束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
執筆時の作業BGM『Astral Call』(クラッシュ・フィーバー。ディザスター級 ボスBGM)
「マジで
相手の攻撃を僅かな所作で躱して隙を作ってからの『床』を用いてのカウンターに加えて追撃のグレネードランチャーと言う鬼畜な所業を目の当たりにした若菜はそう呟いた。思わず一夏に対して同情するレベルの一撃であった。アレは効く、マジで効く。
と言うか久里は無理して不良ぶって居る様に見えるのだがやってる事は結構、エゲツない。
「……若菜君が無茶した時、そうして止めようかな♪」
「マジで勘弁してくれませんかね? あんなの喰らえば正気で居られる気がしない」
シノアが有効的な対処法を見出したと言わんばかりの笑みを浮かべている。喰らう側の若菜からすれば処刑宣告に等しい。
「……ならば、不安を煽る様な真似は控えてください。目の当たりにする私達からすれば気が気でなりません」
フィウからは擁護してくれなかった。さいですか……。
「あっはは〜。ありゃ効果覿面だねぇ〜」
「うにーっ(/・ω・)/」ニョキ
その時、8組の生徒達が屯する観客席の一角にこの場にそぐわない声が聞こえて来た。
思わず観客席の後方に視線を向けると、其処には桃色の髪の上に機械式のウサミミを付け、青いエプロンドレスに『懐中時計』を下げた、世紀の大天才にしてISの開発者である篠ノ之 束その人と、その背中にしがみつき束の肩の後ろから顔を出しているウィキッドが居た。その斜め後ろにはクロエが控えて居た。
「え?アレって……」
「ニュースとかで見た事ある……。ISの開発者である篠ノ之 束よ⁉︎」
「何故、此処に⁉︎」
離れた位置にて観戦している他の生徒達がその姿を認めた為に騒めき出す。注目の視線を浴びようとも束は興味を抱かない。理由は単純明快、興味が無いからである。
「……母上。何故此処に?」
「やだなぁ、わーくん。束さんが何処で誰と一緒に観戦しようが束さんの勝手じゃん♪」
若菜が若干の呆れを滲ませつつもそう質問するが完璧な論理武装故に納得させられる。確かに束が何処で誰と試合を見ようが勝手である。文句の付けようのない正論であった。
「あー、反論の余地が無いですね。全く持ってその通りです」
「一撃必殺だね、若菜君」
因みに束達が先程まで居た貴賓席でウィキッドによって人形にされた者達はウィキッドが遊びに飽きた為、自らの眼球を抉り出して糸が切れた操り人形の様に沈黙させられた。
今頃は自らの手で自身の眼球を抉り出して自殺した死体で溢れ返っている恐怖映像としか言いようが無い光景が広がっている事だろう。
「うにーっ(/>ヮ<)/」ピョーン
後、束の背中にしがみついていたウィキッドがその場で跳躍して若菜の方へと飛び込んで来た為に受け止める。ウィキッドの頭に生えている巻き角の先端部は鋭くそして天頂に向いている為、当たるとそれなりに痛い。
「……アルビノの子ですか?全体的に白い上に髪の毛の一部が赫いですね」
「綺麗ですね。赫と皓が相俟って神秘的に思えます」
「……サラサラしてそう」
「その角は髪飾りですかね? 羊がモチーフでしょうか?」
若菜の膝の上にちょこんと座ったウィキッドを見た8組の生徒達はその神秘的な容姿を見て興味を惹いた。ウィキッド自身も8組の面々に興味を惹いたのか或いは母性本能に駆られたのか、永世の胸へと飛び込んで行った。
