束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
鹿児島県の地方都市のとある高校には定時制が設けられている。
定時制と言えば夜間のイメージが根強いが昼間の定時制も存在している、所謂午前中のみで終了する教育過程のカリキュラムも存在する。
IS開発者である篠ノ之 束が国連IS議会に殴り込み大暴れした結果、IS関係者には須くライセンス制が導入されライセンスが持てない為に女尊男卑の風潮が抑制されていると言えど、それで尚も女尊男卑思想の女は未だに生存している。
故に義務教育を終えた後の進路として、自身の精神的衛生上の防衛機構が働くのか定時制を選択する者が増加傾向にあった。政府や教育委員会も女尊男卑の影響を重く見たのか定時制や通信制の増設を促進させていた。
定時制と言えば様々な事情によるワケアリの生徒が集まってくるモノだ。夜間も昼間もその点は変わらない。そして、生徒総数も少数になる傾向がある。
それでも昼間定時制の午前中で授業過程が終了する為、高校内に併設されている食堂で昼食を取ってから帰宅する者も少なくない。
故に昼休みの時間帯ともなれば全日制の生徒達と入り乱れる事になるのだ。
定時制と全日制の生徒達の相関図も生まれる事になり制度の違いはあれど共存している。……それでも男女同士の関係はぎこちないように見えるのは無理らしからぬ事かも知れない。当然、中には昼食を食堂で摂らずに其の儘、帰る生徒も居る。
「世界初の男性操縦者ァ? ………。いや、何でも無い」
そんな食堂の一角、男子生徒のグループの1つにてそんな話題が出ていた。
一汁三菜の揃ったトレイの前で、そのグループの1人、篠崎 若菜は視線をテーブルの先に向けつつ提供された話題に対してそう返答した。
「お前、知らねぇのか? 今じゃ、ニュースとか、クラスじゃ持ち切りだぜ?」
「定時制じゃその話題は出ねーのか?」
向かいの席に座るその話題を提供して来た知人であり2人の全日制の男子生徒がそう続けた。
「定時制の連中は仲良し子良しじゃないからな。つーか、男性操縦者ぁ? 何処情報だよ」
「いや、その返しはヤバすぎだろ。ニュースとかスマホのネットでも話題沸騰状態じゃねぇかよ。今、見てみろよ」
そう言われたのでスマホを開いて適当なニュースを読んでみる。
『速報、世界初の男性操縦者発見⁉︎』
『世界初の男性操縦者、織斑 一夏。現在、身元保護の為に都内のホテルにてー』
『希少性及び安全性の確保の為にIS学園へのー』
『男性操縦者の発見に日切に全国で他にも男性操縦者が居ないか検査の実施を検討ー』
そんな見出しのニュースが洪水の如くネット内に氾濫していた。それらを適当に一瞥した後、若菜は一言。
「興味が無いな」
心底如何だって良いと言いたげな態度で返した。実際に心底、如何でも良い話だったからだ。
「いや、興味が無いってマジで言ってんの? ISだぜ、IS‼︎ ああ言うロボット系は男のロマンだろ‼︎」
「そうだぜ。数日後に全校生徒を対象に適性検査をやるって言ってたんだ。もし、動かせんのならIS学園。女の園でハーレム状況だぜ?」
随分とおめでたい頭をしていた。周りが女の子だらけの環境は些か勇気が必要な光景だ。
「つーか、全校生徒ってのは全日制の生徒が対象じゃないのか?
タダでさえワケアリの奴が女尊男卑予備軍の場所に行ったら自殺案件に発展するだろうよ」
「う、やっぱIS学園って女尊男卑思想の女子でいっぱいなんかな?」
「だとしたら逆に行きたくねぇよな……」
ISにライセンス制度が導入されて女尊男卑思想が抑制されたとは言うが、未だにその思想に殉じる者共は数多い。
決まってライセンスを取得する事が出来なかった連中が嘯き吼えて妬んでいる滑稽な姿を晒している。
「そりゃ多いだろ。憧れってのは理解から1番遠いって言うだろ。憧れを原動力にするのは結構だが、その結果……見るべきモノが見えなくなるのは本末転倒だからな」
「頭の痛い話は勘弁だー」
「更に追い討ちとして、お前ら高一だろ? 仮に発覚してIS学園に行く事になったらまた高一からやり直しだろ。事実上の留年な上に、授業スピードは全く違う可能性が高い。つまり、中3なら兎も角、高校生以上は将来的な観点からデメリットの方が大き過ぎる。
1番大きな理由はIS学園は進学率も就職率も全体的に極めて低い事だ。
就職に有利な何らかの資格も取れない上にIS関連企業以外はウケが非常に悪い。故に就職に関しては他の高卒と比べて物凄く不利だろうよ」
「うわぁ、マジかよ。それは色んな意味でなりたくねぇな」
「つーか、何でそんなに詳しいんだよ?」
「外部からでも得られる情報からの推測と確定情報だ。ニュースとか見ている癖に、それ位の推測は立てろよ。そんなんだから、赤点回避の為に土下座する羽目になってんだろ、己らは」
「「何で知ってんだよ⁉︎」」
声を揃える馬鹿2名。
「あー、将来の事を考えると逆に行きたくは無いなー。万が一、動かせたら辞退とか出来ねぇかな?」
「其処は知らんよ。今の政治家がボンクラじゃ無かったら、ワンチャン行けるんじゃ無いか?」
「無理そう。今の政治家って信用無いしな……」
「不祥事多いしな。自分以外を馬鹿にしてる感じがするからな」
そんな話を進みつつ、昼休みの終わりを予告するチャイムが鳴る。
「じゃ、俺は帰るわ。今日は部活無ぇし定時制の奴はさっさと退散と言う事で」
「おう、じゃあな」
「また、明日」
その日の授業が終わり、昼休みも終わった。若菜は定時制ではあるが部活に入っている。
この高校では部活は定時制と全日制が合同となっているが、部員の殆どが全日制の為、誰も居ない中で活動する事になり、定時制の生徒で部活動をする者は少ない。そもそも、コミュニケーション能力に難がある者も多い為にそんな苦行に勤しむ者は稀だろう。
ともあれ、今日は部活のある日では無い為に其の儘、直帰……とはならなかった。
「さて……今日は」
バス停で待つ傍らでスマホのチャットアプリを開いて
時計うさぎ
『束さん、今日はハンバーグが食べたいな〜o(≧▽≦)o 』
アリス
『若菜君っ。今日はラーメンにしませんか?』
ミニョリーナ
『もう、油物ばっかりになりそうだから、野菜類をお願いするわね』
他の面子の意見も見たが……。バラバラじゃねぇかと思わず毒吐いた。苦労人仲間が先手を打って来た為に悩む理由が消えたのは僥倖だった。
「……もう、今日は肉野菜炒めで良いや」
今日の夕飯はそれにしようと決めた(考えるのを放棄したとも言う)。どうせ揉めまくるのは目に見えて分かる。
ならば今度から持ち回りで決めよう。そう考えて若菜は丁度、やって来たバスに乗り込んだ。