束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
その後、十蔵寺から目的の特殊砥石とウィキッド宛に醤油煎餅を受け取った若菜は、鉄火場を後にする。
「若菜……お姫様を連れ回す気?」
『確実に面倒事がブレイクダンスしながら接近して来るぞ、良いのか……?』
隣を歩くユリエと脳内からはガイアが其々、そんな不安そうな声が掛けられる。その理由は現在進行形で肩車をしてやっているウィキッド姫の存在についてだ。先程、貰った煎餅を小動物の様に齧り頬張っている。
「流石におチビ姫を放置する訳には行かないだろ。適当なタイミングで
ウィキッドと仲の良い雷狐っ娘の姉か、配達員に速達して貰うのが正解である。自分で送り届けると言う手も無い訳では無いのだが……かなりリスクが高い。
「その前に邪教徒が湧いて来る気がするんですけど……?」
放っておいても勝手にくっ付いて来るのは目に見えて分かっている。ならば目の届く範囲に置いておいた方が良い。だって、放置しているとそれはそれで被害を齎しかねないのだから。
「さてと、
若菜はそう言うも頭上で煎餅を頬張っている幼女に意識を向ける。
「(・~・)」モキュモキュ
ウィキッドを連れている都合上、100%の確率で邪教徒絡みのトラブルが向こうからやって来る。あの手の連中は何故か自分を目の敵にしている事が多い為、第6層や学院区だと確実にバレる。
その癖、殆どの連中がB級以上のストライカーなので色んな意味で無駄に強い。最弱クラスでも1人1人が地球で言う代表候補生レベルだと思われるのだから怖過ぎる話だ。
『彼女の一挙一動で一大組織が動くのだから怖い話だな……。もはやアイドルか何かだ』
それで済めばどんだけ楽か。このおチビ姫を怒らせた暁にゃ、文字通り惑星が滅ぶぞ……。
「うー(・ω・)」ペチペチ
今は大人しく若菜の頭を余り袖越しに叩いているだけなのだが、癇癪を起こされると『災害』級の被害を齎して来る。
そして、こんな幼い体躯で低い精神年齢と言った見た目からは想像は付かないのだろうが、並の操縦者よりも脅威とされている。
正直、情けない話ではあるのだが……エストレヤ民からすると暴走時の危険度が若菜が10ならはばウィキッドは13との事。
「どした?チビ姫」
「うにっ(ヘ・ω・)ヘ」アッチー
袖余りの腕で向こうを指し示す。『製造区』と『学院区』の研究棟の直通の軌道エレベーターの前に見覚えのあるボロ缶が
『だぁれがボロ缶だァァァァ‼︎⁉︎』
「まだ何も言って居ませんよ、
『いや、心の中で言っていただろう⁉︎』
黒い長方体の胴体にアームがくっ付いたキャタピラ付きの箱が其処に鎮座していた。正面には白い四角形が複数点灯し顔を表現する様になっている。……ただ、側面にセロハンテープで『甲』と書かれた紙が付けられているのがとても気になる。
『私は最先端のサイエ〜ンスとテクノロ〜ジーのマリア〜ジュで完成された対人忌避用の半自律遠隔操作マシンノイド・インターフェース、マシーン甲・ロボ、Mk.4だ‼︎』
バーンと言う効果音と共に誰に対して自己紹介をしているのか分からない。毒電波でも受信したのだろうか?
この『マシーン・甲』を遠隔操作しているのは、このエストレヤの最高権力者、『崩宮 紫』閣下である。紫閣下自身は人前に姿を現す事は滅多になく専らこのボロ缶こと『マシーン・甲』を介して他者と相対している。式典や会議に出席する際もこのマシーン・甲で対応している。
「あの、閣下。俺が以前に拝見した時には確かMk.2であった気がするのですが……?」
ついでに言わせて貰うと何処が4なのかが分からない。
『フフフフフフ、何を隠そう‼︎ Mk.2は‼︎ セシリア君とラウラ君の戦争で無惨にも殉職してしまったのだ……‼︎ 致し方あるまい……彼女達の重力をも歪ませる一撃を一身に浴びては如何なるロボットも耐え切れまい……‼︎』
「致し方も何も順当な結果でしょ……。あの王女様と皇女様も飽きずに喧嘩しているわね」
ユリエの言う通り、あの2人の姫君はどんだけ仲が悪いのか……その内、超新星爆発を起こすわブラックホールでも生成するんじゃ無かろうか……?
