束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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入学猶予とか聞いた事が無いな……

 

 

 

「と言う訳で、2人には罰を与えます‼︎」

 

 説教は長ったらしいと言うのは定説。しかし、束は言いたい事は簡潔に済ませて結論を出し、金属音が聞こえた。

 

「へ?」

 

 気付けば若菜の左手首と藍里の右手首を繋ぐ形で手錠が掛けられていた。鈍く光る金属の輪。……エストレヤ製なので地球で製造された手錠を遥かに凌ぐ硬度と靱性を誇る為、物理的に破壊するのは無謀と考えて良い。

 

「2人には3日間の間、共同生活をして貰うからね‼︎ あ、お風呂とかも一緒に入って貰うから」

 

 わー、パチパチと言う表現が付随しそうな位、イイ笑顔で束は咲っていた。

 

「は、母上⁉︎ ま、まさか、母上もグルだったってのかァァァァァァァ‼︎⁉︎」

 

「まっさか〜♪ あ、それからエストレヤの大総統兼社長兼管理者から『バルハーリ区とバスティト区間の高速空路はIS飛行による断熱圧縮の老朽化が著しいから、市民に対して工事に対する正当な口実が欲しかった』って」

 

「何処から何処までがグルなんですかッ⁉︎ 俺1人を嵌める為だけに何人巻き込んでいるんですかッ‼︎ 正当な口実って何スか⁉︎」

 

 そう考えるとベルファストやシャルロット辺りもグルなんじゃ無いかと考えてしまう。いや、ベルファストは途中からの参加でシャルロットは絶対に時間調整として都合良く現れた感が否めない。今となっては後の祭りだが。

 

「別に減るモノじゃないと思うんだけどなぁ〜。エストレヤは重婚オッケーだしね」

 

「そう言う問題⁉︎」

 

「あーちゃんも良いよね〜?」

 

「ええ、この形は予想外だったけど……コレはコレで新しいインスピレーションが浮かびそうだし、悪くないわ」

 

「はぁ……。釈然とはしないが、もう好きにしろ」

 

 藍里も藍里でノリ気だし……もう此処は折れるしか無いだろう。本人がそのつもりならば、もう何も言う事は無い。

 

「それじゃあ、要件を済ませちゃおっか‼︎」

 

 説教は終わり、一行は眼前のエストレヤ学院直通の軌道エレベーターに乗り込み、第7層を通り過ぎて第8層、学院区画へと向かう。

 

「母上。3日間と言う事はまさかとは思いますが……」

 

「うん。あーちゃん、1回地球の芸術を見てみたいって言っていたからね〜。それに折角だから、わーくんを添えてデート仕立てにしてみたんだよ〜。あーちゃんもわーくんとデートしたかったとの事と、エストレヤの方の利害の一致、かな〜?」

 

 成程、分からん。

 

「理由は理解しましたが経緯が無茶苦茶過ぎます。他にやり方はあったでしょう?」

 

「普通だとつまらないんだもん。それにわーくんの慌てる所が見たかったから」

 

 成程、理解した。母上の何時もの無茶振りだと言う事だ。

 

『とは言え、断るつもりは無いだろ? 我が息子よ。別にそのアーティスト娘は嫌いでは無かろう?』

 

『普通に言ってくれりゃ良いのに……こんな突拍子もない変化球を全力ストレートで投げて来ないでくれ。つい本気になってしまったではないか……いや、ムキになった俺も悪いか』

 

「あ、あはは……色々重なって纏めて処理した。と言う流れで良いんですね、お母様」

 

「うんっ。それに平和って言うのは誰も彼もが望んでいる世界とも言うけれど、時にはトラブルに遭遇した方が生きている実感を持てるモノだよ」

 

「……エストレヤの場合は絶対天敵に加えて住民自体がゲテモノ揃いだから、逆に平和が恋しい筈だと思うんスけどね」

 

 地球人の感覚と異星人の感覚はまた違うと言う事なのだろう。

 

「……若菜。変に襲うんじゃないわよ?」

 

「逆に襲われそうな気がするんだが……」

 

『キミは女の子に襲撃を喰らってばっかだな……我が息子』

 

 ユリエから釘を刺されるが、刺す相手を間違えて居る気がしなくも無いのだが……あの年齢でその胸は凶悪な大きさだ。対してユリエは……殺気を感じたのでこの件に言及するのは止めて置こう。命の保障が出来ない。

 

「んで、母上。学院に要件があるとは言っていましたが……その内容は?」

 

 この話題が続くと胃が持ちそうに無い為、若菜は話題を逸らす形で束が学院に要件があると言っていた件に関して訊ねる事にした。

 

「ちょっと前にちーちゃんから電話があってね」

 

 

 電話と言えば少し前に束が苛立ちを隠さない状態で知人と言う織斑 千冬なる人物と通話していたのを思い出す。話の内容を要約すれば、IS学園の入学絡みの案件だった。

 

 去年にもシノアとユリエ、フィーリリアの件でその人物と揉めていた事を思い出す。

 IS学園は言うまでも無いがIS専科を標榜に掲げる都合上、それ以外の就職、進学に関して物凄く不利な学校だ。それは説明は不要なレベルに達している為に割愛させて頂く。

 

 揉めた最大の理由は、3人をIS学園への入学願であった。

 織斑 千冬から見れば偏屈で性格にかなりの問題の束の養女であるシノア達は『IS適性かつ、ISライセンスの持ち専用機を有している』と見えているらしい。

 その件に関して束は頑として拒絶した。その理由はIS学園の特殊性にある。

 

