束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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お帰りなさい、束

 

 

 東北地方。この地方では5月も終わりに近付く中頃ではあるがまだ涼しい温度に保たれていた。

 予定通りに『上泉』が仙台湾に進入、石巻港の埠頭に接岸した。時刻は夕方頃、その時刻には港に屯する人間は皆無であった。……人の気配が薄いのは何かと不気味に思えた。

 

「今更ながら言うが、君ら……大丈夫か?」

 

「か、身体がまだバキバキ言ってます……。手摺が無けりゃ其の儘、海に落ちてしまいそうっスよ」

 

「……お、思い出させんな……。あれ、拷問の間違いだろ……‼︎」

 

「ほへぇーーー……ぽへーーー……」

 

 『防腐処理』の肉体改造を受けた8組の面々は死屍累々か放心状態と言った様子であった(シノア達もその後に問答無用で実験室送りにされた)。その足取りも怪しく千鳥足の様な状態であり、満足に歩く事も難しい状態の様である。と言うか白目を剥いている者もいた。ちっとも大丈夫そうには見えなかった。

 

 流石にメイド服姿と言うのはかなり悪目立ちする為に伽羅が用意した市販されているスクールブレザー(IS学園の制服も悪目立ちする為)を身に纏っていた。

 

「……やれやれ、この程度でへばっていたら先が思いやられるわね」

 

 埠頭で座り込む面々を見ながらタラップを伝い降りてきた伽羅がそう嘆息する。いや、無茶言わんで下さい。エストレヤ式の人体実験は肉体的、精神的にダメージが深刻なのですから。

 

「にゃはは〜お姉ちゃん、大満足だよ〜♡ 明日も宜しくね♪」

 

「……1回で終わらすなんて勿体ねぇからな。まだまだ付き合って貰うぜ?」

 

「サンプルが沢山……。フフフ、まだまだ採取したいですねぇ」

 

 その後から姫舞達が降りてきた。複数回に渡る人体実験が出来た事で大層、ご満悦の様である。だがたった1回だけじゃ飽き足らないらしい。鬼である。

 

「姫姉。全員のメンタルが持たないのでやるなら、明後日以降にしてやってくれ」

 

「「「フォローになってない(なってねぇ)‼︎」」」

 

 若菜がすかさず釘を刺すも全くフォローになっていない為に久里達がそう叫んだ。叫ぶ元気があるのならば大丈夫だろう。

 

「リリアさん。リタイアしたいっス……」

 

「ダメよ、リリア。姫姉にそんな嘆願が通用する筈が無いでしょう?」

 

「正直な所……今日はもう、動きたくないかな」

 

「……幾ら基礎訓練を積んでも、無意味であると思い知らされますね」

 

 シノア達も降りて来た。が、過去に何回か姫舞を始めとした研究者気質の人間に誘拐されて人体実験された事があるのだが、慣れるモノでは無い為に疲労困憊と言った様子である。

 最後に篠ノ之 束が降りてくる。何時もの時計ウサギを彷彿させる服装では無くかなり大人しめのカーディガンを羽織った格好であった。目立つ機械式のウサ耳も身に着けていない。

 背後に接岸されていた『上泉』は大量の光の量子と化して消滅。量子変換で拡張領域内へと格納される。

 

「……全く。君達、だらしないなぁ。コレじゃあ束さん達の本家に辿り着く前に野垂れ死ぬよ?」

 

 篠ノ之神社の総本山兼本家があるのは仙台から西へと向かった先にある丘陵部にある。つまり、此処からそれなりに距離があると言う事である。

 

「ほら、立ちなさい。この程度でくたばっていたらこの先、生きていられないわよ?」

 

 だが、この程度で死に体となっていては、IS操縦者(ストライカー)なぞやってられない。

 伽羅は手を叩いて立ち上がる事を促す。伽羅に促され1人、また1人、フラつきながら立ち上がる。流石、伽羅さん。微塵も容赦が見られない。

 

「よろしい。束博士」

 

「あ、本家がバスを手配したみたいだよ。流石に歩いて向かうと深夜になっちゃうからね〜」

 

 束がにゃははと笑いながらそう告げると眩しい光が一同を照らした。光源の先を見やれば1台のバスが徐行してくる光景が見えた。

 その光景を見て安堵の息が出た。伽羅の事だから強歩を敢行するだろうと思われていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 束一行を乗せたバスに揺られる事、1時間程。

 日もすっかり落ちて暗くなった頃、参拝客向けの駐車場にてバスから降りて、参道を歩く。

 その先には『篠ノ之神社』と書かれた石碑と赤い鳥居が見えた。その鳥居を潜り本殿の脇を通り境内の敷地の奥に続く道を更に進んだ先に聳え立つ荘厳な表門を潜った先に広がっていたのは一言で言えば正に大豪邸であった。

