束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「此処が『キョウト』と言う地域なのね‼︎」
「伽羅さんめ……。まさか夜通しブッパで鹿児島から京都へ車をかっ飛ばすとはな……‼︎」
帰星翌日、若菜と藍里の2人は近畿地方北部にある観光地として有名な京都府へと訪れていた。藍里が地球でアイディアを探したいのとデートの名目で、伽羅はその候補として京都府を提示。距離が距離の為、昨日の夜の内に車で高速道路を乗り継いでの移動の末につい今し方、到着したのだ。
『じゃあ、後は2人でデートして来なさいな。今日中に帰るつもりだから、そのつもりで居なさいな』
との事で伽羅は車に乗って其の儘、2人から離れる事にした。デートは2人きりでやるのが鉄則だとか。
「何処となくアニマの雰囲気が漂うわね〜」
創作意欲が掻き立てられているのか、藍里はアイディアの草案をメモして行く。
「ま、何方が先かは知らんがな。で、何処へ行こうか」
「……若菜君。流石にそれは無いんじゃないかなぁ?私はキョウトは初めてなんだから、ちゃんとエスコートして欲しいな」
藍里はそう言いながら慣れた動きで腕を絡ませて来た。恋人同士がする様な絡み方だ。
女尊男卑が蔓延しているこの世界でこんな初々しい若い男女のカップルが如何にも見せ付ける様な行動は余りにも挑発的だ。それこそ、刃傷沙汰を起きても不思議では無い。……最も、若菜と藍里ならば相手が戦術核を持ち込んで来ない限りは如何とでもなるだろうが。
「俺とて京都はそうホイホイ来れるような場所じゃねぇって……まぁ、取り敢えずは有名所に行ってみるか。例えば金閣寺とかだな」
「キンカクジ? 若菜君がそう言うなら其処に行きましょう」
デートと言われて何処何処へ行けば良いのかさっぱりな若菜は取り敢えず有名な場所を提示して其処を回る事に決めた。いの一番に思い浮かんだのは金閣寺であった。
遊歩道や路線バスに乗って最寄りのバス停に降りて件の金閣寺へと向かった。
「へぇ〜、コレがキンカクジって言うのね。本当に金色なのね」
「由来云々は俺も特に知らんよ。単純に珍しいからだろ」
小さな池の奥に立つ金色の純和風の建築物を見る、だけである。他の点で何かする事は特にない。
「……雨とか降ったら腐食とかしないのかしら?」
「さぁな。その辺は何とかなるようにされているんじゃねぇの?」
「何そのつまらない反応は……。まぁ、良いかな。背景画として使えそうね……画像保存しておきましょうか」
「……藍里、場所によっては写真撮影とか禁止の場所とかあるから其処ら辺は気をつけとけよ」
「大丈夫、大丈夫。エストレヤとかでしか公表しないから」
「…………」
金閣寺を後にして次は有名所の清水寺へと向かった。高い場所にあり非常に見晴らしの良い観光地であり、幸いにも今日は晴天。京都の全貌を見渡せる天気と言えた。
「若菜君。此処は有名な場所なのよね?」
「ああ、そうだぞ」
「……その割には観光客とか少なく無いかしら?」
清水寺の清水の舞台。観光地として非常に有名であるにも関わらず観光客の姿は殆ど見られなかった。精々、1人か2人程度の人数である。
『女尊男卑の弊害だな。女尊男卑は凡ゆる業界に悪影響を与えている……無論、観光業にも甚大な被害を齎したのさ。取り分け、日本国はIS発祥の地と政府が声高に宣ってしまっていたモンだから、女尊男卑の発症率は極めて高い。
そんな国に行きたいと思う奴はそう多くはあるまいしな』
ガイアがそう解説してくれた。ならば女性の観光客は然程、減らなさそうな気もするのだが。
『……興味はISにしか向いて居ないんじゃ無いのか?『その時代にISがあれば歴史が変わっていた』とか、過去の出来事を改竄したくて堪らないんだろうよ』
そう言うモノなのか。と、若菜は適当に流した。
「……此処から見える景色を描くのも悪くは無さそうね。多少のアレンジを加えれば……うん、良さげかも知れないわ‼︎」
藍里は藍里で、アイディアを閃いた模様。まぁ、本人が楽しんでいるのだから良しと言えるだろう。
「…………」
其処で不意に意識が視界の隅へと向かう。藍里もそれに気付いた。
「……若菜君、見られてる?」
「ああ、正直な所。露骨だしな……」
