束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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私が勝ったらデートして貰うわよ‼︎

 

 

 

「ふんふん、量子トンネルを通過中に新種の絶対天敵の襲撃を受けて、量子トンネルの壁をブチ破って逃亡した、と」

 

 エレベーターの中、外部に見える青空を見ながらシャルロットはメモを取っていく。

 

「若菜君。……普通に自殺行為を繰り返すのは些か不安しか感じられないよ。ボクの書く記事で知人の死亡案件を取り扱うのはゴメン被りたいんだけど」

 

『言われているぞ、我が息子』

 

 シャルロットからもドン引きされてしまった。一般常識で量子トンネルを通過中に意図的に滑落する行為はやっぱり自殺以外何物でも無い行為に等しい。

 

「その時は他に手が無かったんだよ。其の儘、量子トンネルを抜けてエストレヤの眼前……然も戦闘態勢に移行していない状態で持ち込む訳には行かないだろ……エストレヤの連中は戦闘民族ばかりだけど、後でエライ事になる」

 

「確かにキミの意見には一理はあるけれど、それでも危険過ぎる。それで、その絶対天敵の特徴とかは分かる? 場合によってはエストレヤの上層部に報告して対策や注意喚起の必要があるから」

 

『我が息子、写真データは取っておいたぞ♪ 感謝したまえよ』

 

 ガイアは量子トンネルを通過中に遭遇した絶対天敵の姿を捉えた写真データは保管していた様である。若菜は、空間ウィンドウを呼び出してその写真データを抽出してシャルロットの眼前に空間ウィンドウを移動させた。

 高速移動かつ高重力下であっても、ブレが無くその姿がハッキリと映し出されていた。

 

「これが……件の新種の絶対天敵、か」

 

「シャルロット。見た事があるか?」

 

「ううん、無い。蛍光色カラーの発光部位が印象的だね。トラディシオンを意識したような姿だ……。その姿の恩恵を与る為に進化した個体かも知れないね」

 

「シャルロットでも知らんとなると、本当に新種かも知れないな」

 

 多種多様の情報を持つシャルロットも未知だと断定する以上、目撃例が無い新種の絶対天敵と言う事になる。

 

「この件はボクから上層部の方に報告しておくよ。機会があれば撃滅作戦が発令されるだろうね」

 

「その場合は俺も呼べよ。……定期考査以外なら要請に応じるからよ」

 

 定時制と言えど考査で赤点を取るなんて無様な真似はしたくは無いからだ。

 

「あはは、それならエストレヤ学院に転入学すれば良いんじゃないかな? 学院の皆とは作戦で同席する事も多いし、キミ自身も不満点は無いんじゃないかな?」

 

「そうしたいのは山々なんだが、束博士の方針だからな」

 

「うーん、其処まで心配する事は無いと思うんだけどなぁ。まぁ、束博士がそう言う方針なら部外者のボクが口を挟むのはお門違いと言った所かな」

 

『我が息子よ。そろそろ、第6層に到着する様だぞ。我が母や、娘達が何処に居るのか確認したまえよ』

 

 軌道エレベーターから外を見やれば多数の建造物が眼下に見えて来た。そろそろ、到着する頃合と言えるだろう。

 

 惑星型コロニーエストレヤ、第6層。エストレヤに住む住民の殆どがこの第6層の市街区にて暮らしている。

 住宅街はもちろん、商業施設や学校、病院、娯楽施設など凡ゆるモノが揃っており、多種多様の種族が往来を闊歩する為、その種族の出身地に準じた環境が区域毎に整えられ第6層と言えど場所が変われば大きく環境が異なるのが最大の特徴であり、総じてエストレヤの中心地点とも呼べる階層である。

 

 

 

ヴェルメリオ

『エストレヤの第6層に着いた。今、何処に居るんだ?』

 

時計うさぎ

『あ、やっと来たねわーくん。ついさっき、軽食を済ませた所だよ。わーくんこそ、今何処?』

 

ヴェルメリオ

『666番星港の真下の……バルハーリ区だな。IS用の空路も整備されているから、移動の面では楽な場所ですね』

 

時計うさぎ

『じゃあ、バスティト区の学院前軌道エレベーター前の広場で待ってるよ。丁度、エストレヤ学院に要件があるからね』

 

ヴェルメリオ

『分かりました。直ぐに其方へ向かいます』

 

 

 

 

 バスティト区と言えばエストレヤ学院の中央総合玄関口直通の軌道エレベーターがある区域だ。言わば、その学院の正面玄関となる場所である。軌道エレベーター前と言うのはエストレヤの住民も待ち合わせ場所として良く使われる為、悪くないチョイスと言える。……学院に要件があると言うのは些か疑問符が浮かぶが今は考えまい。

 

「俺は今からバスティト区で、束博士達と合流するわ」

 

「うん、分かったよ。ボクは今からキミの取材内容を纏めると同時に上層部に報告しなきゃ行けないしね」

 

 軌道エレベーターから降りた後、シャルロットと別れて若菜は軌道エレベーターが連立するホールを横断して高速空路の搭乗口へと向かう。高速空路は一言で言えばIS版、高速道路に該当する。

