束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
クラス代表対抗トーナメントが1週間の延期。その情報は瞬く間に学園中に広まった。中止にならなかっただけマシとも思われた。学園内外問わずにである。
ただ、多少の変化は発生が起こるのは言うまでも無い事だろう。
「ねぇ、聞いた?」
「講義堂に何か張り紙が貼ってあったよね?」
「8組って2人目の男性操縦者が居るクラスだよね?」
「ライブ? 軽音楽……?」
「IS学園に軽音部とか無かったよね」
「と言う事は……2人目がライブを披露するって事⁉︎」
クラス代表対抗トーナメントに向けて話題が盛り上がってこそいたがそのタイミングでまた別の話題が放り込まれたのだ。
全校集会で使われる講義堂の入り口の扉やその近くの壁にある張り紙が貼られていたのである。それは今から1週間後に講義堂にて8組の生徒達がライブを行う告知であった。
噂は噂を呼びその噂は瞬く間に広まり、クラス代表対抗トーナメントの話題を完全に塗り潰してその話題一色となった。
ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードなど担当者は誰1人として不明である。ただ分かる事は8組の誰かであると言う事であった。
生徒達はそのメンバーの1人は男性操縦者であると考えていた。いいや、それが当然であると言う認識も付随していた。
その準備の為に講義堂は今日から関係者以外、立ち入り禁止に近い状態となっていた。最も講義堂を使う機会はそれ程多くは無いのだが……。
講義堂は扇状の形状であり最前列が下段となり階段上に座席位置が高くなる階段型の構造である。その室内にはライブ会場として使用する為にその準備を若菜達の手で行われていた。
「いやぁ、凄い反響っすね。あっという間に学園中はライブの話題で持ち切り状態ですね」
アンプや配線等の準備を進める中で、久里がドラムのセットをしている若菜にそう声を掛ける。
「織斑 一夏1人にあれだけ騒げるんだ。此処までは想定内だ。対象が俺でも其処の点は変わらなかったようで何よりだ」
「……篠崎さんは、かの篠ノ之博士の子息です。ネームバリューの点で言えば同等でしょう」
その言葉に永世がそう繋げた。久里が黒の配色が多いのだが逆に永世は白の配色が多いクラシカルスタイルのメイド服をその身に包んでいる。超然とした雰囲気から1番、洒脱したメイドに見えなくも無い。
「そう言うモノかね? まぁ、ともあれ……コレだけ意識が此方に向きゃあ、クラス代表対抗トーナメントの事も疎かになるだろうよ」
早い話が『雑念』の誘発である。
規定プログラムのみ実行する機械でも無ければ、感情を排斥されたヒューマノイドでも無い。高々、10代も其処らの小娘。
強烈な『横槍』の存在を意識した上で、訓練を両立させる事が出来る者は極めて限られる。
「間接的に訓練時間の削減を誘発させる……。代表候補生、クラス代表と言えど機械兵器では無く人間……」
更にはクラス代表には代表候補生も含まれている。その者達は『若菜と恋仲となれ』と言う政府命令が出ている。接触する機会が限られている以上は嫌でも注視せねばならない事だろう。
「……直接的な排除が出来ない以上、このような遠回りなやり方をせざるを得ません、か。行使可能な手段が限られている以上は致し方ありませんね」
「……後はこの『横槍』が何処まで通用するか、だな。全く動じない奴も現れるだろうよ」
「その場合は真っ向勝負するしかありませんな。最も、そんな偉丈夫みたいな人は女尊男卑に靡くとは思えませんけどね」
久里はそう言い肩を竦める。そんな奴はきっと世紀末覇者みたいな人格だろう。……存在するのかは別として。
「……引き続き、偵察役の人達には情報収集を続けて貰いましょう」
偵察役の生徒はメイド服は明らかに目立つ為に制服に着替えて貰ってから行動しているとの事。いや、結構面倒臭いな。
『織斑 一夏の専用機のコアがリーリスに盗まれたからな。予備パーツで組み上げて表向きはなんて事の無い様に振る舞うつもりらしいぞ』
最も1番の懸念は単一仕様能力の有無だろうな。アレは本来は二次移行かつ同調した時にしか発現しない。大和時はOVTシステムによる侵蝕の影響で発現したに過ぎない。
ただ、今の機体名『白式』に搭載されているコアは難物も難物のグルーミィだ。……言うまでもなく織斑とは相性は最悪。俺でも会話する事が難しい相手だからな。
