束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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強者が勝つとも弱者が負けるとも限らないのが現実

 

 

 

 

 その頃、第1アリーナ。本来であれば1回戦を終えてインターバルを挟んだ後に準決勝が行われる……筈であった。

 

「何なのよ。コイツら……‼︎」

 

 織斑 千冬から秘匿通信を受けた中国暫定代表候補生、凰 鈴音は疲労が隠せない顔色で眼前の光景を見やる。

 場所は第1アリーナの正面玄関前広場。

 鈴音はその場所を防衛ラインとして、学園内に侵入したテロリストのアリーナへの侵入を防いでいた。此処を突破されれば、アリーナ内に居る非戦闘員である一般生徒達や来賓達に大きな被害が出る。

 

「……倒しても倒しても、キリが無い‼︎」

 

 自身はISを……専用機を纏っているのに疲労の色が隠せない。

 幾ら撃たれようが斬り裂かれようが本当に絶命するまで立ち上がり、立ち上がる事が出来ずとも這い蹲りながら迫り来る幽鬼の様な妄念の人間達の姿を。

 

『全ての専用機持ち達に通達、多数のテロリストが学園内に侵入した‼︎ 敵対勢力の総数は未知数だ。各地に散開しており速やかに対応が求められる。

 各自、各個撃破して鎮圧に当たれ‼︎ この第1アリーナにテロリストの侵入を絶対に許すな‼︎』

 

 テロリストの集団がIS学園に侵入。此処までは良い。いや、テロリストが侵入する時点で大問題ではあるのだがその点を問題点に挙げては話が進まない。問題なのはテロリストの特徴が統一性が全く無い事だ。

 

 狂乱化、暴徒化した一般人。

 

 その一言に尽きたからだ。

 誰も彼もがホームセンター等で購入出来る工事用や伐採用の道具類、或いは建築資材を携えて襲い掛かってきている。服装もてんでバラバラ……。何処かの秘密結社とか秘匿された特殊部隊と言う括りでは無い。

 鈴音は最初は武装とは言え生身の一般人……ISが前では怯むだろうとタカを括っていた。流石に学園内で殺害するのはマズいと考えて居た為、手加減して叩きのめすに留めよう……。

 集団と言えど多くても20や30人くらいだと、考えていた時期があった。

 

「お前らが……お前らの存在が……‼︎」

 

「許さない…。許さぬ……‼︎」

 

「其処を退けよ……。居るんだろ? 其処に、薄汚いエゴを詰め込んだ肉袋(おんな)共がさぁ?』

 

「……がばっ、あははは……‼︎ お前らに殺された冥土のじぃちゃんに……土産を、持ってかなきゃ、死ねねぇなぁ……?」

 

「おいおい……。怖いのか?そんなIS(モノ)を纏わなきゃ、俺達と話せねぇのか?なぁ、おい。最強と聞いて呆れるなぁ、アハハ……ァ‼︎」

 

 衝撃砲で吹き飛ばした。地面を何回も転がって顔面や身体が傷付いて血を流しても、死ぬまで立ち上がってきて、薄ら笑みを浮かべながら向かってくる。

 双天牙月で殴った。抉られようが腕が切断されようが構わず立ち上がって来る。

 勢い余って殺してしまった。誰1人として、死体を視界に収めても怯みもしなければ普通に踏み越えて来る。

 

 第1アリーナの正面玄関前の広場もまた地獄絵図が広がっていた。既に鈴音に撃ち倒された無敵人間達が多数、斃れているが次から次へと後続の者達が第1アリーナへ入ろうと迫って来る。

 その為、玄関前の広場には無数の屍が足の踏み場も無い程に広がり撒き散らされた血で舗装されたアスファルトに血が染み込み屍山血河の様相を成している。

 

 そんな光景に鈴音は恐怖を抱いた。

 彼らは『死』を全く恐れていない。自らが傷付く事も本来ならば敵う筈のないISを相手にしても怯みは愚か恐怖すら抱いていない。例え殺されると分かっていても承知の上で向かってくる。

 

 代表候補生と持て囃されようが高が10代其処らの小娘。『死』の存在を身近に感じた事が無い。

 死に体同然の者達が、大挙として迫って来る。10や20では無い……。ハイパーセンサーを使わずとも見える。視界の奥からは集団、いいや群衆と言っても過言では無い大多数の『無敵の人』の大集団が雲海の如く迫って来る光景が見えた。

 

「アレ、全部。テロリストだと言うの……?」

 

 上空を飛んで衝撃砲を放てば一方的に嬲り殺す事は出来るだろう。衝撃砲は死角が無いと言う売り文句ではあるのだが……完全に防ぎ切れるとは言い切れない。砲撃の隙を突かれて侵入されては元の子も無いからだ。

