剣に狂った男が人の心を取り戻すのは間違っているだろうか 作:ロマン剣技大好き侍
仕事が忙しくて全く執筆できていませんでしたが、これだけはと思いなんとか書き上げました。
本当は25日0時に投稿したかったけど執筆中に寝落ち。
大急ぎで仕事を終わらせて、つい先ほど書き終わったばかりの出来立てほやほやな番外編です!
甘さ控えめなので、苦手な方もご安心ください!
……はい、すみません。
本編は年末年始の仕事休みまでお待ち頂ければ助かります。
それでは改めまして、メリークリスマス!
ささやかながらプレゼントをお受け取りくださいませ!
※注意事項※
忘れてました。
この話は本編とは別時空です。
或いは、未来で起こり得る可能性であり、その逆もまた然り。
そういうものだと思って見て頂けますようお願いします。
その日のオラリオは、異様な雰囲気に包まれていた。
都市規模で浮かれた空気が漂っており、行商人の露店や見慣れない旅装の人物が大勢訪れて活気に溢れている。
「ウェーイ!アゲてけーっ!!」
「リア充はいねがー?オラッ、爆発しろ!!」
「ヒャッハー!汚物は消毒だーッ!!」
「俺がガネーシャだッッ!!!!!」
更にメインストリート、路地、バベル、酒場などではところ構わず大騒ぎする神々の姿があった。
いつも通りと言えばそうだが、普段ならば止めに入るはずの良識ある眷属たちまで羽目を外したように一緒になって遊んでいるとなれば話は別だ。
一体オラリオに何が起きてしまったのだろうか。
場所は変わって、名実共に都市最大派閥であるロキ・ファミリアの
寒空の下で門番をしている団員も羨ましそうに館を振り返っては、残念そうにため息を吐いている。
そんな可哀想な門番はさておき。
館の中では、どんちゃん騒ぎの中心にいるすっかり出来上がったロキが酒瓶を持つ手を突き上げた。
彼女の視線の先にいるのは、部屋の隅で慎ましく食事を楽しんでいるジン、アイズ、リヴェリアの三人だった。
「コラーっ!そんな隅っこで何しとるんや!今日が何の日か分かっとるんか!?目出度いクリスマスイブに辛気臭い顔してからに、もっと騒がんかい!ほな、わーい!って言ってみぃ!」
真っ赤な顔で捲し立てるロキだったが、当の三人はガン無視で談笑している。
塩対応に泣き上戸になって恥も外聞もなく地面で転げ回りながら「アイズたんお酌してー!」「ママー、構ってー!」「ジンのクソボケー!」と叫んでいるが、ロキ・ファミリアの団員たちは我関せずと思い思いに過ごしていた。
そう、本日は12月24日。クリスマスイブである。
翌日のクリスマス当日に対する前夜祭のようなものだが、暇を持て余した神々は騒げる時に大人しくしているお利口さんではない。
というか、クリスマスというイベントを
なお、下界の子供たちには有ること一割、無いこと九割の殆どでっちあげの理由を引っ提げて、かつての聖人の誕生を祝う目出度い日だと説明している。
そんなこんなで嘘八百によって大義名分を得た神々は、毎年のように狂ったような馬鹿騒ぎを巻き起こすことになる。
過去に起きた事例について幾つか語ることにしよう。
まずは、一ヶ月前に三大クエストの最後の関門である黒竜討伐を達成した後にオラリオに帰ってきた大神ゼウスと、その妻ヘラによる傍迷惑な夫婦喧嘩が当時のクリスマスの日に勃発した。
発端はいつも通りにゼウスの浮気が原因だったが、クリスマスとは聖人の生誕祭であると同時に恋人たちによる憩いの日でもある。
つい癖でヘラとのデート中にうっかり愛人に投げキッスをしてしまったゼウス、及び当時のオラリオの人々は刹那のうちに地獄の底に叩き落とされたような悪寒を感じた。
それは、まさに怒髪天を衝くというべき光景だった。
物理法則を無視して宙を髪がユラユラと不気味に漂い、前髪に隠れた双眸がギラリと妖しく輝く。
限界を超えたことで口元には美しい笑みが彫刻のように刻まれており、時折フシューと蛇のような恐ろしい呼吸音が聞こえてくる。
蛇に睨まれた蛙のように激しく体を震わせながらも動けないゼウスの肩を万力の如き力で握り締めて、日頃から募り続けていた鬱憤が一瞬にして噴火した。
