束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
IS学園島から千冬達が無事に脱出に成功したその同刻。千葉県沖、海中。『上泉』艦内。
「だぁぁぁあ、クソッ‼︎‼︎ 結果的にこうなる事を見越してやがったなァ⁉︎ 何方に転んでも得するように仕組んでやがったな‼︎‼︎」
「はいはーい、暴れないの〜♪」
「綺麗に抉れちゃってますね〜。その残骸をサンプルとして回収できなかったのが残念です」
「ちゃぁんと、くっ付くから安心してね、弟君♪」
「そのヤバそうなチェーンソーを仕舞ってから言えェェェェェェェェ‼︎‼︎ 何に使うんだソレはァァァァァァァアアアア‼︎⁉︎」
断首魚との戦闘で片腕が消し飛ばされた若菜は艦内
ある医務室にも響き渡っていた。
「あのー……天瓦先生。アレ、大丈夫ですかね? 金子さん達が言うには片腕が捥げたと聞きましたが……」
「気にしなくて良いわ。私達にとっては何時もの光景だから」
医療用ベッドに横たわり頭に包帯を巻いた久里が若菜の悲鳴に近い咆哮が耳に入り冷や汗を流しながら近くの丸椅子に腰掛ける伽羅に訊ねるもそう返された。かく言うシノアとフィウも然程、動揺している素振りは見られなかった。
「……殆ど俺達、役に立ってなかったな。返って邪魔になった気がするぜ……」
「うーん、少しはやれると思ったんだけどなぁ」
「押し掛けに近い参戦でしたので、批難は仕方ありませんね」
断首魚の討伐に参加した者達は事の経緯を理解して後ろめたさを感じていた。非力である事を自覚はしていたが、結果的に足を引っ張ったのも事実。
「後悔の念に駆られる必要は無いわ。現実を見る事も学習の内よ。さてと……此処まで来ちゃったら、私達の事を改めて説明しなきゃ行けないわね。もう貴方達も当事者に近いし」
伽羅は『絶対天敵』の存在を見聞きした者達を含めて改めて自分達事を話すべきだと判断した。それに『上泉』もただの潜水艦では無いからだ。
「さて、まず最初に私とフィウは厳密に言えば地球の人間じゃないわ」
医務室に椅子を並べ足りない分は空きの病床に腰掛ける形で着席させた一同に対して伽羅は開口一番、そう告げる。
「え?ち、地球の人間じゃない……?」
「…………宇宙人?」
「……え?嘘やろ?」
そう言われた者達の反応は様々であり総括すれば驚きの念が強いと言える。
それも仕方の無い反応と言えるだろう、現実問題……地球の人類の中で次元を越える事は愚か太陽系を脱した事例を持つのは束達くらいなのだ。
そもそも宇宙の彼方からの生命体の存在など見聞きした者は他に居ない。
「……宇宙人。と言う表現だと、私から見れば貴方達が宇宙人と言う見方になるわ。まぁ、その辺の表現はこの際はどうでも良いわ。厳密に言えば異邦人や異星人が適切でしょうね」
伽羅は彼女達の反応に特に気にしなかった。
「…………篠ノ之 束博士は、宇宙のその先へと向かう為に『インフィニット・ストラトス』を創造した。この下りは理解はしているでしょう?
