束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「政府やIS委員会からは何と……?」
「……声明や命令等はまだ来ていない。上層部もこの様な事態は初めてだろうからな。議論は山積みだ、1つずつ片付けて行こう」
嘆いていても何も始まらない。気持ちを切り替えて会議を進める。
「先ず最初に事実上、IS学園は襲撃者共に不法占拠された状態だ。無論、その状態が継続するのはよろしく無いのは言うまでも無いだろう」
「IS学園に配備された量産型ISも事実上、置き去りの状態ですからね……」
「ISを欲する勢力は数多い。IS学園島の奪還は急務だ。しかしながらオルコットや凰の報告から、連中は自分が死ぬ事を全く恐れていない。死ぬ事を厭わない連中程、恐ろしいものは無い。
制圧とは言うが死に物狂いで襲って来るとなると……その『死』の感情を目の当たりにする事になる」
死にたく無いから抗うのだ。死ぬ事を前提で戦えるモノは頭のネジが吹き飛んでいると言って良いだろう。
勿論、その奪還作戦に従事する事になるのは専用機持ちと言った生徒達だ。……強烈な『死』の様相を見せ付けられて正気を保っていられるだろうか? そして守るべき生徒を前線に立たせる事が正しい事なのだろうか?
「……織斑先生。市民会館の職員からの通達事項があります」
「何かあったのか?」
「……市民会館側から『3日後までには退去して欲しい』と言われています。その……」
その教師は言い淀む。千冬にとっては言わんとしている事は容易に想像出来た。
「世間体が悪い……。と言う事だろう」
IS学園は元々、評判が頗る悪くIS業界以外からのウケが悪い。理由は言うまでも無く『女尊男卑』の温床であり、社会基盤を蝕む根源であるからだ。IS関係者は女尊男卑と言う認識が非常に強く、事実9割以上がそうであると言う統計もマスメディアによっては情報拡散された。
そしてIS学園は閉鎖的な空間であり外部の情報……特に世間体の印象は遮断されている傾向にある為に生徒達は一般社会ではどの様に見られているか知らない傾向にある。
「……はい、その通りです。IS学園=女尊男卑=女性と言う認識が強いらしくて、無関係な人もその様に見られており、職員達に対して在らぬ風評被害を被るとの事でして……」
男女間の摩擦も年々強まり少子化が加速し人口減少も著しく、破綻を迎える地域も現れ始めておりゴーストタウン化も進んでいる。
『恋愛恐怖症』と呼ばれる社会病理も蔓延しており、労働人口減少から国家経済衰退も懸念されており政府も危機感を募らせ対策を講ずるも刻み込まれた『女尊男卑』の印象を払拭する事は難しい。
束が『ライセンス制度』の設置を断行した為に女尊男卑の風潮が抑制されるかと思えばライセンスが取得出来ない鬱憤が爆発した事によりその行動が激化したのは皮肉でしか無い。
今も各地で横暴を繰り返し損害を与えており、自分達が知らない間に経済が滅茶苦茶になっているのかも知れない。
「…………我々でなくともその印象と言うのはそう簡単に覆せない、か」
市民会館がIS学園の避難先として提供している事実に対して民間人の反感を買っているのだ。当事者(特に千冬)には攻撃するのは無謀……ならばその支援者に矛先が向かうのは当然。
会館の管理人としては職員を守る為にも『切り捨てる』決断を下さねばならない。
「それ以外にも『何時、そのISが自分達に向くか分からない』とも言われました」
「何……?」
その言葉に千冬は思わず聞き返した。
「えっと……専用機持ちの生徒が居る以上、その暴力が職員や民間人に何時、飛んでくるか分からない。感情の赴くままに振り回される暴力は危険極まりない……と」
10代か其処らの感情的で意志薄弱な者が無限の暴力を手にしている。その暴力が民間人に向かないとは言い切れない。一般生徒の大半が自分のISが欲しいと切望しているのだが、その力を私利私欲に使わないとは限らない。
専用機持ちに関しても『断じてあり得ない』と言い切れないのが実情と言える。
冷静に考えれば当然だろう。簡単に街を更地にしてしまえる『暴力』を自由に使える人間が隣にいるのだ。抵抗する術を持たない人間から見れば恐怖以外、何物でも無い。
「早い話が二重の意味で出て行ってくれ、と言っている様なモノだな……。女尊男卑の影響で風当たりが益々、強くなっている」
「お、織斑先生‼︎」
その時、会議室へと飛び込んできた教師が千冬にある書類を見せた。その書類に目を通した千冬は思わず顔を青褪めた。その書類は政府からIS学園に対する通告書であったからだ。
「お、織斑先生……?」
千冬が書類を持つ手が震えているのを見かねて真耶がそう声を掛ける。
「…………遂に、見限られてしまったと言うのか」
千冬はそう呟いた。
通告書には『IS学園への助成金打ち切り』と言う簡素な文字が書かれていた。
IS学園は事実上の現在の体制での存続が不可能である事を示していた。IS学園の運営母体はIS委員会ではあるが、その運営資金は殆どが日本政府からの助成金で賄われている。その助成金が喪われると言う事は運営が不可能である事を意味する。
その簡素な一文の文字を見て千冬は全てを諦めたかの様に肩を落とした。
千冬が恐れていた時が遂に来てしまった。
IS学園が廃校が決定的となり一夏は政府直属のIS研究の機関に預けられる事となる。
その先で何があるのかは全く予想はできない。意見の中には過激な人体実験やら解剖やらの話が飛び交っており、女尊男卑と言う風潮柄……あり得ないと言いきれないのが実情であった。
8組の面々……いや、若菜の消息は不明だが束が何も言って来ない以上、無事である可能性が高い。ただ、束としては入学させる事に否定的であった。
「「「…………」」」
重たい沈黙を突き破る様に会議室の扉を叩く音が響いた。今度は何だと言った気持ちで千冬は力無くどうぞと声を掛けると同時に扉が開かれる。
「失礼する」
会議室に入室して来たのは1人の男性であった。特徴らしい特徴が思い浮かばない、そんな男性であった。
教員の一部は女尊男卑に染まっている為か『男』と言う概念を目の当たりにするなり、顔を顰める。
「ごきげんよう。IS学園教員の諸君」
「……冷やかしなら帰って頂きたい」
「つい今し方。学校法人のM&A……この場合はIS学園の事業譲渡に則りIS学園理事長及びIS委員会は私の買収に応じた」
「「「⁉︎」」」
その言葉に教員達は電撃が走った。つまりIS学園は
IS学園の買収……。日本政府が助成金を打ち切った以上、運営が困難となっていた矢先に
「……つ、つまり……?」
「私がIS学園の新たな
「ちょ、ちょっと待って⁉︎ IS学園が買収⁉︎」
教師の1人が机を叩きながら立ち上がる。その言葉に納得が行かない様である。
「言葉通りの意味だ。IS学園は日本政府から『治外法権の癖に自衛も出来ず、無駄金喰らいで学校法人としての価値が無い』と通告され価値が暴落したのでね。この機会に買い取らせて貰ったのだよ」
男性は淡々とそう告げる。今更何を言おうと組織のトップが変われば方針も変わる。つまり、教育内容は愚かカリキュラムの体制も変わる可能性もあるのだ。
「…………‼︎」
千冬にとってIS学園の危機に現れたこの男が救いの手となるか、それとも地獄への片道切符を切る存在となるか、まだ判断が付かなかった。