束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「ヤバいな……事故が起きてんのかよ」
土曜日のお昼頃。若菜が通う定時制は土曜日の今日が終業式であった。その帰りのバス内にて、思わぬトラブルに直面していた。
ヴェルメリオ
『悪い。乗ってるバスが交通事故による渋滞で痞えて、帰るのが遅れそうだ』
ミニョリーナ
『え?そうなの?』
コッペリア
『途中下車は無理っそうスか?』
ヴェルメリオ
『渋滞も渋滞だ。帰るまでに時間が掛かりそうだから先にエストレヤの方へ行っててくれ。後で合流する』
時計ウサギ
『わーくん。空間跳躍の量子トンネルは普通、航宙艦船で航行するモノだよ? ISでもその洪水の様なエネルギー空間に耐えれない事は無いけれど、普通は無茶な行為だよ?』
ヴェルメリオ
『まぁ、過去に何回かやってるんで大丈夫ですよ。そんなヤワな話では無いでしょう』
アリス
『若菜君が言うなら良いけれど……そんなに遅れそう?』
ヴェルメリオ
『ああ、渋滞具合が酷過ぎる。先に先方の方に伝えておいてくれ』
チャットを閉じる。
流石に待たせるには時間が掛かり過ぎる為、取り敢えずシノア達には先に行かせる事にして、数時間後に漸く研究所へと帰宅する。
「先に行った筈だ。流石に向こうで待たせる訳には行かないしな」
制服から他所行きの黒のブレザーと黒と赤のフードパーカーを羽織り、すぐに地下区画の転送装置へと向い地球の軌道上に浮かぶ『ラビットコロニー』へと飛んだ。
「全く……キミは何時も遅刻してばかりだな。我が息子よ。我が母と娘達は既にエストレヤへと跳躍したぞ?」
コロニーに到達するや否や、管理者であるガイアから何時もの様に憎まれ口を叩かれた。そのガイアから束とシノア達は既にエストレヤへと移動した旨を伝えられた。
「そうか、分かった。少々、遅れてしまったからな。俺もエストレヤへ向かうぞ」
「うむ。では、エストレヤへの直通の量子トンネルを開くぞ。開きっ放しだと、周辺のモノを吸い込んでしまうからな」
『ラビットコロニー』の外周区にある複数の大型ビットが外宇宙空間へと射出され、コロニーから少し離れた位置に静止、そのビットの先端部を繋ぐ形でエネルギーラインを形成。
その直後、エネルギーラインの内側の空間が歪み渦を巻く様な穴が開かれた。
それは量子トンネル。次元の間に開かれた人為的な穴であり、この穴を通れば何万光年、何十万光年先の宇宙空間へと行く事が出来る……俗に言うワープホールと言うモノであった。
「コロニーの発進口へ行きたまえ。ついでに驚きの成果をみせてやろう」
『ラビットコロニー』には基本的にガイアが滞在しているのだがコロニーと言う体裁上、最低限、居住可能な空間も完備している。
最悪、地球上に居られない事態となった場合はこのラビットコロニーで滞在して移住可能な惑星を探すと言うある意味で分の悪い賭けに乗り出す想定も考えられていた。……最も今となってはその不安も解消されているのだが。
その居住区を抜けて発進口のある区画へ向かう長い廊下を歩く。
発進口の前には小区画のフロアがある。理由は単純であり、コロニーの外部は言うまでも無く宇宙であり無重力かつ大気が存在しない。その為、発進口の区画とは二重扉で隔離されている。
「若菜。ISを展開するのは久し振りなんじゃ無いのか?」
「以前展開したのは臘月の頃だったか。冬休みのタイミングで閣下から要塞クラスの絶対天敵の連合撃滅作戦に参加して以来だったか」
「……久し振り過ぎてポカをやらかしました〜なんて無様な真似を晒さないでくれよ。救難要請を出すのも大変なんだからな」
「地球の自称IS操縦者と一緒にしないでくれ」
居住区と発進口区画を隔てる区画の扉の前に到着する。コロニーの管理者であるガイアの権限により目の前の高圧力にも耐え得る二重扉が自動で開かれる。居住区側の二重扉が閉じればこの区画は無重力空間となり、奥の扉が開かれる仕組みだ。即ち、この区画でISを展開する事になっている。
奥の二重扉を抜ければIS用のカタパルトと航宙艦の発進口がある。
「では、準備が出来れば発進口のハッチを開くぞ」
宇宙空間では地球人は生身での生存は不可能だ。宇宙服か完全展開したISが無ければ活動もままならない空間である。
「ああ、分かった」
居住区側の二重扉が閉じられガイアの姿が二重扉の奥へと消えた。今、この部屋には若菜1人しか居ない。
「……待たせて悪かった。顕現しろ、『フォーマルハウト』」
光の量子が集約され両脚を覆う形で脚部の装甲が展開される。それは脚部装甲と言うよりもロングブーツに近い形状である。その背中には非固定の機械式の三段重ねの非常に特異的な一対の翼が備えられているのが大きな特徴的な外見の『インフィニット・ストラトス』と言える。
総じて既存のISと比べると軽量級と言うよりも特殊武装した生身と言うべき姿であった。
あって然るべきの装甲部である腕部も胸部もヘッドギアも存在していない。脚部の装甲も限界まで軽量、軽装、縮小されもはやロングブーツ程度の大きさしかない。
最新の第三世代機の機体に見られる脚部装甲と比べれば半分所か3分の1程度にまで削られている。
『シールドバリアがあるだろ? 重箱の隅を突く様にこの機能の凡ゆる欠点を指摘する奴も居ようが、凡ゆるモノは使い様だ。
シールドバリアと言えど使い方次第で如何様にも化ける。装甲? 要らん。最低限、機動に必要な分があれば充分よ。仮にあったとしてもハイパーセンサー込みであろうと、本能的な死角が大き過ぎる』
との事で余計なモノを削ぎ落とした軽装畢竟の境地と呼べる外観と言えた。
『全くだな、我が息子よ』
「!」
『フォーマルハウト』を完全展開したその時、脳裏に突如としてガイアの声が響き渡った。