誰かの推しを殺す話   作:no name

1 / 8
第0話

「さて、それでは皆さん、教科書の22ページを開いてください」

 

30人程度の生徒が席に座り、ある者はスマホをいじり、ある者は友人間で手紙を渡し合い、ある者は居眠りをしている。

そしてそれらの極少数の中に、真面目に教科書とノートを開き、学ぶ姿勢を取っている者がいる。

高等学校、日常的な風景、こんな程度の事をいちいち指摘していては身が持たない。

だから私は無視をして話を続ける。

 

黒板に文字を書き、図を描き、わかりやすいように話を進めていく。

そんななんて事のない日常を過ごす中、突如として教室全体が少し揺れた。

 

「おや、地震ですかね」

 

そんな訳はない。

自分はこの揺れが何を意味しているのか知っている。

だが、それを公言するような愚は犯さない。

どうせ先に動く奴が現れる。

 

「先生!お腹が痛いので保健室に行ってきていいでしょうか!」

「あ~、聖川(ひじりかわ)君、でしたか。まぁこの分なら多分震源地は遠いでしょうし、いいでしょう委員長の氷室(ひむろ)君も一緒に行ってあげなさい」

「わかりました」

 

二人は本当に体調が悪いとは思えない速さで教室を出て、廊下を駆けていった。

そしてさらにもう一人、”ガタッ”と席を立ち、ずかずかと無言で教室の外に出ようとする生徒がいる。

これに話しかけないのは流石に職務放棄だろう。

 

焔ノ園(ひのその)君、まだ授業中です、席に座ってください」

「便所行くだけだ」

 

それだけ言って燃えるような赤髪の少女は教室を出ていった。

さらに、それを隠れ蓑にして一人の男子生徒が全員の視界の外で窓から飛び降りたのも分かった。

まったく、学生主人公の担任というのはこういう気分なのだろうか。

 

「……では、続きです」

生徒達(((((続けるんだ……)))))

 

彼ら彼女らが何をしているか、私には関係のない事だ。

少なくとも、表の身分では。

 

 

 

 


 

 

 

 

教室を出ていった聖川と氷室は焔ノ園と合流し、ビルの上を駆けていた。

彼らが向かう先は、先ほど教室にまで響いてきた揺れの震源地。

先生が「震源地が遠い」と言っていたがそんな訳はない。

地震のような大きな揺れが遠い場所では小さな揺れになるが、今回のそれは違う、むしろ近い場所で起きた小規模な揺れが教室にまで伝播(でんぱ)しただけだ。

つまり。

 

「織姫! 焔ノ園!」

「ええ、レーダーにも反応があるわ。つまりあれ(教室で感じた揺れ)は異能犯罪によるもの」

「ハッ! ちょうどいいじゃねェか!ぶっ潰してやろうぜ!」

「そのパーティに、僕も混ぜでほしいのだけど?」

「カイ!教室出てきたのか!?」

「君たちが一目散に向かうのを見て、一緒に来ないとでも?」

 

彼らに追いついたのは足に風を纏わせて空中を飛行する男子生徒。

先ほど教師の目を盗み窓から外に出た生徒だった。

そうして彼らは四人組になり、騒動の中心地へと向かう。

幾つかのビルを飛び越え、人々が逃げ惑う逆方向へと進んでいくと、都心の広い交差点、その中心部で暴れまわる異形が姿を現した。

 

それは蛇の胴体に女性の上半身が生え、側頭部に二本ずつの角を生やし、蛇の胴体の側面には無数の人間の腕がムカデのように生えた異形の姿をしていた。

理性無く暴れまわる怪物は、両手に炎と氷を出現させ、また頭の角を振動させて風すらも巻き起こして街を破壊して回っている。

 

「怪人……! それも、今まで見たことのないタイプだ!」

「へッ! 怖気づいてンならアタシが行ってやるよ!」

 

ビルの上で足踏みする聖川を横目に、焔ノ園は豪快に飛び降り、地面にヒビを入れながら着地、怪人と対峙した。

普通の人間であればビルから飛び降りなんかをしたらぐちゃぐちゃの赤い花になるところだが、そうなっていない彼女は全身から熱気を迸らせる。

 

大絶滅(ボルケーノ)ッ!!!」

 