 

 

 

 IS学園は『IS』と言う存在を扱うにあたり私立や国立、公立とは訳が変わってくる。『IS』が1つあるか無いかで、国家間のパワーバランスが揺らぐのは言うまでも無い。それは若菜を始めとしたこの場に居る面々が重々承知している事だ。

 ISライセンス制の導入により女尊男卑の抑制に効果があったかと言われれば逆にカリギュラ効果により悪化したと言わざるを得ず、地球上でISの核たるコアを製造出来るのは束のみ。その束が地球上で新たにコアを製造する気が無い以上、手に入れる手段は非常に限られて来る。

 

 その情勢の中、IS学園に配備されている量産機のISのコアはIS操縦者の訓練と言う名目の為、ライセンスが無くとも起動、展開が可能となっている。つまる所、本来ならばISを扱うにはライセンスが必要な所、唯一IS学園に配備されているISのみ、ライセンスを持たずとも適性があれば誰でもISに搭乗出来るのである。

 

 ISライセンスの取得率は極めて低く、その試験も1年に1回しかチャンスは無い。今年に至ってはたったの1人しか合格者がいなかった。何万人も受けてたった1人しかライセンスを取得する事が出来なかった。膨れ上がり続ける女尊男卑思想は留まる事を知らず、ISを諦めきれない者も多い。

 そうでなくてもISを軍事利用したい組織は国家を始めとして数多くある。ライセンスの導入で国家代表や代表候補生であろうとも問答無用で落とされISに搭乗出来なくなる中、ISに頼って来た以上、軍事力や防衛力の低下を防ぎたい思惑は水面下で常々起きている。

 

 ISコアがあっても束が導入したライセンスプログラムによりISに乗りたくてもライセンス取得が非常に難しく尚且つ、その人員はとても足りない。一部の国家はライセンスのプログラムの解除を試みるも、コア自体がブラックボックスかつその不正アクセスは束に筒抜けであった為にその国の所有するISコアは永劫強制停止と言う無慈悲な執行処置が取られた。

 

 そんな中でIS学園のISコアはライセンスが無くとも従来のように適性があれば誰でも使用出来る……その事実故にIS学園はライセンス導入以前よりも様々な組織から狙われ易くなり学園防衛に注力しなければならなくなった。

 

 IS学園の防衛には代表候補生を始めとした『専用機持ち』と呼ばれる即応可能な戦力が充てられる。教師ではなく生徒に学園を守らせているのが実情である。

 量産機より専用機の方が高性能である事が多く、更に即座に対応出来ると言う理由が付随している。

 千冬が束にシノア達のIS学園への入学を打診したのは正にそれが理由であった。その件に関して束は激怒し、突っ撥ねたとの事。

 

 そして、数日前にも似た理由で再び打診して来たのだと言う。今回は男性操縦者の発覚により、若菜の入学打診(それを行えば若菜が男性操縦者であると露呈してしまう)をして来たのだと言う。

 

「ぶっちゃけるとIS学園に在籍しても百害しか無いのが実情な上に、絶対に大人達……主に弁えないIS委員会に振り回されるのがオチだよ」

 

 束はIS絡みで醜い主権争いを直に見て来た。ISの管理業務を自称するIS委員会が最もたる姿だ。

 

「更にぶっちゃけると男性操縦者が2人居ると、必ず比較対象として見られるだろうね。わーくんがちーちゃんの弟に負けるとは考えては居ないけれど、地球の猿人間共は理解出来ない行動ばかり起こすからね。何かあってからじゃ遅いから直ぐに動ける布石を打っておく。

 予めエストレヤ学院に転入手続をしておいて在籍させておくんだよ。そうしておけば、後々のゴタゴタの頻度を減らせるでしょ?」

 

 地球で何か不都合が起きて地球で生活するのが困難であると判断した場合、本来ならば若菜達(若菜が定時制の為、1年遅れる)が卒業後にエストレヤへ移住する予定を繰り上げて、即座にエストレヤへ移住する計画を束は企てた。

 

「流石に往復通学は無茶では?量子トンネルを経由したとしても、かなりしんどいですよ?」

 

 双方に在籍するならば、やはり通学しておくべきだろうと若菜は渋面を浮かべる。

 

「その件も含めて要相談しておくから大丈夫、大丈夫」

 

「藍里。そう言うのは通用するのか? 撃滅作戦で学院生と共闘する事が多いが、その学院の校則関連には殆どノータッチだからな」

 

 其処でエストレヤの学院生である藍里に質問を投げた。やはり分からない事は当該者に訊ねるのが1番だ。

 

「問題無いと思うわよ。エストレヤ学院って校則は結構ユルいし、様々な事情持ちの人も多いわ。入学猶予って形で予め手続を済ませるケースもあるわ。話を聞く限り貴方達の場合は、正に入学猶予に該当するかな」

 

「成程。じゃあ、大丈夫か……」

 

「それに、若菜君達と一緒に行動出来る機会が増えるのは素直に嬉しいわ。何なら今日から転入して欲しいくらいね。絵のモデルになって欲しいし、衣装依頼が溜まっているし」

 

「急に言われても困る」

 

 そのタイミングで軌道エレベーターが目的地である第8層、エストレヤ学院が存在する学院区画へと到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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