そう言う意味では1組の攻略難度はやや下がるか。となれば1番の要注意の相手は2組の凰 鈴音か。あの時、久里達8組総出で鈴音に対して火力を集中させ集中砲火で撃墜したとの事。
取り敢えず秘密兵器くらいは用意しておくのが吉か?或いはアレが間に合うかどうかで決めようか。
「良し。此方は問題無いな。そっちはどうだ?」
シノアの方に声を掛ける。向こうも順調の様だ。弦も問題無いしマイクも不調は無い事は確認出来た。
「そう言や、この後の時間割は何だったけな?」
「……確か1組との合同訓練でしたね」
「1組の担任教師の強い要望があったとか……。その意図までは読めませんな」
永世がそう答えてくれた。1組……織斑や叔母上が在籍するクラス。そして、あの織斑 千冬が担当するクラスでもあり、特にゴミ虫率が高いクラスでもあった。
一言で言えば空気が悪かった。
場所は生徒向けに学園配備されている訓練用のIS、『打鉄』と『ラファール・リヴァイヴ』の保管庫兼整備室の大広間のスペースである。
1組と8組の合同特別授業を此処で行う為に該当する生徒達を集めたのは良いのだが……。
「…………」
「「「……………」」」
1組の担任教師の千冬は
何故ならば、1組の生徒達はIS学園指定の白を基調とした制服を身に包んでいるのに対して8組の生徒達は若菜を除いた女子生徒全員が様々なデザインのメイド服をその身に包んでいたからだ。然もかなり凝った装飾が備わっておりオーダーメイド製と思われた。
クラシカルスタイルのメイド服の者が多く見るからに重そうで重装備を思わせる装いであり近未来的なこの空間においては明らかに浮いてしまっている。
「あの……天瓦先生。コレはどう言う事なのでしょうか?」
「私の趣味ですよ? 可愛らしい顔立ちの女の子が集まっているのだから、コスプレさせたかっただけです。そもそもIS学園の制服はカスタム自由なので『メイド服』を学園の制服として扱う事も校則上、問題はありませんので異論は認めません」
「そ、そうか……」
千冬の質問に対して伽羅はキッパリとそう言い切った。堂々とした暴論過ぎて反論の余地が見つからなかった。
ただ……8組唯一の男子生徒の若菜が『うわぁ』と言った顔で視線を逸らしているのが見えた事からどうやら彼本人も相応に苦労しているらしい。8組の胃痛枠は彼だと言うのか……いや、教師に振り回されているって割と問題な気がするのは私だけか?
「……あ、あの織斑先生?」
「あ、う、うむ。ごほん」
8組の存在其の物が千冬にとっての胃痛案件になりそうな予感を覚えつつ咳払いして意識を改める。現時点で可笑しいのは服装だけなので、取り敢えず授業を進めねばならない。
少ない授業時間を割いてまでこの特別授業を行う意義を果たさなければならない。
「では、これより1組と8組の合同による特別授業を始める」
整列した生徒一同の前で千冬はそう告げる。千冬の後方には『打鉄』と『ラファール・リヴァイヴ』が鎮座している。授業内容が一切伏せられている為に1組の生徒達は何をするのかは想像出来ない。模擬訓練ならばアリーナで行う筈であり、ISスーツではなく制服姿でこの場に集合の時点で予想は不可能だ。
「……諸君らが気になるこの特別授業の内容は、『ISコア』の意識と対話を通じ相互の理解を深める事だ。
諸君らも授業にて『ISコア』には其々、人格や意識が存在し人間と同じように好き嫌いが存在している……。故に機体や専用機に対しても人間と接するのと同じように対するのが上達の為の手段の1つである。と学んだ事だろう。
しかしながら、その通説は私を含めてその自我意識と対話出来た者は殆ど居ない」
ISのコア意識と対話する。だが、それが出来た者は殆ど居ないとも言われてた。ならば本末転倒では無いのかと言う疑問が過ぎる。
「だが、8組の篠崎や束と面識のある天瓦先生はその手段を知っている。
その手段を用いて諸君らには量産機のISコアとの対話を行って貰う。専用機持ちは自身の機体のコアとの対話をして貰うつもりでいろ」
「先生。それは安全なんですか?」
1組の生徒がそう質問をする。
「少なくとも、篠崎は何事もなく行えていた。問題は無いだろう。……では、天瓦先生。時間も限られているので早速、お願いする」
その返答に質問した生徒は納得する。此処まで、説明して千冬は伽羅に授業の進行を委ねた。8組は唯一、担任に教育カリキュラムの全てが委ねられている。その授業内容は全くの未知数。……何せ、生徒達にメイド服を着せ替えているのだから予想が出来ない。
「以前、束博士からその関連の話があったと思えばそう言う事。良いよ、やってあげるよ」