「さて、次の競技についてなんだけど…どうしようか?」
「「「はあ〜」」」
体育祭運営本部では教員達が頭を抱えていた。
例年通りなら騎馬戦で上位4チームが次の競技に進むのだが…拳斗達の大立ち回りのお陰で拳斗達以外が全滅させられてしまい、拳斗達以外の次の競技の参加メンバーをどうしようかと悩んでいた。
「西嶋達を除いた38人にくじ引きを引いてもらうってのはどうでしょう?運も実力の内…その方が公平さもあって文句を言う者は少なくとも出ない筈だと思います」
「ナイスアイディアだよ相澤君!早速作業に取り掛かろうか!」
相澤からのアイディアを即決した根津校長は次々と指示を出し、教員達は本部から出ていき作業を始め、運営本部内で根津校長と相澤だけが残っていた。
「さっき、公安から電話があってね…西嶋くんの事で釘を刺されたよ」
「・・・あいつの、西嶋の行動を抑制する権利はありませんよ。俺は何と言われようと西嶋につきます」
「君がそんな事言うのは珍しいね」
「西嶋がこの先どう成長していくのか見たくなったんです...。それに西嶋には先日の襲撃事件の借りがある」
根津校長は相澤の言葉に表情には出さないが驚いていた。
相澤は現実主義者で人にあまり肩入れしない…去年も1クラスを除籍処分した男が無個性で這い上がったとはいえ、個人の成長に興味を持つなんて信じられなかったからだ。
「ふふ、そういう言葉を生徒達にちゃんと伝えたら良いのに」
「・・・失礼します」
相澤は運営本部から出ていく。
〇
轟の後について行ったら人気の無い所に連れてこられた。
人気の無い所に連れてかれる途中、遠目で俺達を見ていた爆豪がこっそり着いてきて近くの物影に隠れて俺たちの様子を見ていた。
「俺の親父がエンデヴァーって事は知ってるよな?」
「う、うん…」
「いや、知らなかったわ…」
轟がエンデヴァーの息子という事を初めて知った。
知らなかったと正直に答えたら、出久から「えぇ…」みたいな顔をされた。だって、轟とは騎馬戦以外で特に絡むことも無ければ、楽しく会話をした事は一度もないのに知るわけが無い。それに、ヒーローについての家族関係とか興味なかったから調べた事なんて1度もない。
「話し続けてもいいか?」
「ああ、話遮って悪かった。続けてくれ」
轟の口から語られたのは壮絶な過去話だった…。
エンデヴァーは万年二位である事にコンプレックスを抱いているようで、自分の子供にNo.1ヒーロー...オールマイトを超える逸材に仕立て上げる為に個性婚やら幼い轟に対して殆ど虐待まがいな指導をされていたと語った。
轟はそっと顔の左側に触れ、この火傷は母親から煮え湯を掛けられて出来たと言った。エンデヴァーの修行を受け、炎を次第に操られるようになっていく轟を見てエンデヴァーに見えて仕方なくなり煮え湯を掛けられた。そして轟の母親は精神病院で今も入院生活をしている。
〚お前の左側が憎い!!〛
轟は母親に言われた一言が今でも心に刻まれている…だが、轟は母親の事を憎いとも恨んでいるとも言葉にはしなかった。轟は今も入院生活をしている母親を心の底から心配している。
「俺は…母さんの力だけでNo.1ヒーローになる。エンデヴァーを...親父を否定する為に」
「なるほど...お前の感情は理解出来た。お前の気持ちを理解した上で言わせてもらうと―――馬鹿か?」
「なんだと?」
「に、西嶋くん!?」
轟に胸倉を強く掴まれ、鋭い目付きで睨んでいる。
出久が轟を止めようとするが、噛み付いたスッポンの如く轟が胸倉から手を離さなくてオロオロしている出久を手で「その場で見ているように」と合図を送った。
〇
「お前に...お前に何が分かる!!母親とは離れ離れにされ、兄弟からは腫れ物の様な扱い...俺がどんな思いをしてきたか分からねぇだろ!!」
「ああ、分からん」
「だったら「お前がしてきた思いはお前しか理解出来ん、だが!お前がそんな事して母親が喜ぶと思うのか?」・・・」
「別にお前が父親への復讐は止める気はねぇが、ヒーローになるってんなら全力で止めさせてもらう。ヒーローって仕事は市民に安心させなきゃいけねぇ存在だろ?なのに何処の世界に私怨丸出しの正義の味方が居るんだよ?」
拳斗の言葉を聞いた轟は胸倉を強く掴んでいた手の力が弱まり、胸倉を掴んでいる手を外した。
「お前の原点はなんだ?最初っから親父に復讐って訳じゃないだろ?」
「俺の原点...」
「それを思い出せ轟。お前が原点を思い出した瞬間、お前の見えている景色が大きく変わるだろうよ」
拳斗はその場から立ち去った。
緑谷も轟を心配して残ろうとしたが拳斗からそっとしとけと言われ、渋々ではあるが轟のところから離れて麗日や飯田の元へと向かった。
〇
「初めまして西嶋拳斗!」
「アンタ誰だ?」
「俺は世界経済新聞社の社長をやっているモルガンズ!以後お見知りおきを...」
昼飯を食いに行こうとしたらとんだ大物に出会ってしまった。
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