束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
執筆時のBGM『DEAD OR ALIVE』(蒼穹のファフナー)
「うぉぉぉぉぉ‼︎‼︎」
裂帛の気迫と共に一夏はセシリアと箒との訓練の賜物で習得した瞬時加速で若菜へと目掛けて急接近し間合いを詰め『雪片弐型』を大上段に振り下ろす。
「全てが遅い、余りにも遅過ぎる。小夜の方が5倍速いぞ」
振り下ろされた『雪片弐型』の刃は『宵咲』の刃に咥え込まれる形で受け止められる。然も一夏は両手で持っているに対して若菜はその宵咲を片手で振るっている。
「く、クソッ‼︎」
「やれ」
大鋏に咥え込まれ微動だにしない雪片弐型に焦る一夏に若菜は冷静にそう告げる。
『おうよッ‼︎』
撃砲翼の砲口を前方に向けて一夏の目の先には眼前で複数の砲口に光が集束される光景が見えた直後、爆轟が轟き水平へと吹き飛ばされアリーナの壁に激突した。
「ぐっ、はっああッ‼︎」
壁から離れて一夏は再び浮上する。だが、敵は待ってはくれはしない。即座にその場から退避する。立っていた場所に砲撃の様な光弾が着弾した。
「クッソ‼︎ 何なんだよ、アレは⁉︎」
ハイパーセンサーの恩恵により遠方に位置取る若菜の姿がハッキリと見えた。右側の撃砲翼を構えて明らかに此方を狙っている姿を。
「ッ⁉︎」
一夏が気付くのと若菜が砲撃するのは同時だった。轟音が後方で響き渡る。直撃すればシールドバリアが大きく削られるのは明白。直撃すれば、だが。
「男が遠距離の銃を使うなんて情けないだろッ⁉︎」
一夏は砲撃を避けて若菜へと接近を試みる。その姿勢を見た若菜は口の端を歪めて行動を開始。浮遊していたハンドキャノンの砲口をビットの様に動かして砲撃を開始する。
「セシリアの時で学習しているんだ‼︎ ビットの操作はって⁉︎」
セシリア・オルコットはビットの操作中はその操作に意識が割かれる為に自分自身は動けなかった。若菜もそうだろうと考えていたがそんな甘い話は無く、若菜本人も撃砲翼の砲口から砲撃してその反動で急加速して更に上空へと移動して一夏とは一定距離を取る引き撃ちで対応する。
「クッソ、若菜ァ‼︎ 男らしく剣で戦えよッ⁉︎ 遠距離でチマチマ攻撃だなんて男らしく無いぞッ‼︎」
一夏は若菜の戦い方が気に入らない為に批難染みた声で叫ぶ。だが、その言葉に対する返答は距離を取りつつその手に展開された狙撃銃により移動しながら放たられた狙撃の一撃で肩を撃たれた事であった。
「コレが、コレがお前の戦い方だと言うのか、若菜ァァァァアアアア‼︎‼︎」
肩を抑えつつ一夏は遥か上空に浮遊し砲口を、銃口を一夏に迎えている若菜へと叫ぶ。
『お前がこの先、対峙しなければならない敵の1人に過ぎない』
一夏の叫びに対して若菜は秘匿通信でそう答えた。その言葉には『この程度の敵はこの先、幾らでも現れる』と言う警告にも通じる。
「巫山戯るなァァァァアアアア‼︎‼︎」
だが、一夏は理解に及ばなかった。ただ、若菜の戦い方が気に入らなかったと言う点が大きいだろう。
「まさか、量産型である『ラファール・リヴァイヴ』があそこまで変化するだなんて、アレは本当に二次移行なんですか?」
「分からん。奴は最初は間違いなく学園配備の『ラファール・リヴァイヴ』に搭乗していた。それが突然、大きく変貌を遂げるとは……」
自然に考えればあのラファール・リヴァイヴが篠崎との同調率が最高に達して二次移行を果たしたと考えるのが自然。そもそも奴は専用機を所持しているのに量産型の機体とも同調するなど考えるのか?
「試合後に、あの機体を調べる必要が出て来たな」
あの姿が『ラファール・リヴァイヴ』の二次移行の姿なのか或いは篠崎に影響を受けた末での進化した先なのか……全く、次から次へと問題を引っ提げて来る奴だ。
「それよりも織斑君。かなり追い詰められていますね」
管制塔が見える2人の試合は一方的に近い試合運びと言えた。
「ああ……。本来、織斑は『零落白夜』ありきの戦術一辺倒だった。そうでなくとも織斑の機体は雪片弐型の一振りが頼りだ。接近できねば話にならん」
近接一辺倒の一夏に対して若菜は特徴的な撃砲翼を代表とする砲撃や射撃と言った遠距離主体の機体を駆っている。その点、セシリアと類似点が多いのだが。
「……束の義理息子である点と『打鉄暴走事件』を解決した点を踏まえても、強いな」
絶えず動き回りながら砲撃、更にビット兵装のハンドキャノン砲口も動かしている。この時点でセシリアの完全上位互換であり、更には大鋏と言うISの試合では先ず見ない武装を携えている。その癖、初手の一夏の一撃を安安と受け流している事からもうセシリアは完敗気味だった。
日本刀や槍は当然として斧辺りならばまだ理解は出来る。まさかの鋏をチョイス。流石の千冬も現役時代で大鋏を近接武装として採用している人間を見た事が無かった。いや、IS業界史上初だろう。
「……あれで本来の専用機じゃないんですよね?」
「ああ……」
千冬は思い出す。成層圏に浮かんだ赫い恒星と流星群の如き降り注ぎIS学園全体を焼き払い、第1アリーナを木っ端微塵に吹き飛ばした一撃を。
「……言うなれば奴は手を抜いている。いや抜かざるを得んのだろう」
若菜の本気を間近で拝める日は果たして訪れるのだろうか?