その結果……宇宙へと進出した束博士、若菜達と偶然、この太陽系の近くに訪れていた私達の出身の惑星国家エストレヤの航宙艦と邂逅するに至った」
伽羅はそう反芻する。外宇宙からの訪問者……元々『エストレヤ』は惑星型コロニーであると同時に移民を多数受け入れてきた多様な生態系が築かれた国家であった。故に地球では理解が得られなかった束を受け入れるのに然程、時間は掛からなかった。
「『エストレヤ』……?」
「正確に言えば惑星型コロニー。私とフィウの故郷であり、来年、束博士達が正式に引っ越す先の世界よ。この地球から見て無数の銀河を越え何億光年以上も離れているわ」
「引っ越す、つまりそれは……」
其処で一同の視線はシノアへと向けられた。視線を向けられたシノアは軽く咳払いをしてから話を始めた。
「お母様……。束博士は今年の1月から、『エストレヤ』へ活動の拠点を移す計画を立てていました。私達が高校を卒業した年に地球から移住すると言う計画です。
まあ、理由は色々とありますが……地球上での『IS』の扱いや、各国政府の聞き分けの無さや横暴さ、そして『女尊男卑』の存在故に嫌気が刺したのが主な要因かな。
『エストレヤ』ではお母様の話に理解を示してくれる人も多いし、ちゃんと『IS』の事を理解する人達も多い。そして、何より『エストレヤ』の……地球で言う首相や大統領に相当する方が、本来ならばあり得ない提案に理解を示してくれた事です」
人の話を聞かずにストレスが溜まる環境よりもちゃんと相互理解が出来てストレスが溜まり難い環境を選ぶのは必然と言える。
そして束にとって決定打となったのは束が自分の子供と見做している『IS』の人格の
「……元々エストレヤやその周辺の『惑星国家』は金子達が目の当たりにした『絶対天敵』と言う汎宇宙的な脅威に晒されていたの。
束博士達と邂逅する前の時点では撃退が精々で、有効打を与えられずにいた。そんな時、束博士の『IS』が内包するエネルギーが『絶対天敵』の虚空結界を破る鍵である事が判明。コレが理由でトントン拍子に友好を深めたわ。束博士も地球よりも何倍も先に進んだ技術を目の当たりにして大層、乗り気だったらしいわ」
『生存本能』が進化を促す。生命とは敵が必要なのである。幸か不幸か問わず、求められるモノである。
「その事実は他の『惑星国家』にも伝わった。『ブリテン』、『ラディウス』、『オルゲン』、『霊桜』からの協議や友好的な対談が実現したわ。
当時としても非常に不仲とされて日夜戦争が絶えないラディウスとオルゲンの使者が共同で同じ席に座ったのは一大ニュースになったわね」
最も今でも戦争が起きるくらい不仲ではあるが。王女と皇女が普通に被害度無視して喧嘩しているくらいだし。
「簡単な私達にとっての歴史の講義はこの辺で畳むわね。若菜とシノア、そしてフィウのISの使用が制限を掛けられていた理由。
それは束博士が組み上げた『IS』の理論とエストレヤ、そして他の惑星国家が培って来たノウハウが結集された
かつて見たIS学園内での地獄絵図。確かに量産機でアレを相手しろと言うのは烏滸がましい。
「さてと、此処まで一気に説明したけどついて来れているかしら?」
伽羅の言葉に異論を唱える者は居なかった。分からないなりにもついて来れているようだ。
「……今更、覚悟を改めて問うつもりは無いわ。貴方達の目を見れば分かる。もう覚悟を決めた者の目だからね。コレまでの話はもうお終い。では、コレからの話をしましょう」
歴史の授業は退屈だ。起きた事象を理解するのも大切ではあるのだが……それを知って踏み留まる訳には行かないのだから。
「……若菜の腕が千切れたでしょう?その件に関しては心配は要らないわ。『防腐処理』によって脳や心臓と言った致命的な臓器以外は修復可能な処理をしているから」
「治る、のでしょうか?」
普通、腕が失われる怪我は大怪我に該当する。極めて重傷だ。
「ええ。簡単に言えば体外に出た血液は速やかに白い綿状の物質に変化して速やかに止血するわ。それ以外にも特殊な防腐剤を大量に突っ込んでいるから体臭もしないの。例え腕や脚が取れようともくっつける事も容易になる。