「うにーっ(/>ヮ<)/」ピョーン
「あ……。意外とわんぱくな娘なのですね。この子は」
突然の行動に永世は無表情で驚きつつも特に引き剥がす真似をせずに取り敢えず好きにさせた。
「さてと、私も此処で観戦させて貰おうかな☆ 貴賓席だと喧しいムシケラしか居ないからさ♪」
8組の面々は『篠ノ之 束が自分達を見定める為に来校する』とは聞いては居たが、まさか眼前に現れるとは流石に考えては居なかった。
だが、初見では驚きこそすれど伽羅の下で『狂育』を受けて来た者共。すぐに平時の態度に戻った。
「んで、何故おチビ姫も一緒に?」
「ふふん♪ 一緒の方が良いでしょ? あの娘も楽しそうだし」
束は若菜の隣に座る事にした。元々、フィウが座って居たのだが隣にズレて譲る形になったらしい。
「……ツインテールとかどうかな? 金子さんとお揃いで。髪留め、髪留めと♪」
「うにうに(・ω・)」ユッテー
「身長低い=ツインテールの印象なのでしょうか……?」
いつの間にかシノアの膝に座っているウィキッドに対してシノアがウィキッドの髪の毛を纏め始めて居た。本人も満足しているそうなので口を挟むのは野暮だろう。
「さてと……クラス代表の娘はどうかな?」
そして束の視線は今現在、世界初の男性操縦者こと織斑 一夏と対峙している黒糖 久里へと向けられて居た。
「当て馬役にしては力不足感が否めませんかね?」
「そうとも言い切れないよ。仮にも凡人が『究極の生命体』と称したんだ。関門としては不足は無いでしょ」
「……試金石代わりであると?」
「うん♪ 仮にも『一撃喰らえばオワリ』なのは言うまでもない。宇宙では一撃のミスが死を招く。そう言う意味では丁度良い実験台だ」
束は一夏の事を性能試験の実験台程度の認識となっていた。
「あの……。篠崎さん達って時々、物騒な会話をするよね?よね?」
「ヤベー奴とヤベー奴がヤベー会話している光景だな、ありゃ」
「あの世界が常識であると感じる事が私達に求められているのでしょう。私達はその世界で生きなくてはならないのですから」
若菜と束の会話を聞いて、紫苑達はやや引いた気持ちで耳を傾けて居た。ただ、永世のみ平常運転であった。
見事なまでの3連撃を喰らい撃墜された一夏を上空から見下ろす久里。急所攻撃に加えて追い討ちの擲弾も叩き込んだ。
「……コレで決着が付くほど」
落下時の衝撃で舞った土煙を吹き飛ばす勢いで一夏が再び上空へと舞い上がって来た。その光景を見て久里は気持ちを引き締める。
「甘くは無いっすよね」
生身に対してのダメージしか与えて居ない為、機体に対してのダメージは爆撃と落下時の衝撃しか蓄積されて居ない。
「俺は……此処で、負ける訳には……行かないんだ‼︎」
だが、急所に一撃を見舞った所為か、主人公張りの威勢ある発言なのだが、内股である所為でどうしようも無く見えてしまう。
恐らく、いや絶対に気合いで耐えているのだろう。若干、震えてもいた。
「……生憎と私も負けてやる理由は無いんスよ」
久里にも負ける理由は無い。此処まで全員で対策を積んで来た。ただただ、専用機持ちにかまけて勝利を確信している連中に負ける謂れは無いのだ。
「次は喰らわねぇ。お前を倒さなきゃ、鈴との勝負に向かえないんだ‼︎」
痛みが引いて来たのか一夏は吼える。同時に再び雪片弐型に『零落白夜』の煌めきが迸る。鈴と言う人物とどう言う確執があるのかは知らないが、勝ちを譲るつもりは無い。
「うおおおおおお‼︎」