 

 篠ノ之神社の敷地を遥かに上回る広大な敷地には数寄屋造りの建物が何棟も並び道場と思われる建物も複数見受けられた。純和風の上屋敷を彷彿させる光景が広がっている。

 

「な、何と言いますか……圧倒されますね」

 

「……マジでお前の母親、何モンだよ?」

 

「……敷居を跨ぐのも憚れるっスね。身分違いと言う意味で」

 

「ヤバい。ウチら完全に場違い過ぎるわ……‼︎」

 

 元々は一般市民。と言うかそれ以下の面々の集まりである8組は純和風の建築物かつ広大な敷地を誇る篠ノ之家の母屋へ続く道を歩きながら戦々恐々と言った面持ちでそう言う。

 

「……言うな。俺達だって1回くらいしか来た事無いんだ。気持ち的には君らと同意見だよ」

 

「殆ど覚えていないもんね。巫女服を着た事くらいしか覚えていないなぁ」

 

 何なら祖母や大祖母にも1回しか顔を合わせた事が無い。……向こうが覚えているかどうか怪しい。

 

「広けりゃ良いってモノじゃないよ。普通に暮らすんなら、無駄に広いと面倒臭い事が増えるだけだよ。わーくん達も実感するでしょ?」

 

「?」

 

「エストレヤ学院」

 

「「「あ、納得」」」

 

 単純明快な言葉(りゆう)を聞いて若菜達は否定意見は一切出なかった。アレ程、無駄に広いと言う言葉が似合う存在は無いだろう。普通に移動するのに1日以上掛かる学院なんて他に無いだろう。

 

「……そのエストレヤ学院ってどんだけ広いのでしょうか?」

 

「測った事は無いから何とも言えんが地球と同じくらいか?」

 

「……そ、想像出来ないよぉ」

 

 そして母屋の玄関口に辿り着く。外観から母屋自体もかなりの広さを思わせる。一行の先頭に立つ束が一息を吐き、背筋を伸ばす。大きく息を吸って吐く深呼吸した後、引き戸に手を伸ばした。

 

「……篠ノ之 束。ただいま、戻りました」

 

 そう扉を開いてハッキリとそう告げた。

 

「うん。お帰りなさい、束」

 

 即座に柔和な声音の声が出迎えた。母屋の玄関は其の儘、一家団欒が出来そうな程に広い。高級な旅館の玄関口並みの広大な広さを誇っている。

 その玄関にて一行を1人の女性が出迎えた。

 艶やかな滅紫色の長い髪をバレッタで纏めている。その顔立ちは束と良く似ており、束と姉妹なんじゃないかと思うくらいに若い。

 純和風の邸宅に相応しく和装。白衣に黒袴姿であるが例に漏れず豊満な胸が自己主張を止める気配が無い。

 

「祖母上。お久しゅう御座います」

 

「もう、お婆ちゃん呼びは止めなさいと以前にも言ったでしょう?若菜(■■■)。お母さんと呼びなさい」

 

 束の一歩、後ろにて若菜が挨拶の言葉を述べるもピシャリと訂正されてしまった。やはり、本人としてはまだお婆ちゃん呼びは容認出来ないようである。と言うか以前にも……いや、全く覚えていない。何時、言われたんだっただろうか?

 

「わーくん。お母さんがそう言ってるから、言い直すようにね。しぃちゃん達もだよ?」

 

 じゃないと、顔面が砕かれるよ?と言う警句も告げられる。対する束の母はニコニコと微笑んでいるだけである。

 

「分かりました。……(はかり)母上」

 

 若菜は束を母上と呼んでいる。同じ呼び方では混同してしまうだろう。故に名前を付けて呼ぶ事にした。シノア達もそれに倣う事にした。

 

「うん、よく出来ました。花丸あげちゃう」

 

 其処で玄関の外に居る面々を見て束の母は其方に視線を向ける。

 

「皆さんも、外で待ってないで入って入って」

 

 招く声を頂いた為に久里達、8組の面々や伽羅達も玄関へと入る。20人以上が一斉に入ってもこの玄関は充分過ぎる程余裕がある。

 

「初めましての方は初めまして。

 束の母、篠ノ之 (はかり)と申します」

 

 束の母、銓は微笑みながらそう名乗った。

 

「皆さん、東京から長旅だったでしょう? 先にお風呂を入っちゃって。その後に夕食にしましょう」

 

 銓は一同に先に風呂へ行くように告げたのだった。その間に夕食を用意するとの事であった。

 確かに8組の面々はバスにて座れた為に少しは回復したが『人体実験』の後遺症がまだ残っている。此処はお言葉に甘える事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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