束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「クーちゃん、ただいまーー\(≧∇≦)/」
「伽羅さん。留守番、ありがとう御座います。あ、コレはお土産です」
帰りの量子トンネルでは何事も無く通過出来、無事に地球へと帰星出来た。自分達が留守にしていた間、クロエと伽羅の2人にラビット・ラボの留守番を頼んでいた。
「お帰りなさいませ、束様。それに皆さんも」
「うふふ、ありがとう。それと……藍里もいらっしゃい。元気そうで何よりだね」
「伽羅
「そっかそっか。なら安心だね……所で」
伽羅はエストレヤ学院の教師の1人である。束とその子供達である若菜達は何れはエストレヤへ移住する手筈だ。地球とは勝手が違うと言う事で現在は束のラボに住み込みで若菜達の家庭教師を請け負っているのである。肉体言語込みで。
「どうして2人は手錠で繋がっているの?」
お土産を受け取った伽羅は当然の疑問を若菜にぶつける。若菜と藍里の2人の手首に手錠で繋がっているからだ。
「母上や藍里、後それから閣下に嵌められたんだよ。絶対、シャルロットやベルファスト、羽黒とかもグルだろ……」
「ふふ、まーた君の性格を利用されて良いようにされたって訳だね。そろそろ、良い加減に途中で気付いた方が良いんじゃないかな?」
「……退路を完全に塞がれちゃあ、どうしようも無いっスよ」
「策士だなぁ……。藍里、貴方は地球は初めてだろうから後で最低限の事を教えておくね」
「はい、お願いします」
伽羅と若菜が明るい話題に花を咲かせている頃。束とクロエの方では。
「束様。束様方が留守の間に織斑 千冬から連絡があり折り返し連絡をしますと通達致しました」
「」
その言葉を聞いて束は先程の無邪気な表情から能面のような無表情へと変貌を遂げる。
「ちーちゃんから? この前、くだらない事を言い出してきたばっかりだと言うのに今度は何だろうね?」
「私は存じておりません。彼女も中間管理職故に板挟みとなっているのでしょう」
「ふーん。まぁ良いや。わーくん」
「何ですか、母上」
「束さん、ちょっとちーちゃんと電話して来るから〜、電話中だったら晩御飯が出来たタイミングで先に食べてて」
「あー、長電話になるかも知れないんですね。分かりました」
「若菜君と私は今繋がっているから、共同作業って事ね‼︎」
「言い方⁉︎ 誤解を招きそうなんだが⁉︎」
「誤解されても良いんじゃない?」
若菜がギャーギャー騒いでいる様子を尻目に束はラボの奥、研究区の方に赴き、その一室へと入り通話を開いた。
『もしもし?』
「随分と短いスパンで連絡してきたね、ちーちゃん?」
『……! 束……‼︎』
コールするとすぐに通話が開通した。通話越しの息遣いから向こうは今か今かと待ち侘びていた様子が窺える。
「それで? この天才の束さんに何の用かな? ちーちゃんは今、とっても忙しい時期じゃなぁい? 無駄金をふんだんに使って使い物にならなくなる新入生を迎え入れる為の準備って奴が、さ?」
1人のIS操縦者を育成するのに掛かる費用は最低でも1億円は掛かる。専用機が与えられる程となると5億円は掛かってくると言われている。
『実はだな……』
千冬が連絡した経緯を説明する。それを束は無言で聞き入れた。
「ふーん。IS学園の実績が振るわない事が理由で存亡の危機に立たされているんだ。
ぶっちゃけさぁ……ちーちゃん達、教員の不手際の帰路だよね? IS学園の教師の教育方針が余りにも役に立たない事の証明じゃん」
束は容赦無い言葉で現実を直視させる。生徒の未来を導く事が出来ない教師はハッキリ言って無能でしかない。
『……IS学園の助成金の継続の為の条件として次期年度……もう今年度になるか。今年度の卒業者と在校生合わせてライセンス所持者が15人以上である事が求められているんだ』
早い話が正式なIS操縦者である事を証明しろと言う要求を突き付けられている訳だ。IS学園でISに乗れるとは言え、訓練の名目でしかない。卒業しライセンスが取得出来なければIS操縦者とは言えないのだ。
「ライセンスの試験対策はちゃんとしているの? していてあのザマを晒し続けているんじゃ、根本的に見直すべきだと束さんは思うなぁ?」
