束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた   作:夢現図書館

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嫌な予感しかしないんだがなぁ

 

 

 

 

 IS学園、入学式を終えた後の職員室。其処では新入生が教室に集まっている間に職員会議が行われていた。

 

「改めて初めまして私は天瓦 伽羅。今日付でこのIS学園の教員として赴任しました。IS学園の現状も把握しているし、束博士の条件は全て把握しているでしょう?」

 

「「「……」」」

 

 今年は色々な意味で大変な年となる。

 それは教師が誰であれ予感はしていた。男性操縦者の存在が大きな理由ではあるが、今年はそれ以上に異常な年であると予感させる存在が目の前にいる。

 天瓦 伽羅と名乗った教師。柔和な笑みを浮かべているがその身に纏う雰囲気が常人のソレではない。形容し難い肌寒さを感じさせる。ヒトでは無いナニカを胎に孕んでいる……そんな第一印象を抱かせた。

 

「学年主任の織斑だ。ああ……束からその話は聞いている」

 

 固まっている教師陣の中で千冬だけは気圧されなかった。あの束と繋がっている人物……恐らく只者では無いとは予感はしていた。ただ、素人から見れば見た目で騙されそうだが、千冬には直感で警戒したくなった。厄介な手合であると、本能的に察していた。

 

「『聞いている』と『理解している』は同義の言葉じゃないですよ〜? 話を聞いただけの空返事じゃ意味が無い。実践する姿勢が無ければ虚勢や虚構と大差ありません。

 だからこそ此処で改めて宣言します。私が受け持つ学級では私独自による采配で授業内容を進めます。

 私の受け持つ学級に在籍を希望した生徒と束博士の子供達と区別はしません。須く同等(・・)の扱います。

 IS学園の昨年度の教育課程やプログラムを拝見したけど……アレじゃあ『何処に出しても恥ずかしい人材』しかならない。可能性の芽を根腐らせているだけ。

 ISライセンスの試験対策? 貴方達の従来の教育方針のままじゃ全く通じませんよ。何故なら全くの見当違いの事を教えているのですから」

 

「…………」

 

 その言葉は教師陣にとっては寝耳に水と言えよう。それはIS学園の教育方針の在り方を全否定にも取れる言葉であったからだ。

 千冬だけは以前に束からボロクソ同然に言われていたからまだ耐える事が出来た。現状の教育方針ではIS学園の存在意義を喪うのは明白である事も頭では理解はしていた。

 

「私のやり方を真似する事は構いません。ですが、私の学級は私のやり方で業務執行しますので、悪しからず」

 

 伽羅が受け持つクラスは8組。当然、束の子供達こと若菜とシノアも8組となる。

 千冬は当初は男性操縦者の管理がし易いと言う理由で自分が受け持つ1組へ入れようとしていたが、束が提示した条件により目論みが悉く潰された。

 束は文字通り有言実行で凡ゆる手を尽くす、義理とは言えど母親であるが故の行動だ。

 

「……連絡事項位は受け入れて貰いたい所ですね」

 

「くだらない内容ならば蹴り飛ばします。唯の(・・)連絡事項ならば聞く耳を傾けます」

 

「…………」

 

 千冬は政府や委員会絡みの話題は拒絶されそうだと脳裏に過ぎる。束の息子を通じて束に何かしらのアクションを促そうと言う企みは幾らでも湧いて来よう。だが、そんな真似をすれば束は怒り狂うかも知れない。眠れる兎を起こしてはならない。その身が惜しくば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8組。

 そのクラスは他のクラスとは明らかに……いいや、根本的に異なるクラスである。その事実を理解しているのはこのクラスではたったの3人だけだ。

 男性操縦者? 1組にファーストと揶揄されている男子生徒が居る為に違う。

 クラスの人数? 各クラス30人だ。8組も30人、他のクラスも同様に30人だ、違うだろ。

 ならば……何が違う?

 

『全く……此処には養殖された女しか居ないのか? 男の姿を見て余所余所しい態度とは……そんな無様な醜態で良く生きてこられたな』

 

 言ってやるな。思春期は異性との距離感が掴めないんだろうよ。

 

『だとしたらキミ達は距離感が可笑しいと思いのかね? まぁ、言った所で無駄な事か』

 

 脳内でガイアが呆れ交じりの声を漏らす。その声に対して若菜は冗談交じりに返す。

 入学式を終えて朝のホームルーム前の時間帯。8組への在籍を賭けた抽選の結果、選ばれてしまった(・・・・)生徒達の意識はこの8組に在籍する事になったセカンドと陰で揶揄されている若菜に向いていた。

 しかし、席順は窓際かつ1番後ろと言う他の席から視線を向けるには無理がある配置。それに加えて——。

 

「……しかし、護衛役がまさかフィウだったとはな」

 

