束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
ピットに戻ると伽羅が待って居た。
「伽羅さん。如何でした?」
『ラファール・リヴァイヴ』から降りて若菜は『宵咲』を上へと向けて放り投げ量子変換で光の粒と消しつつ伽羅へと声を掛ける。
「Perfectよ」
伽羅は素直にそう評価を下した。試合運びや所要時間の点から文句の付ける所は無かった。
「……それにしても良かったのかしら?大和から『零落白夜』を引っ張り出すなんて真似を人前に見せて」
若菜は来賓や一般生徒達の前で、本来ならば『白式』しか使えない筈の単一仕様能力、『零落白夜』を発現させ、剰え一刀両断で一夏を打ち倒した。
「アレを黙らせるには同じやり方で倒すのが1番だと判断したまでです。……あの手の輩は自分の正義を信じて疑わない。その点を否定はしませんが……善性を尊ぶならば敵を作るだけです。
恐らくではありますが、織斑 千冬の影響力が悪い作用を及ぼした結果でしょう」
若菜としては一夏の要望に応えて『一夏のやり方』で戦い勝利を収めた。それだけである。
『男は剣で戦うべき』、その思想を否定するつもりは無いが付き合う義理も無い。
「そう……。まぁ、此処で頭を捻っても仕方ないわ。貴方の出番はお終い、観客席で『定期考査』の開始まで待って居なさい」
暗に早く行け。と言っている、その理由は推測が立っている。その言葉に若菜は足早と観客席へと向かうべく移動した。
「…………。権力を使えば従うとでも思って居たかしら?」
若菜が去って暫くした後、伽羅は唐突に口を開く。背後に現れた千冬へと向けて言ったのである。
「…………それは私に言っているのか?」
「ええ。クラス代表の交代が出来ぬや否や、エキビジョンマッチを組んでまで引っ張り出すだなんて……。
余程、自分達の都合で振り回したいようね。あの子
伽羅は微笑みを浮かべながら内心、
「……機嫌を損なう真似をした自覚はある。だがコレも経験と言うだろう。人は望む望まずとも関わりを持って生きなければならない‼︎ それを拒むのなら人である事を辞めねばならないんだぞ……‼︎」
組織に属する以上、自分の意思に反する行動をしなければならない時がある。千冬は伽羅にそう説くが——。
「辞めたわ」
「は?」
「若菜は、宇宙のその先へと赴く覚悟を決めた。絶対的な孤独、2度と帰れぬ
宇宙空間では果てしない『無』の空間。音も存在しない世界だ。その環境に晒され続ければやがて精神が崩壊する。1日であろうと気が弱い者は発狂するだろう。それぐらい『無音の孤独』と言うのは精神を破壊する猛毒だ。
「その果てにロクな死に方をしない事も承知の上よ。権力?名誉?あの子はそんなモノに興味は無いわよ」
「…………ッ‼︎」
宇宙空間での活動を是とする。それは束が最も純粋な気持ちを持って原初に語ったISでの運用方法。だが今となっては数多の『権力』によってその在り方は歪められた。
間違いなく今のIS学園で本来の意味で『IS』と向き合っているのは8組だけである。
「今回は若菜が気紛れを起こしたから、上手く行った形でしょうけれど……もし断ったらどうするつもりだったの?」
「…………説得するつもりだった。恥を晒す形にはなるが日本政府やIS委員会からの要望と言う名の命令が激しかった。……以前から天瓦先生宛に問い合わせが殺到していた筈だ」
「ええ。即座に通話を切る事を繰り返して居たわ。面倒だし、聞いてやる義理も無いもの」
「いつまで経っても要望が通らないし話を聞かないから、強硬手段に出られたんだ。今回の特別試合を組まなければ『件の条件』を破棄する、とな。それに各国の政府の目もあった……。迂闊な真似は出来なかった」
「ふぅん。……高々、そんな事で躍起になるもんだ。実につまらない話だなぁ」
「天瓦先生から見ればそうかも知れんが……政府から見ればお前達は
「はぁ。くだらない」
「……少しでも良いから折れてくれた方が我々としても楽なのだがな」