叫ぶ。

すると彼女の全身から発せられていた熱気は形を成し、それは火花に、やがて噴流する焔へとなり、周囲の金属やコンクリートを赤熱させ始めた。

燃えるように赤い髪は炎そのものになり揺らめき、手足は溶岩のように黒の混ざった複雑な色合いへと変化する。

―――その姿は、まるで生きた火山そのもの。

全身が燃え上がる火の神となっていた。

 

「キシャァァァァァァァ!!!!」

 

姿の変わった少女に敵意を剥き出しにした怪人は、右腕を少女の方へと伸ばし、手のひらから冷気のビームを照射する。

ジュウゥと蒸発音を響かせ、彼女の姿は霜の霧の中へと消えていった。

 

「キシャッシャッシャッシャァ!!」

 

勝ち誇り、醜悪な笑顔に染まった目はもうその霧から目を離し、次なる標的はどこかと周囲を睨みまわす。

しかし、既に氷漬けになったと思っていた霧の中からヌゥっと腕が伸び、怪人の尾を掴んだ。

 

「おいおい、もしかしてこれで終わりじゃァねェよな?」

 

腕には霜が降っていた。

黒い腕の節々にはつららが垂れ、熱などもう無いようにも見えた。

だがそれも瞬きのうちに溶けて消え失せ、水蒸気となって空気に溶けていく。

鼓動は聞こえない、息遣いも聞こえない、ただ聞こえるのはグツグツと何かが煮えたぎる音と、ボウボウと燃え上がる炎の音、そして目に映るのは―――目を背けたくなるほどに赤く、熱い熱源。

 

沼地を踏みしめるような足音が聞こえる。

べちゃ、べちゃと足元を確認するように、ゆっくりとした足音が。

コンクリートの地面からは聞こえるはずのない、死の足音が聞こえる。

 

「火は水を掛けりゃ消える、だが、火口に氷を投げたところで、火山が鎮まるかァ?」

 

霜の霧が水蒸気へと変わり、超高温の熱風が全ての空気を上空へと押し上げた時、怪物の目に映ったのはなにか?

触れるものに火が燃え移る前に融点へと達し、全てを溶かしつくす死の災害(大絶滅)

 

「ケ……ヒャァ……」

「ンだァ?この程度、攻撃ですらねェぞ、根性の無ェ奴だなァ!」

 

掴まれた尻尾は既に発火を通り過ぎて炭化しており、ボロボロと崩れ去る尻尾を横目に、彼女はおびえる怪人に相対する。

そして、膨大な熱量を持った拳を容赦なく怪人の顔面にぶつけた。

 

その一撃でまず骨が砕ける。

次に皮膚を突き破り、出血すると同時に体組織を焼き固められ、怪人は瞬く間に強制的に止血させられた。

 

「ンガ……ガガガがガァ!!!」

 

元の形を留めていない顎で、断末魔にも似た叫びと同時に、今度は怪人は角から突風を、左腕から炎を出し、火災旋風を作り出して少女にぶつける。

しかし―――それも効かない。

 

「オイオイ、ヌルい風だなァ!」

 

どころかむしろ直撃してすらいなかった。

完全に少女の発する熱気の方が強力すぎて、火災旋風は少女に当たる直前で、余波による上昇気流に巻き込まれて上に逸れ、掻き消されている。

 

「炎ってのはなァ~~!!こォ使うんだよォ!!!」

 

踏みしめるだけで融点に達するコンクリートを踏みしめながらズカズカと近付いていき、怪人のすぐ目の前まで来た彼女は、その両腕をがっしり掴んで動けなくする。

 

「ギャァ!!ァァアアア!!アギャガガガァ!!!」

 

怪人は必死の抵抗で胴体部分の腕や蛇の胴体を使った体当たりをやたらめったらに振り回すが、彼女が常に発する熱気のせいで触れようとするだけで皮膚が(ただ)れるほどの火傷を負う事になった。

それだけではない。

掴まれた両腕の前腕から先は溶け落ち、怪人の皮膚もスライムのようにデロデロでグロテスクな様相を呈する。

 

「ギャ……ガァ……ァ」

「ほォら、最後にもいっぱァつ!」

 