 

「お前も楽しいんだろぉ? 肉を裂く音が心地よいんだろ? 砲撃で吹き飛ぶ男の悲鳴を聞く事が何よりの生き甲斐なんだろぉ? 俺も好きだぜ、お前らの様なクソアマが命乞いするサマがなぁ‼︎」

 

「みんな、死ぬのさ‼︎ 大きな刀でバッサリ裂かれてさ‼︎ 機関銃でバラバラになるんだ‼︎ 死ぬ事が唯一の救いなんだ‼︎」

 

「俺1人で死んで堪るかッ‼︎ お前らも道連れだ‼︎ どうせ、皆、お前らに殺されるんだ‼︎ どうせ死ぬなら道連れにしてやる‼︎」

 

「お前らさぁ……戦乙女名乗ってんだろ?だったら、天国へと連れて行けよ‼︎ ほら……殺したいんだろぉ? 好きだよなぁ、笑いながら殺すのが何よりの生き甲斐だろぉぉおおが、殺せよ、殺せよ、殺せよおおおおおおおお‼︎‼︎」

 

 彼らはただただ狂っていた。もはや説得云々以前の問題で発狂しており、理解出来ないししたくも無い事を叫びながら手に持った武器を振りかぶって一斉に襲って来る。

 

「くっ……立て続けに、しかも同士討ちも一切考慮しないなんて、狂ってるとしか思えない‼︎」

 

 一斉に襲って来る無敵の者達。千冬によってテロリスト認定されているのだが元々は一般人。

 皆が皆、訓練を受けた兵士でもなければ戦闘員でもない。ただ武器を振り回しているだけであり、その勢いが隣にいた者にぶつかり同士討ちで死ぬ事も多々起こっている。その為、死体の半分以上は同士討ちが要因だ。

 

「ハァ、ハァ……。休憩も無しに……こうも立て続けに来られるのはマズいって……‼︎」

 

 終わらない襲撃の嵐。目の前の襲撃者を倒してもすぐさまに次の襲撃者が襲って来る。

 如何にISのシールドバリアと絶対防御によって襲撃者の(みじ)めな武器では傷一つ付かないと雖も、休憩無しの連戦に次ぐ連戦。

 ISのシールドエネルギーも無限では無い。そして、何より搭乗者は完全無欠(・・・・)で、疲れも知らない究極(・・)の人類では無い。

 確実に精神的にも肉体的にも疲労は蓄積されて行く。ISの機能に精神を保護する機能は存在しないのだから。

 

「何も恐れなくて良い……。凡ゆる概念は我らが王女様によって救済される‼︎」

 

「死んだとしても……王女様の導きによって我らは救われる。恐れるな、全ては王女様の為に死ぬのだ‼︎」

 

「血と臓腑をこの世界に撒き散らせ‼︎ 我らが姫君の為のヴァージンロードを作るのだ‼︎」

 

「何もなかった……だが、俺は生まれ変わった‼︎ 信じる者は救われる‼︎ 臆病な俺でもお前達を打ち倒して見せる‼︎」

 

「……姫様へのお眼通りを願う。故に我らは死を恐れない‼︎ 死した先、姫様の聖歌隊に迎えられる事こそが最高の栄誉である‼︎」

 

「全ての概念は姫君に平伏す為に存在している‼︎ 我らはその尖兵だ‼︎ 死しても我らは永遠に存在する‼︎」

 

「全ては王女様の導きのままに。我らは愚かな女尊男卑主義を断罪する正義の鉄鎚なるぞ‼︎」

 

「捧げよ‼︎ 愚かな女共を根絶やしにして贄として、供物として姫君へ捧げよ‼︎」

 

 もっとヤバい連中が押し寄せて来た。

 発狂した連中の中には明らかにカルト宗教にハマって暴走化した者達が襲って来る。……発言している言葉の内容はとても理解したくなかった。

 

「明らかに今までと毛色の異なる集団が混入しているんだけど⁉︎」

 

 絶対に関わりたくない相手である。明らかにヤバいオーラを纏っており、動きがさっきの発狂した民間人とは明らかに違う。

 

「くっ、流石に1人だけじゃ手が足りないわ……‼︎ 援軍は……」

 

 その時、後方から複数本のレーザーが通り過ぎて無敵人間を射抜いた。

 

「申し訳ありません。加勢しますわ‼︎」

 

 玄関口から現れたのはイングランドの暫定代表候補生であるセシリア・オルコットであった。専用機であるブルー・ティアーズを完全展開してスナイパーライフルを携えていた。

 

「アンタは……イングランドの。流石に1人じゃヤバかったわ……けど、状況は悪くなる一方よ‼︎」

 

 衝撃砲を放ち絶えず迫って来る無敵人間達を吹き飛ばして防衛ラインを死守する。

 

