束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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アレ?コレ死んでると思われてね?

 

 

「脱衣所の方に皆さんの着替えとタオルを用意しておいたから。ゆっくり浸かっていらっしゃい」

 

 母屋から渡り廊下を渡った先の離れの方に大浴場があると、銓が言う。此方の人数を把握している為に着替えも揃えていると言う。

 

「ウチには住み込みの門下生も多いけれど、今の時間帯は私達、家族しか使わないから気兼ねしなくて大丈夫。そして、なんと温泉を引いているの、温泉‼︎」

 

 先頭を歩く銓は客人が多くて何かと楽しそうだ。長い廊下の分岐点に差し掛かった、離れの建物へと続く渡り廊下と母屋の外回りの廊下の分岐点の位置で銓は立ち止まる。

 

「束と若菜達はちょっと話があるから、お風呂は後でね?」

 

 其処で久里達と別れて束と若菜達は銓に連れられて2間続きの間に入る。広い間取りの部屋の中央にて、座布団を用意しその上に束、クロエ、若菜、シノア、ユリエ、フィーリリアと銓が向かい合う形で腰を降ろした。双方共に正座である。

 

「先ずは改めてお帰りなさい。束に若菜達。今の今まで中々、連絡が取れなかったわね」

 

「にゃはは……。最近ずっと忙しくって……携帯とかメールとか全部着信拒否しててさ。何処からか漏れたのか私の電話番号に引っ切り無しに政府とかの迷惑電話やメールが来るから、それも理由かなぁ」

 

 銓はそう言うとホッと一息を吐く。何かを吐き出したくなる気持ちを抱いている。対する束は後頭部を描きながらそう弁明していた。

 まぁ、宇宙の彼方に行ったり魂抜けていたり研究に現を抜かしていたりと、電話とか取れる状況は余り無かった気がする。

 

「……箒は死んじゃっている(・・・・・・・・)し……貴方達だけ生きてて本当に良かったわ」

 

 銓はそう告げる。箒……それは束の実妹である篠ノ之 箒の事ではあるのだが……。銓から見れば箒は故人として捉えている。

 

『……なぁ、我が息子よ。箒と言えば叔母に当たるあの人だよな?』

 

 恐らくではあるが『重要人物保護プログラム』の影響だろう。

 束母上が『インフィニット・ストラトス』を開発して『重要人物保護プログラム』により篠ノ之一家が離散してしまった。此処までは良いか?

 

『ああ』

 

 (叔母上)は、1番最初にその対象にされたんだ。束母上の実妹、子供を先に抑えた方が楽だからな。で、重要人物保護の名目で名前も毎回変えられ住む場所も全国各地に盥回しにされるわ、実妹と言う事で政府の連中から質問と言う名の尋問の毎日……親から引き離されて見知らぬ大人に立て続けに尋問されちゃ荒れてしまっても仕方ないし……他人に対して警戒心を抱いてしまっても無理のない話だ。俺ならブチ切れ不可避で国家転覆を企むレベルで恨むな。

 

『特定されない様にし続けた結果。母親からは死んだとして諦めてしまったのか……』

 

 携帯やスマホ絡みも政府が管理している筈だ。連絡手段も監視されているのだろう。部外者からの連絡は遮断されている可能性が高い。そもそも叔母上の電話番号を知る術は無いし、警戒心が強い叔母上が他者と仲良くなれる可能性が低い。

 IS学園の生徒の個人情報も男性操縦者や代表候補生以外は公表されていない。そも、外部から詳細な情報を把握するのは難しい……なのに、それよりも難しい姫姉達の情報を掴めたのは何故だ? もしかしたら同姓同名の他人と思っていたりするのかも知れないな……悲しみの余り他人に娘を重ねてしまうケースもあり得るし。

 

 『篠ノ之 束の妹』と言われながらも身分としては一般生徒。その上に重要人物保護プログラムがある。生徒間の認識はあっても外部からは来賓者が偶然、目に掛ける以外の認知は出来ない筈だ。

 

 ただ、伽羅さんの『八つ当たり』の影響で叔母上の安否は確認出来ていない。文字通り落命してしまっていても不思議じゃねぇんだよな。……そうなると割と笑えない話になってくる。

 