文字通り虫の息になった怪人に対し、焔ノ園は容赦なく蹴りを叩き込む。

その蹴りによって炎が燃え移り、怪人は断末魔すらもあげられずに燃え尽きていった。

 

「炎の異能でアタシに勝とうなんざ、4憶年早ェんだよ」

 

周囲を見渡し、怪人は自身が倒したものだけだった事、他には現場に異常がない事を確認すると、彼女は自身の熱を鎮め、通常の状態に戻る。

 

「オイ!レオン!もう大丈夫だ!周囲に怪人は居ねェ!帰ろうぜェ!」

「いや、一応授業抜けだしてきちゃったし、俺は仮病で退室したから学校に戻るよ、焔ノ園は戻らないのか?」

「放っておきましょ、熱血不良女なんて」

「はァ!?なんで手前が決めンだよ冷血女!戻るよ!戻りゃいいんだろ!」

「君たちは本当に騒々しいね、渦中の獅子音(レオン)が可哀そうだよ」

「あ、はは……、それにしても、騒ぎの大きさのわりに怪人の数がすくなかったね、何かおかしいような……」

 

人知れず騒動を解決した少年少女たちは、しばらくしてから学校にもどるのだった。

 


 

異能ノ女王(エキドナ)がやられたか……【大絶滅(ボルケーノ)】相手に油断ありきでタイムは3分程度……油断しなければ倍は持つか……?」

「先生?」

「いえすみません、独り言です。そうですね……これを『進化』と言いだしてしまうと、特定の団体に目を付けられそうなものですが……最近話題の”異能”について話していきましょうか。これはただの雑談なので、メモは取らなくてもいいですよ。異能とは―――」

 

『異能一蓮譚』という大人気ゲームがあった。

 

それはシリーズものであり、アニメやコミック展開もされた大人気バトルアクションゲームだ。

現代日本で『異能』に覚醒した主人公の少年少女たちが悪の組織と立ち向かい、壮絶なバトルを繰り広げる。

まぁ大体ペル〇ナとかナ〇トとかそこら辺にニチアサの特撮とプリ〇ュアを混ぜたような話だ。

据え置きのゲームでありながら、長く遊べるやりこみ要素と、定期的に配信されるDLCキャラクターなどが人気の秘訣で、既にいるキャラクターの別世界線バージョンや、敵側から寝返ってきた所謂光堕ちキャラなど、様々な方向から多くのキャラクターを輩出してきた。

 

「異能者の持つ能力、異能には様々な種類があり……大きな声では言えませんが、皆さんも『異能犯罪』というものを聞いたことがあるでしょう。『異能犯罪』は、異能者の集団、もしくは異能者が率いる集団が引き起こす犯罪行為全般を指すことで―――」

 

さて、なぜ急にそんな話をしたのか?

それは、この世界が『異能一蓮譚』の世界だからだ。

 

より端的に言えば、私はそんな『異能一蓮譚』の原作世界に転生してきた転生者だから。

そして、私はこの世界においてある異能を持っている。

 

想起創誕(ティアマット)

 

自分の思い通りの生物を作り出すことのできる能力だ。

想起創誕(ティアマット)】が作り出すことのできる生物に限界はない。

哺乳類、爬虫類、魚類、昆虫、甲殻類、植物、ありとあらゆる生物を誕生させ、かつ合成させた状態で誕生させることもできた。

八つ首の蛇も、翼竜も、本来は突然変異によって生まれる奇形を利用して作り出すこともできた。

太古の生物も、空想上の植物も、翼や尾の生えた人間さえも自由自在。

 

それは奇形だろうと突然変異だろうと、10000人に1人の天才だろうと、”私のように異能を有した者だろうと”どんな生物でも作り出すことが出来る。

 

反則(チート)もいいところだ。

 

自分でも嫌になるくらいなんでもできる能力だ。

この能力があれば、できない事なんてほとんどない。

だから私は、この『異能一蓮譚』の世界で、自分のやりたかった事(趣味全開)をしようと思う。

 

すなわち、異能で人気になりそうな美少女を作り、育て上げ、そして残酷にも捨て、そして殺すのだと。

自分の作った生物なのだし、生殺与奪も自由だろう?

例え生き残っても壮絶な過去を持つ光堕ちキャラクターになるから、人気は出るはずだしな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。