「巫山戯るなァァァァアアアア‼︎‼︎」
眼下で一夏が咆哮を上げる。何が気に入らない?銃火器を装備した敵などこの先、幾らでも現れるだろう?そもそも1組のクラス代表を決める際のイングランドの暫定代表候補は狙撃手でビット使いだった。
「……何が気に入らん?織斑」
その理由を問うべく砲撃を一旦、止めて一夏と同じ高度に降りる。対する一夏は何かが取り憑いたかの様な形相を浮かべていた。
「若菜ッ‼︎ お前、恥ずかしく無いのかよ⁉︎」
「話が見えんな、何がだ?」
「お前の戦い方だよ‼︎ 何で男なのに銃を使って遠距離からチマチマ攻撃するんだよ⁉︎ 男らしくねぇだろ⁉︎ 然も距離を取りながら遠距離から銃撃だなんて卑怯者のする真似だろうが‼︎ 何で、
「」
『ボク、コイツ、ナニ、イッテルカ、ワカラン』
『おい、兄弟⁉︎ 母さんが壊れたぞッ⁉︎ どうすりゃ良い⁉︎』
若菜とガイアが揃って理解不能と言った感情に支配された。恐らく鏡があれば間抜け面が写し出されている事だろう。
だが、戦場でそんな真似は命取り速やかに意識を戻す。
「そーかいそーかい……」
織斑の言いたい事は理解した。いや、意味不明だが言わんとしている事は理解した。ならば此方も
若菜は『宵咲』で肩を叩き呆れつつ獰猛な笑みを一夏へと向けた。
「
若菜は『宵咲』の鋒を右側へと向ける。そして、ISコア・ネットワークを通じて大和へと通信を繋げる。
「……やっと、理解したか‼︎ ならば最初から男らしく戦えよ‼︎」
大和‼︎ コア・ネットワーク開通‼︎ 情報パス構築を要請‼︎ あのバカを分からせるぞ‼︎
『任せるが良い、弟よ‼︎ 大和の管理権限を実行じゃ‼︎ 大和の名においてコア内に蓄積されたバックアップより単一仕様能力『零落白夜』の情報アルゴリズムの再現を『フォーマルハウト』に許可するのじゃ‼︎』
大和の声が脳裏に響いたが直後、『宵咲』の刀身に突如として眩いまで純白の如き皓い極光が纏う。それは溢れんばかり光のエネルギーの瀑を形成し極長の光の刃を形成していた。
それは単一仕様能力の
「う、そ、だろ……⁉︎ そ、それは……俺の……『零落白夜』だろ……⁉︎」
その光を見て一夏はすぐにそれが『零落白夜』の光であると理解した。
当然だ、自分が使っていて世界最強の姉から受け継いだ『皆を守る力』だから。見間違える筈もない。
「ああ。そうだ」
一夏の質問に対して『零落白夜』を纏う『宵咲』を持ち若菜は肯定の意を示す。雪片弐型が纏っていた時の光の刃よりも皓く激しく煌めく光景を見て一夏は吼えた。
「何で……何でお前が、『
一夏は自分以外の人間が『零落白夜』を使っている光景が受け入れられず雪片弐型を構えて瞬時加速で一気に若菜へと間合いを詰めて行く。
「……」
その怒気に対して若菜は無言で『宵咲』を忽の如き速さで右上から左下へ掛けて袈裟斬りで振るい形成され光の刃で『白式』を纏う一夏を両断した。
「え……?」
『零落白夜』其の物は実体を持たず殺傷能力を持たない。光の帯が一夏の胴体を通過し終わった直後『白式』の残存エネルギーはその一撃でごっそり破壊され、絶対防御が発動するまでのエネルギー量に達した。だが事前に瞬時加速をしていた事もありその勢いは殺し切れず重力に従い若菜の真下を通過して若菜の後方のアリーナの壁へと激突し停止した後、床へと墜落して行った。
『試合終了‼︎ 勝者、篠崎 若菜‼︎』
『白式』に乗った一夏がアリーナの地上に激突したタイミングで試合終了のアナウンスが響いた。
「……これ以上お前さんと遊んでいる時間は無かったのでな」
更に若菜が纏っていた機体が光に包まれて元の『ラファール・リヴァイヴ』の姿へと戻り、若菜はその状態でピットの方へと戻って行った。