束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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学習能力の無い連中め

 

 

 不発に終わった。千冬はそう悟った。

 束が語った『産みの親』に関する指摘は最もな事であった。故に反論は出来なかったし……考えたくは無かった事である。

 千冬にとっては1番のマズい事は弟である一夏の身に何かが起こる事だ。

 話の流れで一夏の保護を打診しようとしたが……正直、その話が通る保証は無い。束の性格上、興味を持たない存在に関しては干渉しない傾向がある。束から見れば一夏と言う存在は『千冬の弟』でありそれ以下でもそれ以上でも無い。彼女の言うまさに『赤の他人』程度の存在でしか無い。赤の他人を助けようなどと言う精神性を束が持ち合わせてはいない。

 

『ちーちゃん。束さんはね、一応……コレでもこのちっぽけな地球(ほし)の人間に対してまだ可能性を信じているんだよ?』

 

「可能性……?」

 

『そ。可能性。……此の儘、女尊男卑や唯の玩具で終わらせるか、それとも……宇宙への翼として活用できるかどうか……』

 

 それは束が原初から提唱していたISの本来の運用方法だ。しかし、実際はちっぽけなプライドの押し付け合いに終わっている。

 

「……見定めている最中、なのか?」

 

 千冬が知る初期の頃の束の性格ならば早々に見限っていても不思議では無かった。いいや、とっくに見限る事だろう。余程の精神に余裕のある人格でなければ失望するだろう。それ程までに人類はやらかしている。

 それは無理のない話と言えるか、束の技術水準と人類の技術水準には大きな隔たりが生じている。何せ未だに人類は束がたった1人で開発したISコアの構造の解明する事すら出来ていないのだから。

 その状態で尚もギリギリの状態で付き合っている状態とも言える。

 

 束も薄々、気付いているだろう。

 (じぶん)達は人類から隔絶した存在へと至ってしまっている。

 だからこそ、束は未だに人類の範疇である自身の妹である箒を『赤の他人』と見做して、予期せぬ事態を予防しているのだろう。少なくとも束はソレを確信している。

 そして、束は自身の妹がソレに耐えられないと確信しているから遠ざける決断をした。嫌われているからと言う事で今更、嫌われる真似を重ねようと誤差の範囲と見做して。

 

 人間(じんるい)と異なる生き方を進むならば人類(ひと)の範疇に収まらない苦難を享受する事を意味している。

 

『数が少ないながらもちゃんと、束さんが用意した試験を合格している人達が居るからね。最も、どう生きるかまでは本人次第ってのがあるけどさ』

 

 束が用意したライセンス試験。合格した後までは関与する事では無いとの事で、本人の意思に委ねられている。人類の認知通り、元来の国家代表なり代表候補生なり目指すか、或いは軍属となるか。だが、悲しいかな束の想定の運用に踏み出せる者は居なかった。

 まぁ……無理も無いだろう。保証は無いし、軽い気持ちで出来る事では無い。

 

『で、問題はお前らだよ。ISの操縦関連の教育を標榜している分際で……無駄な事ばかりしている。ライセンス制度を導入したけれど、やれ女尊男卑やらアクセサリー感覚やら……ちっとも変わってないよね?寧ろ悪化したのは束さんの誤算だったよ』

 

 束から見て、IS学園は本当に無駄な存在であると見做している。ただただ人間の子供の将来を予め潰す為だけに存在している様にしか見えないのだ。

 女尊男卑の恩恵と言う『麻薬』を浸透させ、女尊男卑と言う歯車へと『加工』する工場……そうとしか見えない。

 

『助けて?ちーちゃん、その言葉を外部に言うのが5年遅いよ。

 束さん、知ってるよ? IS学園開校の1年後から現状が続いていると言う事を。寧ろ、政府は良く9年間我慢したよね?それともアレかな、政府の中に金食い虫でも居たのかな? 政府自身の自浄作用なんか期待はしてないけどさ……まぁ其処ら辺は良いや』

 

「…………」

 

『IS学園が現状の状態になっているのは言うまでもなく管理している人間達の過失に他ならない。それをまぁ9年以上も放置していたのは流石に笑うしかないよね?