『している。が……現実としては全く如実に至れていないのが現状だ』
「試験問題の簡易化はしないよ。それじゃあ、試験の意味が無いじゃん」
不正は認めない。
そもそも合格出来ないのは本人の責任だ。この場でぶっちゃけて言わせて貰うと、IS学園で使われている攻撃力が高そうな鈍器の参考書……束から見ればアレは『殆ど役に立たない』と断言しよう。
束が想定している本来の運用方法に擦りこそはしているが殆ど盛大な勘違いに基づいた内容だ。そんなモノを試験対策に使っても全く役に立たない。
『……試験問題を作っているのはお前だからな。そんな要求しても突っ撥ねられるのは分かり切っている』
「……ちーちゃんがIS学園の存続に固執している理由は分かるよ。だって、ちーちゃん。IS学園の国際規約の恩恵が無けりゃ、居場所が無くなるもんね〜。
今までは『ISの第一人者、そして世界最強と言う称号』のネームバリューのお陰で
でも、IS学園以外だと、ちーちゃん自身のスペックやIS業界関係者と言う肩書が邪魔して一般就職の妨げとなってしまう。ならば、自衛隊や軍の教官として配属?アハハハハッ、それは避けたいよね? ドイツの時は良かったけど、今はそうとは言い切れない」
束は千冬の出生を知っている。だからこそ、こう言えるのだ。
「
『……‼︎』
束は敢えて言わない。そもそも千冬と一夏が今日まで生きていられる確率は0に近かった。にも関わらず今日も生きている……。それは『意図』が張られているからに他ならない。
千冬は恐らく弟には『両親は蒸発した』と説明しているが、それだけで生きていられる程、社会生活と言うのは甘くは無い。
それほど『無戸籍』と言うのは不便なのだ。
「……それで?ちーちゃんはどうしたいの?」
『束。頼む、現状のままではIS学園の存続は絶望的だ。手を、貸してはくれないか?』
千冬本人も自分達だけで幾ら手を尽くそうと未来は変わらないと言う自覚があるのだろう。
教育方針の転換、した所で付け焼き刃にしかならない。
生徒達の意識改革、これは千冬もかねてから実施はしているが骨が折れる上に成果は薄いと言う認識だ。
「じゃないと、IS学園に入学させた弟も何処かの研究所で保護兼生活を余儀なくされるもんね〜。ちーちゃんはそれが露骨に嫌って顔をしているのが直接見なくても分かるよ。確実に
『……ああ、そうだろうな。だから』
千冬は苦々しい声音をしている。結末は見えているからだ。
「……束さんの答えとしてはノーかな〜。だってさぁ、自業自得でしょ? 女尊男卑を野放し、信奉して、人心を滅茶苦茶にしたのは巡り巡って先達であるちーちゃん達だよ? 今のちーちゃん達は道連れを増やす為に悪足掻きをしているようにしか見えないな」
『…………束。今年、お前の妹も政府の指示でIS学園へ入学する手筈になっている』
ほら、悪足掻きをしているようにしか見えないよ。人の身内を人質に取る行為は、褒められたモノじゃないな。千冬本人がやった訳では無いが。
「……箒ちゃん、か」
束はその名前を反芻する。篠ノ之 箒。束の実妹である。束が『インフィニット・ストラトス』を開発してから、その関係は大いに拗れてしまい、疎遠同然の関係。
尚、義理の形ではあるが若菜達から見れば彼女は叔母に当たる人物である。
「……きっと、私の事を嫌っているだろうね。酷く……荒れていたらしいし」
激動の中で箒を始めとして父母には多大な迷惑を掛けている自覚は束にはあった。
去年、箒が中学の剣道全国大会で優勝した姿を若菜達と一緒に武道館の観客席で見ていた。優勝し表彰されている時の彼女の顔は……その束から見れば悲しくなった事を今でも覚えている。……本当は声の1つくらいは掛けたかったが、躊躇われて其の儘、帰ってしまった。
「……箒ちゃんはIS絡みの知識は何も無いよ。殆ど絶縁に近いからね。私は自分の夢を進む事を決めたから……合わせる顔も無い。既に修復不可能な亀裂を入れてしまったから、彼女とは……赤の他人だよ」
彼女との関係はコレが最善。赤の他人ではあれば、被害はある程度は抑えられるだろう。それ以前に、箒はメンタル面ではかなり脆く、束の想定する形でのIS運用では耐え切れない。
『…………』
千冬にとっては隠し球だっただろうが、それは不発に終わった。