余りにも凄惨な事件だったので結果だけ述べれば、愛する夫に手を出した不届きな女は行方不明になり、肝心のゼウスは一年間にも渡って監禁されて、何処からか逃げ出してきた時には見るも無惨な姿になっていたという。
他には、男神たちによる酒池肉林祭り未遂事件や女神たちによる乱痴気大乱闘事件、
クリスマスというイベントは何かと事件に事欠かないものというのが、オラリオの住民からの総意だった。
未だに黒竜討伐という快挙による余韻が残るオラリオにて、据え膳のように目の前にぶら下げられたクリスマスなんてイベントがあればどうなるのか。
敢えて、言葉にするまでもないだろう。
「よっしゃーっ!!決めたで、うちはっ!!」
地面を転がり回った後に気分が悪くなって[検閲]を吐いていたロキだったが、まるで疲労を感じさせずにテーブルに飛び乗って眷属たちの注目を集める。
「今度はなんだー?」
「ひゅー!いいぞー、ロキ!輝いてるぅ〜!」
「オイてめェロキこの野郎!吐いてそのままにしてんじゃねェよ!」
「ほれっ、ラウル一気じゃ、一気!」
「うぉおおおッ!!ラウル、いっきまーすっ!!」
赤ら顔でぼんやり反応する者、雑に囃し立てる者、獣人故に鼻が利きすぎて顔を顰める者、アルハラする者、腰に手を当て一気にジョッキを呷る者。
そんな聴衆を気にも留めず、ロキが盛大に宣言した。
「これより!王様ゲームを開催するッ!!王様の命令は絶対!何でも言うことを聞かなアカン!ちょっぴりエッチな命令も許可するで!ここにおる団員は全員強制参加やっ!!」
ざわっ……ざわっ……
高らかに宣言された王様ゲームなる遊戯の開催に、ロキ・ファミリアの面々は一斉に注目した。
主にエッチな命令も許可、という部分に強い反応を示した。
チラチラと各々の気になる相手をこっそり覗き見て、宴の会場は一気にボルテージを増していく。
「フィンの子フィンにご挨拶でも、リヴェリアっぱいにお触りでも、限度を守ればうちが許可するっ!!」
ざわっ……ざわっ……
具体例を出されて、フィンの下半身とリヴェリアの上半身に団員たちの視線が集中する。
男女比に関しては敢えて秘密としよう。
趣味は人それぞれなので、温かい目で見守るべきだろう。
無数の視線に晒されたフィンが身震いした気がするが、『勇者』に限ってこの状況に臆しているなんてことはあり得ないに決まっている。
恐らくは、武者震いに違いない。
「あー、そういえば僕はやり残した仕事が…………」
「団長!大丈夫ですよ!私が命に代えても団長の貞操を死守しますから!!」
「ありがとう、ティオネ。気持ちは嬉しいよ。僕の下半身に視線が固定されていなければ安心できたんだけどね」
「団長!護衛対象から目を離せと仰るのですか!?常に護衛対象に対して気を配るのは護衛任務の鉄則!そうですよねっ、団長!」
「そうだね、正論だ。君の目が血走っていなければ僕も異議を唱えることはなかっただろうね」
「……リヴェリアは私が護る!」
「ありがとう、アイズ。だが、所詮はロキのいつもの戯言だ。放っておけばいい」
「そう、なの?…………ジンは、触りたい?」
「アイズ?今それを聞くのは反則だろう」
「ふふっ、冗談だよ」
「くくっ、止めてやれアイズ。これでジンも男だからな」
そんなやり取りもあったが、王様ゲームは滞りなく開催された。
いつ作ったのか大量のクジが入った箱から団員たちが次から次へと手を差し入れて、王様にならんと気合を込めて引き抜く。
どれだけ念を込めても結果は変わらず、男女問わず崩れ落ちてがっくりと項垂れる。
最初に当たりクジを引いたのはティオナだった。
「えっ?あたしが王様か〜、どうしよっかなぁ?」
「なんでもええんやでー。あっ、でも金のやり取りは面倒なことになるから勘弁な?」
「はいはーい。じゃあねー、この前ロキって
「んなあっ!?ティ、ティオナ、マジで言うとるんか!?それだけはっ、それだけは……!!」
「あれれー?おかしいなぁ〜。ねえ、みんなっ、ロキはなんて言ってたっけ。王様の命令はぁ〜?」
「「「「「絶対っ!!」」」」」
「うがぁああああああああッ!!うちの
一気に騒々しくなった会場として使われている食堂に酔っ払いたちの笑い声が響き渡る。
