誰かの推しを殺す話 作:no name
二人がどうなったかは、また後でジーニアスから聞くとして、私もそろそろ原作のストーリーに関わっていきたいところなのだけど……現在の時系列は、恐らくまだ序盤の共通ルートになっているだろう。
まだヒロインが全員判明しておらず、光堕ちの隠しヒロインも登場していない……恐らく、中ボス戦すらまだといったところだろうな。
と、言う事は、その中ボス戦に介入することができそうという事になる。
ちょっかいかけてみるか~!
町の繁華街にまで出て行ってみると、まだ【
その中には警察と異能関係の民間警備会社の人間が調査に当たっている。
とはいえ、ひび割れや溶けた跡こそあるものの、道そのものは整備されて通れるようになっており、立ち入り禁止となっているのは、取り壊された建物や襲撃を受けて営業状態にはとてもなれない店舗等だ。
んー、あ、いたいた。
損傷した建物の中で、和服に身を包んだ特徴的な後姿を発見して声をかける。
「
「……竹内教授か」
私は物語に介入しやすいように、いくつか別の身分と顔を用意している。
主人公に関わる学校の教師、【
そして今使っているのが、異能研究の第一人者である教授の一人、”
こちらの声に気付いて振り返ったのは白く長い髭を蓄えた年配の男性。
杖はついておらず、背筋もピンとしており、実年齢の割に若く見える風貌はしているが、頭部の毛根は残念ながらも死滅している。
日本人にしては彫りが深く見える彼は、髭と同じく真っ白の眉の片方をひそめながらこちらに話を振ってくる。
「どうやら今回の異能犯罪、ドミニオンの仕業にしては妙な所が多そうじゃぞ」
彼は異能犯罪専門民間警備会社『
「安倍からもよく言われておるだろうに、あの
「見事に黒焦げとお聞きしていますが、なにか進展はありますかね?」
「おぉ、怪人の方は大丈夫じゃ、うちの若ぇ衆と
「前から言ってますが、警察の事を犬共と呼ぶのはやめませんか」
「お国の膝元に居ながら木っ端な
強朗氏は今日も辛辣である。
悪態をつきながらも着々と分析を進めていくその手腕は、流石は警備会社の現代表というところか。
【異能一蓮譚】では元々、4大ヒロインの半数である
しかし、物語の発端となる
表向きには勘当という形をとっているだけで、実際には『異能の種』を取り込んでしまった主人公君を心配しての事でもあり、名目のない監視としてでもある。
氷室織姫の所属していた『
「【
繰扉の爺さんが短く言うと、差し出した手元に物体が出現する。
それは黒く燃え尽きかけた紙幣の切れ端だった
「毎回思いますが、よくその異能で民間警備会社していけますよね」
「黙らんか教授。……これが何かわかるな?」
繰扉強朗の異能は【
言ってしまえば盗みに特化した異能であり、本人がこんな異能を持ちつつも、『繰扉警護』が国内有数の民間警備会社になれたのは、当人の手腕と信頼によるものが大きいだろう。
「火の玉娘の仕業ではない、あの娘っ子ならば、余波だけで紙幣なんぞ塵になるじゃろう」
「それなら、これは怪人の仕業と考えるのが自然ですね」
「それがおかしいのじゃよ、ドミニオン……彼奴等は街を襲う事はあるものの、起因するすべてがそうとは言えぬが、大体は下部組織による強盗を主な目的としておる」
「それなのに、現場の紙幣は丸焦げと」
「それどころか盗みに入った形跡すらもないと見える―――ここを襲撃した怪人の目的は強盗ではない。むしろ怪人には目的意識は無く、怪人を放ったドミニオンではない何者か、そのものに何らかの目的があったとみていいじゃろう」
推論でここまでの図星を突いてくるあたりは流石というべきかなんというか。
ここまで頭の回る人物がおいそれと表舞台に出てくると、伏線やら謎なんやらが一瞬で解けていくから、なるべく組織の長として高級そうな椅子に座ってふんぞり返っていてほしいのだけど。
「裏社会に精通する情報屋を、幾つか精査しつつ味方に付けた。じゃが彼奴等を以ってしてもこれらの怪人の裏が取れん……。つまり、この裏にいる奴等は名声や成果を求めている訳でもなく、ドミニオンと同等かそれ以上の戦力をもつ何者か……目的もわからん」
そりゃ趣味で開発した怪人を性能テストも兼ねて街に放っただけだし、それ以上に崇高な目的みたいなのも無い。【次の世界】という組織にもこれと言って壮大な目的意識もなく、ただ私がやりたいようにやってるだけ。
