束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
数は30人程。顔立ちだけで如何に時代の甘露を啜って来たか分かる。
「キーキー、喧しいな。メスのチンパンジー共」
断りもせずに乱入しては喚き散らす
「なッ⁉︎ お、男の分際で、仰ぎ崇めて当然の私達に対して、ち、チンパンジーですって⁉︎」
『戦略的挑発。あの手の連中に対しては効果覿面だな。最もキミは煽り癖があるがな』
ガイアが呆れ顔になるも、止めはしない。
「違うか? ああ、逆にチンパンジーに失礼か。チンパンジーは高い学習能力があるにも関わらず、お前らは学習能力がまるで無い。知性の欠片も感じられない。今からでも動物園にいるチンパンジーに頭を下げてその知性を伝授して貰って出直して来い」
中々酷い罵倒であった。若菜から見れば目の前の人間はチンパンジーに劣ると言っているのだ。チンパンジーの方が知性がある、と。
「わ、私達が高々チンパンジーに劣る、ですって⁉︎ 随分と調子付いているようね⁉︎」
「やはり男なんて必要無いのよ‼︎ 私達にはISがある‼︎」
「何れこの国は女尊男卑至上主義国家となる‼︎ アンタの様なクソガキにはその礎となる事を光栄に思いながら死になさい‼︎」
恐らくその虚言を盾に好き放題して来たのだろう。しかし、ISライセンス制度により書類選考すら通らないから虚言を使う事で精神を保っているのだろう。
『虚構と現実の区別も付かないとはな。ボクがあんな連中に我が娘を使わせる筈も無かろうに。若菜、奴らの妄言に付き合う必要は無い。早い所、屠殺してしまえ』
ガイアが言うは簡単だが、この場で鏖殺する訳にも行くまい。かと言って借り物を傷物にする訳にも行かないか。
「へぇ……ISか。ならば、見せて貰いたいモノだな」
「は?」
「……如何した? ISがあるのならば、さっさと展開して見せるが良い」
若菜は腕を前に突き出して『かかって来い』のジェスチャーを見せる。
「それとも何だ? ライセンス試験の不合格を突き付けられてその現実に耐え切れなくて、情けない虚勢を張るのが精一杯か? ISが無ければ何も出来ねぇのか、女擬き共‼︎」
此処で若菜はトドメの一撃を言い放った。
「この‼︎ アンタの様な男如きに女性にだけ与えられたISを使うまでも無いわ‼︎ 貴方達、やってしまいなさい‼︎ 生意気な男共々、この場にいる女尊男卑至上主義を否定する女共を皆殺しにしてしまいなさい‼︎」
一触即発の刻は過ぎ去った。女尊男卑至上主義に傾倒する女性権利団体は憤怒に顔を染めて隠し持っていた拳銃を取り出してその銃口を向けた。その銃声を日切にその火蓋は切り落とされた。
一言で言えば凄まじかった。ブライダルコンサルタントのスタッフが抱いた感想はその一言に集約された。
「なっ⁉︎ どうして当たらないの⁉︎」
「馬鹿か? 頭なぞ狙っても少し動けば躱される。そんな銃弾に当たるのは
「銃弾が見えているとでも言うの⁉︎」
「随分と単調なデッサンね。それじゃあ、意外性が無いわ」
女性権利団体の手にある拳銃から放たれる銃弾は2人には擦りすらしなかった。その身に纏っている袴の裾にすら当たらない。少ない動作で飛来する銃弾を交わし、時には手に持っていた得物で軌道をズラさせる。
如何考えても高速で飛ぶ銃弾を視認して躱しているようにしか思えない。とても人間業とは、思えなかった。
「ちょっと何しているの⁉︎ 高々、2人相手に何で当てれないのよ⁉︎」
「学力も無い、自己分析も出来ない、運動神経や反射神経も鈍い……。日本一グータラな国民的漫画の小学生でもちゃんと取り柄はあると言うのに、素晴らしく何も無いな‼︎ お前らは何の為に生きているんだ?」
彼氏君は露骨かつ白地に煽りに煽っている。余り褒められた行為では無いがアレを戦略的挑発と言うのだろうか。人は感情的になると行動内容が単純、或いは視野狭窄に陥る。
「このッ⁉︎ 言わせておけばッ‼︎ 貸しなさい‼︎」
「隙しか見当たらないな?」
「貴方に色を着けてあげるわ‼︎」
刹那。本当に一瞬の間に、2人が間合いを詰めていた。一体、如何やってその間合いを詰めたのかまるで分からなかった。
「ッ⁉︎」
模造刀で横殴りに薙ぎ払い前列の女性達を押し倒し、一気にその集団の中へと踏み込んで行く。
「このッ⁉︎」
押し倒された女性の1人が慌てて拳銃を構えて発砲するも放たれた弾丸は背後から撃たれたにも関わらず、躱される。
「イ゛ッ⁉︎ だぁぁ⁉︎」
躱された弾丸は別の女性権利団体の女性の顔を頬を抉り血が滴る。
「こんのッ⁉︎ 当たりなさいよ、もうッ‼︎」
