束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
第1回戦が一通り終わった。第4戦目は反則負けと言う形で一夏が勝利した。10分間のインターバルと言う名の休憩時間を挟んで準決勝が行われようとしたその時、それは起きた。
「何事だ⁉︎ 何が起きたと言うんだ⁉︎」
反則行為をした黒糖 久里に私的な制裁を加えた後、懲罰房へ叩き込んで管制塔に戻るや否や、IS学園の各所で破壊音や倒壊、そして爆轟が立て続けに響き渡っている。
「あ、お、織斑先生‼︎」
管制塔で各地から寄せられる情報を集積させ多数の空間投影ウィンドウを眼前に展開して情報整理していた真耶が千冬の到来に気付いた。
「山田先生。状況は⁉︎」
「は、はい‼︎ しゅ、襲撃です‼︎ 正面校門から不特定多数の自家用車が次々と乗り込んで来ています‼︎ 中には校舎やアリーナ等の建物に其の儘、突撃して自爆特攻して来て居ます‼︎」
「何⁉︎ 自爆テロか⁉︎」
「破壊された壁穴から後続の車両が通行して侵攻中‼︎ 車両群はIS学園全体に広がっていきます‼︎ 確認出来た襲撃に加担した構成員は……服装が多種多様⁉︎ 特殊部隊とかそんなモノでは無く一般人⁉︎」
「……一般人によるテロ、だと⁉︎」
IS学園はその特異性故に第三者や反社会的組織によるテロ行為は想定されていた。だが、それは『ISにはISにしか勝てない』と言う相互関係による襲撃を想定したモノであった。
具体的に言えば『打鉄暴走事件』の様な未確認ISによる襲撃。
だが今回の様な原始的かつ生身の人間によるテロ行為は余り考えられていなかった。
「ッ‼︎ 各所校舎や寮棟及び各アリーナに向かって侵攻中‼︎ アリーナ外にいた教師や生徒達が襲撃を受けています‼︎」
映像通信する為の空間ウィンドウに映し出された中継には学園内公園で休憩していた教師に対して侵攻した襲撃者達が大挙として押し寄せる。
襲撃者達は皆其々が抉れたバール、刃毀れしたノコギリ、曲がった鉄パイプ、割れた金属バット、錆びた枝切り鋏、他には電池式の電動ドリルや伐採用の斧と言った民間で手に入るも使い古された凶器群を携えていた。
『え⁉︎ な、何よアンタ達、あァァァァァァァ‼︎⁉︎』
『全部、全部お前達の所為だ‼︎ お前達さえ居なければ、こんな事にはならなかった‼︎』
『死ね‼︎ 死んでしまえ‼︎ この世界も私も何もかもしんでしまえ‼︎』
『あぎゃ、ぺびゅ……⁉︎ おぼらろ、ろろは、あががッ⁉︎』
映像の先で行われたのは多数の襲撃者が1人の教師に対して物理的な暴力を伴う解体作業であった。思い思いの凶器を持って『八つ当たり』の様に突き刺し殴り乱雑にその肉体を壊して行く。
その光景を空間ウィンドウの中継映像越しに見ている真耶は思わず口を抑え、千冬は動揺を感じながらも冷や汗を流す。
『息子を返せ‼︎ 娘を返せ‼︎ 孫を返せ‼︎ お前達がお前らが‼︎ ワシのこの虚しさが分かるかァァァァァァァ‼︎‼︎』
『血の匂いが私を呼んでいるぞ。さぁ、その醜いエゴと一緒に血と臓物をぶち撒けろ‼︎』
『おいおい、そんな顔をすんなって。お前らがやって居たみたいに、嘲笑いながら殺してやるからよ?』
『ちょ、ま、……待って……い゛あ゛ぁッ⁉︎ がっ。あ゛ばゃ、あ⁉︎い、痛ッ……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ‼︎ ぃぃいいぃぃぃ……っ‼︎ あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ッ‼︎⁉︎』
奇怪な音が鳴り響いて行く。骨を削る音、肉を千切る音と共に今際に放たれた渾身の悲鳴が無加工の状態で管制塔にも伝わり響き渡る。
「む、惨い……‼︎」
事を終えた襲撃者達は次の獲物を求めて散開して行く。その場に残されたのは撒き散らされた血溜まりの中でバラバラに肉や内臓、骨や各所の体の残骸を撒き散らされると言う凄惨なる姿と化した教師の死骸が遺されていた。
とても存命しているとは思えない生き絶えた姿であった。
「「…………」」
その凄惨なる死に様をまざまざと見せつけられた千冬と真耶は一時的ではあるが呆然とした。思わず無差別自爆テロの襲撃が継続中である事を忘れてしまう程に。
『お、織斑先生‼︎ しゅ、襲撃です‼︎ 地下区画から、多数のしゅ、襲撃者が、いや゛ぁ゛あ゛ぁ゛‼︎⁉︎』
