなんだよ、センくん」
まさかの人物の登場により、珍しく彼の脳内は困惑を極めた。
「...先生?」
独立連邦捜査部S.C.H.A.L.E、生徒の悩みの解消や願いを叶える手伝いをしている機関に属する大人が、センの前に再び現れたのだ。
「これはどういうことですか。俺は言いましたよね、こいつらを...」
「うん。君の願いは確かに聞き届けたし、私もそれに尽力した。でもね、それだと彼女達の意思を無視することになる」
昨日、ヴァルキューレへ輸送される直前にセンが先生に頼んだこと。
それは、全ての罪を自分に被せ、ミヤコ達をヴァルキューレ警察学校に編入させて欲しい、という願いだった。
表から見ればSRT生徒の反乱として扱われるであろう今回の事件。
しかし、実は一人の少年の画策により彼女達は利用されただけだったとなれば、話も罪の重さも変わってくる。
「俺だけが矯正局に入れられれば、丸く収まる。そういう手筈だった筈でしょう。なのに防衛室長に借りを作り、俺を釈放させるとは。何がしたいんですか」
「昨日言った通りだよ。私は生徒を救いたくて、その枠組みには君も入っている。確かに君の意見はそうだろうけど、肝心の彼女達の意見と随分食い違うんだ」
「なぜ俺とあなたの契約にこいつらの入る余地があるんですか。このままでは、こいつらは無法生徒に...いや、待て。ならばどうして釈放なんだ?」
ミユの言っていた釈放とはつまり、ヴァルキューレに編入したから自動的に釈放になった、という解釈をセンはしていた。
だが、真相は違うらしい。
「生徒の意思を尊重するのが大人の役目だからね。私から無理を言って、四人の生徒名簿はSRTとして残してもらったよ」
「我々はこれからも、子ウサギ公園でデモ活動を続けるつもりです。SRT復興のために、戦い続けます」
「容認したのか?防衛室長が...いや」
センは思考を張り巡らせる。
(先生との仲が拗れるのを嫌ったか?...あの先輩なら、確かにそうするか。野に放てば不安要素とはいえ力を持たない俺と、強制介入権を使える独立連邦捜査部。恐らく、後に上に立った際にシャーレの一挙手一投足に連邦生徒会の名前を与えれば、手柄を総取りできると考えてのことだろう。なら、どちらの関係を選ぶかは明白だ)
「師匠?」
「...本当に、馬鹿な真似をしたものだ。自ら茨の道を行く気か?」
「はい。その先頭を師匠が歩んでくださるのなら、これ以上のことはありません」
「知っているか?俺はただの無職だ」
「ああ、知っている。失うものもプライドも無い、恥を知った方がいいホームレスだ」
「それでも...ついていきたいって、思えたんです...みんなで、話し合いました。全会一致です」
「あんな大演説喰らっちゃあ、ヘッドにカリスマ感じずにはいられないっしょ」
四人が、少年を見ている。
少年が、四人を見回す。
真っ直ぐな瞳に晒されて、彼はため息混じりに笑みを溢した。
「...やはり、俺にも言えていたことだったな」
他人との歩幅を考える。
こうも明確に短所を提示されては、堪らない。
「先生、ご厚意感謝します」
「ううん、気にしないで」
「おまえ達、帰ったら穴だらけになった公園の整地作業に取り掛かるぞ」
「「「「了解!」」」」
センが先生に頭を下げ、その後ろに渋々といった形で三人も会釈をし、深々と頭を下げて置いていかれそうになるミユが続く。
「そういえばテントが吹き飛んでたな」
「なら、俺のダンボールを貸すとしよう」
「えへへ...少し、私気になってます...」
「一度経験するべきです。かの偉人、長谷川泰三も積極的にダンボールを家屋に扱ったと師匠から習いました」
「誰だよ長谷川泰三」
「にわかめ」
「にわかですね」
「うちの隊長、完全に毒されてやんのー...」
「...なぁ、ミヤコ。少しいいか?」
「はい?なんでしょう、サキ」
隊列を外れ、ミヤコとサキは身を寄せて話し合う。
「センは、いい奴だよな」
「はい。師匠は素晴らしいです。同時に人格者であり、心理戦にも長けた戦術家でもあります」
「だよな...私も、そう思う。デモは一度失敗に終わったけど、あの時、捕まった時にあいつが言ってくれた言葉で、少し救われたんだ。私達は間違っていなかったんだって」
「ええ、私も同じです。いきなりどうしたんですか?サキ...」
急に改まった態度になった隊員を案じ、顔を覗く小隊長。
「え」
思わず声を出してしまったのには理由があった。
「...っ」
普段の仏頂面に、赤みが帯びていること。
それが発熱ではなく、もっと青春染みたものが要因であること。
気づいてしまったのは、持ち前の気遣いによるものか。
尤も、これだけ赤面していては、恐らくミユもモエにも気づかれただろう。
「ミヤコは...あいつのこと、どう思ってるんだ?」
「え、え、え」
「私は...ちょっと、良いかもって...思ってる」
ヘルメットを深く被り、表情を隠すサキ。
その様子を、ミヤコにしては珍しく、間抜けにも口を半開きにして、見つめるのだった。
センくんは同学年に対しては名前呼びです。連邦生徒会内だと、アオイとアユムに対してですね。
なお、消息不明になってから知人にはなんの連絡もしていない模様。自我が強い人だったので、いなくなったら寧ろ清清してるか!
そういえば、いなくなってからアオイさんが体調不良で暫く休学してたみたいっすね...何かあったんかな()
小隊内での呼び方も固まってきた模様。
ミヤコ→師匠
サキ→セン
ミユ→センさん
モエ→ヘッド
はてさて、この後関係はどうなっていくのか。お風呂問題はどう解決するのか。SRTは復興するのか。
実を言うと本来であればここで完結予定だったのですが、まだまだ書きたい意欲が芽生えてきました。もうしばらくお付き合いください。
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