束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「……今からでもバックで帰りたいな」
翌日。IS学園の8組の教室へ向かう廊下にて若菜は戦々恐々とした気持ちの中で8組教室へと向かって歩いていた。理由はただ1つ、伽羅が若菜へと向けて用意したと言う『ご褒美』の存在である。今朝の朝食の時もシノアとフィウからも『内緒』と言われてしまったし、何故か自分だけ遅れての登校と言う不自然な対応をされてしまった。
『コレで恐れるなと言われても納得は出来ないな……一体、何を企んでいるんだろうな?』
「……分からん」
時間の良い所は必ず過ぎる事。
時間の悪い所は必ず訪れる事。
つまり、その時が訪れてしまった事を意味している。8組の教室の扉の前に来てしまった。だと言うのに異様に静かであった。その静けさがまるで嵐の訪れを感じる……。
『無駄に静かだな……』
いや、本当に……確実に何か待ち構えていると分かる。ええい、ままよ‼︎ 此の儘、立ち尽くしても仕方無ぇ‼︎
若菜は意を決して8組の教室の扉を開け放った。
「「「お帰りなさいませ、ご主人様‼︎‼︎‼︎」
「……お、お帰りなさい……ご、ごしゅ、様っ‼︎」
バタンと言う豪快な音を立てて即座に教室の引き戸を閉じて頭の中で状況を整理する。
「……えーと、コレは現実なのだろうか?」
8組の教室内が豪華マンションのエントランスみたいな光景が広がっていた。いやいやいや、それは無い。つい先程の光景は幻覚に違いない。
『我が息子……現実逃避は止めたまえ。現実を見た方が良いぞ……?』
いや、あり得ないだろ⁉︎ 8組の面々がメイド服に身を包んで出迎えて来る光景なんて普通、あり得ないだろ⁉︎ 学園祭とかの季節にはまだ早過ぎるだろ‼︎
『現実的常識を平然と無視している奴が言う台詞じゃないな』
「コラ、若菜。逃亡は許さないわよ?逃げたら、もっと酷い目に遭うわよ?」
扉の向こうから伽羅が釘を刺してきた。いや本当に分かってて仕組んだでしょ、この人‼︎
「ええい、ままよッ‼︎」
半ば諦めの境地で8組の教室の扉を開ける。そして目の前に広がるはメイド服をその身に包んだ8組の生徒の面々であった。当然、シノアやフィウもメイド姿であった。
は?描写が足りねぇだと⁉︎ 良いだろう、応えてやる‼︎ 白と黒のコントラストが印象的だ、ワンピースの上にフリルが多くついたエプロンが備わった衣装だ。スカート丈は極端に長いか短いかの2択だろうが、人によってマチマチだが、丈が長いクラシカルスタイルの者が多い。
細かい点を見れば結構、差異が多い。黒いロンググローブを嵌めている者、逆に白色のロンググローブ、或いは素手の者。他にも何重にもフリルがあるスカートを身に着けている者。ベルトの色も黒や白の場合もある。
もう、コレで良いだろうがコンチクショウがッ‼︎
「コラ、若菜。折角、女の子がメイド服を身に包んでいるのにまるで見たくないモノを見たかのような拒絶反応を起こして乱暴に扉を閉じちゃダメじゃない」
人差し指を口元に当てながら薄ら笑みを浮かべながら教壇の上に佇む伽羅がそう告げて来る。
「不意打ちにも程があるんですよ⁉︎ 何故、シノア達や黒糖達がメイド服を着ているんですか?」
「そりゃ勿論、私が8組の娘達にメイド服を着せてコスプレさせたかったからよ。そして、若菜に不意打ちして慌てる姿を見たかったからね」
伽羅はさらりと言い放つ。コレが伽羅の言う若菜に対するご褒美だとか。それから自分の欲望を満たす為でもあったらしい。
「本物のメイドさんの様に洒脱はしていないけれど、完璧なメイドさんの対応も悪くないけど、所作に慣れておらずこんな初々しい姿は眼福でしょう?」
「まあ、否定はしませんけど。女の子がメイド服を身に纏っている姿は大変似合っていますし」
可愛らしい女の子達がメイド服を着ている。その光景を見て嫌とは言えない。ただ、不意打ち過ぎて気が動転していたのだ。
「うん、素直で宜しい。そう言う所は好ましいわ。曖昧にはぐらかすよりかは何倍も良いよ。選択出来ない奴は敵にも味方にもなれないからね」
若菜の感想に伽羅は満足する。不意打ちも成功して普段は冷静な若菜が本気で慌てた光景を見られた事で当初の目的も達成されたのだ。
「……と言うのは目的の半分。もう半分は、訓練の一環よ。……時には普段とは異なる服装で戦闘に臨まなければならない時もあるでしょう?いつでも、万全の状態で戦闘に突入出来るとは限らない。それは服装も例外では無いわ。
だから色んな服装に慣れると言う名目で皆には暫く重装備のメイド服を着て授業や訓練に参加して貰う事にしたのよ」
「…………つまり、他のコスプレもさせるつもりですか?」
学園とか言う閉鎖環境だとまず間違いなく悪目立ちする点に関して指摘しても仕方ない気がしてきた。あと、サラッと流してはいたが彼女達は暫くはメイド姿で過ごさせるつもりらしい。……職権濫用じゃないのか?
