束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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蟷螂が証明するに必要なモノは?

 

 

 

「……貴方は何も得られない」

 

 和服の女性はその赫い眸で洞々と告げる。人が言う幻聴にしてはかなりリアルだ。

 

「貴方に、何が分かるッ……‼︎」

 

 幻聴に口答えしても無駄だと頭では分かっていても簪は自身に累積した感情を吐露せずには居られなかった。

 

「認められたくて、頑張って必死に努力して得た専用機の権利も‼︎ ポッと出の男性操縦者に打鉄弐式の開発が無期限凍結された時の悔しさが‼︎

 それだけじゃない、打鉄弐式のコアが必要だから持って行かれた‼︎ しかもよりによってあの男、『白式』のコアとして‼︎」

 

「それは貴方よりも男性操縦者(おりむら いちか)の方が価値があるから。優先順位を決めるならばより価値が高い方が選ばれる」

 

 簪の涙混じりの悔しさは和服の女性には届かず容赦なく斬り捨てられる。ただ、『利用価値』の有無によって決まった事だ。

 

「貴方は数ある代表候補生の1人に過ぎない。悔しい?貴方は特別な存在じゃない」

 

 更に追撃まで行う。

 代表候補生だからと言えど複数存在する中での1人に過ぎない。『代表候補生』と『男性操縦者』ならば、代替の効く候補生よりも男性操縦者の方が優先されるのは自明の理である。

 

「……特別、じゃない……?」

 

「不幸面して立ち止まった人間に手を差し伸べる者はいない。そして、貴方にIS操縦者としての価値はもはや無い」

 

「……ッッ‼︎」

 

 そして、躊躇いなくトドメを刺した。

 今の簪にとってIS学園には居場所は無い。自身の専用機のコアこそ存在し自力で組み立てると言う目標があったのだが、今の簪は脱け殻だ。

 他にコアを渡す余裕があるのであれば渡されるか専用機の開発が再開される筈だ。

 その何方も行われないと言う事は政府も簪に対して『代表候補生』としての価値を認める理由が無くなったと言う事である。

 

「貴方は必要無い存在へと成り果てた。現状がその証明と言える。姉からも、家族からも、何も(・・)、フォローされない……それが事実にして現実」

 

「私はもう……必要、無い……?」

 

 トドメを刺した上で更に死体蹴りを行う始末。簪の専用機『打鉄弐式』のコアを『大人の事情』と言う理由で元の開発元である倉持技研に回収され理由は緘口令故に知る由も無いが織斑 一夏の専用機のコアに充てられた。

 その事実に対して簪に対する補填もフォローは何一つ無かった。倉持技研はただ一言『必要だから』と言う謝罪も無ければ心にも無い言葉だけ告げてそれっきりであった。抗議しても『解答の義務は無い』と一方的に告げて、終わりだ。

 

「…………もう頑張らなくて良いのよ。貴方は……無能なのだから」

 

 和服の女性は最後にそう告げた後、踵を返して歩き去って行く。その姿は透けて行き扉へと手に掛けた時、その姿は完全に消滅した。

 

「……やっぱり、幻覚……幻聴……」

 

 だが、その幻聴の言葉は何一つ間違っていなかった。的を射ていたのも事実。

 

「……くっ、ふふ、はは……ッ‼︎ 私は……私は…………馬鹿だ︎……‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うっ……‼︎」

 

「目が覚めたか、織斑」

 

「千冬姉……。俺はどうなったんだ?」

 

「安心しろ。特に外傷らしい外傷は無い。精々、アリーナの壁に激突した時と落下時の衝撃で意識が飛んだくらいだ」

 

 場所は医務室。そのベッドの上で一夏は目覚めた。特別試合の後、墜落した一夏は其の儘、医務室へと搬送されたのだ。

 絶対防御の恩恵により一夏本人には怪我らしい怪我は無かった。衝撃で意識を失っていた程度で済んだのは不幸中の幸いと言えた。

 

「時間にして凡そ30分くらいだな。現在、1回戦の第2試合が行われている。予定を変更してお前と8組のクラス代表の試合を1番最後に回す事になった」

 

「そ、そうか」

 

「一応聞くが……試合には出れそうか?」

 

「あ、ああ。大丈夫だ、千冬姉‼︎」

 

