束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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じゃあ、お母さんに見せて♪

 

 

 チャットルームで非常に物騒極まりないリモート会議が行われている中、若菜は自分のアカウントだというのに第三者に強制退場させられてしまった。普通に考えて解せない事実であるが、嘆いても変わらなかった。

 

 チャットルームを閉じたタイミングで若菜の居た部屋に顔を出した家人から『銓御前が道場に来る様に』と言う伝言を受け取った。

 篠ノ之本家には複数の道場が併設されており住み込みの門下生も多く日夜、稽古に励んでいる。……最も若菜は篠ノ之流に関しては余り馴染みが薄いのではあるのだが。しかし、道場に来いとはコレは如何に……?考えても答えが出ない為に要請通り指定された道場へと向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之本家にある道場は豪邸の広さに対してそれ相応の広さを誇り一般的な道場よりも広い間取りを有している。その中央にて若菜と銓が相対する形で向かい合っていた。無論、お互い和装の白衣に袴と言う出立ちのままである。銓は腰に佩刀もしていた。拵の造りから真剣だと思われる。

 壁際には門下生が数十人程、道着姿でズラリと並んで座り、その中には巫女服姿の束とシノア達や久里達、姫舞達の姿も見えた。伽羅はまだ話中なのかこの場には居ない。

 そして道場の奥には篠ノ之家の恒例なのか御簾が掛けられておりその奥に影が見える。どうやら咫も照覧あせられるようである。

 

「あの……銓母上。これは一体……?」

 

 若菜は状況が分からない為に目の前に相対する銓にそう訊ねる。銓はニコニコと微笑みを絶やさず袖から出した両手を合わせて質問に答える。

 

「うふふ、稽古よ稽古。コレまで培ってきた若菜の実力。お母さんに見せてちょうだい?」

 

 

 

 困惑する若菜を他所に銓は衒いも無く話を進める。事の展開が分からないのは若菜だけでは無く壁際に座る8組と言った部外者の面々も同様であった。

 

「……あの話の展開に全くついて行けないっスね」

 

「あの銓って人。見た目がその……ふわふわしていて、とても武器とか扱った事があるようには見えませんね……」

 

「……だな。とても殺気とかそう言うのは無縁な人にしか見えねぇ」

 

 久里や燐芽、紫苑は銓の第一印象は『のんびり、ほんわか』と言った印象であり、似た様な雰囲気を持つが狂気を隠そうともしない伽羅とは打って変わり清純なイメージが付き纏う。こう言っては失礼だが刀とか握った事が無さそうな人に見える。

 

「分かってないなぁ、君達」

 

 その言葉に待ったを掛けたのは束であった。

 

「まぁ、見れば分かるよ。お母さんがどんだけヤバい(・・・)か」

 

 束が『ヤバい』と言わしめる。その理由を彼女達は目の当たりにする。

 

 

 

 

「…………」

 

 若菜は無言で『宵咲』を展開してその鋒を銓へと向ける。その大鋏を見て銓は笑みを崩さず興味津々に見やる。

 

「おおー、それが噂に聞く量子展開って言うアレね?」

 

「え、ええ。流石に完全展開すると、軒並み灰燼に帰しちゃうのでコレで勘弁してください」

 

 流石に『フォーマルハウト』をこの場で完全展開するのは憚れた。

 

「そう? なら此の儘、始めちゃいましょうか?」

 

 銓はそう宣言した刹那、若菜の視界から消えた(・・・)。直後、閃光が走るや否や強烈な衝撃と破砕音が響き渡る。

 衆目が気付けば若菜が立っていた筈の場所に銓が立っており、道場の天井には豪快な穴が開いておりその破壊の余波で木片がはらりはらりと降って来ていた。

 

 

 

「今、何が起こったと言うのでありますか……?」

 

「ただ分かるのは銓と言う人が攻撃した。そしてその攻撃で若菜さんが上空に吹き飛ばされた、と言う点のみです」

 

「……な、何も見えなかった」

 

 誰が見てもそんな感想しか浮かばないだろう。その疑問に答えたのが束であった。

 

「簡単な事だよ。お母さんは前方に踏み込んで抜刀した、同時にわーくんは反射的に防御したけれどお母さんの膂力の方が上だから其の儘、場外ホームランばりにぶっ飛ばされちゃっただけだよ」

 

 一瞬の出来事を束はちゃんと認識していた。そして若菜もその動きに対応したと言う事実だけが残った。抜刀は愚か納刀、そして吹き飛んだであろう若菜の姿も視認出来なかった。

 

「……あ、アレが見えたんて言うん⁉︎」

 

「わ、私達は全く分からなかったぜい……。篠ノ之博士は天才と言いますが視力も常人以上⁉︎」

 

 篠ノ之 束は頭脳も思考も常人の領域を超越している。故に『人類最高(レニユリオン)』と言う異名を送られている。そして、その肉体、果てや細胞単位に至るまでオーバースペックを誇る。束の身体能力も常人を優に上回り、その存在が衆目に晒されるや否や極秘で進められていた『究極の人類』を創造しようとした『プロジェクト・モザイカ』が一時は頓挫した程である。

 

 だが……1つ大きな疑問が残る。

 

 

 

「……おー痛ってぇ〜‼︎ IS学園のランドマークタワーにぶつかった時並の威力だった‼︎」

 

 数秒後に道場の天井を突き破り若菜が道場内に落下して来た。膝を突く形で板張りの道場の床に着地する。左腕で防いだのか衝撃の余波で垂れ下がる形で揺れている。その左腕の皮膚の節々から裂傷と衝撃により内部から骨が突き出したが故に白いモコモコが溢れている。

 若菜が再び立ち上がると同時に左腕がゴキ、ボキ、バキと言う奇怪な音を立てて無理矢理、動かす。シールドバリアで砕けた骨を無理矢理接合しての応急措置である。つーか、応急措置する程必要な稽古って一体……?

 

「うふふ、この程度(・・・・)で根をあげちゃダメよ?」

 

 若菜の身体的な異様な光景を目の当たりにしても銓は動じない。銓は納刀していた鞘から太刀を抜いて見せる。ゆっくりではあるが、若菜から見れば隙らしい隙が見えなかった。

 

「……まぁ、単純に考えればその通りですね。束母上のオーバースペックは銓母上譲りと言う事を」

 

 遺伝。

 篠ノ之 束はその天才的な頭脳から突然変異だと思われているが遺伝元は言うまでもなく実母の篠ノ之 銓である。

 であるならば、銓母上も細胞単位でオーバースペックであると考えるのが自然であり、大元である銓は束と同等以上に細胞単位でオーバースペックであるのだ。

 

「……ふふふ。さ、遠慮なく斬り込んで来なさい。緩んでいるとさっきみたいに紙屑の様に吹き飛んで行ってしまうわよ?」

 

「その様ですね。では、全力で参ります、銓母上‼︎」

 

「はい、じゃあおいで‼︎」

 

 次に仕掛けたのは若菜の方であった。瞬時に銓の眼前へと肉薄し宵咲の刃を銓の喉元へ目掛けて襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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