 つーか、笑えねぇよ。どんだけ学習能力低いんだよ。仕事しろよ、作業をやるだけで教師を名乗れて堪るかよ。そんな簡単な職業じゃねぇだろーが、教師って職種は』

 

 根本的な問題がIS委員会ではあるのだが、下部組織でもあるIS学園の教員達にも問題があるのは言うまでも無い。しかし、教員とて動き辛いのは致し方ないのもまた事実。

 

「……反論出来ない事を次々と、言ってくれるな」

 

『ああ、言ってやるよ。……他にも重箱の隅を突きたくなるくらい沢山、指摘する点があるんだけどさ』

 

「いや、言わなくて良い。お前の事だ……そのどれもが反論が難しい内容ばかりなんだろう」

 

『ふぅん。それで後、何回電話を掛けてくるつもり?』

 

 其処で束の口調の空気が変わった。千冬が知る束がゴミと相対する時の様な声音だ。だが、もう譲歩する余裕も此方には無い。

 

『束さんも其処までヒマじゃないんだよ』

 

「お前が折れるまで粘り強く交渉するつもりだ。もう、それ以外の手段が無い」

 

 千冬は回りくどい真似は止めて、本音を話した。教育方針もIS委員会の頭でっかちの存在から変えようが無い。使える手は使わなくてはならない。

 

『…………そもそも助けて欲しいってどうするつもりだったんだよ? 単純にライセンス所持者を掻き集めてもその次は? 1年だけ凌いでも来年以降は? そもそもライセンス所持者の学力とか年齢にも差があるだろ?

 IS学園って全日制だよね? 定時制じゃないから、年齢に差がある中で同じ学級にすると齟齬が生まれる。その諸問題をちーちゃん達は対応出来るの?』

 

 矢継ぎ早と詰められる疑問点。政府から提示された条件は何も今年だけの問題とは言い切れない。継続させる事が必要なのだ、仮に今年は凌ぐ事が出来ても来年以降は同じ様に達成出来る保証は無い。

 

『そもそも、無理矢理集めた所で自主退学の可能性があるでしょ?そうなったらその時点でちーちゃんが考えている目論見は破綻するんだよ? もし、自主退学を認めないとか言い出したら、恐らく学園の意義が揺らぐぞ』

 

「……ならば、どうすれば良いと言うんだ。束‼︎」

 

『根本的に体制を変えるしか無いでしょ。束さんから見てIS学園はどう考えても過大規模校だ。図体は立派だけどその中身で対処出来るキャパシティをオーバーしている。その事実に何で気付かないのさ』

 

「…………」

 

『………………正直な所、IS学園がどうなろうが如何でも良いけれど……赤の他人と言えど一応、血の繋がった妹である箒ちゃんの未来が潰えるのは流石に夢見が悪いな。夢へ旅立つならばせめて後始末くらいはしておこう』

 

「……束?」

 

『ちーちゃん。私が提示する条件が呑めるのならば……生存率0%の廃校結末を1%の確率で生存出来るようにしてやるよ。ただ、その1%を掴めるかはちーちゃん達次第だ』

 

「…………。分かった。私が……いや、学園が許容出来る範囲で頼む。相当無茶な条件だと」

 

『勘違いするなよ、ちーちゃん。私は私の子供達の事しか考えていない。わーくん達と、私が開発したISコアの為にしか動かない。そ、IS学園にある量産機に組み込まれているISコアの為にね。……本当に業腹だけどね。ちーちゃんがそう言い出したら止まらないからね。今回は折れてやるよ……だけど、邪魔な真似はするなよ?』

 

 

 

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