束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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 執筆時の作業BGM『天界への証明 ボス』(モンスターストライク)


マジで恐ろしい真似をするな、アイツ……。

 

 

 第1試合、第2試合、第3試合も恙無く進行してトリを飾る事になる第1回戦第4試合。『特別試合』を無理矢理捩じ込んだ都合上、順番が前後した為に1番最後に回された『1組VS 8組』による試合の順番が巡って来た。

 

「準備は宜しいかしら? 黒糖」

 

「はい。体調共に問題ありません」

 

 偏向重力カタパルトに固定された量産機である打鉄に搭乗した状態で待機中の8組のクラス代表である黒糖 久里は8組の担任教師である伽羅の言葉にそう返した。

 

「……特別試合(アクシデント)はあったけれど、それはそれで直前に織斑 一夏の動きを目視出来た点は僥倖ね。……若菜は其処も考えて敢えて受けたのかも知れないわね」

 

 久里にとって好都合であったのは試合直前に対戦相手の動きを目視する機会が得られたと言う事。事前の情報だけでは見えない動きを自身の目で把握する事が出来た。

 

「……だとするなら先見の明があると言わざるを得ませんね8組(ウチ)の参謀役は。ならば、クラス代表として負けられません。……此処までお膳立てして貰った以上はね」

 

「ふふ、その意気よ。それから直前に判明したけれど、どうやら倉持技研が『白式』に小細工調整をしていたわ。……何か仕掛けて来るでしょうから、用心しておくように」

 

 倉持技研……。『白式』の開発元……試合直前に何かしら調整を……? 事前情報にない武装でも積むつもりかも知れない。警戒はしておこう。

 

「分かりました、気を付けておきます」

 

「……それと其方(・・)の調子は良いかしら? 結構、気難しい性格なのだけど」

 

 久里は自身の耳に付けたOTピアスを軽く揺らす。彼女の意識体を自身に投影し顕現させるシステム。戦法が異なる為に使うタイミングは図る必要があるが使い熟せれば更なる威力を発揮しよう。

 

「ええ、大丈夫です」

 

 力を手にするならば相応の代償が必要となる。人の身に余る力を手にするのであれば証明しなくてはならない。その覚悟が伴わなければ(やが)て、その力に磨り潰されるからだ。

 覚悟が無いのならば手にするべきではない。

 

「なら、良いわ。……さて、クラス代表の意見を聞きましょうか? 織斑 一夏の対策は?」

 

「そうですね。挑発や撹乱が有効であると思われます。……結構、感情的になりがちに見えましたので、攻撃と挑発を織り交ぜれば御せるかと」

 

 腐っても相手は『専用機』。若菜に圧倒されていたとは言え、若菜がヤバすぎるだけで彼自身を侮る理由にはならない。

 如何に相手が嫌がらせ、自分のペースに持ち込めるか……。OTシステムがあるとは言え、油断は禁物だ。驕れる者は滅ぶのも一瞬である。

 

「そう……。なら、他に言う事は無いわ」

 

『まもなく1回戦第4試合、1年1組と1年8組の試合が始まります。両者クラス代表はピットから出撃し上空でスタンバイをして下さい』

 

「時間ね。貴方の執念……今此処で見せて貰うわ」

 

「はいッ‼︎」

 

 偏向重力カタパルトが起動して、一気に加速しその機体がアリーナの上空へと飛び出して行く。

 暗かったピットから外界へ飛び出した事により視界が一気に明るくなった。観客席には他の生徒達、一際目立つメイド服軍団の8組の生徒達も見えた。

 来賓席には来賓の者達が見える。……一部の観客席は悍ましい光景が見えたが気の所為だ。きっとそうだ。

 

「…………」

 

 暫くすると向かいのピット出入り口から白い機体『白式』に搭乗した織斑 一夏が飛び出して来た。……見た目に特に変化は見られないが、伽羅が言うには『小細工』が施されたと言う情報がある。見た目に変化は見られないが注意は必要だろう。両者が規定位置にて相対する形で浮遊する。

 

『クラス対抗トーナメント第1回戦第4試合。試合開始‼︎』

 

 試合開始のアナウンスと同時にブザーが鳴り響く。

 

「応えろ、白式ィィィィィィィィ‼︎‼︎ 『零落白夜』ァァァァァァァァ‼︎‼︎」

 

