束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「ったく、テメーは他に行く所無ぇのかよ」
「3時間とか言いつつ1時間程度で済むだろ?」
閣下の死を見届けてから若菜達は研究棟のレーキュの研究室に戻ってきた。3時間経過して居ないがレーキュのサバ読みである事は分かり切っていた。性格云々や人格面では大問題ではあるがその実力や才能は疑いようが無い。
「ケッ。言ってくれるぜ。ほらよ」
Dr.レーキュは吐き捨てつつ件の基幹装置を若菜へと投げ渡す。つまり、要件は既に終了したと言う事である。流石の腕前である。
「で、如何だった?」
「圧縮データを解凍しても復元不可の文字化けだらけとかマジで巫山戯んな。内蔵データ全部が改竄されまくってるとか正気の沙汰じゃねぇよ」
バツが悪そうにDr.レーキュはそう吐き捨てる。如何やら頑張ったらしいが途中で投げ捨てたらしい。彼がウンザリすると言う事は他の者がどれだけ頑張ろうが不可能を意味する。
「……成程な。電気信号の改竄か。データ其の物にも仕組まれていたとは、用意周到だな」
『変数』を限りなく排除したい。成程、理に適っているな。いやはや、流石と言う他に無い。
「あん?そいつは如何言う意味だァ?」
OVTシステムは人間の脳が処理する電気信号に介入、改竄していた。その改竄された電気信号にも種類が存在しており、特定の信号でなければ映像として認識する事が出来ない。
「コイツを俺に託して来た奴は人間が認識する視覚情報を構成する電気信号に改竄する機能があった」
「つまり、その特定の電気信号じゃなきゃコイツは解読出来ねーつー事か。その信号自体を特定するのも相当骨が折れるぞ……何万通りあると思ってんだが」
かったるそうにDr.レーキュはそうボヤく。確かに電気信号の識別パターンは数えるのが億劫になるくらいの通りがある。それらの中から認識可能な信号を特定するのは途方もない労力を有する。
「その必要は無い。その信号の構成自体、割れてるからな」
「ほー、言ってくれんじゃねぇか。で?」
「今は手元に無い。必要があって引き千切ったからな」
『夕張の眼』だ。アレがOVTシステムによって改竄された電気信号を正確に捉える事が出来た。根拠はそれだけだ。しかし、アレは夕張本人にも認識出来てしまう。『変数』の可能性を考慮すると破棄せざるを得なかった。
「報酬は後で振り込んでおく」
若菜は彼に対する要件が済んだ為に踵を返して研究室を去ろうとすると、背後から机に腰掛けたDr.レーキュが口を開く。
「金は要らねぇ。閣下経由で有り余ってるからな。他のモンにしろ……そうだな、今度の地球でクラス別対抗トーナメントとか言ったか?」
「それがどうかしたか?」
「姫舞と伽羅が何か企んでるだろ?
