束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
特別授業から1週間後。延期された『クラス代表対抗トーナメント』の開催まで残り1週間となった訳ではあるのだが……そんな興奮よりも興味を惹かれる突発的イベントがこの日、開催される事となったからだ。
「悪いな、2人とも。巻き込む形になっちまって。結構、キツかったと思うんだが」
「あ、いえ。大丈夫です。天瓦先生から『コレくらいの困難、乗り越えて見せな』……でしたので」
「気にするな。お前の強さの根幹を独占的に探れるチャンスを逃す訳無いだろ?」
当初の予定ではユリエとフィーリリアに頼むつもりだったのだが、想像以上にIS学園の缶詰振りであった。一般人が学園に立ち入れるのは学園祭に限られるとの事。1組のクラス代表戦の後に画策はしていたのだが流石に無理強いする理由としてはかなり弱いしOVTシステムの時に折角作った『貸し』を此処で消費してしまうのは勿体無い。
その為、ユリエ達の参加は難しいと判断した瞬間、急遽8組の面々でバンドチームを組む事にした。その結果、金子 燐芽と吉祥寺 紫苑の2人を迎えて可能な限り猛練習及び音合わせを敢行したのだ。
正直な所、無理させた感があったが……伽羅さんの『狂育』の賜物なのか動じていなかった模様……。いや、コレは流石に動じても良いと思うのは俺だけなのか?
「そ、そうか……」
本人達の自己申告故にこれ以上は追求はしなかった。堂々巡りになりそうだし本人達が良いと言った以上は踏まえてやるのが同義。
因みに今回のライブでは伽羅が悪ノリして強行したオーダーメイド製のメイド服では無くIS学園の制服である。衣装は用意したは良いのだがサイズが合わないし諸事情で曲目も変更せざるを得なかった為、時間の都合も相俟って制服で行う事に決めた。
「はわわッ。外の様子は凄い人集りですよっ⁉︎」
「目論見は成功、かしらね……。何人かクラス代表と思われる生徒の顔も見えたわ。こんなイベントに現を抜かしている余裕があるとは、ね」
講義堂を開ける時間までまだ40分程あると言うのに廊下には多数の生徒達が詰め掛けているとの事。
「閑古鳥が鳴いていると言うギャグ展開に等しい悲劇は回避されたな」
「……女尊男卑だと言うのに男に飢えている。ある種のカリギュラ効果が働いているのでしょう」
「……。バカじゃねぇの? テメェらの所業がテメェらに被らないとは限らねぇのに、呑気な事だ」
「さてと、私達もそろそろ準備に取り掛かりましょう。目的は茶番とは言えライブは本気‼︎ 良いですね?」
1番気合が入っているのはシノアである。元々は彼女の趣味であるからと言う理由もある。
「無論、当然だ」
「はい。頑張ります」
「ああ、些細な事で手を抜く奴は本気になれないからな」
「各種、問題ありません」
若菜がドラム、燐芽がキーボード、紫苑がベース、フィウがギター、シノアがボーカルを担当しているが、曲の歌詞の振り分け上、合唱形態となっている。
「しっかし、お前がドラムだと最後尾になるのはそれはそれで問題じゃねぇのか?」
「他にドラムやれる奴が居なかったんだから仕方ないだろ?見栄えばっか気にした結果がIS学園の醜態の有様だ」
「……フン、一本取られたな」
集客効果を望むならば若菜を前面に出すべきだが適切な配役を無視した編成の結果は無惨なモノである。実に分かり易いのがIS学園の教育の賜物だと言われた為に紫苑は追求するのを止めた。
「篠崎さん、菟崎さん‼︎ 開場30分前です‼︎」
「はい。お客さんを入れて下さい‼︎」
今回のライブで8組の数人借りるつもりだったのだが結局、全員が裏方役として手伝う流れになっていた。流石にコレは予想外ではあったのだがコレはコレで有り難いとも言えるか。
「講義堂を使ってライブだと?」
「はい。天瓦先生が8組の生徒達に使用許可予約を受理したそうです。もう既に大きな話題になっているそうです」
職員室。其処では学園内に広まる騒めきの正体を真耶経由で千冬が聞いていた。
「軽音部の活動の一環か?いや待て……部活動の中に軽音部は無かった筈だ」
「元々はシノアの趣味が高じた結果よ。若菜はそれに付き合っているのですよ」
「わッ⁉︎ あ、天瓦先生ッ⁉︎」
其処へ真耶の背後から音も無く現れた伽羅が声を掛ける。その行動に真耶は年甲斐も無く飛び上がる様に驚いた。
「元とは言え代表候補生がこの程度で怯んじゃダメですよ?」
「む、無茶言わないで下さいよ〜」
「……天瓦先生。山田先生で遊ばないで下さい。それよりも随分と反響を呼んでいるようですね」
「ええ。やはり女尊男卑だの女性優位だの何だの宣っても男に飢えているのかしらね? 人間の生物学上の観念を克服したいのならば人間の枠組みから逸脱し人間である事を辞めるしかありませんね」
中々、辛辣な台詞である。ただ、ある種の真理であるのも否めないのが恐ろしい所ではある。
「……コレは貴方の差金ですか?」
「あら?IS学園ならばISに関連する事以外は禁止だとでも?」
だとするならばコレまでの無様な結果は如何様に説明するのか?と言う意図を含んだ視線をぶつける。
「いえ、そうは言いません。姦しさと騒がしさを体現した10代の小娘を御するのは難しい。貴方が差し向けたのか気になりましてね」
「いいえ、準備や企画はあの子達だけで実行していましたよ。訓練や授業の合間を使って少しずつ準備を進めていた。私がしたのは講義堂の使用許可を受理しただけ……それ以外はノータッチ」
「良く、両立出来ましたね……」
真耶が慄くのも無理は無い。IS学園の授業スピードはIS学科の存在もあり相応な詰め込みスケジュールとなっている為に時間の余裕は然程無い。
「無論、授業や訓練に手を抜いた覚えは無いから安心して下さい。そんなに気になるのでしたら見に行きましょうか?」
伽羅のその言葉に千冬は暫し考えたのち答えを出した。
「…………。良いでしょう」
2人目の男性操縦者の事もそうではあるが8組の生徒自体、千冬から見てイレギュラーばかりだ。今後の為にも良く知っておく必要がある。何せ、担当クラスでは無い為に如何しても集められる情報量には限界があるからだ。
その為、千冬は伽羅の誘いに乗る事に決めた。