『故に‼︎ Mk.3をレーキュ君と十蔵寺君全面協力の下、新たに開発した‼︎ しかぁし‼︎ ストーリー君を始めとしたエストレヤ学院の初等部の精神年齢が低い子供達の手によって『夏休みの工作』の材料として無惨にも分解されてしまった‼︎ ああ、何たる悲劇‼︎ 蔡歌君も止めてくれなかったし‼︎』
「さっすが蔡歌の担当する初等部。暴力の敷居が低いこと低いこと」
相手がエストレヤの支配者である崩宮 紫閣下の対人忌避用の遠隔操作ロボが相手であろうと一切の容赦が見られない行動。……多分、分解された後は最終鬼畜兵器へと魔改造されていそうだ。
「んで、如何でも良いのですが、閣下のボロ缶で工作をするは良いんですが内部OS
『……完全自律機動要塞の対処を迫られた時はマジでビビったな。あんなのをチビ達が造り上げたと言う事自体が凄過ぎるわ……。我が母の様な才能の片鱗を見たよ』
『母上よ、妾も一目見たいぞ‼︎』
脳内で大和が一目見たいと宣うが、ぶっちゃけそんな余裕が無かった。おい、誰だよ核融合理論を初等部の面々に教授した馬鹿は⁉︎ その結果、半永久で動き続けるわ、爆発時の汚染の危険性があるから機能停止に追い込むの本当に苦労したんだぞ‼︎
『安心したまえ、ちゃんと今回は監督を付けた上での図工の授業をしたから、問題は無い。……筈』
「……それ、フラグになってない?」
『だ、大丈夫だ‼︎ 問題無い‼︎うん、この私が言うのだから無問題だ、安心してくれたまえ‼︎』
「本当かしらね〜? ま、トラブったら若菜が何とかするから大丈夫ね」
俺はトラブルバスターか何かか‼︎
「ちっとも大丈夫じゃねぇよ……。俺を破壊王か何かと思っていないか?」
「違うの? ちょっと前にIS学園で滅茶苦茶大暴れしたって聞いたけど」
確かにあの時は大分、ハッスルしていた気がするけど‼︎
「うにーっ(/・ω・)/」ピョーン
その時、若菜の肩に座っていたウィキッドが軽やかに跳躍してマシーン・甲の頭上に乗っかった。相変わらず誰かの上に乗っかるのが好きなお姫様だ。
『ま、待ちたまえ‼︎ ロボットを大事にしたまえ‼︎』
「うにっ(」・ω・)」」ペチペチ
危険を察した閣下。このチビ姫は行動が読めず何を仕出かすか分からない。本人は楽しそうなのだが……。
「ユリエ、行くぞ」
「え、ええ」
そそくさとその場から離脱するべく軌道エレベーターに転がり込み、直ぐに扉を閉じる。
『あ、ちょ⁉︎ 2人とも待ちたまえ‼︎ 幼気なマシーン・甲を置いて行く気かね⁉︎ 此の儘だと、《ウィキ姫を愛でる会》の』
「諸君、此処は何処だ?」
「「「姫殿下を讃える玉座の間だ」」」
「姫殿下に遊ばれる名誉、例え閣下が相手であろうと罷りならぬッ‼︎」
「「「Krieg‼︎Krieg‼︎Krieg‼︎ Krieg‼︎ Krieg‼︎‼︎」」」
「ま、待て‼︎ 落ち着きたまえ‼︎ は、話し合お」
そのタイミングでエレベーターが上昇を始めた為に声が聞こえなくなった。恐らく今の第9層では地獄が発生しているであろう事が容易に想像がついた。
「ギリ危なかったな……。あのタイミングでおチビ姫が閣下のマシーン・甲に興味が向いてくれたお陰で助かった」
「あの邪教徒って何処から湧いて来るのかしらね……?」
「……おチビ姫が召喚していたりしてな。俺が知らないだけでおチビ姫もシノアや姫姉の様に量子変換の応用で拡張領域を経由して邪教徒を引っ張り出しているのかもな……」
「若菜……恐ろしい事を言わないでちょうだい。それだと、B級ストライカーを大量投入して来るヤバい奴にしか見えなくなるから……」
『仮に現実となったら恐怖映像でしかないぞ……その光景は……‼︎』
『汝等……それ以前にその様な連中。あの幼子の教育に悪かろうと言う事に思い至らぬのか……?』
大和からそんな疑問をぶつけられる。全く持ってその通りなのだが、既に手遅れだ。