他にも静かに楽しみたいグループは端の方に固まっていたり、酔いが回りすぎて外の風を浴びにいく者も中にはいた。
王様ゲームが盛り上がるにつれて見るに堪えない醜態を晒す団員もいて、リヴェリアは頭が痛そうに目頭を指で揉んで首を横に振った。
「アイズ、そのクジは置いて落ち着くまで外で涼んでくるといい。すまないが、ジンもついてやってくれないか?」
「うん、分かった」
「ああ、了解した」
「私も少し席を外す。この馬鹿騒ぎが鎮まるまでは……そうだな、自室でゆっくりしていよう」
そう言って、ジンとアイズ、リヴェリアの三人は宴の会場から姿を消した。
そんなことも知らずに、遂に念願の当たりクジを手に入れたロキが狂喜乱舞しながら手を突き上げる。
「いやっふぅー!!キタキタキタァ──ッッ!!!!!こっから先はうちのターンや!我が世の春が来たぁーッ!!」
「うわぁあああ!?ロキが当たり引いたぞー!!やったぁー!!」
「どうせエッチなこと要求するんだろう!?やるならやれっ、一刻も早くやりやがれ!」
「馬鹿言ってるんじゃないわよ男連中!覚悟はできてるんでしょうね!?」
発案者であり、全知の神がする命令とは!?
眷属たちが阿鼻叫喚としていることも耳に入らないロキは、うへうへとだらしなく顔を歪ませて涎をじゅるりと啜る。
そして、ぐるんと振り返って指差す方向には……っ!!
「アイズたーんっ!!聖なる夜は性なる夜のことでもあるんやっ!!今夜はうちが寝かせないでぇーっ!!」
ババーン!と効果音が鳴りそうな勢いで命令を下したロキだったが、視線の先に求める少女の姿はない。
し……ん、と会場が一瞬にして静かになった。
リーネからお酌を受けていたベートが酒を一息に呷って、ロキを睨みながら言った。
「アイズならジンと一緒に外に出たぞ」
「ノォオオオオオオウッッ!!!!!アイズたんっ、カムバァーックッッ!!!!!」
ロキの断末魔の声に、ロキ・ファミリアの団員たちは腹を抱えて笑うのであった。
ちなみに、こっそり
◆◇◆
一方その頃。
折りよく馬鹿騒ぎから抜け出したアイズは、ジンと隣り合って庭を眺めていた。
ほんの少し舐める程度に酒を飲んだだけで体が熱ってしまっているが、いつものように記憶を失うほどの酔い方ではない。
熱った体に夜風が心地よいくらいだった。
「アイズ、寒くないか?」
「うん、大丈夫」
「そうか」
そう言いつつも、ジンはいつから持っていたのか薄い肩掛けをアイズの肩にそっと掛ける。
ジンにとっては何気ない気遣いが、アイズには嬉しかった。
白い頬に薄らと朱がさした。
「……ありがとう」
「ああ」
「ジンは、寒くない?」
「問題ない。暑いくらいだ」
「……そうだね」
先程のお返しとばかりにアイズは閃きに従ってジンとの距離を無くす。
ピタッとくっつけば、人肌が温かくて目を細めた。
夜空を見上げれば綺麗な満月と美しい星々が浮かんでいる。
冒険者になってからしばらくは空を見上げる余裕さえなかったアイズだが、人間変わるものだと自分のことながら不思議に思った。
変わったと言えば、ジンに対する感情もそうだ。
恋を自覚する前と自覚した後はもちろん、憧れと表裏一体の依存を捨て本当の意味で初めてジンの隣に立って戦った時のことは決して忘れない。
真にアイズ・ヴァレンシュタインという人間が冒険者になったのは、あの瞬間だったのだろう。
「……温かいね」
「そうだな」
「……静かだね」
「悪くないな」
自分以外の体温が心までも温める。
静かな空間は互いの息遣いまで聞こえるようだった。
誰にも邪魔されない二人だけの世界。
そんなことを考えて、ふとアイズは口を開いた。
「ジンはこれからも冒険者を続けるの?」
素朴な疑問だった。
冒険者に課された三大クエストは果たされた。
まだダンジョン最深部の踏破は残されているが、これを機に冒険者を引退する者も少なくはない。
アイズにとって聞くまでもないことだとしても、本当のところジンの心までは分からないのだ。
もしかしたらという不安は、あっさり否定された。
「冒険者を引退する理由がないからな」
「やっぱり剣を極めるため?」
「それもある」
「……