「猿みたいにちょこまかと‼︎ 男の癖に生意気なのよ‼︎」
女性権利団体に囲まれる構図となるも2人の顔に焦燥は見られない。寧ろ余裕すら見せられる。
「如何した? 至近距離ですら当てれないのか? 眼科に行く事を勧めるぜ? あー、無理か。お前らにお金を払うと言う文化も後退退化して記憶に無いのか。いや、女尊男卑バンザイで医者すらも見限られたか?」
そんな煽り交じりの態度に対して苛立ちから女性権利団体は皆、一斉に拳銃を乱射するもそれらの弾丸は——。
「あ゛ッ⁉︎」
「ちょ、何で⁉︎」
「誰よ⁉︎ この私の美しい顔に傷を入れるだなんて⁉︎」
「痛い、痛いッ‼︎ 何で、如何して⁉︎ こんな筈じゃ無いのに⁉︎」
「アンタさえ、当たればこんな事にならなかった筈なのに‼︎」
躱し、去なされ、或いは弾かれた銃弾のその全てがお互いに当たり、穿ち、抉って、傷を深めて行く。己の放った凶弾は仲間を穿ち、また仲間が放った凶弾は己を抉る。
『抜き身の得物は扱いの心得無くば傷を増やすだけだ。こんな連中に我が娘達を……ISを手にするだなんて自体、そもそも間違っているんだ。如何してこうも愚かな存在へと成り果てたんだろうか……』
銃弾が乱れ舞う中、その全てを躱して行く若菜と藍里を見ながらガイアは心底本当に嘆く。地球人は如何して此処まで愚かな存在へと成り下がったのか、と。
攻防とも呼べない争いは女性権利団体の持つ拳銃の弾切れによって幕を下ろした。
彼女らの手に持つ拳銃にはもう弾は残っておらず小さな鈍器程度しか役に立たない。
女性権利団体のほぼ全員が顔や身体に銃創を負ったのに対して若菜と藍里は全くの無傷。流石に至近距離であった為か身に纏っている衣装の所々に銃弾が掠めた箇所が見受けられた。
「……さて、まだやるか?」
「こ、この‼︎ 覚えて置きなさい‼︎ アンタの顔、覚えたからね、社会的に抹殺してやるわ‼︎ 精々、その日を震えながら待っていなさい‼︎」
リーダー格と思わしき顔に銃弾を受けた女性権利団体の女がそう捨て台詞を言い残してその場から逃亡した。その後に続くように取り巻きであった他の女性権利団体の構成員も痛みを堪えながら逃げ出して行った。
「……え、えと……良いの? 放置して」
「大丈夫だ。抹殺されるのはあの連中だから」
「は、はぁ……」
事の顛末を離れた位置から見ていたスタッフが駆け寄り心配そうにそう訊ねるが若菜は如何でも良さげにそう答えた。
因みに女性権利団体との争いの最中の光景はとても写真にはならないとの事で、改めて別のポーズで撮る事になった。
「男の癖に‼︎ 男の癖に‼︎」
撮影現場から逃亡した女性権利団体一行。男性をこの世から全て消し去り、女尊男卑至上主義国家の樹立、そして今世紀最大の悪政であるISライセンス制度の改善、或いは撤廃の為にも日々活動している。
しかし、今回は本来ならばあり得ない惨敗を期してしまった。
軟弱で無能な筈の男に簡単に遇らわれ、自分達の武器で自分達を傷つけ合うと言う笑い物同然の醜態を晒した、その事実がとても受け止め切る事が出来なかった。
ISがあればあんな男、一瞬で殺せるのに‼︎
そんな思いが沸々と湧き上がってくる。ISライセンス制度の導入により、優遇措置の対象が限定されてしまった。ライセンスはISを本当に動かせる証明となり今までの様に適性値を理由に優遇する必要が無くなった。
その煽りを女性権利団体は諸に浴びる事となった結果、世間の目が冷たくなったのだ。
女性権利団体はその威光を享受せんが為に試験に臨むも大惨敗。誰1人として合格する事は叶わない結果を続けている。
『ライセンスを持っているのか?』
『動かせる権利ないのに、良く言えるな』
『虚偽の内容なので違法と見做して起訴します』
ライセンスを持っているとチラつかせようにも実際に提示を求められて出せず逆ギレして、騒動を起こす事を繰り返している。そうで無くても開き直って横暴を続ける者も少なくない。彼女らもその一味である。
「……ねぇ、知ってる? 撃って良いのは撃たれる覚悟がある奴だけって言葉。
でも、自分は撃たれたくないのに笑いながら撃っている奴が多いのどう思うよ? 私から見ればバカな連中だと思うぜ? 無敵が相手だと何するか分かんなぇんだからさ‼︎」
「若菜、藍里。デートはどうだったかな?」
「私はとても楽しかったわ。良い気分転換にもなったし、ふふっ、後で皆に自慢しちゃおうっかな〜?」
「……その後で酷い目に遭いそうだな。それで、伽羅さん。何処となく機嫌が良さそうですね?」
「ん?そうかな〜?都合が良いタイミングでストレス発散出来たからね〜」