「……見たいですわね。学園内に侵入したテロリストが一斉に此方へ向かっているそうですわ……。更に悪い知らせがありますわ」

 

 セシリアもライフルで次々と撃ち抜いて行く。合間にビット兵器で撃ち払う。

 

「何よ、悪い知らせって……これ以上の」

 

「……未だに学園外から侵入者が途絶えていない、との事ですわ。モノレール駅からも多数のテロリストが学園内へ侵入が続いて居ますし、身元不明の輸送ヘリが学園上空から追加のテロリストを輸送して来ていると」

 

「ウッソでしょ……。どんだけ、送り込んでくるつもりなのよ⁉︎ もう一大組織の侵攻じゃない……‼︎」

 

「この程度で我らの信仰は途絶えない」

 

「姫君への信仰がある限り……我らは何度でも立ち上がる……‼︎」

 

「感じる……‼︎ 信仰が、俺達に勇気を与えてくれる……奴らを葬れと轟き叫んでくれる……‼︎」

 

 常軌を逸した無敵人間の中でもカルト宗教に傾倒した者達がムクリと立ち上がって来る。衝撃砲を直撃し、レーザーで胴体を撃ち抜かれても立ち上がってくる。本当に生身の人間……いや、ただの一般人なのか?

 

「何なのですの⁉︎ 生身でIS用の武器をマトモに受けて立ち上がれるだなんて……‼︎」

 

「そんなの私が聞きたいわよ……‼︎ ただ1つ言える事はアイツらは並の連中を遥かに上回るレベルでヤバいって事‼︎ と言うか此処が破られるのも時間の問題だと思うけど⁉︎」

 

「……織斑先生も事の深刻さを痛感して苦肉の策を実行するとの事ですわ。故に時間を稼ぎます‼︎」

 

 作戦が成るまで時間稼ぎ。それならば一縷の希望が抱けるかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園内に多数のテロリストが跋扈している事実は第1アリーナの観客席にも伝わって居た。本来であれば隠し通したかったがそうも行かなかった。

 

「大丈夫だ、俺が皆を守る‼︎」

 

 玄関口広場を鈴音とセシリアの2人で防衛。万が一防衛ラインが破られた場合、まず1番最初に辿り着くであろう最寄りの観客席の扉の前に織斑 一夏を配置し其処を最終防衛ラインとした。通路の幅は広いと言えど外よりは狭い。その中では人海戦術は逆効果であると千冬は判断したからだ。

 

「力を貸してくれ、『白式』」

 

 『白式』を完全展開した一夏は自身の手で握る雪片弐型の刀身を見ながらそう意気込む。千冬の命令で自分は此処を守れと言われた。

 

「それよりも若菜の奴は何処に行ったんだ? 皆が困ってるのに逃げたのか⁉︎ アイツ、本当に男らしく無いな……‼︎」

 

 当然、専用機持ちである若菜にも要請が飛んだらしい。しかし、その姿は未だに現す事は無かった。その事から一夏は『男の癖に逃げた』と考えた。

 

「男なら逃げずに立ち向かうべきだろ。試合の時も遠くから銃撃ばっかで、卑怯な戦法だったしよ」

 

『織斑、無駄口を叩くな。今、凰とオルコットが玄関前で防衛している。それが破られたらお前が頼りなんだぞ?』

 

 一夏の愚痴は千冬にも通信を介して聞こえて居たらしい。通信越しで怒られてしまった。

 

「けどよ、若菜の奴は本当に何処に行ったんだよ? こんな時こそ協力するべきだろ?」

 

『……8組自体、音信不通の状態だ。担任教師すらも連絡が途絶えている。万が一の場合も有り得る』

 

「マジかよ……」

 

『最悪の事態も考慮せねばならん。だが、現状第1アリーナで籠城しテロリストを殲滅すると言うのは現実的では無い……故に苦渋の末に決断した』

 

「苦渋の末に決断?」

 

 通信越しの千冬の声はやや窶れていた。肉親であるからかそんな些細な違いにも気付けた。

 

『第1アリーナに外部からの救援輸送ヘリを要請した。本来であればIS学園は襲撃やテロに関する事柄は全て学園内の戦力で解決せねばならなかった。だが、人命は変えられない。……後々、様々な意味で面倒な事が起こるかも知れんが背に腹は変えられん』

 

「……千冬姉」

 

『現在、アリーナ内の教員達が観客席や来賓席の者達をアリーナへと誘導を行なっている。全員の移動が完了次第、お前も防衛ラインの変更だ。それまでは待機だ』

 

「り、了解だ、千冬姉」

 

『織斑先生だ。兎も角、凰もオルコットも代表候補生だ。そう簡単にやられはせんだろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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