 先に動いたのは一夏であった。裂帛の咆哮と共にその手に携えた雪片弐型の刀身が白い煌めきを宿して眩いまでの光の刀身を形成した。

 言うまでもなく『白式』の代名詞たる『零落白夜』の煌々たる光であった。その光を後光に一夏は間合いを詰めるべく急加速で久里へと接近する。

 

「『零落白夜』……‼︎」

 

 小細工の正体はコレか‼︎ 成程、試合開始前に見えた自信に満ちた顔の理由か。だが、この程度は想定済み‼︎

 

 久里は僅かに驚きつつも狼狽する事なく大きく動く事なく一夏の太刀筋を見切り僅かな動作(機体の装甲分の大きさを加味した上で)振り下ろされた雪片弐型の一撃を躱す。

 

「ッ⁉︎」

 

 前のめりに近い形で振り下ろした一夏。そして僅かな動きで躱した久里。完全にカウンターが決まる瞬間、その瞬間を久里は逃す筈が無かった。

 

「遅いッ」

 

 打鉄の標準武装の『葵』の柄頭で一夏の鳩尾を突いた。如何にシールドバリアで全身防護されているとは言え、そんな腹が剥き出しのISスーツに対する生身への一撃。シールドバリア越しとは言えその衝撃は殺し切れない。

 ましてや反力(・・)堪え切れない空中ならばその衝撃を耐えて軽減出来ず内臓や骨にダイレクトに伝わるから尚更だ。

 

「ぐっ⁉︎」

 

 鳩尾に不意の一撃を受けて痛みからか僅かに後退する。その時、久里の脳裏に訓練時の光景が脳裏に過ぎる。

 

 

 

『シールドバリアは搭乗者の身を保護する機能。だが、それは枝葉に過ぎない。時に攻撃の起点へと転用する事が出来る』

 

 それは実技訓練時、永世や紫苑と一緒に若菜から操縦技術のレクチャーを受けていた時の事。

 

『例えば?』

 

『シールドバリアを『地面』と見做して足裏に遠隔で随意展開する事だ。戦闘において地面と足裏の関係は重要なモノだ。自在に展開する事が出来れば空中ならではの『態勢』から一撃を放つ事が出来るだろう』

 

『応用が効きそうだな。そう言うのを待っていた』

 

『戦闘技術もそうですが、想像力も養う必要があると仰る訳ですね。……他のクラスの教師(きょうざい)からは得られない発想です』

 

『先ずは君ら3人に『随意展開』を習得して貰う。先に言っておくが……3人とも出来るまで休憩は無いと思え』

 

 伽羅の授業も苛烈ではあったが若菜も教導もまた別ベクトルで本気であった。伽羅も本気で教えてくれた、若菜も教えを乞い願われた以上、本気で臨んでくれた。

 そして久里達も本気で取り組んだ。

 

 

 

「ッ‼︎ ぃぃいいいいやぁあああああ‼︎‼︎」

 

 久里は左側の脚部装甲の足裏にハニカム状のシールドバリアを『床』として随意展開。

 左脚に反力を堪え受け流す体勢を整えるや否や、猿叫には程遠いが久里は気合いの咆哮を上げつつ右脚の脚部装甲で体勢を崩した一夏へと目掛けて勢い良く蹴り上げた。

 

 それは間違いなく男の急所への強烈な一撃であった。

 

「ぐあゎあッああアアアアあァァァァあああっ︎‼︎⁉︎」

 

 『床』の展開による反力の受け流し、ISのパワーアシスト、更にはウィングスラスターの加速が相乗効果を齎した強力な一撃。

 その一撃を受けた一夏は先程の柄頭の一撃を遥かに上回る想像だにしない衝撃を受け絶叫し放物線を描きながら、かち上げられる形で吹き飛んで行く。

 

「容赦はしませんよッ‼︎」

 

 『葵』を量子変換で格納すると同時にグレネードランチャーを量子展開して吹き飛ばされて体勢が立て直せていない一夏へ目掛けて即座に発射して追撃し、爆破した。

 

「ぐわああああァァァァ‼︎⁉︎」

 

 鳩尾、男の急所、更には追撃のグレネードランチャーを受けた一夏は三様の悲鳴を立て続けに晒してアリーナの地面へと墜落して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジで(おっそ)ろしい真似すんな、黒糖(アイツ)⁉︎」

 

 観客席で観戦していた若菜は久里の所業を見て思わずそうボヤいたのだった。

 

 

 

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