束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
一方その頃。
「総員、
若菜は『断首魚』と命名した絶対天敵に対して『宵咲』を抜き、4人にそう指示を出し、自身が先制攻撃を仕掛けた。
何はともあれ、誰かが斬り込まねば話にならない。相手は新種の絶対天敵……手探り状態で把握しなければならない。その時、斬り込む役が自分であれば最悪、随意防御で受け流す事が出来る。
『……ぐぐぐ』
若菜は自身の瞬発力のみで一息に間合いを詰める。一瞬で懐に潜り込まれ切断された首を擡げる断首魚。その動作に合わせて若菜は打ち上げる様に『宵咲』を振り上げ、斬りつける。
「ッ‼︎」
「かっ、重ッ‼︎⁉︎」
だが、断首魚は見た目以上に重量があり、かつてパージに変異したOVTシステムやランドマークタワーを振り回した若菜でさえ、思わず呻く程の重量があった。僅かに持ち上げるに留まった。
見た目こそ魚を彷彿させたが殴った時の触感はブヨブヨとしており奇妙な感覚を覚えたのも束の間。断首魚が右腕を振り上げる。
「篠崎さんッ‼︎」
「ちょ、突っ込み過ぎじゃない⁉︎」
断首魚が右腕を振り上げた瞬間に、遠方から燐芽と蜜羽が振り上げられた右腕へと向けて銃撃する。然し乍らブヨブヨした皮に阻まれ衝撃すら伝わらない。
『許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ……』
銃撃をモノともせずに断首魚は右腕を平手打ちの如く振り下ろすもソレが直撃する前に若菜は一瞬だけ撃腕翼を展開し、爪先を前方へと向けて爆ぜさせ爆撃すると同時に後方へと飛び、甲板の上を火花を散らしながら滑って燐芽達の近くへと後退する。
「菟篠さんが言う通り……かなり無茶する方ですね……‼︎」
「一瞬、ヒヤッとしたよ」
拳銃を持った燐芽とかなり改造された突撃銃を持った蜜羽がそう声を掛けてくる。
「……何はともあれ誰かが突っ込まなきゃ話にならんからな。最悪、シールドバリアを随意展開して受け流せるからな」
「一理ありますね。して、初接触の感想は?」
永世が若菜の論に同意し、敵性個体の情報を訊ねる。燐芽達は生身であるのに、対して若菜は専用機がある。最悪の場合は絶対防御を駆使すれば致命傷は避けれるだろう。
「見た目以上に体重が重そうだ。それに並の斬撃や銃撃じゃあの肉厚そうな皮膚を貫くのは難しそうだな」
件の『虚空結界』を展開する素振りも見せなかった。肉厚のみで受け止められる程の防御性能があるか……弾力に富んだ皮膚。
『絶対天敵相手に普通の攻撃が通るかよ。テメェ、忘れた訳じゃねぇだろ?』
その時、公開通信でレーキュの呆れた声が聞こえて来た。ISを所持していない燐芽達も傍聴出来るように専用のインカムを渡している為に彼の声が聞こえていた。
「『
だが、断首魚は
『何?……つー事ぁ……‼︎』
若菜はDr.レーキュに対して疑問を呈しながら燐芽達に解説も同時に済ませる。
その時、爆撃の際に発した煙が晴れる。其処には赫いハニカム模様のドーム状に形成されたバリア。今し方解説した『虚空結界』を周囲に貼り若菜の撃腕翼の一撃を防いだ断首魚の姿が見えた。頭部が存在しない首を畝らせると展開された虚空結界が赫い粒子となって消滅した。
「
これまでの絶対天敵との戦闘によって絶対天敵の『虚空結界』にもエネルギーは有限である事が判明している。『虚空結界』を形成するエネルギーを枯渇させれば破壊出来、本体にダメージを与える事が出来る。そもそも絶対天敵とインフィニット・ストラトスには類似点が多く見られる。
『成程な……。つまり、
「そう言う事だ。従来のやり方じゃあ、通用はしないだろう」
少なくとも『
断首魚はその首を下げて動かない。労力を費やす行動なのか……いや、まだ断言は出来ない。
『闘争を重ねる事で生命は進化する。こんな所で進化論を目の当たりにしちゃあねぇ……笑えるな』
『……単純に攻撃を加えて消耗させるのは難しいみたいですね。弱い攻撃では本体の弾力性の皮膚で受け止められてしまう』
『限定的に使用する為にバリアの強度、密度を高めて消耗を抑えられたらエネルギーを削るのも難しそう』
『現に弟くんの、砲撃を受けても虚空結界はほぼ無傷だった。かなりの強度だね……』
フィウ達も通信を介して考察を述べてくれた。展開領域を限定しエネルギーを集約させ強度と密度を高めて防御性能を高められるとエネルギーを削るのも困難になる。奇しくも若菜が得意とする扱い方と酷似している。
『完全に我が息子を意識しているな……。更に場所も悪いぞ』
『上泉』の甲板の上、若菜が本気になれば断首魚を粉砕する事も可能だが同時に『上泉』も轟沈確定となり、燐芽達は海の藻屑と消える事も確定する。やっぱり若菜は戦闘環境における制約が多い。
「…………なら、無理矢理にでも引き摺って場所を変えるしかねぇな……‼︎」
場所が悪いならば交戦する場所を無理矢理変えるしか無い。若菜は公開通信を切って作戦を直ぐに脳裏に纏めて燐芽達に指示を出した。
「総員、
「……『構え』?」
動かなくなった断首魚は前のめりの姿勢。だが思えばその姿勢を常に維持している様にも見えた。
「恐らくな。衝撃を受け止める際に堪える姿勢と言うのがある。学習してんのならソレを活用と言う線もあり得る」
「……試す価値はあるな。その後は?」
「完全展開かつ最大出力で俺が突っ込んで甲板から連れ去ってIS学園島に突撃して、仕留める」
IS学園島なら既に半壊同然だし、多少暴れても誤差の範囲だ。
「……皆さん、どうやら放置し過ぎたようです」
永世が告げる。
断首魚のその腹は真っ赤な液体でパンパンに満たされていた。最初に見た時よりも大きく膨れ上がっており今にもぶちまけられそうだ。斬られた首のあたりで血煙がボコボコ言っているのが見えた。
『……オオオ』
「マズい……‼︎ 全員、俺の真後ろに下がれ‼︎」
若菜がそう叫ぶと同時、断首魚は下げていた首を擡げ、動いた。
『全テヲ吐キ出シテデモ……』