束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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ちゃんと叱る時は叱らないと

 

 

 

 エストレヤ学院直通の軌道エレベーター前広場。

 

「若菜君。無事にエストレヤに到着出来たみたいですね。その……また遅刻するみたいですけど」

 

「エストレヤの高速空路って四六時中、事故って封鎖なり修理工事なりで頻繁にルート変更を余儀なくされちゃうのよね。ISを自動車とかの代わりにするには無茶な真似なのかもね」

 

「エストレヤの人達は戦闘民族みたいなモノだからテキトーな事故とかで済んでるけど、地球じゃ滅茶苦茶騒ぎ出すからね〜(ーωー)」

 

 待ち合わせ場所として良く利用される広場の街路樹下に設けられたベンチに座りながら若菜の到着を待つ束一行。

 高速空路は絶対天敵に関する作戦任務に匹敵出来ない程の危険地帯だ。寧ろ、絶対天敵との戦闘行為の方が楽だと言われる始末だ。

 

「普通はそうなるんスけどね。若菜サン、またどっかで面倒事に巻き込まれてなきゃ良いんスけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かーくーほー‼︎ さぁ、若菜‼︎ 今からバスティト区へ行くんでしょ? なら、何方が先に学院前軌道エレベーターに到着するか勝負よ‼︎ 私が勝ったらデートに付き合って貰うわね‼︎」

 

「いきなり過ぎて意味が分からないんですが⁉︎ つーか、俺の個人情報現在進行形で漏れ過ぎだろ‼︎」

 

 藍里はそう一方的に告げるや否や、瞬時加速で前方へと飛んで行ってしまう。高速空路はパイプ状の通路となっている為、出入口以外での途中離脱は出来ない(無理矢理天井や床とかをブチ抜く案もあるが、後が怖い)。

 

『我が息子、もう付き合うしか無いぞ。あの娘よりも先にエストレヤ学院前の軌道エレベーターに着けば良いのだからな‼︎』

 

「簡単に言ってくれるな‼︎」

 

 なし崩しに始まってしまった機動力競争の勝負。文句を言おうにも当人は遥か先へ先行してしまっている。こうなれば付き合ってやるしか無いだろう。

 若菜は背部に展開されていた非固定一対の翼が三方向に展開、『撃腕翼』と呼ばれる翼を広げる。その翼の爪先が後方に向け一際、強く赫く煌めく量子が溢れ出して行く。側から見れば赫耀の翼を彷彿させる。

 最も後続の人々から見れば前方の視認性は最悪と言えるがそんな事、構って居る余裕は無い。赫いエネルギーを爪先から噴射させ、音を置き去りにして急加速。前方を飛ぶISの間を縫うかの如く立体機動で飛び抜けて行く。

 

『若菜君にしては、反応が遅過ぎるわよ⁉︎』

 

『何時も唐突過ぎるんだよ‼︎』

 

 猛スピードで猛追する若菜。前方の遥か先を征く藍里は秘匿通信で若菜がやっと来た事に気付いていた。

 

『最高速は若菜君がブッチ切りの1番だけど危害を加えてはならない遮蔽物が多い場所だと、そうとは言えないわよね?』

 

 若菜の『フォーマルハウト』は現存するISの中で最高位に位置する機動力を有する。だが、その機動力を有するが故に飛翔の際、その余波で周囲のモノを流星の如く破壊しながら突き進む傾向にならざるを得ず、高速空路と言った民間人が多い場所では危険極まりない。

 

『やれやれ、キミの知人はどうしてこうも血の気が多いのやら……キミはアレか? 厄介な女にばかり引っ掛ける病気にでも罹患しているのか?』

 

『喧しい。それよりも来るか‼︎』

 

『我が息子、質量化した量子壁が来るぞ‼︎』

 

 前方を征く藍里は飛翔しながら槍状の得物を右手に展開。それを引き摺る形で持つと同時にその毛筆の様な鋒から桜色の量子が溢れ出し、それを振るった。まるでこの世界が彼女の思い描くキャンパスであるが如く『描く』。

 彼女の槍に振るわれる形で描かれた量子は質量を帯びて『壁』となって、高速空路の障害物となって行手を阻んで来た。当然、高速空路を征くISの間を縫う様に追い越す必要がある為にその隙間を潰すかの様に配置される。

 

『悪手を打ったな。藍里‼︎』

 

