束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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『釣り』と『伏せる』。当事者達よ、どうする?

 

 

 

 

「……全く。覇権だの、男性操縦者だの、女尊男卑だの、非公開機体だの、情報操作だの、何だのこの地球(せかい)は今日も喧しい限りだな」

 

「あはは、若菜君からすればそうかも知れないけれど、事情を知らない人達からすれば騒ぐしかないかもね」

 

 卯月の頃。

 新社会人、新学期、新入生。世界に新たなる新参者が溢れ返る慌ただしい季節。

 満開となった桜の木が立ち並ぶ道路を一台の乗用車が走っている。伽羅が運転する車の後部座席に若菜とシノアが並んで座っている。

 

「全くだよね〜。博士も友達は選んだ方が良いのにね〜、高々操り人形に振り回されるのも面倒なだけなのにさ」

 

 バックミラー越しで2人の様子を見る伽羅は心底、呆れた様な声音で会話に参加して来た。その心境は2人も同意せざるを得ないだろう。

 

「しっかし、此処で方針転換かぁ。当初は最後まで隠し通すつもりだったのにね。若菜がこの地球では1人しかいない男性操縦者である事を」

 

 逆にエストレヤでは男性のストライカーは然程珍しい訳ではない。それ位、地球とは隔絶された技術格差があると言える。

 

「お母様の考えではある意味、コレがこの地球(せかい)に対する最後通牒です。だからこそ伽羅さんをIS学園の教師として赴任させる条件を盛り込んだのでしょう。他にも色々と条件を突き付けた以上、かなりの譲歩と言えます」

 

 

 

 

 千冬が束へ泣き付いたその2日後。

 世界は再び震撼させられる事となった。

 

 世紀の大天才でありインフィニット・ストラトスの開発者である篠ノ之 束博士が世界にある情報を発信したのだ。

 

『篠ノ之 束の息子は織斑 一夏よりも先にISを動かした男性操縦者である』

 

 その情報に世界各国の政府や企業は動転したのだ。相手は篠ノ之 束。こと、IS関連の内容では彼女の言葉では凡ゆる意味で強力な意味を持つ。

 その事実は世界を上から下まで天地をひっくり返す様なパニックへと陥らせたのだ。……束から見ればくだらなくて滑稽な姿にしか見えなかったであろう。

 

 篠ノ之博士には4人の子供達が居る事は以前から知られており、また意外にも子煩悩と言う一面があった。しかしながらIS業界には全くの無関係を装っていた。

 去年、IS学園から娘達の学園入学打診をされていたが、素気無く断られたとも言われており、また篠ノ之博士はIS学園やIS委員会、各国政府を嫌っているとも言われていた。

 

 束は様々な条件付きでその息子をIS学園へ入学させる事を一方的に通告した。相手は篠ノ之博士……その気になればインフィニット・ストラトスを全て永久停止させる事も造作も無い。

 故に安易に反故にする訳には行かないのが現実だ。ましてや子煩悩であり、対象が息子ならば尚更……何が起こるか予想は出来るが止める手立ては無いだろう。

 

 

 

 

 

 以下が束が提示した条件である。

 

『息子と娘の1人を業腹ではあるが編入を認める』

 

『護衛となる者を1人、追加で編入させる事』

 

『従来のIS学園の教育方針を否定する。故に専門の教師を充てる。息子及び娘、護衛の学級の担任はその教師とする』

 

『その教師が受け持つ学級での教育方針はその教師の裁量に全て委ねる事。3人だけの特別学級でも構わないが、他学級と同じ様に30人規模体制も認める。

 その学級へ在籍を希望する他生徒の制限は設けないが一切の責任を負わない

 

『息子、娘、護衛の専用機の情報は一切非公開とする。特別な状況を除き一切の使用を禁止。

 また如何なる権限であろうとも該当者の各種情報を引き出す行為を認めない。特に織斑 千冬。お前の事だよ』

 

『息子、娘、護衛の内、何れかがIS学園への在籍が『不適任』であると判断した場合、連帯でIS学園の学籍を解消する。この場合、学園側による引き留め等の妨害は一切認めない』

 

 

 

 大凡の内容が以上の通りとなる。コレらの条件から束の管轄にて3人の子供がおり、その3人とも専用機を有する(つまり『国際ライセンス』以上のライセンスを持っている)事の証明とも言える。或いは『特別ライセンス』の噂は真実味を帯びて来たとも言える。