『織、斑……先生……き、緊急時の、地下トンネル……から、侵入者が……現れ……ま。し、た、ぁ』
「ッッ⁉︎ ほ、惚けている余裕は無い‼︎」
「は、はい‼︎」
次々と寄せられる緊急事態を知らせる報告。第三者等の襲撃者が現れたと言う緊急事態時の指揮権は全て千冬に委ねられている。
「IS学園各地にも襲撃が多数‼︎ 緊急用の避難経路の1つである地下トンネルからも多数の襲撃者が雪崩れ込んで来ています‼︎」
「地下トンネルの存在は機密情報だぞ⁉︎ どうやって把握した⁉︎」
IS学園が機能停止に陥る様な事態になり放棄せざるを得なかった時の脱出経路として設けられたIS学園地下と日本国本州を繋ぐ地下トンネル。それは機密情報であり公開されていない。
その地下トンネルを通り多数の
「……まさか、学園内に裏切者が⁉︎」
千冬は『打鉄暴走事件』の時を思い出す。あの時は3組の元担任がVTシステムを仕組んだ事による発生した事件。最終的に元担任は自殺した事で真相は迷宮入りとなってしまった。
「いや、今考えてる余裕は無い‼︎ 戦闘教員達に通達‼︎ 勢力不明のテロリスト達が学園内各地に侵入‼︎ 勢力の規模は不明であり尚且つ、脅威度は高レベル‼︎ 故にISの使用を許可し掃討せよ‼︎」
千冬は教員一同に対して緊急連絡し物理的な排除の指示を出した。モノレールの大橋を伝う以外にも地下トンネルも介して侵攻して来ている。つまり学園内で1番安全なのはこの第1アリーナとなる。
苦しい状況だが第1アリーナで籠城しつつテロリストを一掃するしか道は無い。外部からの救援は頼めない……そうすれば現在のIS学園の独立性が失われてしまい、政府と言った部外からの介入を許容する事に繋がる。何としてでも自分達で切り抜けるしか無い。
「全ての専用機持ち達に通達、多数のテロリストが学園内に侵入した‼︎ 敵対勢力の総数は未知数だ。各地に散開しており速やかに対応が求められる。
各自、各個撃破して鎮圧に当たれ‼︎ この第1アリーナにテロリストの侵入を絶対に許すな‼︎」
専用機持ち達にも出撃命令を出す。既に一部の教員が生身の状態で襲撃に遭っており、連絡が無い以上、その中には戦闘教員も含まれて居ても可笑しくは無かった。
先程見てしまった凄惨なる殺害光景を目の当たりにすると出し惜しみ出来る余裕は無い。例え過剰と謗られようと打てる手は全て打つしか無い。
『織斑先生、詳細な情報を求めます‼︎』
1番最初に応答したのはセシリアであった。
「それが分かれば苦労は無い‼︎ ただ判明している事は見た目は民間人で日用品で武装している‼︎ だが明らかな殺意を持って侵入している‼︎」
『ISによる襲撃じゃなくて一般人によるテロだと言うのですか⁉︎』
その事実に鈴音が驚愕の声を上げる。
「現状ではそう判断せざるを得ない……。だが此の儘では生徒達にも甚大な被害が及ぶ‼︎ 手遅れになる前に対処しなければならない、良いな‼︎」
専用機持ち達にも対処を要請。……相手はテロリストとは言え生身の人間。ISと言う暴力を前では如何なる武装で立ち向かおうとシールドバリアの前では無力だろう。ただ数が多い……侵入を許せば其処から虐殺劇が展開されるのは容易に想像できる。
「8組の篠崎や菟篠にも……クソッ‼︎ ISネットワークの秘匿通信が繋がらない……‼︎」
8組の生徒達。専用機持ちと目される若菜やシノアの一般生徒である他の生徒達は練度で言えば他のクラスよりも1枚上手だ。『打鉄暴走事件』の時は鈴音に対して何故か銃撃を行ったが、少なくとも一般生徒込みでも戦力としては申し分ないだろう。
だが、連絡が付かないのは大問題であった。
「個人的に8組と連絡がつく者は居るか⁉︎」
管制塔に居る2年生にそう訊ねるが接点がある者は1人も居なかった。
「くっ。8組担任の天瓦先生とも連絡が付かない……‼︎ まさか、あの人も既にやられたと言うのか⁉︎」
雰囲気こそ威容を放っては居るがISに搭乗したと言う話は聞いた事は無い。まさか襲撃に遭い落命したとは言うまい。
「勝手に行動して居なければ良いのですが……」
「いや、分からんぞ。願わくば勝手に襲撃者達を撃退してくれていると助かるのだが……」
同刻。東京湾の中ノ瀬を中心とする海域にて
同時にその血の色をした海面に鮫か魚の様な背鰭が見えたと言う話もあったと言う……。潮の流れの影響で東京湾の内湾の方へと広がっており、海洋警備隊は何らかの対処が必要であると上層部へと報告を上げたのだった。