束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
『全くだな、我が息子よ』
「!」
唐突に脳裏に響き渡るガイアの声。
『ふふん、どうだ?驚いただろう? キミの驚くその顔が見たかったよ』
「……ガイア。何をしたんだ?」
『簡単な事だ。コア・ネットワークのちょっとした応用だ。ISコアにはお互い情報の相互送信機能が搭載されている。公開通信や秘匿通信はその機能の一環に過ぎない。
『フォーマルハウト』の意識領域に私のデータをインストールしたのさ。喜びたまえよ♪』
「……ガイア自身のマテリアルボディはどうなる?」
『マテリアルボディがマスターだ。今現在の私は子機に当たるな。もし万が一、フォーマルハウトのコアに異常が発生したとしてもマスターの『ガイア』のボディが無事であれば何ら支障も無いさ。
ふふん。キミが地球上で過ごしている間にも私は常々、進化しているのだよ。精々遅れを取らないでくれたまえよ、我が息子よ』
姿は分からないが、おそらくドヤ顔を浮かべている事は容易に想像出来た。序でににへへ〜と言った何とも言えない笑みを浮かべている事だろうか。
「…………以前言っていたのはコレの事か」
『本音を言えばキミの脳髄に極小コアを埋め込めば其処に住み着けるのだが、目下研究中でね。お披露目にはまだ時間が掛かりそうだ。完成した暁にはキミを1番最初に施術を受ける権利をあげよう。
時が満ちるまで今はこの状態で我慢してくれたまえ』
「……一生完成の日の目を浴びない事を切に願う」
人の体で勝手に人体実験するんじゃない。何処ぞのDr.みたいな真似を……いいや、確実に奴が噛んでいても不思議では無さそうなのが頭の痛い話と言えるか。
『期待して良いぞ♪ ふふん、完成が待ち遠しいな、我が息子』
「…………」
案の定、人の話を聞いてくれないな、このISは。いいや、何時もの事か。
「雑談はその程度にしておこう。向こうで母上達にドヤされるのも面倒だ」
『それもそうだな。各種、機能はオールグリーン。ハイパーセンサーも異常は無い』
ハイパーセンサーとは全てのISに標準搭載されている感覚補助装置の事である。360度、全方位を視認可能……と言う機能である。
搭載された理由。それは宇宙空間では大気が存在しない為、『音』が伝わらないからである。『音』が伝わらない以上、聴覚による反応は期待出来ず、目視による視覚情報で周辺を把握せねばならない。
最も、人間の脳がその情報を処理するのは難しい。単純に視界を広げてもそれを正像、3次元で把握出来るかは別問題だ。
「……宇宙ゴミの問題は如何にかした方が良いんじゃないのか? 眼前に漂われるのはそれはそれで邪魔になるが」
『そんなモノ、地球の国連に言いたまえよ。元を正せば宇宙にゴミをばら撒いたのは後先考えなかった先進国の宇宙開発競争の連中だろう』
例え小さな欠片のゴミであろうと宇宙空間では凶器と化す。例え小回りの効くISでもアステロイドベルトを通過するのは中々、危険な行為と言われている。
『さてと、この辺にしておこう。準備は良いか? 我が息子よ』
雑談は今度こそ終いにして、ガイアからそう確認を取られる。
「ああ、問題ない。開けてくれ」
『発進口側のハッチ、開放』
発進口へと続く二重扉が無音のまま開放される。この空間は既に無重力となり、大気が存在しない空間へと変貌を遂げる。
小区画の床から僅かに浮き上がり背部に浮遊する一対の翼、《撃腕翼》の指先に当たる部分から赫い粒子を僅かに噴射する。それだけで前方へと滑る様に進む。無重力空間故に慣性が働かず何処までも進むのである。
『カタパルトに脚をつけたまえ。久し振りに一気に飛ぼうじゃないか』
進んだ先にある発進口。その床面には複数のIS用の射出カタパルトが設置されている。その1つに脚部を着ける。
『此方は準備OKだ。カウントを頼む』
『では、行こうか。3、2、1、0‼︎』
ガイアのカウントがゼロになった直後、カタパルトが急発進、レーンの上を猛スピードで加速して漆黒の宇宙空間へと若菜は飛び出した。
宇宙空間へと飛び出すや否や、撃腕翼の三方の指先から赫い粒子を放出し更に加速。前方へと開かれた量子トンネルの入り口へと飛び込んだ。
真っ暗な空間に遠くに太陽系の惑星が見えた光景から一転、量子トンネル内では白い空間であり、光の筋が渦巻く形で奥へ奥へと吸い込まれていく光景が広がっていた。落下するような或いは抗いようの無い洪水の如き斥力を浴びながら猛スピードで量子トンネル内を通過していく。
『……若菜、気を付けろ‼︎ 何か追ってくるぞ‼︎』
『何⁉︎』
その最中、ガイアから警告が発せられた。ハイパーセンサーを介して後方を視認する。すると、量子トンネル内の光の濁流の奥から雷電を纏うナニカが此方へと急接近してくるのが見えた。
『……間違いない。絶対天敵だ‼︎ しかも、私のデータに無い……新型かつ大型だ‼︎』
ガイアが脳内で叫ぶ。その刹那に距離が詰められその威容が目視で確認出来た。
黄金の黒の鋭利な外殻、鋸状の鶏冠、昆虫の翅を彷彿させる大翼、鋏を思わせる尻尾……全体的にワイバーンやドラゴンを彷彿させる姿をした存在が後方から突如として現れたのだ。
『このタイミングで襲撃を掛けてくるとな……明らかに待ち伏せされてんじゃねぇか』
『我が息子、随分と絶対天敵から恨まれているみたいだな』
『心当たりしか無いな‼︎ 態々、新型を寄越してくる程とはな』
『絶対天敵』。それは、機械的な特徴を有した機械擬似生命体。コレから向かうエストレヤを始めとした様々な惑星国家へと数世紀以前から襲撃をしている敵対的な生命体群。束一行が初めてその宙域に辿り着く以前から闘争に明け暮れていた。そしてISの存在が広まった事によりある種の転換期を迎えたが、非常時なのでこの場では割愛させて頂く。
今回、確認された絶対天敵は既存の種類には該当しないつまり、新型の存在であった。
『感心している余裕は無いぞ。量子トンネル内では強烈な重力負荷が掛かってる。この状況で後ろを陣取られると、攻撃され放題だ』
量子トンネル内は常に洪水や濁流の様な重力負荷が発生しており、一時停止などしようモノなら後方から掛かる重力によりシールドバリアや絶対防御の有無を言わさずに骨や内臓を纏めて圧砕されてしまう。
『かと言って、後ろの
後方の新種の絶対天敵が口を開くと同時、雷光が迸り雷撃が放たれるも、若菜は右側へローリングする様に躱す。ISの360度網羅するハイパーセンサーがあるからこそ、振り向かずに回避が出来る。
『現状、この量子トンネル内で此方側攻撃する手立ては無い‼︎ 量子トンネル内で流れに乗りながら回避行動が精々だ‼︎』
反撃しようにもこの量子トンネル内では振り向く事すらも自殺行為。向こうから追われながら一方的に攻撃に晒される事になる。
『……ガイア。ちと無茶するぞ』
『キミ、定期的にアホな真似をしないと胃痛になる病気にでも掛かっているのかい?』