「……はい。束博士からの直々のご指名を頂きました。……キミは本当にトラブルに巻き込まれる性質なんですね」

 

 フィウ・エファアルティス。

 エストレア学院高等部の生徒の1人で、今回の件に束からの要請に応じて護衛役として同道する事になった。無表情ながらも銀色の髪をツーサイドアップに纏めており、それに加えて見た目の幼さから想像つかない程の凶悪な双丘を持っていた。

 

「あはは……若菜君は好きで巻き込まれている訳じゃないんだけどね? むしろー……自分からトラブルを引き摺り込んだり飛び込んで行くー、みたいな感じかな?」

 

「……確かに若菜さんはそんな体質ですね。図らずとも戦闘区域に闖入しますので。恐らく参加者は『何処から現れた⁉︎』と叫びますね」

 

「君ら。褒めているのか貶しているのか何方なんだ……?」

 

 若菜の隣と前の席には明らかに以前からの知り合い……と言うにはかなり仲の良い様子を見せ付けていた。

 銀色の美少女が左右で固めていると言う構図……他の者が割り込む隙が無いと言う、あわよくば男性操縦者にお近づきになりたいと考えていた女子生徒の出鼻を盛大に挫いている。

 

「はーい。皆、揃っているわね〜?」

 

 その時、職員会議(多分暴れたんだろうな)を終えたこの6組の担任となる伽羅が教室に入って来た。担任の教師が来た事で生徒達の意識がその教師へと向いた。

 

「初めまして〜、貴方達の担任を務める天瓦 伽羅だよ〜」

 

 その名を体現するかのようなキャラメル色をした髪を靡かせ間延びした口調で伽羅はそう自己紹介をした。

 

「さてと、自己紹介は各自でやって貰うとして……」

 

 其処で伽羅の纏う雰囲気が急激に下がった。ああ、もう抜き身の感情を示すのか。

 

「既に説明されたから知っている娘も居るだろうけど、改めて告げるね? 8組は他の学級とは違って私の裁量によって授業を進めるわ。当然、他の学級のような授業を行うとは限らない」

 

 目を細めて伽羅は通告する。肌寒さを感じさせる口調、IS学園へ入学し男性操縦者と同じクラスになれた事実故に浮かれた気分の生徒達に容赦無く冷や水を浴びせに掛かる。

 

「ハッキリ言ってあげるよ。そんな有様じゃあ……どの道、後悔するよ。後悔する前に今此処で自主退学を勧めるよ」

 

 その言葉に生徒達は何を言っているのか理解出来なかった。高い倍率を突破しやっとの思いでIS学園へ入学を果たしたと言うのに初日でいきなり『自主退学』を勧められた。

 

「い、いきなり自主退学って……」

 

「何を言って……」

 

「……可笑しいよ」

 

 そして口々に溢れる困惑の声音。まだ理解していないのか。

 

「……そっかそっか。君達はまだ何も分からないんだね。ならば教育方針(・・・・)は決まりかな。……って、若菜。何その『またロクでもない事を企んでいる』、みたいな目は」

 

 逆に言わせて貰うと一般生徒から見たらゴミを見る様な目だと思われているんじゃなかろうか。

 

「え、えっと……先生とその……男性操縦者の人は知り合いなんですか?」

 

 恐る恐ると言った感じで生徒の1人がそう質問する。

 

「うん? ああ、以前から束博士の子供達の家庭教師をしているからだよ。今日以降は土日にするつもりだけどね」

 

 何処か遠くで悲鳴の様な歓声が聞こえて来た。恐らく1組で咆哮の様な歓声を上げているのだろうが、8組ではそんな余裕は無かった。

 質問した生徒達は二の句を継ぐ余裕は無かった。柔和な口調ではあるが淡々としており それが恐ろしく感じたからだ。

 

「さてと、最後の確認だけど……本当にIS操縦者の道を進むのかな? 君達の予想よりも遥かに茨の道だ。

 もう一度、言っておくけれどこの8組の教育方針は私の裁量に委ねられている。あの織斑 千冬のような生温いやり方をするつもりは無い。もし……私が怖いのならば立ち去った方が良い」

 

 最後通牒。

 しかし、それでも席を立つ者はいなかった。此処まで来た、或いは他にも何か理由があるのか。それとも言葉の綾だと見做して侮っているのか。まぁ、其処の点はどうでも良い事だろうか。何せ当事者達の問題であり、自分たちが関与する事では無いのだから。

 

「そう……。その選択、後悔しない事を祈っているよ」

 

『……大方、またエゲツない企みをしているんだろうな』

 

 かも知れない。果たしてどんな形で牙を剥いて来るのやら。……死人が出るのは確定的だな。殆どの連中が、伽羅さんの言葉を本気で取り合って居ない。雰囲気に呑まれこそして居たが、恐らく別の解釈で片付けたんだろうな。

 

 

 

 

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