さしもの強朗氏でもこんなことは予想外だろうなぁ……とと、そんなことより、別に【異能ノ女王】を配置しなくとも、強朗氏がここに現れる事は原作時系列上で確定している。
何故かと言えば、あとで強朗氏が、ここで”これから起こる事”を元部下にしてヒロインの
しかしそう、あえて一言で言うのなら―――。
「
中ボスの顔見せだ。
荒らされた店舗から見て向かいのビルの屋上。
太陽を背に、逆光で姿が見えにくいが、コートを羽織った男が、屋上の縁に座っていた。
男は一言声をかけた後、喫茶店にある少し高めの椅子から降りる程度の手軽さでビルから飛び降り、わずかな足音と共に地面に着地する。
「如何にも、それは儂の名じゃ。して……貴様は何者じゃ、
「あぁ、確かにぃ?こっちだけお前の身分と名を知っていて、俺の事をお前が知らないってのはアンフェアだよなぁ。―――俺は偉大なる大総統閣下の忠実なる
原作上、序章を除き、敵キャラとして最初に登場する怪人にして異能力者。
ガブリエル・ファルコスの初出は初代【異能一蓮譚】だが、それ以降の作品にも度々登場する人気キャラクターの一人だ。立場上はドミニオン所属ながら、何かと結構いい奴で、性格も悪くない。
主人公陣営を除く、原作キャラクターを見る事ができて、なんだかすごく感動するなぁ。
ビルの陰に立つ彼は、視界の通る昼間という事もあり、その顔が良く見える。
外見上は青の瞳を持つ20かそこらの男性。
しかし人と異なるのは、その白目の部分が黒く、耳の一部がエルフのように長く、そして動物の耳のように毛が生えているところだ。
わずかに開いた口からは鋭い犬歯を覗かせ、手の爪は獣のように鋭い。
「獣人タイプの怪人か……」
「おうともさ、生身の人間相手じゃあ、身体的なスペックならアンフェアってところだが、許せよ爺さん!」
「ほざけ
この戦闘は後に「ドミニオン幹部から襲撃を受けた」程度の文言でしか語られないために、詳細に何が起こるのかまでは原作履修済みの自分でもわからない。ただ言える事が一つあるとすれば―――この戦闘において、強朗氏が傷つくことは万に一つもあり得ないという事だけだ。
―――パァンッ!
「ギャッ!?」
「せぁ!!」
急に空気を揺らす衝撃と共に破裂音が鳴り響き、ガブリエルが耳を抑える。
強朗氏はその隙を逃さず接近し、顎に掌底による一撃をお見舞いし、無防備な脳を的確に揺らす。
「ァ―――ガァ!!!」
見事に決まった一撃をくらい、白目を剥いて意識を彼方へと飛ばしたかのように見えたが、ガブリエルは寸前で踏みとどまり、コートに隠れた尻尾で地面を叩くと、その勢いのままに前蹴りを放った。
「甘いわ!」
呼吸するかのような自然な動きでその前蹴りをいなし、強朗氏は改めて距離を取って構える。
「始めの一撃で意識を飛ばさんかった事は素直に褒めてやろう。じゃが、
「グルルルルゥ……確かに、認めてやるよ爺さん。今の俺じゃアンタに勝てねぇらしい―――それに、時間切れだ」
「君!そこで何をしてる!一般人は立ち入り禁止だぞ!」
近くの現場から複数の警官が駆けつけてくる。
その様子を見たガブリエルは、ゆっくりとビルの間の路地裏で闇に紛れていく。
「ここに来たのはただの暇つぶし、デモンストレーションだ。次に俺たちが何をするのか、伝えておくぜ爺さん、じゃなきゃアンフェアだ」
闇の中で青い双眸が遠ざかっていく。
「アンタの部下……いや、今は元部下か。氷室織姫が守る少年―――彼を大総統閣下の元へと連れていく。せいぜい守ってやるがいいさ、その方が”狩り”は楽しくなる」
名前:
性別:男
年齢:82歳
異能:【
異能詳細:望んだ目標物を手元に転送させる
所属:【繰扉警護】現代表
【詳細】
異能犯罪専門民間警備会社【繰扉警護】の現代表の男。
頭も切れる上に、戦闘能力も馬鹿みたいに高い高性能ジジイ。
解釈を広げ、物体だけでなく気体や液体までも盗むことが出来るようになった【簒奪】は、もはや盗むだけの小賢しい異能ではなくなっており、これを利用して戦闘を行う事で身体能力の不足をカバーして余りある実力を発揮している。
髪の毛の1万分の1程度の極小の空気を手元に転送させることで、転送元の空間にわずかな真空を発生させ、強い衝撃波を遠隔で作動する攻撃を多用し、異能の効果もあって非常に燃費のいいこの攻撃を、彼は【