 その息子の護衛役として娘と更に追加で謎の護衛が充てられる2人体制と言う構図を予め作られていた。

 

 束の息子、娘と言う事から先ず間違いなく束謹製のISを与えられている事は確実視されていたがそれは真実であった。ともなれば現行のISよりも数段階上の性能を誇っているのは言うまでもなく、その機体データ+男性固有のデータは計り知れない価値を持つのは当然。

 

 だが、政府や学園としてはそれらの情報を一切、取得する事が認められないと言う点である。そもそも束から与えられているにも関わらず『使用禁止』を言われていると言う時点でかなり事情込みとも推察されていた。

 

 他にもIS学園へ新たな教師を赴任させ、尚且つその教師の学級に息子達を在籍させると言う采配。露骨なまでにその教師は篠ノ之博士の息が掛かっているだろう。いいや、敢えて露骨なまでに見せつけている。

 

 この条件及び構図から本来ならば『IS学園に籍があるだけで全く別の管理体制を無理矢理捩じ込んだ』とも言える光景。

 遠目から見えるが干渉する事は出来ないと言うテレビの向こう側の世界を見ているような構図だ。

 

 だが、条件の中には敢えて干渉する有無を用意した。その教師が担当する学級は3人だけではあるが、他の学級と同じ様に一般学生の在籍を認めると言う奇妙な条件。

 事前選択式であり超過した場合は抽選となる模様。しかし、其処には不穏な言葉が付随している。その言葉が何を意味しているのかはまだ分からない。

 だが、10代の女子高生はそんな問題は瑣末事と認識し男性操縦者と言う希少性に惹かれて、織斑 千冬の弟か或いは篠ノ之 束の息子か選ぶと言うある意味究極の選択を嬉しさ半分で悩む事となった。

 学園や各国政府からすれば何方もビッグネームの身内……その動向が大いに注目される事になる。

 

 

 

 そして、4月に入り最近、良い噂を聞かないIS学園も新学期、入学式を控えている。現在、若菜達はそのIS学園へと向かっている所である。

 

「で、母上は護衛とか言っているが」

 

「エストレヤ学院から来るよ。君も知っている娘だから気安いでしょう? IS学園で合流する手筈になっているから」

 

「あー、概ね予想出来て来た……死人が出なきゃ良いが」

 

 予想の範囲とは言うが……大体、ヤバい面々しか居ない為に何とも言えないのが本音だ。だって戦闘民族ばっかだし。

 

「流石に耳とか尻尾が出ている娘とかじゃないですよね? 悪目立ちしちゃうレベルじゃないですよ。地球上じゃ……地球人って同族以外、対等の存在と認知出来ませんし」

 

「拡張領域を応用すれば幾らで隠せれると思うけどね〜。まぁ、その辺は向こうも分かっている筈。其処までヘマはしないでしょ」

 

「……だと良いのですが。それよりも1番心配なのは伽羅さんなんですよ。エストレヤ基準だと地球人は脆弱も良い所なんですから」

 

「君が言うと説得力感じないなぁ……まぁ大丈夫、大丈夫。ちゃぁんと手加減(・・・)するから」

 

 寧ろ不安が込み上げてくる。この人、見た目はゆるほわに見えるが……加減を知らない為に何が起こっても不思議ではない。

 

「あ、そうそう。IS学園に博士の妹ちゃんも入学するみたいだね。……最も日本政府は未だに博士に対して未練タラタラみたいだね」

 

 余程、『ISコア』が欲しいらしい。束はISコアの製造を地球上では止めている。ISライセンスの試験の合格者は最底辺で伸び悩んでいるが、それに並行してISコアの供給を望む声は非常に多い。勿論、束はそんな声を全て無視しているが。

 

「叔母上……ですか。最低でも1回はご挨拶にお伺いに行かねばなりませんね……」

 

「流石に初日はゴタゴタしてそうだから、頃合を見なきゃダメかも知れないね」

 

「……君達、ナチュラルに他人の精神をゴリゴリ削りに掛かりそうだよね」

 

 年上の甥と姪で、然も学生の時点で『おばさん』呼ばわりされるとなると、精神的ダメージは計り知れないだろう。……最も、若菜とシノアは全くと言って良い程に悪意が無いのが殊更、性質が悪いだろうが、当人達がそれに気付くのは何時になるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

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