束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「お、織斑先生‼︎」
第1アリーナの管制塔。其処に山田 真耶の声が響く。
「どうした⁉︎ まだ生徒や来賓の避難は完了していない‼︎」
避難行動の遂行率は50%程。まだ半分がアリーナ内部への移動が完了していない状況である。元々、ピットへと通じる通路は然程、広い訳では無い為に一斉に移動しようとなると如何しても混雑してしまつ う。
「そ、それが……襲撃者達がアリーナの外壁を打ち崩してアリーナ内部へ侵入を試みようとしています‼︎」
「何だと⁉︎」
第1アリーナへと集結しつつある無敵人間達。全員が狂乱化しており律儀に正面出入り口へと向かう筈も無く中には外周の壁を破壊して侵入しようと言う暴力的な発想に至る者も少なくない。
IS学園の設備は大層なまでに金が掛けられている為に建物に至るまでに並の衝撃ではビクともしない強度に仕上がっているのだが雨垂れは石を穿つとも言う。狂乱化した上で数の暴力を前にしては破られるのも時間の問題と言える。
「正面玄関は凰とオルコットが防いでいるが……『穴』を開けられてしまっては其処から雪崩れ込まれてしまえば、終わりだ‼︎」
第1アリーナ内に侵入を許してしまえば防衛網など無意味と化す。そもそもISはコンセプト上、開けた空間での戦闘が想定されており閉所戦闘向きでは無い。
「誘導している教員に告ぐ‼︎ 襲撃者達はアリーナ外周の壁を破壊して侵入を試みている‼︎ 急ぎ生徒達、来賓達をアリーナへと移動を完了させろ‼︎」
もし壁を破壊されてしまっては、正面玄関で応戦中の鈴音とセシリアの防衛線を抜かれてしまう事になる。
「織斑‼︎ 先に告げた通りだ、お前もピットへと移動しろ‼︎」
観客席は無人と化しつつある。最終防衛線である一夏も後退させる。可能ならば襲撃者達がアリーナ内部へ到達する前に脱出を図りたい所である。今、現在は要請した救助ヘリがIS学園へと向かっている。流石に1度に乗せ切る事は不可能、到着した順番に乗せて行き脱出させるしか無い。
「織斑先生‼︎」
「今度は何だ⁉︎」
想定外に次ぐ想定外の出来事が多発している最中、IS学園が壊滅する前にそろそろ1つくらい良い事があっても不思議では無い。
「し、篠崎君のIS反応が東側海岸線付近にて確認されました‼︎」
「本当かッ⁉︎」
この時に至るまで、確認されなかった8組の生徒の1人の生体反応が確認された。しかもISを展開しているとの事。その専用機の性能は未確認の部分が多く確実な事を言える内容は少ないがそれでも、襲撃者の一個師団を瞬く間に薙ぎ払えるのは知っていた。
「アイツが襲撃者集団の外側に居るのならば凰とオルコットとで挟撃が出来る‼︎ 漸く光明が見えてきたな‼︎」
恐らくは自分が見て来たIS操縦者の中でもその実力は最上位に君臨するだろう。一体、何処に行っていたのだと毒付きたくなる気持ちを抑えて秘匿回線で若菜への通信を試みた。
「篠崎、聞こえるか⁉︎」
『
暴言が返って来た。普段ならば皮肉ながらも敬語で話す若菜にしては珍しいべらんべぇな口調であった。
「おい、何があったと言うんだ⁉︎」
『テメェらが始めた物語くらい、テメェらで筆折るか締めるかどっちかにしやがれ‼︎』
完全に『邪魔された』体であるが故の拒絶反応。その所為か相手が千冬だろうとブチ切れ状態で対応された挙句に通信が切られた。
「……篠崎の状況はどうなっているんだ⁉︎ まさか、更識と同じく第三者の所属不明機と交戦中なのか⁉︎」
だとするならば更なる事態と言える。或いは楯無と交戦していた者との戦闘に縺れ込んだのかも知れない。
「わ、分かりません‼︎ その近辺では篠崎君のIS反応以外、確認出来ません‼︎」
「くっ……漸く頼りになる戦力が帰還したと言うのに、足止め喰らっては意味が無い‼︎」
「織斑先生‼︎ 外壁の一部が破壊されてアリーナ建物内へと侵入されました‼︎」
更に運が悪い事に遂にアリーナの建物内に襲撃者の侵入を許してしまった。此の儘、なし崩しに雪崩れ込まれて溢れ返るのも時間の問題と言える。
「……ッ‼︎ こうなっては一刻の猶予も無い……‼︎ 凰とオルコットを後退させてピットでの水際作戦に移れ‼︎ 我々もアリーナへと移動する‼︎ 急げ‼︎」