 一夏の威勢の良い返事を聞いて千冬は一先ず安心した。若菜に手加減されていたとは言え、一撃で斬り伏せられたのだ、『白式』の代名詞と言える『零落白夜』によって。場合によってはトラウマになっていても可笑しくは無かった。……変に鈍感な所が功を成したようである。

 

「そうか。ならば私も変に気を病まずに済む。……この形で言うのもアレな気がするが、休憩出来る時はしておけ。一応は試合後なのだからな」

 

「お、おう……分かった」

 

 其処で千冬は話題を変える。若菜が使って見せた『零落白夜』の事である。

 

「あの後、篠崎が搭乗していた『ラファール・リヴァイヴ』を調べたんだ。倉持技研の連中と交えてな」

 

 『ラファール・リヴァイヴ』からは何かしらの情報は出て来なかった。若菜が搭乗時に変化した際に発現した稼働データは何一つ出て来なかった。ただ……『ある事実』が判明した。

 

「その過程で倉持技研と話をした結果、『零落白夜』を今の『白式』に移植する事が可能と言う事が判明した」

 

「ッ‼︎ 本当か、千冬姉‼︎」

 

 その言葉に一夏は目を見開いた。今の『白式』は零落白夜を発現する事が出来ていない。その理由は二次移行していないからと言われればそれまでだったが、やはり以前から使えたものが使えなくなると歯痒い気持ちになる。

 

「ああ。理論上は可能であると、倉持技研は言っていた。以前の『白式』のコアの稼働データは倉持技研が保有するバックアップの稼働データとして残されていた。

 今現在、来賓として来ていた倉持技研の連中が急ピッチで移植作業を進めてくれている。何とかお前の試合までに間に合わせるつもりだ」

 

「そ、そうか……‼︎」

 

 『零落白夜』が自身の手に戻る。その事実に一夏は歓喜に震えた。

 あの若菜の扱う紛い物の『零落白夜』では無い。自分が、姉が扱うモノこそが正真正銘の本物の『零落白夜』であると証明するのだ。

 

「ただ、理論上であり成功するかは分からない。少なくとも篠崎が成功させた以上は可能の筈だ。仮に出来なくとも気落ちするなよ」

 

「お、おう……」

 

 出鼻を挫かれた。まぁ、成功するとは限らないと言う事は頭に留めておけと言いたいのである。

 

「……。さて、お前の初戦の相手は8組の代表である事は知っているな?」

 

「あ、ああ。……若菜じゃねぇのは驚いたけどよ」

 

 その点は千冬も驚いて伽羅に問い詰めた事がある。容易く去なされてしまったが。

 

「8組のクラス代表、黒糖 久里だ。専用機持ちでは無い一般生徒……。だが、あの篠崎を差し置いてクラス代表に選ばれた。それに加えて8組の教育カリキュラムは他のクラスとは違う」

 

 8組の生徒達は8組の担任の趣味でメイド服を着せられていた。しかもフルカスタムで1人1人、意匠が異なるメイド服をである。この時点で特異的であった。

 

「……千冬姉、何を言いたいんだよ?」

 

「ただの一般生徒だと侮るな、と言いたいのだよ。お前が考えているような単純な相手じゃない、一筋縄では行かないぞ?」

 

 伽羅本人も『只者では無い』と感じている。そも8組の生徒達を見たが、浮かれ気分が抜けない他の生徒達とは一線を画しており、一般生徒とは思えない佇まいであった。

 

「……大丈夫だ、千冬姉。若菜の奴は……卑怯な真似をしただけだ。それに鈴に勝たなきゃ行けないしな。そんな所で躓いていられるかってんだ」

 

「…………そうか。だが、油断はするなよ?」

 

 一夏の言葉に千冬は少し間が開いたが油断はするなと言う言葉に留めた。本人にやる気があるのは良い事だ。何事も負け腰で挑むべきでは無い。色んな相手と戦い経験を積むのが良いとして勢いを挫くのも悪いと判断して、それ以上は何も言わなかった。

 

「第3試合が始まる頃には移動するからな。……準備は、ピットに入ってからでも遅くは無いだろう」

 

 その頃、第1アリーナでは第2試合が終了し2組のクラス代表である凰 鈴音が準決勝に駒を進めたのだった。

 

 

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