束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
4月末から告知され、予期せぬトラブルに延期を経て遂にこの日が訪れた。各々のクラスはこの日の為に弛まぬ研鑽を積み上げ今日に至った。
「ねぇ、誰が優勝するかに賭けた?」
「……ウチのクラスは専用機持ちじゃないし。やっぱ、2組か8組かで迷ってる」
クラス代表がクラスの代表としてトーナメントに臨む事になる訳ではあるのだが何もクラス代表だけが頑張っても意味は無い。
「……4組はこの先は全部、不戦敗か。フリーパスへの挑戦権すらないって最悪」
「完全に塞ぎ込んだって話だし……。授業にすら出て来ないし」
クラス代表以外の生徒にも出来る事は多岐に渡る。情報戦や斥候、他にも妨害工作など……綺麗事だけで終わるのであれば誰1人として苦労はしない。
「頑張ってね、織斑君‼︎」
「2組と8組がぶつかってくれれば、専用機持ちは織斑君だけだから‼︎」
「「「私達のフリーパスの為に‼︎」」」
「お、おう……‼︎」
「一夏、気圧されずに行け。平常心を持って臨めば負ける理由は無いさ」
「あ、ああ。そうだな、箒‼︎」
「私の指導が輝く時が来ましたわね‼︎」
「お前の指導は役に立たん。私の方が役に立っている事が証明されるだけだ」
「何ですって⁉︎」
この様にIS学園は完全に『クラス代表対抗トーナメント』の空気一色に染まっており学園全体がその熱気に包まれている。それ故に行事運営、進行を行う教師陣の忙しさも平時の比では無くなっていた。
「天瓦先生‼︎ こ、これはどう言う事なんですかッ⁉︎」
「どう言う事かと言われましてもトーナメント表に表記されている文字通りの意味ですよ」
所は変わり各種設備の確認や来賓者の対応マニュアルの確認及び来着遅延等の対応により多忙極める職員室。其処で千冬はある点について伽羅に詰め寄っていた。
「……別に昨日今日からでは無く4月の時点で既に黒糖さんをクラス代表として提出していましたよ。
それを貴方達が若菜がクラス代表だと今日まで勘違いしていただけの話じゃないですか。自分達の落ち度を追求する姿は滑稽ですよ?」
クラス代表対抗トーナメントのトーナメント表は当日にまで公開されない。草案の時はクラス名だけで表記される。いざ、当日に代表者の名前が提示されるのだが、8組のクラス代表が篠崎 若菜では無く黒糖 久里と言うIS業界では全くの無名の生徒の名前であったのだ。千冬達も今日初めてその事実に気付いた。
「……‼︎」
「別に専用機持ちがクラス代表をしなければならないルールは無いでしょう?総合的な私の判断で黒糖さんをクラスを纏める『大将』役に指名しました。
本人も了承しその役職に務まる様に研鑽を積んでいます。他の生徒と協力し、若菜達に教授を乞い、努力を重ねています」
確かに精力的に活動する生徒の存在は好ましい。女尊男卑に浮かれ、ファッション感覚で授業や訓練に臨んでいる生徒達と比較するのが烏滸がましい程に立派であり、この時点で大差を付けられている。
だが、元々『篠崎 若菜がクラス代表』である事が前提でこのトーナメント表が組まれていた。何故なら今回のイベントには外部から各国政府、各種有力IS企業、更には学園上層部のIS委員会と言った国賓、来賓が来校し直に観戦するのだ。
その目的の大部分はやはり今年に入ってから現れたイレギュラー『男性操縦者』の存在。織斑 千冬と篠ノ之 束と言う超有名な存在の弟と息子。甲乙付け難いが昨今の情勢を考慮すれば各国の興味は若菜の方へと傾く。何せ、篠ノ之 束の義理息子であり束謹製の専用機が与えられているのは確実視。特に先の事件での大暴れぶりは凄まじく規格外と言う他に無かった。興味を持つなと言われるのが無理があろう。
「まさか、織斑先生は今日に至るまで努力して来た生徒達の頑張りを無に帰すおつもりですか?」
「私としては生徒各位の努力を無駄にさせる気は無い、無いのだが……」
来賓者は納得しない。千冬は態度でそう語る。
そもそもIS学園は新年度早々から廃校の危機に立たされている以上、特に日本政府相手に事を構える訳にも行かない。なのだが伽羅はそんな事、お構い無しに好き放題に振る舞っている。そう言う意味では厄介な存在だと言わざるを得ない。
「8組の子達は失望するでしょうね」
そのタイミングで伽羅は顔を寄せて千冬への耳元へ耳打ちする。
「その瞬間、貴方は
「ッッ‼︎⁉︎ な、何故……それを……⁉︎」
千冬は酷く狼狽した。だが、その青褪めた顔は他の教師には見せられない為、速やかに思考を改める。伽羅は束と繋がりがある。束経由で知っていても不思議では無い。
そして、伽羅の言葉を噛み砕けば
・IS学園は次のISライセンス試験合格発表時にて15名以上のライセンス保持している事が継続条件。
・8組の生徒が自主退学等で退去。
・その場合、ライセンス獲得見込みのある生徒の人数が足りなくなる。
・逆説的に8組が最も合格率の高い生徒の割合が高い。
と言う事になる。要するにIS学園の命数は8組の教師である伽羅が握っている。つまり間接的に千冬と一夏の運命を握っている事を意味していた。
この瞬間、千冬は悟る。自分やIS学園は伽羅(と伽羅が支配する8組)に対して強く出られなくなった事を。
「……ふふふ」
伽羅は何も言わない。何も言わないが、千冬にとってはその笑みすら恐ろしい。
伽羅は『束と千冬が交わした契約』を忠実に履行しているだけに過ぎない。だと言うのに、此処までの恐怖を抱けようか?