男女二人組のペア。
それは女尊男卑を発症した醜い連中から見れば憎悪の対象として見られる。理由は言うまでもなく女尊男卑の風潮故に男性に対して異常な敵愾心、排斥思想に基づくが故に。
『男なんかと一緒に居るなんて許されない‼︎』、『所詮、男は醜いだけ‼︎』、『とっとと別れなさい‼︎ ISが使えない存在は必要ないのよ‼︎』
とまぁ、そんな訳で結婚率も年々下がり出生率も下がっている。20世紀前半初めの時点で少子化が嘆かれているのにトドメを刺しに来ている。無論、そんな事実を女尊病は考慮して居ない。
『若菜、荒事は避けるべきだぞ。まぁ、最悪の場合はとっととエストレヤにズラかれば良いだけの話ではあるけどな』
『いや、それ以前に母上から地球上では『フォーマルハウト』の完全展開での使用は極力、使うなと言われている。……此処で使えば清水寺が融ける』
壊れるでは無く、融ける。
比喩表現でも何でも無く本気で暴れれば真面目にそうなってしまう。エストレヤの面々ならば兎も角、地球人の肉体構造は脆弱の一言に尽きてしまう。……その認識を抱いている時点でもはや異常である。
『はは、それは違いない。木造だからな、炭になって風吹けば塵と消えような』
『まぁ、白兵戦武装で何とかなるか』
『……その方が良いだろう。多分』
「藍里。向こうの出方を伺って、最悪の場合は飛び降りるぞ」
「OK。それで行きましょう」
清水の舞台から飛び降りる行為は、止めるべき行為ではあるのだが、2人にとってはなんて事は無い。一先ずは相手からの行動を伺う事にした。攻撃して来るのならば、とっとと逃げた方が良いだろう。後々の事を考えるならばその方が好都合であるからだ。最も女尊男卑の風潮の弊害で司法なぞ信用ならないが。
下手すりゃ、『自分の身は自分で守るしか無い』と言う人心だけがポストアポカリプスに陥りかねない。そうなってしまえば後はもう堤を切ったように崩れ落ちるだけだ。それ位の理性は伴って貰いたいモノだ。
若菜と藍里はハイパーセンサーだけ展開して後方を視認する。気配察知と目視による認知、双方伴えばその情報は確定出来る。
暫くすると、1人の女性が清水の舞台に現れた。
『コイツは驚いたな。まさかのアメリカ合衆国の操縦者が現れるとは。ナターシャ・ファイルス』
ガイアがその2人組の情報を若菜に開示する。IS関連の情報ならばコア・ネットワークを介すれば比較的簡単に入手出来る。それ故に直ぐに情報の開示が可能である。
「あら、彼処に居るのは篠ノ之博士の息子さんじゃないかしら?」
随分とワザとらしい真似をして来た。いや、本当に白々しい。どうやら視線の気配は彼女の様だ。
「……去年の国際ライセンス授与式以来ですね。ナターシャ・ファイルスさん」
ナターシャ・ファイルス。
誰もが欲しがる『国際ライセンス』を取得する事が出来た世界で非常に数少ないIS操縦者。国内ライセンスを1発で取得し、それから3年間更新に成功して遂に去年、『国際ライセンス』の取得を成し遂げた人物である。
因みに『国際ライセンス』は国内ライセンスとは違い、束が直々に贈与する形式となっている。その授与式に同席していた為、一応は彼女の事を知ってはいる。
「……こうして直接、話すのは初めてかしらね? 篠崎 若菜君。見た所、デートのお邪魔だったかしら?」
「ええ、私達はデート中よ。
藍里はそう言い若菜を引き寄せてその腕を胸の谷間に押し込んだ。何とも挑発的な行動だろうか。
「ふふ、流石に邪魔しちゃ悪かったかしらね。君も中々、隅には置けないようね」
「で?何か用ですか?」
「いえ、私は休暇だからこの国に観光に来ただけ。そしたら、偶々見覚えのある姿が見えたから、ちょっと不躾ながら後を尾行けて来ただけ。流石に他人の恋路を邪魔する程、腐った覚えは無いわ」
流石にデートの最中を邪魔する様な真似はするつもりは無いようだ。
「……あ、会った序でに教えておくけれど、少し気をつけた方が良いわ。……女性権利団体と思われる集団が屯しているのを見かけたから」
女性権利団体。
この星を蝕む癌である。嫉妬と高慢を誉とし、同属を増やし続ける星を喰らう癌細胞だ。
「……それはどうも、気を付けておきます」
ナターシャはそう言い残して、邪魔しては悪いとの事で2人の前から立ち去って行った。