束博士から宇宙に行けとの事で宇宙進出してみた 作:夢現図書館
「やぁやぁ、待っていましたよ。若菜さん御一行」
IS学園第6アリーナに併設されているIS用整備室。この第6アリーナ自体、ほぼ使われていない。かと言って解体するにしても予算が組めない為に半ば放置気味となっている。
ガイアのコア・ネットワークを介して呼び出し人であるケーニヒスベルクの居場所を割り出した結果、その場所に居る事が判明してその整備室へと赴いた。
IS整備室とはその名の通り、ISの各種装備の整備、調整を行う為の大型設備が備わっている区画である。ラビット・ラボやエストレヤでも市営の整備所が第6層や学院区画でも随所に見られる為、然程真新しい気分にはならない。
「……その服装は
その整備室に居座っているケーニヒスベルクに若菜は半目でそう言い放つ。赫みがかった銀色の髪を靡かせ、左色は眼帯を付けて残る右目は赫灼と煌めいている。
「暑いから嫌ですね。私の体温が高いのはご存知でしょう?」
若菜が呆れ気味になっているのは、彼女、ケーニヒスベルクの服装であった。
まず第一に布面積が極めて少ない。下着か水着だけかと思うくらいしか布面積が無い。申し訳なさ程度にシースルーの上着を羽織るのみ、パレオ代わりにクリノリンだけ着けると言う意味が分からんスタイル。そして、頭部には赫い亀裂が入った湾曲した双角が備わるカチューシャを付けていた。色白な肌と相待って角が生えた悪魔みたいな容姿だと形容する者も居るかも知れない。
一言で言おう、メチャクチャ目立つ容姿及び服装だ。本人曰く『暑いから』との事でかなりの薄着のスタイルを好んでいるとの事。
それでも人目に付く場所ではかなり奇異に見える服装だと言わざるを得ない。エストレヤ? 頭おかしい服装のオンパレードだから、気にしたら負けだ。
「…………それで? 呼び出した理由は?」
「束閣下から聞いているとは思いますが、我々の身に纏うISはこの地球上ではオーバースペックも良い所、故に使用は極力控えるように通達されています。
従来であれば、この地球上での使用機会はほぼ無い為に然程、問題視されていませんでした。しかし、此処……IS学園ではそうも言っては居られない場面に直面するやも知れません」
ケーニヒスベルクがIS学園に来たのは、束が更なる先手を打つ為であった。若菜達は俗に言う専用機を所持しているが諸事情で使用は抑制されている。しかし、それでは対外的に面倒な問題が発生しかねない。
其処で事情を把握し尚且つ機体整備の造形に詳しい人員を後付けで要請した結果、エストレヤの学院教師の1人でもあるケーニヒスベルクが来星したと言う訳である。
一応、他にも候補はあったのだろうが恐らくは消去法で彼女が選ばれたのだろう。それくらい他の面子が色々な意味でヤバすぎる。
金髪イカれマッドサイエンティスト?漏れなく地球全域が人間牧場と化して、人類滅亡秒読みだ。
相反している双子? 地球丸ごと実験場と成り果てて生態系壊れるわ。
ウィキ姫?邪教徒の軍団が地球侵略しに来るわ。あんな連中の相手なんか誰が出来るんだよ。
天下馬鹿? 上記に比べりゃかなーりマシ。が、地球と言う立地の都合上、無理だわ。戦争になる。
と、物騒な面々しか存在していない為に消去法でケーニヒスベルクとなったのだろう。割と真面目に地球は崩壊、破滅、侵略の難を逃れた。
「詳しいカバーストーリーは伽羅さんに丸投げしています。その結果、表向き若菜さんは学園にある量産機のコアを借りて各種パーツのアセンブルする事になります」
つまる所、量産機を専用機として扱うと言う形式になるとの事。事実上、若菜は専用機を2種扱うと言う女尊男卑に感染した女性権利団体から見れば怒り狂っても仕方ない光景だろう。
『我が息子、学園に保管されている量産機のISコアにはボクから既に説明しておいたぞ♪ 有り難く思いたまえよ♪ ……あの娘らの愚痴からして相当な鬱憤が溜まっているみたいだったな。
「成程。ただその為だけに来たのか?」