だが、今度は別の疑問が増えた。
その昔ジンに冒険者になった理由を尋ねた時は、誰も見たことのない剣の極地に至ることが目標だと言っていた。
アイズの知る限りでは、ジンはその目標に向かって真摯に努力を重ねていたと思う。
他に目もくれず一心不乱に。
時折アイズをして不安になってしまうほど愚直に。
剣に対して何処までもジンは真摯だった。
そんなジンが仄めかした他の理由。
思い当たる節はあっただろうかと頭を悩ますが、全くアイズには分からなくて胸の奥がモヤモヤした。
無意識に頬が膨らんで上目遣いで見る。
アイズからの無言の訴えにジンは答えず、冬の透き通った空を仰いでぽつりと呟いた。
「
「…………むう、誤魔化した。どうして教えてくれないの?」
「そうだな。今はまだその時ではないからだ」
「時期が来たら教えてくれる?」
「
「する!」
言質は取ったばかりに満足げなドヤ顔を見たジンが小さく笑うが、子供扱いされたような反応も今なら気にならない。
恐らくは誰も知らないジンの秘密。
いつになるかは知らないけれど、必ずとまで言って約束する以上は下手な誤魔化しではないだろう。
愛する人と秘密を共有する甘美さはアイズも既知のことだ。
胸の奥のモヤモヤなんて何処かへ行った。
だが、そっと小指を差し出そうとしたアイズをジンが制した。
首を傾げて手本のような不思議そうな表情をするアイズの目の前で、ジンは恭しく片膝をついた。
そして、優しく手を取って頭を垂れる。
「私、ジン・ブレイドはアイズ・ヴァレンシュタインを、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、いつの日か死が二人を別つとしても、守り抜き共に在ることを誓います」
月明かりに照らされる高潔な騎士の如き姿に、アイズは声もなく見惚れていた。
演劇のような大仰な仕草に、紡がれる言葉の数々に目を耳を奪われる。
あまり
どう言う意味があるのか分からないけれど、アイズは頰の熱さに戸惑いを隠せなかった。
そんな気配を感じ取ったのか、何事もなかったようにジンが立ち上がる。
何故か赤くなっているであろう顔を見られたくなくて、反射的にアイズは額をジンの胸に押し当てた。
だが、いつもより強く早鐘を打つ鼓動に驚いて顔を上げれば、普段通りのように見えるジンもほんの少し顔に赤みがさしていた。
気付かれたことを察して、ジンは気まずそうに目を逸らす。
「……俺の故郷の誓いだ。意味は知らん」
「そ、そう……なんだ」
嘘か真か分からず、けれどアイズは残念に思った。
冷静であったならば即座に嘘だと見抜けただろうが、そうはならなかったのだから仕方ない。
纏まらない思考の中で、半ば無意識に気になった言葉に対して返した。
「守ってくれるのは嬉しい。でも、ジンが一緒にいてくれるなら
「────っっ」
「………………えっ?あっ、ちがっ、今のはっ……あうっ!」
アイズは言葉にしてから、とんでもないことを口走ったことに気付いて、今度は首から上を真っ赤に染めながら慌てる。
だが、同時にジンも呆然とアイズを見返していた。
全く意図していなかった言葉であることは明白だとしても、あまりにもピンポイントで動揺する。
アイズに負けず劣らず顔が赤いことにも気付かないほどに。
これは、とある聖夜の一場面に過ぎない。
夜空に浮かぶ満月と星々は、トマトのように真っ赤に染まった二人の姿を優しく照らし続けていた。
なお、跡をつけてきた間に挟まろうとする邪教徒と、同盟ファミリアに挨拶に来たカプ推し信者による仁義なき争いが勃発していたことは余談である。
これしかオチ書けねえのか?ってくらい天丼だったので後書き送りの刑に処しました。
あとクリスマスのエモい余韻を残したかったのもある。
ん?余韻なんてなかったって?
あっそう。そこにないならないですね。知らんけど。
本当は投稿遅れまくった謝罪とか、待っていてくれた方々に対する謝辞を送りたいのですが、眠気がやばいのでおやすみなさい。
もう残り短いですが、皆様に取って実りあるクリスマスになりますように願っています。
メリークリスマス!(高評価&お気に入り登録&感想お待ちしています!)