「成程……如何やら相当大事にする気の様だな。姫姉と伽羅さんは」
「それで、ウチを訪ねたって訳だ」
Dr.レーキュの研究室を後にして次に訪ねたのは夕張の研究室であった。此方には部屋の至る所に培養槽が鎮座しており不気味な光景が遺憾無く広がっている。
「此処も此処で気味な悪いわねぇ……あの培養槽に浮かんでいる眼球、ずっと私達を見ているじゃない……」
部屋の隅に鎮座している培養槽に浮かぶ多数の眼球が絶えず来訪者に向けて視線を向けている。ある意味防犯対策としては最高レベルの機能を発揮していると言っても良いだろう。
「ああ。前回のアレは皮肉にも役に立ってくれはした」
「でも、ウチを身体から引き千切るなんて真似は看過できないわね〜。折角、一体感を享受出来たと言うのにさ〜」
「情報処理が2倍になれば効率も2倍に! になる訳無ぇだろ、人間の脳が1度に処理出来る情報には限界があんだよ‼︎ つーか、目玉は3つも4つも必要無いだろ⁉︎」
人間に目玉を幾ら増やそうが脳の処理出来る情報量には限界があり無駄な行為である。
「じゃあ脳を増やせば問題無い訳ね。ちょっと其処のベッドに寝てちょうだい。さっそく人体実験してあげるわ」
「やるか、莫迦ッ‼︎ 流れる様な動作で人体実験を勧めてくんじゃねぇよ⁉︎」
取り敢えずの感覚で脳を増やそうって発想に至るのは勘弁して欲しい。ホンモノの化け物になるだろうが。
「冗談はこの辺にしておこうかしらね」
とても冗談には聞こえなかった。どうしてエストレヤの連中はあの手この手で人体実験を行おうとするのだろーか。もう少し生命の尊さを学んで欲しい……いや、手遅れか。エストレヤ学院に道徳の授業とか存在しねぇし。
コイツらが道徳学んだら余計に性質の悪い真似を仕出かして来そうでやっぱり此の儘の方が良いかも知れない。
「以前、アンタに移植した『眼』が捉えた電気信号のパターンでこのデータを照会したい訳ね」
「ああ。コイツを託して来た奴は『有効活用』出来るとか言っていたからな」
「…………。信用してるんだね」
夕張には『眼』を介してあの時の戦闘光景は把握されている。だからこそ『奴』が誰なのかも既に知っている。だが敢えて名を言わなかった。
彼女も彼女でイカれこそしているが、断片的な情報で若菜が暗躍している事は理解している。
「じゃあ、一旦預かるわね〜」
夕張に基幹装置を渡して数分後。
「くふ、待たせたわね。改竄された情報を再変換したわよ」
基幹装置を片手に夕張が戻ってきた。ただ、その表情は芳しくは無かった。
「認識可能な様にデータを再変換したけれど、そのプログラムコード自体がバッラバラよ。単語単位で分散している。単語自体は理解出来るけど『組み合わせ』がねぇ……」
改竄された電気信号を再変換し他の者が読み解く事が出来る様にしたとは言え内容が支離滅裂であるようだ。早い話がバラバラになった単語の意味は理解出来るが、組み合わせのパターンが膨大との事。
「……ふむ」
若菜は目の前に展開された空間ウィンドウに表示された再変換されて表示される基幹装置のデータに遺された単語の羅列を俯瞰して見る。OVTシステムとの戦闘を回想する。奴が何を思ってコレを若菜に託したのか……その意図を手繰り寄せる。
「……………………」
再現、物理、干渉、理解……。侵蝕、精神、抽出、同調……。代償、感応、創造、赫醒……。此処に遺された情報を組み合わせるには……奴は何を伝えたい?
『……大和。邪魔はするな。我が息子に任せろ』
『ほむ……分かったのじゃ。急に無言になられると怖いのじゃがのぅ』
まさに情報の洪水。その内部へと侵入して行く。単語の1つ1つは単純な意味しか持たない。ただ適切に組み合わせる事で『提示したい情報』へと至る。
「こりゃ暫く掛かるかも知れないわね。邪魔しちゃブチ切れ不可避だしねぇ」
若菜はとにかく邪魔されるのを嫌う。特に集中している時や笑みを浮かべている時に邪魔をするのは大変危険な行為である。その事を知っている為に夕張は無防備であるにも関わらず手を出さない。
「あー、確かにそうかも……満足するまで周囲の事はお構いなしだからねぇ」
「くひ。暇だから、アンタで人体実験をしちゃいましょうか‼︎」
「なんでそうなるのよ⁉︎ え、その粘液は何処から⁉︎ 待って待って‼︎ 纏わりついて来ないでよ⁉︎ ネバネバしたもの気持ち悪いんだから‼︎」
「はいはーい、一名様。実験室へとご案内〜♪」
後ろでは夕張によって粘液塊に囚われたユリエ奥の実験室へと連れ去られて行く光景が広がっていたが目の前の情報の処理に集中している若菜には実験室の扉の上にある『実験中』のランプが点灯しても終ぞ気付く事は無かった。
現在のプロット(仮)(書くかどうかはまだ未定)
・ISライセンス特別試験【劇城】
・奇数組と偶数組による紅白戦
・豪華客船