「嫌だね。其処を切り口にアレコレ指図してくるじゃん。若菜もシノアもそう言う連中は凄く嫌いだ。余り調子に乗っていると現場に無理矢理、引き摺りだすぜ?」
「はぁ……。本当にお前達は面倒臭いな」
千冬もこれ以上、論争を重ねても無駄と判断した。そもそも束自体が交渉を突っ撥ねている以上、その一派の伽羅も若菜も交渉に応じないだろう。
「……本来の要件を済ませたい。先程、篠崎が搭乗した『ラファール』を調べたい。二次移行した際のデータを取りたい」
「ええ、好きにすれば良いわ。変に機嫌を損ねない様に気をつけなさい」
「……善処しよう」
「ふんふ〜ん。大和も随分と明るくなったみたいだね。良かった良かった」
「うにーっ(/・ヮ・)/」ゴーゴー
来賓席。各国から招かれた政府要職や企業の要人達が試合の様子を観戦する為に設けられた空間。来賓席は2ヶ所存在し、その内の管制塔下の貴賓席の反対側に位置する貴賓席。
その中央のイスに腰掛けた束は先程、行われた特別試合の様子を見てうんうんとご満悦となっていた。
「うーん。『OTシステム』はOVTシステムを基盤していたからかな? わーくんの場合だと『フォーマルハウト』の影響を受けてしまうのかな? となるとしぃちゃんやゆーちゃんの場合も類似する様に同期型の影響を受けるのかも知れないね」
先程の結果の考察を纏めて行く。若菜の場合は『フォーマルハウト』の影響を受ける様だ。恐らく最適な戦法に適合した上での変化を齎すと思われる。更なるデータを収集する為にも他のコアとのオーバートランスをしてみる必要があるかも知れない。
「くーちゃんの場合だと情報戦が更に強化されるのかな?」
「……束様。お言葉ですが、それは無茶振りかと」
側に控えるクロエはそう答える。流石にあの脳筋気味なコア達では知恵熱を出してしまいかねない。
「うにっ(/・ω・)/」ウニー
「…………………頑張って意識しない様にしていたけど、ウィキ姫ちゃんの
来賓席。
本来であれば各国要人達の騒がしい話し声や、或いは束目当てに煩わしい声で話し掛けて来る。現実問題、束が来賓席に通された瞬間、その姿を認めた要人共が湧いて来たモノだ。
だが……この貴賓席は見るも無惨な光景が広がっていた。
束の視界に広がる貴賓席は床全体、壁一面に赫い絲が張り巡らされておりまるで血管が四方八方に走っており見る者に対して恐怖を植え付ける。
この貴賓席に入室していた要人達はと言うと、皆々、赫い絲が身体中に走り開ききった目は充血し切って赫く染まった状態であり、手足があり得ない方向に曲がっており無茶苦茶な体勢で倒れていた。
さながら『赫い眸の人形』であった。
その『赫眸の人形』の群の中央でウィキッドが『赫眸の人形』にしたアメリカの高官を四つん這いにさせてその背中に跨ってお馬さんごっこで遊んでいた。
「……あの赫い絲を脳内に侵入させて大脳や海馬を破壊、改造して意のままに操る人形に人体改造させる……。流石の束さんでも鳥肌モノだよ……‼︎」
束は無邪気に遊んでいるウィキッドの銀髪の所々、見える赫い髪の毛を見つつそう感想を溢した。
貴賓席に入るなり立て続けに束に交渉を持ち掛けてくる各国要人達。その矛先はウィキッドにも向き、何かと質問攻めして来た為に機嫌を悪くしたウィキッド。
それだけならばまだ良かったのだが要人の1人が余計な真似(邪教徒曰く、好奇心に駆られようと決して行ってはならない事)をした結果、遂にウィキッドの逆鱗に触れてしまった。
その結果、貴賓席内にいた要人達はウィキッドによって全員纏めて『赫眸の人形』と言う傀儡に成り果てた。
「うにーっ(/・ヮ・)/」ワー
幼女がゾロゾロと赫い眸をしたゾンビの様な足取りの人形達を引き連れて闊歩する大名行列ごっこをしている様はそれはそれで恐怖モノである。
「……誰も彼もがウィキッド様を恐れる訳です。何人たりとも王女の逆鱗に触れる事なかれ。汝が汝としての終わりを迎えたいのならば」
警句。それはウィキッドに関する警句であった。