「……パーツ製造ならば兎も角、機体構造の整備、組立は個人で行うものなのですが、この地球では専門のチームを組んで行うのが主流らしいので、一応は合わせておかねば悪目立ちしてしまうとの事です」
それを言ったら貴方の服装が1番、悪目立ちしているだろう。
「……取り敢えず分かった」
「機体コンセプトは若菜さんの『フォーマルハウト』を準拠とします。ただし、IS学園の備品を転用する為、出力はかなり落ちますのでご容赦の程を」
「……ならば白兵戦を主体にするべきか」
絶対天敵ならば兎も角、人間が相手ならばやりようは幾らでも出て来よう。その辺はコアとの対話で詰めていくのが良いだろうか。
「白兵戦仕様武装ならば、其の儘扱っても問題は無いでしょう。他にも各種兵装を搭載しておくのも良いでしょう。相性の程は知った事ではありませんが」
取り敢えず草案となるプランはその場で組み立てておいた。学園内で戦闘行為に陥る事など、余り無いとは思いたいが保険は用意しておくべきだろう。
「ふむふむ。一先ず初期案を前提に組むとしましょう。伽羅さんのオリエンテーション終了
幾つかの案を纏めケーニヒスベルクはそう告げる。
「日……って事ァ、やっぱ跨ぐ系か」
あの電子音の暗号の内容から恐らく1日で終わるまいと考えてはいたが、予想通りの様だ。其処まで大規模なオリエンテーションをやると言うのか?しかし、たった1日で用意出来るものだろうか?
「詳細はお話できません。まぁ、若菜さん達は問題無いでしょう』
ケーニヒスベルクは詳細は知っているがネタバラシはしない様である。
『それよりも……折角ですのでサンプルを頂けませんか? 前回とのサンプルと比較したいので」
そして、恐れていた展開がやって来た。
消去法で『まだマシ』と判断されど、それは他の面子と比べたらの話。若菜から見ればケーニヒスベルクも充分ヤバい存在である事に変わり無し。この人も趣味が人体実験やサンプル採集だからだ。
「2人とも、逃げるぞ‼︎」
「「はいっ‼︎」」
だから会いたくは無かったのだ。事ある毎、サンプル採集やら検体確保と宣いながら人体実験やら実行して来る。因みにエストレヤ学院では毎日、研究者気質の者が他の生徒を適当に拉致して人体実験を繰り返していると言われているがそれは全くのデマでは無い‼︎
若菜はシノアとフィウの2人を小脇に抱える形で担ぎ全力疾走で第6アリーナの整備室から逃亡を敢行、曲がり角は直角ドリフトで靴底で火花を散らせながら突破して第6アリーナから無事に逃亡に成功した。
「ありゃりゃ……逃げられちゃいましたか。うーん、私もレーキュさんや病姉妹みたいに毒ガスを開発しましょうかね。いや待てよ? そうすると折角のサンプルが変質してしまう恐れも……?」
若菜達に逃げられた事にケーニヒスベルクは片目を顰めて少し落胆するも意識を切り替える。
「まぁ、良いでしょう。若菜さん達の検体採取の機会はこの後、幾らでもありますし……。それよりも折角、地球に来たのですから是非とも地球人のサンプルを集めねばなりませんね。
幸いにも比較対象は大勢あります。まずは誰からサンプルを頂きましょうか。……代表候補生とか言う地球人感覚での優良個体から手を付けましょうか?」
どうやら束は全く別の意味で人選を間違えてしまった様である。もう、後の祭りではある為にどうする事も出来ない。
前話の電子音の暗号。実はあれはある種のモールス信号のリズムです。
『ツー、ツ、ツー、ツ、ツー、 ツ、ツー、ツ、ツー、ツ、 ツー、ツ、ツー、ツ、 ツ、ツー、ツ、ツー、ツ、 ツ、ツ、ツ、ツー、 ツ、ツ、 ツ、ツ、ツー、ツ、ツー、
ツ、ツー、ツー、ツ、 ツ、ツ、ツ、ツー、 ツー、ツー、ツー、』
となっていましたがこれを『ツ』を『・』、『ツー』を『ー』に置き換えると
『-・-・- ・-・-・ -・-・ ・-・-・ ・・・- ・・ ・・-・-
・--・ ・・・- --- 』
となり、これを文字に直すと
『さんにんぐみ つくれ』
となります。