束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
ほぼ全員が入浴を終えての夕食の時間。
篠ノ之本家の夕食は、格が違った。その一言に尽きる時間となった。
ほぼ記憶に乏しい若菜やシノア達もさる事ながら完全初見の8組+エストレヤ組は唖然とする他に無い光景が広がっていた。
もはや和風の城の謁見の間の様な構造の大広間。部屋の奥の上座の境目にはこの大広間の広さに相応しい巨大な御簾が掛けられている。
壁際には複数の襖が並び襖絵も鳳凰、青龍、白虎、玄武、霊亀、麒麟と言った荘厳な絵が描かれており宛ら高級和食店の宴会場もかくやと言う内装であった。
左右一列に並ぶ形で膳が並べられており最早、夕食と言うよりも宴会と言っても過言ではない光景が広がっている。
『……圧倒される他に無いな、この光景は』
銓が言うには篠ノ之本家の夕食は家族、家人、そして門下生が一同に取るとの事。其処に今回、自分達が加わっているとの事。
正面から向かって右側に8組や姫舞達の面々が座り、左側に銓や住み込みの門下生達が並んで座っている。銓から若菜達は左側に座らないかと言われたが『一応、8組の枠』と言い断り、右側に座る事にした。
それに倣ったのか本来ならばIS学園の生徒では無いユリエ達も一緒に此方側に座り夕食の時間が始まる。配膳された夕食……と言うか豪華絢爛な宴会のメニューと言う他に無い。普段からコレだと目眩がしそうだ。
「それにしても、
若菜はやや呆れた様子で篠ノ之本家(と言うか銓)が用意した着替えを身に纏う8組の面々を見てそう言う。
全員が白衣に緋袴と言う巫女装束をその身に纏っているからだ。と言うかどうやってサイズを把握したのか……。他にも稚児扱いのウィキッドはサイズがあってないのか袖が余りな上に袴の裾も短い(完全に可愛がってる)。
姫舞に至っては本人が規格外なのである部分が凄い事になってしまっており、ケーニヒスベルクは巫女装束を纏うと鬼人と言う他にない見た目となり、レーキュは兎に角黙れ。
総じて百花繚乱と言う他に無い華やかな光景が広がっていた。普段とは異なる装いとなれば目移りもしてしまう。かく言う若菜も無地の紬に黒袴と言う装いをしていた。
「み、巫女服なんて初めて着ましたね。そもそも和服自体が初めてですよ……。と言うか夕食の内容も高級な料亭レベルですよ……‼︎」
久里がやや緊張した面持ちで箸を動かしている。まぁ言いたい事は分からない訳では無い。IS学園に入学したとは言え8組の面々は元々は一般人……いや、それ以下の生活水準の者が殆どだ。尻込みするのも無理は無いだろう。
そもそも女尊男卑や女性権利団体が与えた反動や影響は想像以上に凡ゆる分野で大打撃を与えている。列挙すればキリが無い程にである。
「銓母上の無茶に付き合ってくれ……。あの人はコレが基準なんだろうから」
かく言う若菜も疲れた面持ちでそう返すしか無かった。何と言うかあの人は……ちょっとズレてる気がするからだ。いやもう束母上の母君なのだから発想が規格外と言う他——。
「…………( ^∀^)」
額に手を当てた時、視界の隅に銓の顔が見えた。変わらず微笑みを浮かべているだけなのだが、それが凄く怖かった。まるで見透かされているような気になった。
気恥ずかしさから不意に視線を逸らしてしまった。
「それよりも
そのタイミングで燐芽がそんな事を聞いて来た。流石にそれは漫画やアニメと言ったサブカルチャーの領域だろ。と言うか呼び方が変わっている気が……。