 だが、若菜は動じない。逆に好機と捉えたのだ。量子壁の存在により前方を征く部外者のISは量子壁を避ける為に高度は制限された。隙間を縫う様に飛ぶ必要があったのは、高速道路と違い高速空路はパイプ状で高度の概念があったからだ。ISの高度が平坦化した今、隙間を縫う必要が無くなる。

 

『速度は重さ……。高速空路は殆どが直進の通路だ。最高速に達したお前を阻むモノなど有りはしない』

 

 若菜は高速空路の背面ギリギリに高度を落とすや否や、撃腕翼の爪先から放出される赫い量子の量が爆発的に増加。

 

 刹那、世界が爆ぜる。鼓膜を粉砕するかの様な轟音が高速空路内で轟き渡り、若菜が駆る『フォーマルハウト』が赫耀の尾を引きながら藍里が設置した量子壁を文字通り正面突破で粉砕しながら猛スピードで飛翔する。

 

『ああ⁉︎ 若菜君、壁を避けるような思考回路を持っていなかった‼︎』

 

 その光景を見るや否や、一瞬で追い抜かれた藍里は負けじと急加速して若菜の後を追走する。

 

『我が息子‼︎ 藍里を抜けた‼︎ 出力を落とせ‼︎ 他のISを轢き融かしてしまうぞ‼︎』

 

『藍里も猛追してんだよ‼︎』

 

 超高速で飛翔する物体は断熱圧縮により高熱を帯びる。

 今の若菜に追突されればシールドバリア越しでも火傷は確実だろう。その速度を維持しながら若菜は高速空路を征くISの群の隙間を縫うように交わし続けながら飛翔して行く。

 高速空路を飛行する他のISからすれば赫い軌跡が一瞬にしか捉えきれず何が起きたのか理解出来ない光景が目撃される事だろう。

 

『若菜‼︎ この速度だとあと、20秒後にバスティト区の学院軌道エレベーター前の搭乗出入り口に到達するぞ‼︎ 速度を落とせ‼︎』

 

『おお、通り過ぎる‼︎』

 

 ガイアに言われて出力を減衰させ、高速空路の出口へと進入する為の規定速度へと落としていく。この速度で突っ込めば、搭乗ピットを文字通り破壊ならぬ融解させてしまう。

 規定速度まで落とし出口路線へと侵入し減衰通路の1つへと進入、其の儘着地した。

 断熱圧縮効果により、撃腕翼は高熱を帯びており赫赫か燦爛たる様相を見せて居る。

 

『……コレ、後が凄く怖いな』

 

「ああ……言い訳が何処まで通用するか、心底不安になって来た」

 

 藍里より先に到着したとは言え、高速空路自体に何かしら問題が生じた事は想像に難くは無いだろう。

 因みに後で発覚する事ではあるが2人が通行した高速空路の路線は、主に若菜が引き起こした断熱圧縮の余波により高速空路の下部が融解し、非常に長い穴が発生していたと言う事実が判明し、修理工事が実施されるのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わーくん。あーちゃん。……言い訳はあるかな?デートの申し込み勝負の余波で高速空路の一区画を熔解(・・)させた件について……‼︎」

 

 その後、学院直通の軌道エレベーター前広場にて、飛び切りの笑顔を浮かべた束が、眼前に居る若菜と藍里に対して事の顛末を問い質していた。

 

「……」

 

「……」

 

 言い訳も何も事実、その通りであった。そして束がこの様な形で笑って居る時は大体が怒っている時であると、若菜は知っていた。

 

「幸い人的被害は出なかったけど、高速空路自体に被害は及んでいるんだよ? エストレヤの人達は戦闘民族だから大した問題にならないだろうけど‼︎ それでも、ダメなモノはダメ‼︎

 吹っかけたあーちゃんも悪いけど、わーくんもノリノリで乗っからない‼︎」

 

 ウガーと言う形で束は天下の往来で若菜と藍里に対してお説教をしていた。ダメな事をしたら叱る時はちゃんと叱る。それが教育と言うモノである。

 

「高速空路では規定及び制限速度はちゃんと守る‼︎ 高速空路でストリートレースはしない‼︎ ただでさえ、わーくんの『フォーマルハウト』は非常に扱いが難しい機体なんだから‼︎」

 

 当たり前の事を当たり前の様に言う。当然の事である。

 

「と言う訳で、2人には罰を与えます‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

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