 ISは陸海空宇問わず高い機動力を維持出来るが、皆が皆、四方八方に飛び回ると如何にシールドバリアがあるとは言え、それはそれで事故に発展しかねない。

 その為、基本的に第6層での高速飛行は高速空路上で行う様に法整備されている。この辺りは地球上の車の扱いと変わらない。

 

「バスティト区へ到達する路線は、と……時偶に路線図が変わる事があるからな」

 

 その前に経路確認の為に案内図の確認をしておく。

 軌道エレベーターのエントランスホールの壁際に展開されている大型空間ウィンドウ内に表示されている高速空路の案内図は中々、凄まじい密度を網羅していた。所々、バツ印が表示されているのは整備や工事中を示している。

 時偶とは言うが、実際の所は毎日(・・)何処かで何かしら問題が生じてルート変更、迂回を求められる事が多い。まぁ、エストレヤに1週間も住めば日常だと認識するだろうが。

 

「多少、迂回する事になりそうだが仕方あるまい」

 

 ルートを確認する。やはり幾つか迂回する必要がありそうだ。先にメッセージアプリで迂回が必要な為、少し遅れると一報を入れておき、IS用の搭乗口へと向かう。

 

 高速空路の合流口近辺は広大なピット形式となっている。高速空路内では完全展開して飛行する事になるのだが、出入口付近では衝突事故等を防ぐ為にピット形式が採用されている。

 それもその筈、何せ飛行しているのはISだ。シールドバリアの存在から地球上の高速道路の比では無い程の速度が出ている。

 合流する側としてもこの流れの中で割り込むのは中々難しい。其処で、ピット形式を導入し合流される側に『合流者アリ』と通告する事で合流し易くしている。

 

 搭乗口のピット内には入り口側には複数のカタパルトが設置されている。高速空路の規定上、一定以上の速度が無ければ後ろから追突されてしまう。その為、カタパルトで急発進するのである。

 

『3分後に合流可能なIS間距離区間が発生します』

 

 カタパルト横にある人工音声がそう告げる。3分後には安全に高速空路へ入れる事を意味している。つまり、今突入すれば距離が近くなり激突しかねない事を意味しており、現にカタパルト前には『通行禁止』と言う文字がデカデカと表示された赤い空間投影ウィンドウが道を封鎖する形で展開されている。

 待つ間に若菜は『フォーマルハウト』を展開し、脚部をカタパルトにセットして射出体勢を整える。丁度3分後、眼前の空間投影ウィンドウが『通行可能』と変更されて消滅。同時にカタパルトが起動して急加速して、前方へと勢いよく飛ばされ、高速空路へと飛び込んだ。

 

 高速空路は透明なチューブ内を通過する構造となっている。因みに通行線は三本線となっており、左側が追い越し線なのは地球上の高速道路と同様である。

 

「相変わらず皆、飛ばしてやがんな」

 

 高速空路内を飛行する中、若菜は呆れ交じりにそう呟く。人が搭乗する人型構造の機影も見られるが最近実用化が始まったと聞く車両型ISも走って居るのが見えるが、それでも洪水の様な速度が出ていた。

 前方を飛ぶISも相当な速度を出しており、徐々に距離を離されているのが分かる。中央線を行くIS達もかなりの速度を出しており、もはやジェットコースター並みであった。因みにこの路線の規定速度は時速120kだったりする。

 

『あーーー、見つけた‼︎』

 

「な、何だ⁉︎」

 

 ハイパーセンサーで後方を視認。すると、遥か後方から三本線を縫う様な機動で1機の機影が高速空路内を飛翔して来る光景が見えた。桜色を基盤とし万華繚乱を体現したかのような華やかな機体が猛スピードで迫って来た。装甲は然程、厚くは無く若菜と同じ機動力を重視した機体に見える。

 

「ありゃ、『イザル』⁉︎ ツー事は、藍里か‼︎」

 

『以前に見た時と機体構造とは違うな。改良したのか? にしても直ぐに分かるとは……』

 

 機体の大まかな特徴から、直ぐに展開者の名前が割れた。そう認めた直後に、当人が若菜と並走するまでの距離を詰めて来た。後、ガイアは脳内からジト目を向けられた。

 

「かーくーほー‼︎ さぁ、若菜‼︎ 今からバスティト区へ行くんでしょ? なら、何方が先に学院前軌道エレベーターに到着するか勝負よ‼︎ 私が勝ったらデートに付き合って貰うわね‼︎」

 

「いきなり過ぎて意味が分からないんですが⁉︎ つーか、俺の個人情報現在進行形で漏れ過ぎだろ‼︎」

 

 『イザル』をその身に纏った犀川 藍里は、現れるや否や、突然ぶっ飛んだ宣告を叩き付けて来た。桜色の髪を靡かせ、惜しみなく主張する豊満な胸を張りながらいきなり過ぎる発言に対して若菜はヤケ気味にツッコむしか無かった。

 

 

 拒否権?勿論、そんなモノは無い。

 

 

 

 

 





 唐突に始まるキャノンボール・ファスト(民間人巻き添え)。
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