元々、若菜は無茶苦茶な戦い方をするから骨折とかは当たり前だったのよ。その頻度が余りにも多く見かねたから始まった研究は遂、最近になって日の目を見る事になったわ」
「そりゃ、凄い研究ですね……」
「失血死のリスクを抑えられる事が認められるから推奨を進めていく方針でしょうね。ああ、貴方達も近いうちに『防腐処理』を受けて貰うわ。そうすれば過酷な実技訓練にも
「……ぐ、具体的にどんな変化が訪れるのでしょうかぁ?」
「そうね……。ぬいぐるみに近い身体と言えば良いかしらね。仮に焼失したとしても今のうちに培養しておけば間に合うわ」
その言葉を聞いて久里を始めとした8組の面々は真面目な顔から普段の顔付きになった。
やはり真面目な話をする彼女よりも色々と物騒な発言をしてくる伽羅の方が馴染みがあったからだ。
「何よ、貴方達。その顔は?」
「いや、最初は色々と困惑したが……早い話が俺達も天瓦センセーとこに行きゃあ、良いだけの話だろ? とっくに覚悟決めてんだ。絶対天敵とか惑星国家とか知らん単語が沢山出て来たけどよ、早い話が自分の目で見て理解しろ、だろ?」
「其処から先は私達自身の目で確かめます。折角の宇宙の先への切符です。先にネタバレされてしまっては楽しみが失われてしまいます」
「ふふ……。本当に強かになったわね。普通なら珍紛漢紛になるのが普通だと言うのに」
そのタイミングで医務室の扉が開かれた。入って来たのは欠損した腕がちゃんと繋がっている若菜であった。
「あーらら、タイミングが悪かったすかね? 伽羅さん」
「いいえ、何も問題無いわ。絶対天敵の件、お疲れ様よ」
若菜は空いていたスペースの病床に腰を下ろして話を聞く体勢を取った。
「さてと……全員が揃ったし、8組の今後の予定を話しましょうか」
伽羅は約20名の8組の面々を改めて見渡して今後の予定を話す。
「知っての通り、IS学園島は恐らく壊滅状態「伽羅さんの所為ですがね」若菜、口を挟まない。……壊滅状態だから授業云々以前の問題となるでしょう」
役目を終えた『赫絲』によって暴走した無敵の人間は案の定、放置される事となる。考えられる今後の動向としてはIS学園内で徘徊した後に餓死による全滅か、或いは日本国本土へ向けての行軍で水際作戦による防衛、或いは橋やトンネルを崩しての孤立化させる。
いずれにせよ、死体処理や学園内の建物の復旧作業等を諸々を加味すればIS学園島の復興は年単位が必要になるだろうから、事実上、IS学園島は壊滅を意味している。
だが、それでも『IS学園』と言う組織運営が消えた訳では無い。
「其処で暫くの間は『校外学習』としましょう。仮に織斑 千冬がIS学園の生徒達を避難させたとして、その避難先でつまらない避難生活をするのも面倒だわ」
中々、酷い言い草ではあるのだが……IS学園相手ならば不思議とそう思えてしまうのは心が汚れている証拠なのだろうか。
「……で、アテはあるのですか?」
校外学習をするにしてもアテがあるのか。IS学園はもはや説明不要なくらいに評判が悪い。例えイレギュラー揃いの8組であろうと『IS学園の』と言う肩書が存在する以上、その誹謗は免れない。
「よもや『此の儘、上泉でエストレヤのエストレヤ学院に行きましょう』とか言うのですか?」
それはそれで手続きとか面倒な気がしなくも無いのだが……。まぁ、最終的にはエストレヤに連れて行くつもりだろう。
「んん? 篠崎はん、ソレはどう言う意味や?」
「……伽羅さん。其処の説明は省いていたのか。この『上泉』は潜水艦ではなく宇宙空間を航海する為の宇宙艦、正式な総称としては航宙艦の一種だ。海中でも航海可能な艦だよ」
「宇宙船すらも造ってしまうなんて、凄い技術力ですね……。いや、ISと言う前人未到の領域に達する人だから宇宙船くらい余裕なのかも知れませんね」
「ううん、その予想はハズレだよ」
若菜の予想はハズレらしい。ならば何処へ行こうと言うのだ。女尊男卑主義者は現実を見ない連中が多く、IS絡みの人間を見る目は冷たい。
「……束博士の実家。しかも篠ノ之家の本家。其処から『偶には孫を連れて帰省しろ。家庭教師の教え子も一緒で構わない』って連絡が束博士宛に来た見たいなんだよね。しかもついさっき。コレ、完全にIS学園の騒動とかの動きを把握されてるね」
「……はい?」