「……恐ろしい人だな。貴方は」
「ふふふ、良く言われるわぁ。何故かしらね〜?」
千冬は精一杯の皮肉をぶつけるも伽羅は微笑みを返すだけだった。こうなってしまえば、政府の要望を実現する事は不可能だ。可能ではあるがその瞬間、IS学園の終焉、自分達の破滅は確定してしまうからだ。今の欲望の為に未来を閉ざす事になる。
「お、織斑先生‼︎ た、大変です‼︎」
半ばげっそりした心境の中で職員室に飛び込んで来た真耶に顔を向ける。
「……山田先生。どうしたのですか?」
「そ、それが……し、篠ノ之 束博士がIS学園に来校しましたッ‼︎」
その言葉に伽羅以外の教員達の時間が止まった。あのIS開発者の篠ノ之 束がIS学園に姿を見せた事など過去一度も無かった。
先の国際会議でも酷い対応で会議にならなかったと言う話は記憶に新しい。子煩悩である事は有名だが同時に凄まじく対人関係能力に問題がある事でも有名であるのだ。
「……天瓦先生。どうせ知っていたのでしょう?」
「ええ。隠す必要も無かったけど聞かれなかったから」
その返答に千冬は頭を抑えて溜息を吐いた。
「な、ならばその目的も知っているのですか?」
「束博士は8組の娘達に興味を示した。だから、今日……見定める為に来たのですよ」
逆を言えばそれ以外は眼中に無いと言う事である。それが良いのか悪いのか……。
「いやぁ、良く良く考えればIS学園に来たのはコレが初めてかも?ヒッドイ話だよね〜。ISの開発者であるこの束さんを差し置いて明確に
「うにー(・ω・)ノシ」
「……束様。理解出来なかった終局が目の前の姿です」
IS学園内の敷地を歩くその姿を見て誰もが目を向ける。本日のイベントの為に各国から多数の来賓が来校しているのだが、その集団の中に世紀の大天才科学者である篠ノ之 束その人の姿があった。機械式のウサ耳と懐中時計を下げてメルヘンチックな装いをその身に纏った奇抜な格好は大変目立つ。
そのお供にはクロエ・クロニクル。そして束に肩車されているウィキッドの姿が見えた。3人ともゴシック寄りの服装である為、この集団だけやたらと世界観がバグっている。
「Dr.篠ノ之。こんな所でお会いするとは奇遇ですね」
「篠ノ之博士が注目する生徒が居るのですか⁉︎ やはり織斑 一夏であるとか⁉︎」
「トーナメントが終われば会談の機会を是非とも設けて頂きたく」
「その小さな娘さんはもしや、末娘⁉︎」
そして群がるは
「邪魔だ、退け」
簡潔に束は言いたい事を言い切った。心底、本当に邪魔でしかないからだ。と言うかこの流れ、何処かで見た事ある気が……デジャヴ?
「あ、あの……検討だけでも」
「息子さんの応援の為ですかな? ああ、この機会にお見合いの話を検討を」
「ISコアの量産化の件の会議の確約を」
尚も食い下がる
「邪魔だと、言っている……‼︎」
その言葉の直後。
「諸君、此処は何処だ?」
「「「神聖なる玉座の間だ」」」
「王女殿下の判決は?」
「「「粛清‼︎」」」
「宜しい。では、開廷‼︎」
突如現れた全身が三角帽の黒覆面と黒マントに包まれた如何にも邪教の信者かと見間違う装いをした集団が何処からともなく湧いて現れて束に詰め寄って集っていた来賓達を取り囲む。
覆面のフードのから見える赫い眼光は恐ろしく恐怖の象徴と言える。それから日本刀から斧、大鎌やノコギリと言ったら選り取り見取りの凶器を携えている。
邪教徒こと『ウィキ姫を愛でる会』の皆さんである。ウィキッドの機嫌が悪くなった事を察知して速やかに駆け付けた模様。
「な、何だね君達は⁉︎」
「あ、IS学園の警備はどうなっているんだ⁉︎」
「て、テロリストが現れるだなんて⁉︎」
その異様極まりない威容を目の当たりにして来賓達は守られて当然のVIPである為に狼狽える他に無い。
「判決ッ‼︎
司祭の声に呼応して邪教徒達が一斉に人海戦術と言う名の洪水と化してウィキッドを困らせた来賓達を飲み込みあっという間に連れ去って行ってしまった。その場に残るは全くの無傷の束とクロエと、首を傾げているウィキッドだけであった。
「……行きましょう。束様」
「そだね〜。あんなムシケラの末路なんて興味無いからね」
「うにー(」・ω・)」」
明らかに大事件が起こったにも関わらず束達は完全にスルーして学園内を闊歩するのであった。
《ウィキ姫を愛でる会》が地球人向けに作成した募集要項。
《ウィキ姫を愛でる会》はウィキ姫の日々の秩序と安寧を保つ為に新教徒を募集します。
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