「あの、お母さん。箒ちゃんは……生きているよ」

 

「……ほえ?」

 

 若菜がどう答えたモノか悩んでいると束がそう切り出した。束は自分の夢と天秤に掛けて実妹の箒の事を『赤の他人』と割り切っているが、家族の情くらいは持ち合わせている。

 そう割り切った理由が『自分達とは違うから、平穏な生活をして欲しい』と言う嫌われながらも実妹に向ける確かな親愛があった。

 

「……お母さんは分からなかったと思うけど、箒ちゃんは政府の連中によって何回も名前や戸籍を変更させられて彼方此方、盥回しにされていたんだ。それで、今年IS学園に政府の意向で入学させられた」

 

「束。それだけで充分よ。同姓同名の別人だと思って……その娘に箒を重ねていたのだけど」

 

 束の話を遮り銓は全て理解したと言わんばかりの顔になる。やっぱり同姓同名で本人は死亡したと思っていたんかい。

 

「銓母上。自分とシノアは確かにIS学園にて箒叔母上にご挨拶申し上げました。まず本人で間違いないかと」

 

 ただ……伽羅さんの『八つ当たり』の時、久里を救助する事で手一杯で叔母上の安否が確認出来てねぇ……。マジで死んでいたらどんな顔をすれば良いんだ?

 

 若菜の内心では割と真面目に内心は戦々恐々であった。伽羅が首謀者とは言え……そのトバッチリを喰らう可能性も否定は出来ない。

 

「ならお手紙を(したた)めて……家人の人達に迎えに行って貰わなきゃ。……私が行ければ良いのだけど柳ちゃんから『屋敷から出るな』って事付けされちゃってるから……」

 

 柳韻は銓が『重要人物保護プログラム』の毒牙に掛かるのを恐れたのだろう。本家でずっと匿い続ける事を選んだ。代わりに自身が政府に振り回される事を選択した。

 

「お父さんは?」

 

 束はそう訊ねる。

 

「柳ちゃんなら大丈夫。私はあの人を信じているから」

 

 その一言で銓が旦那をどう考えているか分かると言えよう。そして、銓の言葉で恐らく箒は『八つ当たり』から無事に生還したのだと悟り、若菜は内心、胸を撫で下ろした。と言うか伽羅さんの横暴に振り回される自分って一体……。

 

「それよりも長年の胸の痞えが取れて良かったぁ……。箒……生きてて良かった」

 

 銓としても箒は過去の情景の存在であったのだが、生存している事に安堵の息を漏らした。

 

『なぁ、IS学園が壊滅的状況だし……今なら我が息子の叔母をドサクサ紛れに離脱させる事が出来るんじゃねぇか?』

 

 確かにそうだが其処は本人の意思確認が必要だし……いや、其処は俺達が口を挟む余地は無いだろう。銓母上と箒叔母上の問題だ。

 養子と言えど部外者の俺達が関与する謂れは無い。……必要だと言われれば手を貸すつもりだ。

 

「さて……箒に会えるのは早くても2、3日後だし」

 

 パン、と銓は手を叩いて意識を目の前の子供達へと視線を向ける。箒の安否が鮮明になった所で心配の種は消えた。再会の時はその時に取っておく事にしたのだろう。

 

「束。夢は叶った?」

 

「うん。今も夢の先へと歩いているよ、わーくん達と一緒にね‼︎」

 

 銓は束の『夢』を知っていた。

 そして、祖母である咫も当然知っている。いいや、1番最初にその『夢』を肯定したのは他ならぬ咫である。箒が生まれる前、束は銓に連れられて何度も本家に遊びに来ていたお婆ちゃん子だった。

 

「そっかぁ、それは良かった。やっぱり、自分のやりたい事が出来るのは良い事よ」

 

 銓はそう言う。『夢』の全容は分からないが束の顔を見て満足そうに告げた後、次に若菜へと視線を向ける。

 

「……あの銓母上?」

 

「ふふ、見ただけ。さぁ、そろそろ貴方達もお風呂へ行ってらっしゃいな」

 

 柔和な笑みを浮かべる銓はそう言い、真面目な話は終わりと言わんばかりにお風呂へ行く様に促された。

 

 

 

 

 

 

 

 

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