「ったく……。余計なチャチャしか出来ねぇのか、IS学園の教師陣はよ」
同刻、IS学園東側海岸線付近。
『ぎ、ギギ……‼︎』
其処では右腕が肩付近から失われて乱雑な断面図に赤い血で染まった綿状の物質に覆われた状態の若菜と、強い衝撃を受けたのか左腕の骨が剥き出しで肉も千切れ落ちている断首魚が相対していた。膨れ上がっていた胸部及び腹部の嚢胞は萎み赤色の代わりに水が溜め込まれつつあった。
やはり『虚空結界』込みでも若菜の加速を伴う突撃による衝撃は防ぎ切れない様である。
『上泉』の甲板上で断首魚と交戦中であった若菜達。若菜は言うまでもなく場所が悪いと判断した為、燐芽達に隙を作らせた上で自身が身を呈しての最大出力で突貫を敢行しIS学園島へと無理矢理、連れ去ると言う策を立案。
だが、その直前。断首魚の嚢胞が限界まで膨らんでいた為に危険を察した若菜は前方に『壁』を形成し攻撃に備えた。その直後に断首魚は切断された首の断面図から凄まじい勢いの血液の奔流を発射。その威力は凄まじく若菜の随意防御を撃ち破り右腕を消し飛ばした。
その光景に燐芽達はたじろぐも『狼狽えるな』と一喝した後、発射後に身体が少し空いた瞬間を突いて『フォーマルハウト』を完全展開、急加速し断首魚に激突。其の儘、IS学園島にまで強引に連れ去って来て今に至る。
『やっぱり、キミは単独行動の方が動き易いな。下手に周りに味方が居ると動き辛くて敵わん』
言ってやるな。彼女達も悪意があっての行動じゃないのは君も重々承知だろう?無碍には出来ん。
『それは分かってはいるが……流石に『絶対天敵』が相手に生身で挑むのは自殺行為だろ。一応、レーキュや姫舞の後方支援を用意していたが、使わずに済んで良かったな』
恐らく……と言うかほぼ確実にではあるが、あの2人が気前良く後方支援に名乗りをあげた真の理由は、後方支援をする対価に『身体で払え』との事で人体実験を強要する腹積りだったのだろう。最近、地球人の人体実験がブームとか訳の分からない流行りがあったか。
伽羅も止めなかった辺り、人体実験として差し出しても問題ないと判断したと考えられた。……流石にその光景は見て居られない為に極力、自分で仕留めておきたかった。
『……忘レル、ナ。忘レルナ』
断首魚は
周囲の戦闘環境を考慮する必要が無くなった今、若菜の独壇場。その威力を存分に発揮する事が出来る。
「今日の夕飯は刺身で決まりだな」
『アレを見て普通、刺身を食いたいと思うかね⁉︎』
若菜は『フォーマルハウト』の撃腕翼を前方に展開。爪先から赫い量子を迸らせ、音速に迫る勢いで右撃腕翼を伸長させ断首魚の右腕を刺し貫いた。如何に『虚空結界』と言えど
『お、ォォォ……‼︎』
突き刺した刹那、身を翻しながら横殴りに半円に斬り払い、胸部付近から上を断熱圧縮により熱された撃腕翼の伸長された爪で切断、切り飛ばした。元々、範囲が広いが故に海岸線近辺に植林されていた木々も纏めて溶断され次々と伐採されてしまった。
『薙ぎ払いは、下手を打つと味方の首も刎ねてしまうのがネックだよなぁ』
元より綺麗な断面図を有していたが、一際大きな断面図を作り出して地に伏し動かなくなった。
「……新種なのは新種だが、些か弱過ぎる気がするな。気の所為か?」
もしくは或いは——。
『若菜。終わったかしら?』
「一応は。正直な所、今回は人選ミスな気がしなくもないですよ。俺と一緒に作戦行動が出来る者は限られているのは伽羅さんも知っての通りでしょう?」
断首魚のサンプルを幾つか採取する。此の儘、放置してIS学園側に回収されるのも面倒な気がするので、結局はその残骸を全て回収する事にした。
『仕方ないじゃない。血の気の多い子達を止める理由は無いわ。それに調子に乗った娘から死ぬモノよ』
「……否定はしませんよ。ただ、悪戯に死にに行かせる様な真似は控えて下さい。如何にもおチビ姫が彼女達を気に入っているみたいです。その結果、トバッチリを喰らう羽目になるのは俺なのですから」
『貴方の犠牲で王女様の機嫌が取れるなら安いモノよ』
王女の癇癪を若菜で解消……酷い話である。
「ヒッデェ話だ……」
『鶴喰から話は聞いているわ。実験室を開けておくから早い所、『上泉』に帰還してその腕をくっ付けておきなさい。貴方は良く無茶するからと言う理由で姫舞が貴方の腕を培養してあるから』
「言葉にすると、凄い無茶苦茶な事を言ってますよね、ソレ」