「あ、篠ノ之 銓さんから『他人行儀は良くないから、下の名前で呼んじゃいなさい』って。……余所余所しく見えたと」
あの人は変な事を吹き込んで来るなぁ。何を考えているのやら……。
「あの人は……。まぁ、吝かでは無いし俺は気にしないな。好きに呼ぶと良い。あと、その質問は些か漫画の見過ぎだと思うんだがなぁ」
『我が息子よ。あの魚みたいな絶対天敵をぶっ殺した後だと強ち間違いには見えんぞ……』
確かにあんな見た目の奴、妖怪の絵巻に乗ってても違和感無ぇな……。
「でも若菜君。お祓いとか呪いは確かにする所はするでしょ? 他にも色んな伝承もあるし、篠ノ之神社は『剣の巫女』の神社だしね」
「へぇ。巫女に刀か、サマになるな」
「其処にニンジャも加われば、見栄えが良くなるではありませぬか?」
「……神社、狐。もふもふしていると良いなぁ。居ないのぉ?」
あれよあれよと言う間に他の面々も此方に寄って来て口々に話に割り込んで来た。相変わらず騒がしい面々である。
「ええい分かったから、今は飯を食えよ‼︎ 人前だぞ⁉︎」
門下生達の前でこの光景は気恥ずかしさが勝る。歳上の者が多いとは言え、男1人に複数人の見目麗しい少女達が囲っている光景は……その、明らかに挑発しているとしか思えない。こと、女尊男卑の風潮ならばさもありなん。
「…………」チラリ
「「「………………」」」
ど、動じてねぇぇぇぇえ‼︎⁉︎ それはそれで怖ぇぇよ⁉︎ この光景を見て眦すら動かないってどうよ⁉︎ 明らかに突っ込むべきか叱責を飛ばす場面だろ⁉︎ 何、色即是空みたいな面持ちで箸を動かしてんだよ⁉︎
向かい側の一列に並ぶ門下生達は真顔で若菜達の光景を見ながら箸を進めている。その光景を見て若菜は返って恐怖した。幾らなんでも無反応だと返って怖かった。
「……こうして見ると
若菜とシノアは束の子供と言う関係で叔母にあたる箒とは極力接触しないようにしていた。理由は単純で箒と束の姉妹仲は余り宜しくない。変に負担を強いるのは若菜もシノアも本意では無かった。だが、近況は把握したかったので本人には大変申し訳無いのだが、浅葱と尸狼に箒の身辺を調べさせて貰っていた。
篠ノ之本家直系だと言うのに冷静さを欠き、尚且つ暴力を厭わない姿勢……。技術や戦闘意欲は兎も角、精神面は脆弱であると言わざるを得ない。……最も同情すべき点は多々ある。
兎も角、皆が元の場所に戻った為に食が進み家人の方達が膳を片付け始めた時、銓が若菜の元へと歩いて来る。
「若菜。この後、時間はあるかしら?」
「いえ、特にこれと言った急用はありませんが……」
ゴタゴタ故に今更ながらIS学園に残された量産機に搭載されているISコアの問題が頭に過ぎるが、その辺は伽羅や姫舞辺りが何とかするだろう。手が必要ならば言ってくる筈なので、無いと言う事は手が足りていると言う事だ。
「なら良かった。
「え?自分だけですか?」
「うん、何でも大事なお話らしいわ。若菜
何故だろう。物凄く嫌な予感がした。篠ノ之本家当主、篠ノ之 咫。若菜から見れば義理の大祖母上にあたる人物。高々、束の養子の自分1人を呼び出す事なんてあろうモノなのか?
コレが束やこの場に居ないが箒ならばまだ納得出来る。だが、養子かつほぼ篠ノ之の家系図に関連性が無い自分が呼び出される事は理解に苦しんだ。しかし、呼び出された以上は馳せ参じるしか道は無い。
「分かりました。直ぐに向かいましょう。大祖母上の御歳の事を考えた場合、悠長にする暇は無いでしょう」
銓から向かうべき場所を聞いた若菜は其の儘、咫が待つ部屋は向かうのだった。