「ええ、そのつもりよ? 良かったわね、若菜。目の保養になるでしょう?」
「…………。退路を纏めて潰すの止めて頂いて良いですかね?」
選択肢が無ぇだろ、それ‼︎
『諦めろ、我が息子』
脳内で響くガイアの声がこの状況を一言で言い表していた。
「さてと……若菜も漸く復活した事だし、改めて連絡事項を通達しましょうか」
若菜を除く女子生徒のメイド率が100%な8組教室にて、教卓前で伽羅は着席している面々に対して連絡事項を改めて説明する。見渡す限りメイドの格好をした女の子達ばかりと言うのは異様な光景だが、気にしたら負けである。
「まず、確定事項から。先の『打鉄暴走事件』の影響で開催が危ぶまれていた『クラス代表対抗トーナメント』の件だけど、日程調整の末、1週間の後ろ倒しの延期が正式に決定したわ」
現在も第1アリーナの再建作業が続いている。日程が後ろに倒れこそしたが開催する予定との事。
「……黒糖さん。調整は抜かりなくね」
「ええ、分かっていますよ。ただ、専用機持ちの状況が変わったのでその再定義が必要なので情報収集は継続します」
黒いフリル、真っ黒なロンググローブが印象的なクラシカルスタイルのメイド服に身を包んだ黒糖 久里がそう答える。不良娘と言った見た目から黒配色が多めが映えるらしい。
「次。シノアやフィウが申請していた主に全校集会で使われる大講義堂の件だけど、申請が受理されたわ。来週の水曜日。それまでに準備を進めるように」
「……件の『策』ですよ。若菜君」
「ああ、成程。済まん、俺が居ない間に進めてくれていたのか」
白と黒のクラシカルなメイド服に身を包んだシノアがそっと耳打ちしてくれた。それだけの単語だけで若菜は委細を理解した。時期的にも悪くは無いだろう。後は音合わせを突き詰めるだけである。
「そして、最後にまだ未確定情報なのだけど、クラス代表対抗トーナメント当日に『篠ノ之 束』博士が来校するわ。
その言葉に教室内の空気が凍り付く。それ程までにその言葉には強烈な意味が込められていたのだ。
『篠ノ之 束』
インフィニット・ストラトスを開発した世紀の自他共に認める大天才。その影響力は凄まじいの一言に尽きる。そして、若菜とシノアの母親でもある。
そんな超VIP的な存在が、クラス代表対抗トーナメントにて……8組の生徒達を見定めるべく来臨するとの事。驚くなと言うのは無理があろう。何故ならば、篠ノ之 束は好き嫌いがハッキリしており興味が無い存在に対しては眼中にも留めない。
「黒糖さん以外も見定める事になるから、そのつもりで居なさい」
『ISが無くとも』、『クラス代表でなくとも』、出来る事はある。ただただ、クラス代表に任せきりの愚者には栄光は不要である。
愚かな者達は『IS』は自らを着飾る為の『アクセサリー』だと認識するだろうが、その実……自分達が『インフィニット・ストラトス』の
「それから、言い忘れる事だったけど……若菜に対して名前呼びかご主人様呼びかは各人に委ねるわ「ちょ、待ッ⁉︎」。若菜は学園内では複数人侍らせるようにしなさい「どう言う意図ォ⁉︎」。若菜、五月蝿いからちょっと黙りなさい」
「う、うにーっ(/>ω<)/」シンチョウタリナイ
「あれ? ウィキちゃんだ。何時の間に……」ヒョイ
「うにーっ(っ・ω・*)っ」パカー
その頃、自宅にて束はキッチンの冷蔵庫前にウィキッドが背伸びして冷蔵庫の冷蔵の扉を開けようと頑張っている姿を見て脇の下を持ち上げつつ疑問符を浮かべる。
持ち上げられたウィキッドは冷蔵庫を開けて、中に入っていた小さなチョコレートを手に取った。
「…………。あ、そうだ♪ 束さん、良い事、思いつちゃったよ‼︎ ふふ、偶にはチャンスと言うモノを用意しないとね。……逆にモノに出来なかったら、再起不能になるかもだけど」
「うにうに(・~・)」モキュモキュ
束はウィキッドを見ながら、ある企みをその頭の中で高速で組み立てるのであった。