『零落白夜』を纏わせた雪片弐型を構えて馬鹿正直の一直線に突っ込んで来る。いや、もうコレしか出来ないので仕方は無いのだが他に無いのかと心配になる。
同じ太刀筋とは限らない。見誤れば一撃で死ぬ。ならば別の手で隙を作るのみ‼︎
久里が拡張領域内から取り出したのは閃光弾。スタングレネードと呼ばれる非殺傷武器。その安全ピンを抜いて突っ込んで来る一夏の眼前で起爆させた。
「「「⁉︎」」」
「ぐわぁぁぁぁぁ⁉︎ め、目がッ⁉︎」
突如、アリーナ全体に閃光が眩いた。突然の強烈な閃光は至近距離で浴びた一夏は元より観客席の者達も遠目であるがダイナミックに観戦する為に拡大する為の空間投影ディスプレイが観客席近くで展開されていた為にその閃光をモロに浴びた。
ただ8組の生徒達は、久里の動作を見て予想出来た為、視覚を保護して難を逃れた。
「ッ‼︎」
目が眩み絶大な隙を晒した一夏に対して久里は体勢を水平に傾けて両手を伸ばしその手の先にシールドバリアを『棒』状として形成、随意展開しソレを掴む。
そしてその状態でウィングスラスターを暴発させ瞬時に加速、暴力的なまでの勢いによる回転蹴りを一夏の横顎から叩き込む。それはまるで鉄棒の大車輪を水平90℃傾けた形で行ったかの様であった。
「ぼごわっ⁉︎」
目が眩んだ隙に瞬時加速の勢いを纏う回転蹴りを叩き込まれた一夏は顎に強烈な衝撃を受けて2度も蹴り飛ばされる。瞬時加速が加味された運動量による衝撃故に、又しても吹き飛ばされ壁に激突する。
だが、今度はすぐに復帰して三度、瞬時加速で迫ってくる。
「ぐっそ、『零落白夜』ァァァァァァァ‼︎‼︎」
久里に蹴られた為、何処かの歯が折れたのか他者が認めるイケメンの顔が赤く腫れ上がり歪んでいた。やったのは自分だが、シールドバリア越しでも歯茎のダメージは痛そうだ。
『お゛い゛、ぞろぞろ、苦痛に゛沈めろ゛ッ……‼︎』
その時、久里が搭乗する機体『打鉄』に搭載されているISコア、『フォルタ』が久里に対していがら沁みた声で久里の脳内へそう告げる。
流石にやり過ぎだと思いませんかね?既に2度も急所に当てましたし。
久里はフォルタに対して流石にやり過ぎだと苦言を呈した。
何気ない返答ではあるが、本来ならばフォルタに対してこの行為は自殺行為であるが、久里は対等に彼女と対話出来ていた。
『甘い゛ッ゛‼︎ 奴゛は狂゛っ゛てる゛‼︎ 正気に゛戻じてやれ゛ッ‼︎!!』
だがフォルタは対応が甘いと叱責を飛ばす。どうやら久里の戦い方が気に入らないご様子だ。いや、普通にエゲツない真似をしているんですがね?
彼女と脳内で話して居る間にもうすぐ近くにまで一夏が迫って来て居た。どうやらこの瞬間で他に取れる手段は無い様だ。
「『フォルタ』。貴方の『
『全で、壊゛じてや゛る゛ッ‼︎』
OTシステム、起動。その直後、久里が纏う『打鉄』が眩く赫く煌めき久里本人ごと膨大な光に包まれる。その眩いまでの光量を前に誰もが目を覆い直視する事は叶わない。
だが一夏は怯まず零落白夜を掲げたまま突撃を敢行する。
『またかッ⁉︎ 今度は『打鉄』の二次移行だと⁉︎ お、お前達‼︎ 直ぐに黒糖が搭乗する機体データを観測しろ‼︎』
管制塔に戻った千冬が再び起きた量産機の二次移行を目の当たりにして管制塔にて整備科の生徒達にデータ観測の指示を飛ばす。
『永遠に償い続けろ゛ッ‼︎』
「零落白夜ァァァァァァァアアアア‼︎‼︎」
赫い光が一際強く煌めき、収束されその全容が露わになろうとしたその瞬間と、一夏が零落白夜の皓き煌めきを纏った雪片弐型を振り下ろすのは同刻であった。